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旧街道サイクリングの旅 vol.1 旧東海道をゆく

その他


「旧街道は日本のサイクリングシーンのフロンティア(新天地)ですよ!一度出かけてみませんか?そしてそれを本にしましょうよ!」

旅のきっかけは一杯の酒から始まった。

 

旅へのいざない

旧街道の再発見は新たなサイクリングの手法かも
旧街道の再発見は新たなサイクリングの手法かも


スポーツサイクルショップとサイクリングツアー会社を経営している私、井上は、今から2年前、たまたま仕事で出かけていた大阪梅田の地下街で、サイクルスポーツを出版する八重洲出版大阪支社のシシャチョーさこやんこと迫田支社長とばったりと出会った。夕方で人でごった返している地下通路。「井上はーん!」大声で私を呼ぶ声。シシャチョーさこやんだった。

人情に厚く、それでいて歯に衣着せぬ物言いと、天性のギャグで「業界人で彼を知らない人は潜り」と言われるような有名人だ。身振り手振りで話す様子や、写真を撮るときにちょっと照れておどけるのを見ると、骨の髄まで関西人だということがわかる。

私も普段からサイクルスポーツ誌の広告出稿やウエブ記事などでお世話になっている。電話やメールの挨拶には必ず爆笑よりも失笑気味のギャグが飛び出す。そんな感じだから往来の激しい地下通路のど真ん中で「いやいや珍しいところで、どうもどうも」というノリで大声での立ち話が始まった。

2人とも営業出身の関西人同士、しかも同い年ということでそのうち必然的に冗談の掛け合い話となる。長い時間喋っていたがいつしか夕方のいい時間帯になってしまったので、「オモロイですな〜それでは……」と近くの居酒屋で呑むことになったのだ。


 
シシャチョーさこやん。旧街道サイクリングで宴は盛り上がった。写真は出発前日の宴
シシャチョーさこやん。旧街道サイクリングで宴は盛り上がった。写真は出発前日の宴


江戸幕府が制定した東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道をはじめ、各地に残っている旧街道を探し出してルートハンティングするサイクリングを私はかねてよりライフワークにしている。今はこれを実際に仕事にもしていて、私の経営するサイクリングツアー会社ではなかなかに人気が出てきている。旧街道をゆくサイクリングは、走行感や快適性や爽快感を求める一般的なサイクリングとは趣を異にするサイクリングなので、万人にフィットするとは思わないが、とにかくやってみると「思った以上に楽しい」とおっしゃる方が多い。正確には知得型のツーリングと言った方が正しいかもしれない。街道の文物を見ながら昔の道をゆっくり走ることが中心で、知的好奇心を満たす旅である。それが故にイージーに思われがちだが、その実、ポタリングなどに比べると割としっかりとスポーツしている旅なのである。だからと言ってガムシャラにペダルを回したり、パワー管理をするような乗り方は一切必要ない。体力や脚力の差はさほど影響しないので、サイクリストであれば年齢性別を問わず楽しむことができる。そしていわゆる「走り屋ライダー」であっても、違う視点で自転車に乗ることになるので、意外と好評だったりもするのだ。

さて宴の方は酒がすすみ2人とも滑舌が悪くなってきた。いい気分だ。そこでようやく旧街道サイクリングの話をした。

何故だかアラフィフの同い年で旧知のシシャチョーさこやんには、旧街道サイクリングのこの魅力をぜひ知ってもらいたいと思ったのだ。私自身、以前はロードレースやトラックレースなどを、そして今はトライアスロンを愛好している。でもやはり年齢の影響で以前ほど情熱的に走れなくなってきている。そんな中でこの旧街道サイクリングだけは昔から変わらずに楽しめている。だからかも知れないが、支社長にはかなりグイグイと「推した」と記憶している。記憶が曖昧で定かでは無いが(実は飲みすぎたのか後半は余り記憶が無くなっている。)、恐らくは支社長に興味があるか無いかは全く意に介さず一方的に話していたことだろう。まあ酔っ払いの旅自慢のようなものだったと思う。ただキョトンとしたさこやんの表情だけは鮮明に覚えている。

しかし、シシャチョーさこやんからその後、旧街道サイクリングの話が出ることはなかった……。

 
東海道、中山道をはじめ全国には昔の街道が残っている。写真は中山道妻籠宿
東海道、中山道をはじめ全国には昔の街道が残っている。写真は中山道妻籠宿


時は流れ2年が経ち2019年春、さこやんから突然に電話がかかってきた。「井上さん、以前話していた旧街道サイクリングの話ですけど……。」

覚えてくれていたことは意外だった。そして会って話をすることになった。

会談でのシシャチョーさこやんは電話口以上にトーンが上がっていた。

話を聞けば、実は2年間、さこやんは現在のサイクリングシーンに対し、さまざまな思いを巡らせていたという。

国内のスポーツサイクル事情は、レース関係至上主義になっている。マーケティングだって海外の絶景の中を走る写真や、クールでスノッブなイメージのものばかり。そんなロケーションや走り方、日本にはどこにも無いのに……。実際の日本のサイクリング環境や愛好者の楽しみ方とはかけ離れてしまっているのではないか。そもそもバイクやエキップメントはレースやクールに走るものばかりではなくて、本場では本来多種多様なものがあるはず。全然紹介できていない。国内で目にするものはなんだかロードバイクを中心に一元的になってきてしまっていて魅力に乏しい気がする。さらには若者のスポーツ離れ、主力の購買層がシニア層へシフトする問題などもある。

などとシシャチョーさこやんは堰を切ったように語り出した。眉間に皺を寄せ、普段のおちゃらけをする表情とは別人の顔つき。メディアの立場で長年サイクリングシーンを見続けてきたからこそ感じることなのだろう。いつもの冗談は鳴りを潜め、かなり真剣な話ぶりだ。

長い間そのようなことを考えていた折、シシャチョーさこやんはたまたま出張で出かけた長野県で、美しい情景に出逢ったのだという。夕暮れの旅情あふれる道の風景だったそうで、自転車で来たらさぞ感動するんだろうなという印象だったようだ。その場にエスコートしてくれた人に聞くと、それが旧中山道ということだったらしい。その時の旅情と「中山道」のひと言が、2年前の酒宴での出来事を電撃的に思い出させたというのだ。そして井上のやっている旧街道サイクリングは確かに新天地かもしれないと確信したのだという。

 
観光のピークを過ぎると途端に人がいなくなる。思わぬ情景を見せる宿場町
観光のピークを過ぎると途端に人がいなくなる。思わぬ情景を見せる宿場町
連子格子の家並み。旧街道の示す道しるべだ。写真は中山道奈良井宿
連子格子の家並み。旧街道の示す道しるべだ。写真は中山道奈良井宿


そして件の電話がかかってきたわけである。

それからはトントン拍子に話が進んだ。

●旧東海道を皮切りに五街道をサイクリングで走破する計画
●忙しい身分の2人なので一つの街道を数回に分けて走る。
●宿の関係で輪行などを使ったりするが、行程を飛ばしてしまうことはしない。

このような大筋を立てた。今度は私がまくし立てる番である。

「バイクはグラベルロードやワイドタイヤを履かせたロードが良いですな。現代版スポルティーフみたいで。」

「たまにゲストハウスなんかも入れて木賃宿(きちんやど:食事などのサービスは自炊の簡易的な宿泊施設)のような体験を。」

「宿場町ごとに写真を撮って掲載しよう。」

「迫田さんはシシャチョーさこやん、私は独立開業時から店長と呼ばれています。ニックネームはカタカナでテンチョーなのですよ。だから十返舎一九の弥次喜多みたいに、シシャチョー&テンチョーの道中記で行きましょうよ!」

「毎晩ビールは欠かせないですよ!」

いつもは独りでルートハンティングしながら旅をするか、ツアーでお客様をエスコートするかになるのだが、このようなロケをしながらの旅は初めて。話していてこっちもワクワクしてきた。

そして会談の終わり際にシシャチョーさこやんが放った言葉「井上さん、旧街道サイクリングに私を連れて行ってくださいな!」

まるでバブルの頃の映画のキャッチコピーのような言葉に、関西人である彼のコテコテのユーモアと、それでいてしっかりとした情熱と決意をひしひしと感じたのだった。
 
かくしてアラフィフ業界人2人による旧街道サイクリングの旅が決定したのだった。


【text & photo:井上 寿】
滋賀県でスポーツバイシクルショップ「ストラーダバイシクルズ」を2店舗経営するかたわら、ツアーイベント会社「株式会社ライダス」を運営、各地のサイクルツーリズム造成事業を主軸としつつ、「日本の原風景を旅する」ことをテーマにした独自のサイクルツアーを主宰する。高校生の頃から旧街道に興味を持ち、以来五街道をはじめ各地の旧街道をルートハンティングする「旧街道サイクリング」をライフワークにしている。趣味は写真撮影、トライアスロン、猫の飼育。日本サイクリングガイド協会(JCGA)公認サイクリングガイド。


取材協力:RIDAS(ライダス)

機材紹介


CAAD13 Disc 105

シシャチョーが使用するのは、キャノンデール・キャード13ディスク105。完成車ベースで28Cのタイヤが装備されており、グラベル、オフロード走行が可能。また、フォークにフェンダーを取り付けるためのダボ穴が標準装備されているので、レースだけでなく、旅を楽しむことができる汎用性の高いバイクだ。

価格:21万円(税抜)

 

Topstone Carbon Force eTap AXS

テンチョーが使用するのは、キャノンデール・トップストーンカーボンフォースeタップAXS。前例のない超軽量サスペンションシステム「Kingpin(キングピン)」を搭載した未だかつてないグラベルバイク。オンロードで快適な乗り心地を実現することはもちろん、オフロードでこれまで全てのロードバイクを凌駕する圧倒的性能を発揮する。

価格:59万5000円(税抜)


キャノンデール・ジャパン

 
バックパックにレインカバーとヘルメットホルダーが内蔵されているので、とても便利だ
バックパックにレインカバーとヘルメットホルダーが内蔵されているので、とても便利だ

RACE EXP AIR 14+3

ドイター・レースEXPエアー14+3。容量を増やすことが可能なロングツーリングまで対応するモデル。背面の熱気が3方向に排出され抜群の背面通気性を持ち、最大25%の発汗を抑制する。

価格:1万2000円(税抜)


問 イワタニ・プリムス(ドイター)

 

AVVENTURA

キャットアイ・アベントゥーラ CC-GPS200。最大約80時間稼動のGPSサイクルコンピュータ。イタリア語で冒険を意味する名前の通り、ロングライドに向いた製品であると言える。

価格:1万8000円(税抜)


問・キャットアイ

 

REPUBLIC R KNIT HV

ジロ・リパブリックRニットHV。全く新しいスタイルを提供するXneticニットアッパーを採用しているので、快適性と柔軟性に優れている。酷暑のライドでも足だけは、涼しく感じることができる。HVは左右幅を拡大したハイボリュームモデルなので、幅広の足の方にお薦め。

価格:1万8900円(税抜)


問・ダイアテック

 

SYNTAX MIPS AF

ジロ・シンタックスミップスAF。2019年にリリースされた日本人向けのアジアンフィットを採用したミップス搭載コンパクトスタンダードヘルメット。

価格:1万5800円(税抜)


問・ダイアテック

 

Seat-Pack

オルトリーブ・シートパック8-16.5L。軽量で摩擦や引き裂けに強い防水生地と、ロールクロージャー開閉システムを採用。 容量調整が可能で、エア抜きバルブを開けて、サイドに配されたストラップを引き締めればコンパクトに圧縮することもできる。

価格:2万1500円(税抜)


問・PRインターナショナル

 

PWR TRAIL

ノグ・パワートレイル。1000ルーメンの大光量LEDライトヘッドと5000mAhのパワーバンク(バッテリー)、そしてサイドマウントをセットにしたモデル。明るいのはもちろんのこと、スマートフォンやサイクルコンピューターなどのデバイスを充電するモバイルバッテリーとしても機能。

価格:1万3500円(税抜)


問・ダイアテック

 
シシャチョーさこやん(左)と、筆者井上(右)
シシャチョーさこやん(左)と、筆者井上(右)


TRAIL SS JERSEY

トレイルSSジャージ。サマーシーズンのオフロード/ツーリングに最適なアソス初のトレイルジャージ。軽く耐摩耗性に優れ、汗のたまりやすい袖内側から脇にかけてはメッシュ加工が施されているので、真夏でも快適だ。

価格:1万2600円(税抜)


TRAIL CARGO SHORTS

トレイルカーゴショーツ。アソス初のオールマウンテンシーン向けの軽量、速乾の快適なカーゴパンツ。太ももの左右には防水ジッパー式のポケットが配置されてるので、とても便利だ。

価格:1万6800円(税抜)


問・ダイアテック



vol.2に続く