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安井行生のロードバイク徹底評論第10回 BMC SLR01 vol.6

2018シーズンはアツい年となりそうである。ドグマF10とK10。ターマックとルーベ。エモンダ、プロペル、リアクト、シナプス、R5に785……。

各社の主力機のモデルチェンジに日本中のロード好きが話題騒然としているなか、BMCは旗艦SLR01を世代交代させた。

開発プログラム主導による前作をどのように変化させたのか。イタリアでのプレスローンチに参加した安井が報告する。vol.6

 
text:安井行生 photo:小野口健太

ジオメトリーの是と非

Q:フレームの成型方法は。

A:基本的には前作と同じ方法(加圧時に固形芯材を使用、成型後に芯材を溶かして取り出す)です。ただ、固形心材の形状精度を向上させました。それによって無駄な素材が必要なくなったため、軽量化が可能になりました。とくに接着部分の無駄を省くことができたのが大きいですね。ちなみに、前三角をワンピースでつくり、それにシートステーとチェーンステーを接着する構造です。また、金型と芯材で圧縮をかけるだけでなく、バキュームによってフレーム内部を真空状態にし、無駄な樹脂を吸い出しています。

 
ここでジオメトリーをチェックしておこう。先代とは全体的に変わっているが、方向性が激変したわけではなく、フレーム形状の変化に伴う微変という範疇である。フレームサイズは47~61の6種類(日本に入ってくるのは47~56の4種類)が用意されるが、フォークオフセット、チェーンステー長、BBドロップなどは全サイズで共通であるなど、決してジオメトリーの理想形と言えるものではない。なかでも特異なのがシート角が全サイズ73.5度であることだ。BMCは先代SLR01はもちろん、現行ロードマシンやタイムマシンでもシート角を共通としている。というわけで、ジオメトリーについても突っ込んでみる。
 
SLR01のジオメトリー。リムブレーキモデルもディスクブレーキモデルも同じ
SLR01のジオメトリー。リムブレーキモデルもディスクブレーキモデルも同じ

Q:開発段階ではジオメトリーを決めてからシミュレーションにかけるのか、ACEテクノロジーがジオメトリーに関するフィードバックをするのか(※錦織店長の質問)。

A:我々が欲する値(剛性や快適性など)のほかに、パラメーターは存在します。ヘッド角、フォーク長、スタック&リーチ、トップチューブ長、ヘッドチューブ長、シート角、シートチューブ長などです。要するにフレームサイズやジオメトリーは最初から前提条件として入っているんです。しかし、各チューブの接合部の角度までは決めていません。トップチューブがどのようにヘッドチューブに接合させるべきか。ダウンチューブはどの高さでどういう角度でヘッドチューブに接合すればいいのか。シートステーはどの高さでシートチューブに接合させればいいか。そういうことはACEテクノロジーによって出します。ジオメトリーは決まっていても、各チューブの接合するポイントには自由度がありますから。
 

Q:全フレームサイズでシート角が同じだが、その理由は。

A:もちろん製造上の理由もあります。でも、シート角で走りが決まるわけではありませんし、多くのライダーがサドルのポジションを出せるようなシート角にしなければなりません。そういうことを踏まえると、フレームサイズごとにシート角を細かく調整する必要はないという結論です。シートポストは標準の15mmオフセットに加え、30mmオフセットと0mmオフセットのオプションも用意しています。それによってサドルの前後位置の調整幅を確保しているため、シート角が全サイズ共通でも、どんな体型のライダーでも問題なくポジションが出せます。シート角を変えなくても悪影響はなく、それでいて作りやすくなる。それが全サイズシート角共通の理由です。小さいサイズのシート角をもっと立てるべきではないかとも言われますが、チームのメンバーは30mmオフセットでも足りないくらいサドルを後退させるライダーもいるんです。これ以上シート角を立てると、彼らがポジションが出せなくなってしまいます。

 

生産における理想と現実


Q:製造上の理由とは。

A:金型を共通とすれば製造コストを下げることができますから。例えば、フロントトライアングルはフレームサイズごとに金型を用意していますが、リヤトライアングルは2サイズごとに共通としています。6種類のフロントトライアングルに対し、リヤトライアングルは3つの金型で済ませているわけです。また、シート角を変えるとシートポストをクランプするスモールパーツの角度も変わってしまうので、サイズごとにつくりかえなければならなくなります。

 
どうも我々はフレームの形状や機構や素材などの設計に目が行きがちだが、「設計」と同じくらい重要なのが「生産」である。生産できない設計には意味がないし、生産に猛烈にカネがかかる設計も商品として正しいとは言えない。絵に描いた餅とはまさにそれである。

生産コストがかさむことを承知で金型を十何種類も用意して1cm刻みでフレームサイズを展開し各サイズで細かくジオメトリーを変えるのは、ロードフレーム作りとして間違いなく理想的だ(ただし理解されにくいし販売価格は高くなるので売れない)。反対にサイズバリエーションを縮小し、シート角やヘッド角やBBドロップやチェーンステー長やフォークオフセットの値を各サイズで共通とし、生産コストを抑えて安価に提供する、もしくはそのぶんを開発費や素材費に突っ込むというのもまた正しい(そのかわりジオメトリーに綻びが出やすい)。

必要なのは、我々ユーザーがそれぞれのメリット・デメリットを理解し、それを自分の自転車人生に当てはめて、その利害を正しく判断することである。
要するにカーボンフレーム全盛期になったその瞬間に、エンジニアが作りたいように作れる時代は終わったのだ。常にカネを睨みつつ設計を進める。それが現代のフレーム作りである。
 
なお、チェーンステー長が前作の402mmから410mmへと延長されているが、これは性能云々ではなく、シマノディスクブレーキコンポの指定によるものである。

 

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