ロードバイクの良いペダリングを獲得する方法〜練習法編

目次

大反響だった前回の「ロードバイクの良いペダリングを獲得する方法〜基礎知識編」。今回は、そのペダリングを獲得するための練習方法について、引き続きハムスタースピンの福田昌弘コーチに聞く。

内容を動画で見たい人はこちら(記事本文はすぐ下に)

自転車上でどう脚を動かすかの感覚をつかめ!

ハムスタースピン代表 福田昌弘さん

ペダリング研究家にして自転車コーチの福田昌弘さん。オンラインをメインとしたコーチングサービスを提供する「ハムスタースピン」を主催し、人気・評判ともに高い。

前回の基礎知識編では、①クランクを回した分だけホイールが回るようにすること、②重力と戦わないこと、③パワーとは何かを考えることの3点が、ロードバイクの良いペダリングにつながることを学んだ。では、その練習方法とは?

「やるべきことは体幹を鍛えることも含めて多岐にわたるのですが、ポイントを絞るとすると、”自転車上でどう脚を動かすかの感覚をつかむ”ためのドリルを繰り返すことが肝心です。今回紹介するのは、

ドリル① 0時-3時ペダリング

ドリル② SFR

の2つです」。

“自転車上でどう脚を動かすかの感覚をつかむ”とは、果たして? 詳しく教えていってもらおう。

ドリル① 0時-3時ペダリング

まず、1つ目のドリルについてだ。

「最初に取り組んでほしいのは、”自分の脚が今どこにあるのかをきちんと認識できるようになること”です。そう言うと難しいように聞こえますが、やることはシンプルです。ここでは、ポイントを絞った方法を紹介します。それが、0時-3時ペダリングです。

やり方は次のとおりです。

まず、片方の脚をペダルから外します。そして、ペダルにはまっている方の脚で、時計の針で言う0時〜3時の位置だけ踏みます。これを両方の脚で、何度も繰り返します。

また、両脚をペダルにはめた状態で行ってもOKです。片脚でやる方法で感覚がつかめてきたら、両脚に移行してもいいでしょう」。

0時-3時ペダリングの方法

0時-3時ペダリングの方法

「このときに注意してほしいのが、0時〜2時くらいの範囲を踏んだとき、スコッと抜けるような感じになりやすいので、そうならないようにすることです。”0時の位置からきちんとスプロケットをかんでいる”ことを確かめてから、3時の位置まで踏みましょう。慌ててやったりすると、0時〜2時あたりが抜けてしまいがちです」。

スプロケットをキャッチする

きちんと0時の位置からスプロケットをかんでいることを確認してから踏み始めることが注意点

なるほど。前回の記事で紹介した、”チェーンに張りを感じながらペダルを踏む”ということに当たるわけだ。

「そうです。前回紹介した、チェーンでスプロケットを”キャッチ”する動きですね」。

なぜ最初はローラー台上でやるのか? 実走で行った方が効果が高そうに思えるのだが。

「外で走りながらやると、低速になるのでバイク自体を安定させることに神経を使ってしまい、今自分の脚がどこにあるのかをつかむことに集中できなくなりがちなんです。ですから、最初は安定するローラー台の上で集中して行うことが大切です。慣れてきたら、実走に移っていいでしょう」。

実走での0時-3時ペダリング

実走でもいいが、脚の位置を集中して意識できなくなりがちなので、まずはローラー台で感覚を正確につかめるようにしていこう

この練習法の実施タイミング、頻度はどうすればいいのか? また、脚の位置がどこにあるか感覚をつかめるようにするとは、具体的にどのくらいまでやればいいのだろうか?

「ローラー台でやるなら、ウォーミングアップの途中に1分程度行えばOKです。

実走の場合は、走り始めのときに、あるいはライド途中で動きの確認の意味でちょこちょこ取り入れるのがいいでしょう。

どのくらいの感覚がつかめるようになればいいのか、という目安についてですが、大雑把で構いませんので、最も脚が高い位置の0時、水平の3時、真下に来る6時の、3つの位置の感覚をつかめるようになれば上出来です」。

感覚をつかむべき位置

0時、3時、6時の位置の感覚をつかめることをまずは目指そう

ドリル② SFR

続いて、2つ目のドリルだ。

「2つ目は、ドリル①で感覚がつかめるようになってきたら取り組むべき練習法で、できるだけ脚をゆっくりと動かせるようにする練習です。やり方はシンプルで、できるだけ重いギヤを踏むだけです。SFRと呼ばれる方法ですね。

ポイントは、負荷に負けて力を込めて踏みつけてしまわないようにすることです。そうなると、スムーズな脚の動きができません。前回の記事で紹介したように、できるだけ高いところから低いところに向かってスムーズに脚を動かすようにしましょう。

これも、やはり実走でやると脚の動きに集中できなくなりがちなので、最初はローラー台で行うのがいいと思います。実走でやるなら、坂道で行うと回転数を落とせていいですね。

目安とする回転数は50rpm以下です」。

SFRのやり方

SFRのやり方

SFRというと、筋力的なトレーニングというイメージがあるが、これはそれとは違うのか?

「確かに筋力が鍛えられる側面もありますが、このドリルの目的はゆっくりとした動作で、ペダリングをうまくしていくことにあります」。

なるほど。ドリル①の動きを、左右の脚で連続的に行うための練習法ということか。

実施タイミングとやる量の目安は?

「ローラー台でやるなら、ウォーミングアップが終わった後のタイミングで、1分〜5分の間で行うのがいいですね。メニューの1つとして行うといいと思います。時間は負荷と相談です。実走で行う場合も基本は同じです」。

実走でやるとき、平地では行わない方がいいのだろうか?

「平地だと十分に回転数を落とせず、”体幹が入らない”ことが多いのですが、平地でやる場合のバリエーションとして片手離しの方法があります。

片方の手だけハンドルから離し、反対側の脇腹を押さえながらSFRをします。平地でも体幹をしっかりと意識しつつSFRを行える方法です」。

片手離しSFR

平地で行う際のSFRのバリエーション。片手を離して行う

 

いかがだっただろうか? 体力を鍛えるのではなく、”動作を鍛える”と言える練習法だと思う。一度ライドに出てしまうと何かとがむしゃらに走ってしまいがちだが、ちょっと落ち着いてみて、毎回これらのドリルをコツコツと取りいれてみるべきだろう。

さて、今回の記事で”体幹”というキーワードが出てきたが、次回の記事では引き続き福田さんをアドバイザーに迎え、自宅でコツコツできる体幹トレーニング方を紹介したい。お楽しみに!

<前回の記事>
ロードバイクでの良いペダリングとその獲得方法〜基礎知識編〜