トピックス

安井行生のロードバイク徹底評論第10回 BMC SLR01 vol.4

2018シーズンはアツい年となりそうである。ドグマF10とK10。ターマックとルーベ。エモンダ、プロペル、リアクト、シナプス、R5に785……。

各社の主力機のモデルチェンジに日本中のロード好きが話題騒然としているなか、BMCは旗艦SLR01を世代交代させた。

開発プログラム主導による前作をどのように変化させたのか。イタリアでのプレスローンチに参加した安井が報告する。vol.4

 
text:安井行生 photo:小野口健太

エンジニアインタビュー

というわけで、他国のジャーナリストやショップスタッフが新型車で風光明美なイタリアを走り回っているなか、日本チームはBMCスタッフが宿泊しているホテルのロビーへ。面と向かってではなく、PC画面を介しての会話である。

お互いの細かい表情や息遣いなどは伝わらないため、いきなり核心に切り込むと身構えられてしまうかもしれない。まずはコンセプトの変化から聞いていくことにする。
 
 
Q:前作との最も大きな違いは。

A:前作のすばらしいバランス、剛性・軽さ・快適性・ハンドリングを維持しつつ、新しいブレーキシステムを2種類(ディスクとダイレクトマウント)採用したこと。これにより、ACEテクノロジーの計算結果が大きく変わりました。ディスク仕様のフォークはもちろん、リムブレーキ仕様のフォークも前作とは別物になっています。また、インテグレーションを推し進めることも目的でした。

 
Q:リムブレーキを用意せず、モデルチェンジを機にディスクブレーキ一本に絞るモデルもちらほら出てきたが、新型SLRはなぜディスクブレーキのみではないのか。

A:一つはプロチームの要望です。チームはいまだにリムブレーキモデルを好んで使います。新型をディスクブレーキのみとし、リムブレーキの旧型と併用することも考えましたが、新しいモデルと古いモデルがレースで混走するのもよくありませんし、旧型SLRの改善点も見えてきていたため、リムブレーキとディスクブレーキを同時に開発することにしました。もちろん、軽さやブレーキフィーリングを重視するコンサーバティブなサイクリストの要望に応えるためでもあります。リムブレーキがいいというニーズはまだ根強いですからね。


 旧型SLRの改善点。スロースタートでいくつもりだったが、いきなり核心に近づいてしまった。そのまま突っ走ってみる。


Q:ACEテクノロジーによる開発だと、前作の時点ですでに最高のものができているはずではないのか。“旧型SLRの改善点”とは。

A:実は、旧型SLRのウィークポイントがトップチューブとチェーンステーに見つかったんです。剛性面での弱点ではなく、強度的な弱点です。チームが落車をしたときのダメージが、トップチューブとチェーンステーに集中したんです。だからその2点を強化しました。動力性能ではなく耐久性の改善ですね。頑丈にしてより長持ちするものをお届けしたいという想いからです。トップチューブとチェーンステーの強度に関してACEテクノロジーのターゲット値を新しいものにして計算しなおした結果、設計が変わったということです。
 

 

前提条件の変更によって弱点を潰した


要するに変更点は、新しいブレーキシステムの採用と、ACEテクノロジーの前提条件の変更(トップチューブとチェーンステーの耐破断性の向上)によるものだったのだ。大革新というわけではなく、コンセプトをキープしつつ弱点を潰すというモデルチェンジである。確かに先代SLR01のトップチューブはペランペランで押すと簡単に凹むほどだった。実際、先代SLR01について筆者はこんなことを書いていた。

「オーナーになるにあたって気にならない部分がないわけではない。まずは複雑な形状のシートクランプ部の耐久性。シートクランプ部のクラックはBMCトップモデルの持病である。そしてトップチューブの薄さ。縦方向に簡単に凹むほどである。ワンシーズンで乗り換えるプロならこれでいいのだろうが、一般ユーザーにとってはギリギリの設計だろう」

実際、一般ユーザーでも落車などでトップチューブを割るケースが散見されたという。ユーザーとしてはありがたい変更だ。フレームがたった20gとはいえ重くなった理由はここにあったのだ。ISOなどの安全基準の変更も影響したのかもしれない。
 
これでスッキリした。しかしまだ聞きたいことはたくさんある。ホテルのロビーでスカイプとにらめっこをしていたら、我々のすぐ横を新型SLR01を担いだカデル・エヴァンスが通ったような気がしたが、今は仕事に集中して質問を続けよう。

次はディスクブレーキ版とリムブレーキ版の違いについてだ。2車を見比べると、メインフレームの基本形状は同じ。違いはフォークと左側シートステー&チェーンステーのみである。リムブレーキ版のフォークは昨今のトレンドに則って細めのものになったが、ディスクブレーキ版のフォークブレードは左右で太さが違う。チェーンステーの形状は基本的に同じようだが、チェーンステー末端に着くキャリパーを避けるためにシートステー形状が異なっている。

 
Q:ディスクブレーキ版とリムブレーキ版では具体的にどこがどう違うのか。キャリパー取り付け部となるフォークブレード、左チェーンステー、シートステーが違うのは分かるが、そのほかには?

A:メイントライアングル(ヘッドチューブ、トップチューブ、ダウンチューブ、シートチューブ)は完全に同じ。右側チェーンステーも同じです。


Q:完全に同じ?右側チェーンステーも?

A:はい。完全に同じです。

 
これには驚いた。ディスクブレーキ車とリムブレーキ車は、フロントフォークと左チェーンステー・シートステー以外は形も素材も積層も同じなのである。

 

安井行生のロードバイク徹底評論第10回 BMC SLR01 vol.3へ戻る
 


安井行生のロードバイク徹底評論第10回 BMC SLR01 vol.5へ