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カンパニョーロ・スーパーレコードEPS12速を試乗!

すでにレースでも活躍しているカンパニョーロの12速EPSスーパーレコード。ホビーサイクリストレベルである中島が、スペインで試乗した。そこで何を感じたのかレポートしたいと思う。

カンパニョーロのコンポーネントを使用するNIPPO・ヴィーニファンティーニファイザネの初山選手、福井メカからも12速EPSの印象についてコメントを寄せてもらった!

 
text:Takehiro Nakajima photo:campagnolo / NIPPO - Vini Fantini - Faizanè (JPN)/ Takehiro Nakajima

我が信条ゆらぎけり

試乗ではジローナを約70km走り回った。カタロニア州にあり、バルセロナから北に100kmほどのところにある街だ。天気は曇りのち晴れ。気温20℃前後。ディスクブレーキ 仕様を試乗した。

フロントは、上りでトルクを掛けたままアウターからインナーへ落としてもしっかりと仕事をしてくれる。フロントをインナーからアウターへ上げつつ、リヤを2枚軽くするような動かし方でも確実についてきた。このあたりはさすが。ただ、リヤだけを操作すると、思ったよりも変速ショックが大きい印象を受けた。もちろんEPSなのでシフトボタンを操作すれば確実に動作する。ただ昨年、機械式の12速に試乗したときは、もっとマイルドだった印象があっただけに意外だ。機械式だからということで、多少丁寧に抜重しながら変速していたこともあるとは思うが。変速完了までのスピードはEPSのほうがもちろん早い、でも脚への衝撃は機械式の方が少なくて優れていると感じた。

エルゴパワーの握り心地の良さは、ロード用ディスクブレーキコンポの中で一番。そしてブレーキフィールは相変わらず秀逸で、レバーの握り込みの強弱に対して制動力がきれいに反応する感じは何度乗ってもいい。シフトボタンの操作性はEPSが登場した当初から自分が評価している点。ボタンの押し心地とストロークが絶妙なのだ。

今はコンポーネントの選択肢がとても多く、特に「電動か機械式か」は悩むところだ。これまで自分は「絶対に電動変速がいい」という信条を持っていた(自分で所有しているバイクは、まだ11速モデルだがレコードEPSと、スラム・レッドeタップを使っている)。それは、ワイヤ内蔵フレームでも摺動抵抗を気にしてワイヤリングする必要がないし、変速操作は手首を大きく動かさずともボタンを押せば確実にスムーズに変速する。

とはいえ先に〝持っていた〞と過去形で書いたのは、カンパニョーロの12速コンポーネントで機械式とEPSの両方を触ってみると、摺同抵抗は機械式である以上は逃れられないが、シフト操作のストレスの差が小さくなったと感じたからだ。

12速になったことでギヤ比がクロス&ワイドレシオになり、ギヤの歯間が詰まっているので、機械式でもより少ないストロークで変速できる。するとレバーを操作して変速し、その感触が脚に伝わるという一連の変速動作が魅力を決める要素になり、総合的にスムーズな印象は機械式のほうだと現時点では感じてる。ゆえに「機械式いいかも」と信条が揺らいでいる状態だ。購入検討の際は是非一度機械式とEPSを乗り比べることをお薦めする。

 

レースシーンで12速EPSを使うNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネに印象を聞いた

シーズンはじめからこのスーパーレコードEPS12速を実戦投入しているチームがNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネだ。チームに所属する初山選手と福井メカに、新型12速EPSになったことによるメリットや、ディスクブレーキでよくある疑問を聞いてみた。

【使用バイク】デローザ・プロトス/ SKピニンファリーナ / キング【使用コンポーネント】スーパーレコード 12速EPS

※2月時点でのコメント

 

「アドバンテージには期待している」初山翔選手

ライダー:初山翔
ライダー:初山翔
■ 12速のメリットは?

11T-29Tと幅のあるスプロケットを使えることです。急勾配の上りでも下りでも、緩斜面であっても、ちょうどいいギアが見つからないということはありません。またコースの特性に合わせたスプロケットの変更も必要なくなりました。



■ リムブレーキからディスクブレーキへの移行はスムーズだった?
そこに関して違和感を感じることはありませんでした。強いスピード抑制効果があるといえ、すぐさまロックするということはなく、ブレーキをかけたぶんだけ減速するといった印象です。これはリムブレーキでもそうですが、カンパのブレーキの特徴だと思います。



■ 選手同士でディスクブレーキについて話をする?
やはり選手が気になる部分はレースでアドバンテージが得られるかどうか一点です。重量でのハンデと下りでのメリットを天秤にかけるような話はよくします。



■ 一般的には上りでは重量のハンデがあり、下りではアドバンテージがあると言われているが、実際レースでもそう?
重量に関しては間違いなくハンデです。数字で出てますので誤魔化しようがありません。ただそれを体感するかどうかは別問題です。今シーズンのレースは天候に恵まれているので試せていませんが、悪天候での下りではアドバンテージを得られると信じています。


 

「ホイール、工具など互換性の高さは魅力」福井響メカニック

メカニック:福井響
メカニック:福井響
■ 12速EPSのメンテナンス性(11速と比較して)
まず各パーツの取り付け方法ですが、これは基本的に11速仕様と全く変更はありません。チェーンカッターを含め、これまでの工具で全て取り付けが可能です。ホイールに関しても11速モデルと12速モデルは互換しており、スプロケットを交換するだけで12速モデルにスムーズに換装できるのは非常に助かります。
 
次に電動変速機の調整方法についてです。EPSの変速調整には大きく分けて2種類の方法があります。1つ目は初期設定としての調整方法で、スプロケットの11段目と2段目をEPSに記憶させて調整する方法。2つ目は簡易的な調整方法として、全ての段数をまとめて一気に重い方、または軽い方に調整する方法です。
 
そして12速仕様から新たに3つ目の詳細な調整方法が追加され、ある1つのギアに絞って調整が可能になりました。例えば、しっかりと調整をしているにも関わらず7段目だけ噛み合っていないような音がする。7段目以外の段数は全てしっかりとチェーンとスプロケットが噛み合っている。このような現象はコンポーネントを長期間使用していく中で起こり得る事で、特にチェーンだけ新品に交換した際や、スプロケットだけ新品に交換した際などに発生する可能性があります。

もちろんコンポーネントを全て新品に交換すれば良い話ですが、この調整方法により、そうせずとも解決できるようになりました。ちなみにチームが2ヶ月使用してきた中で、この3つ目の調整機能を私が試した事は1度もありません。特にホイールを常に交換する(常にスプロケットが入れ変わる)レース現場などではなるべくこの機能で問題を解決することは避けたほうが良いのではないかと思っています。

しかし毎日同じホイールで走る一般のライダーにとっては非常に助かる”神的”な親切機能といっても過言ではないでしょう。
 
電動もメカニカル式もメンテナンス性に関しては大きな変化はありませんが、調整台で作業中、チェーンが落ちやすい傾向を感じました(特に大きなフレームサイズの選手)。そこで昨年よりリアディレイラー(12速メカニカル)の張りを強めに調整することで問題は解消しました。



■ チェーンやギアの耐久性についての変化
チェーンの耐久性については前々からカンパニョーロに教えられていた通りで11速仕様と大きな違いは感じません。特に体重の重いスプリンターは14レース(約2000km)で交換しましたが、体重の軽いヒルクライマーのバイクはまだ伸びも遊びも少なく、交換まで至っていません。ちなみに今回のチェーン改良は素材を薄くしたのでは無く、連結ピンを短くしただけと聞いています。



■ 変速調整のシビアさ、ズレについて
変速調整にシビアさは特に感じません。むしろ昨年と同様の気分で、調整しながら「12枚もあって多くて面倒だなぁ」とも感じません。レース中にズレが発生することもありません。
 


■ 選手からの評判
12速に仕様が変わったものの、レバー、ブラケットの大きさや変速感覚は、良い意味で変わっておらず、選手は自然に違和感なく使用しています。前述しましたが、大きなフレームの選手から「チェーンが暴れて(跳ねる)外れそうになる」という意見はありましたがチェーンを強めに引っ張ることで解決しています。また11速同様スマホアプリを使用することで変速ボタンの各機能を好みに変更することも可能で、スプリンターはボタンの機能をカスタムして使用している選手もいます。
 


■ ディスクブレーキにおけるホイール交換の作業性
チームが使用するDE ROSAバイクは全てヘックスレンチ仕様のスルーアクスルで、これまでのクイックレバーのように手だけで取り外すことは出来ず、6mmのヘックスレンチが必要です。そういった面ではレースでパンクした際、選手自らホイールを外してチームカーを待つことができず、メカニックが到着するまで選手は手を挙げアピールする事しか出来ません。しかしメカニックが到着してしまえば、電動工具で一気にスルーアクスルを抜き取ることができるので、前輪のホイール交換に関しては、クイックレバー同様の時間で交換が可能です。リアホイールに関しては、やはりクイックレバーの方が早くて簡単です。前輪はフォークに爪がありますからクイックレバーも回転させる必要がありますが、リアはクイックレバーを開くだけで車輪が外せますから、その容易さはスルーアクスルを抜き取る動作と比べると交換時間にどうしても影響してしまいます。
 
しかしスルーアクスルの抜き差し以外では、全くこれまでの動作と同じで、ディスクをキャリパーの隙間に差し込む動作も何ら難しいことはありません。1秒を競うレース現場でなければディスクブレーキの交換作業に不便はありません。むしろスルーアクスルは100%ズレなく装着が可能なので、装着の甘い状態で走り出す危険が防げます。これは様々なレベルのライダーが自ら作業をする状況下では利点であり、特にマーケティング的にも大きなメリットだと思います。
 


■ ディスクローターの変形について
プロトタイプかも知れませんが、ローター変形の噂は他社製品を扱うチームメカニックから良く耳にします。他社のローターに触れる機会が少ないため比較はできないですが、カンパニョーロのローターは結構硬く作られていると思います。これまで輸送中に機材同士がぶつかる事で大きく変形することも有りませんし、手でグッと押してみても変形するまで力を加えるとハブが先に壊れるのではないかと思うほどしっかりした作りです。暑かったコロンビアのアップダウンが激しいレースでも熱による変形は無く、これまでローターに関して不満はありません。素材が硬いぶん、変形した際の修正は難しいのかもしれませんが、我々チームメカニックもまだローターの修正は誰も行なっていないので何とも言えないです。
 
ブレーキパッドの消耗も2000km程度では全然余裕で、ディスクの音鳴りもほとんどありません。他所メーカーのディスクブレーキを見ていると、どこのチームも激しい音鳴りが聞こえます。もしかもしたら車のレース業界でよく言われる”音が鳴る方が良く止まる”という説も自転車に当てはまる部分があるのかもしれません。カンパニョーロを使用しているチームは何処も割合静かです。しかし十分な制動力があり、特に雨でのブレーキングストレスは大幅に減ったと選手から聞いています。
 


■ 総評
今年のEPS12速モデルは新製品とは言え良くも悪くも変化の少ない進化と言えると思います。調整によるチョッとした不具合も、これまでと変わらず同様のノウハウ、感覚でシンプルに修正ができるのはメカニックも非常に助かります。逆にディスクブレーキに関しては、これまでのノウハウが非常に少ない為、勉強中というのが正直なところです。使って、検証して、勉強する、という繰り返しです。


 

問い合わせ先

カンパニョーロジャパン
https://www.campagnolo.com/JP/en