世界3位・今村駿介に緊急ショートインタビュー「五輪競技オムニアム、世界レベルの現状とそのキツさ」

2023UCI世界選トラック 今村インタビュー

2023UCIトラック世界選手権で、今村駿介が男子オムニアムで3位、銅メダルを獲得した。

4種の競技を行い、その合計得点を競うオムニアムは、来年のパリ2024オリンピック種目でもある。そのためにオリンピックの前哨戦というイメージで参加選手たちはしっかりと仕上げて参加している。その中での世界3位というのは、大きな快挙だ。

今村は、ジュニア時代にトラックのポイントレースで世界チャンピオンを獲得している。エリートになってからのトラックレースやロードレースでの活躍は確かに目覚ましいが、世界基準となる成績は、まだなかった。それを払拭する今回の成績は、本人にとっても嬉しいものに違いない。

2023UCI世界選トラック 今村インタビュー

世界表彰台の余韻に浸る間もなく、2日後に参加するマディソンに備える今村。休んでいる今村に現地で、今回のレースをさらに詳しく振り返ってもらった。

今の世界のレベルの現実はどうなっているのか。そこで表彰台を取るということは、どれだけキツいことだったのだろう。率直に尋ねてみた。 

 

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2023UCI世界選トラック 今村インタビュー

 

ーー今回の世界選手権オムニアム、レース全体の印象を改めて聞かせてもらえますか? 

反省の多いレースだったという印象です。

 

ーーどんな反省だったのですか? 

まとめる難しさです。 4つのレースをまとめる難しさ、です。

トップ5で3種目を終えて、最後のポイントレースにつなげるっていうことができなかった、というのが大きな反省点です。

それができないと、やっぱりオリンピックでメダルは獲れません。

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ーー現在の世界レベルのオムニアム、どのように進化しているのですか?

誰にでもチャンスが生まれるオムニアムだっていうをすごく感じました。おそらく走っている選手のトップ10人には、全員が勝てるチャンスがあります。 

30点ほどの点差では(注:ラップで得られる20点により)、順位は突然ひっくり返ります。ですから、最後のポイントレースがすべてを握っていると言ってもいいぐらいのレースになってきていますね。

強気で仕掛けた選手がレースを支配できるという印象です。
慎重になればなるほど、後手を踏みやすいのをすごく感じました。
先手必勝じゃないですが、攻撃こそ最大の防御。いかに相手に、「しまった、行かれた!」って思わせるか、だと思いました。
選手のレベルが拮抗しているからこそ、手を出したほうがまず主導権を握れます。

自分のせっかくここまで積み上げてきたものを発揮できない、これが一番良くない状況です。思い切ってレースをして、あるいは脚を使ってだめだった、と感じられること。出し切ることが一番です。

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ーー今回、レース中の今村選手にも、そういった印象を感じました。

自分の脚を使って、思い切り行く。無理だったらすぐに次の作戦を考えればいい。でもそれが実現できそうだったら、全力で脚を使ってチャレンジしてみる。

これをスクラッチの中盤でできました。テンポレースでも、後手を踏まないようにと思って、脚を使ってでも前で走りました。これができたのでよかったです。まずは力を使って相手を翻弄する。やっぱり後手に回ると、もっと頭を使わないといけなくなりますから。

 

 ーーレースの中で一番つらかった場面はどこでしたか? 

テンポレースでの、あと少しでラップ(周回追抜き)できそう、というところで離れてしまったシーンと、ポイントレースの最後20周ぐらいです。ここもラップできるかできないかで、追いつくか追いつかないかみたいな場面でした。きつくて、あんまり記憶に残ってないんですけど。

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ーー全体的にものすごいキツいレースではあったんですね。 

僕がこれまで走ってきたレースでも、ポイントレースは一番苦しかったですね。
最初の20周で息が上がっちゃって、そこから ハイスピードで、誰もが攻撃を仕掛けてくるので削られていく、地獄のような80周でした。

周りの声なんて全く聞こえていませんでした。
順位も全く分からず、レースが終わってから表示を見て、自分が3位だったというのがわかったぐらいでした。

もうただ周りの選手の車輪の音を聞いて、後輪だけを見ていました。 
どの国が、誰が、というのではなくて、色で判断して「あの色を逃しちゃダメだ」っていう。

「ついて行かなきゃ駄目なんだ」「これは逃しちゃだめなんだ、遅れちゃだめなんだ、あとで後悔するぞ」って。考えるよりも自分の本能が最後20周のペダルを回してくれていました。

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 ーー今村さんは、2015年のジュニア時代に、世界選手権ポイントレースのジュニアクラスで優勝しています。『エリートになり、今ようやくスタートラインに立てた』といったコメントを、レース直後のインタビューで何回か残していました。その気持ちをもう一度聞かせてください。

海外だと僕のことは全然知られていませんが、日本だとやっぱり2015年のジュニアの世界チャンピオンのことを、長く言われ続けてきました。

毎年、世界に挑戦させてもらう機会を与えてもらってるのに、うまく結果に結びつかない大会やレースが多かった。

でも、今こうしてメダルを取れたのは、より明確に、やってきたことが間違っていなかったと安心できました。

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これまで自分が信念として持ってきたのは、体力がすべてだということです。
そのためにフィジカルをすごく強化し、スピードよりも持久力に重きをおいてやってきました。

それが今回、特にポイントレースで粘れた、そして泥臭くポイントを積み重ねていけた。その結果、こうして新しい、誇れるリザルトを残せたというのが、すごく。。。 

ここからもう一つまたレベルアップするために、曖昧だった目標が、よりクリアに見えてきました。
もっと真剣に、甘えをなくやらないとだめなんだっていうのをより明確に、大きく感じました。

この10カ月やってきたことは、間違ってなかったけど、足りなかった。
あのレースでの一番の収穫は、そこだったのかなって思いました。

 

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2023UCI世界選トラック 今村インタビュー

 

2023UCI自転車世界選手権大会
開催期間:2023年8月3日〜13日
開催地:イギリス・グラスゴー
https://www.cyclingworldchamps.com/