グラベルトレンドの最先端が集結「The All Things Gravel Expo」レポート

オールシングスグラベルエキスポ

地平線にまで大平原が広がる米国カンザス州エンポリアはアンバウンドグラベル(旧:ダーティーカンザ)が開催されてこなければ、こんなにも名前を知られなかったとも言われる土地だ。

そんな牛の放牧がふさわしく、BBQの美味しい土地では、毎年グラベルトレンドの最先端が集まるエキスポが行われている。

レース前2日間でアンバウンドグラベルの前座としても行われる「The All Things Gravel Expo」に今年は総勢121ブランドが集結した。
イベントの様子や注目アイテムを、某タイヤメーカーマーケティング担当の筆者がご紹介しよう。

まずはアンバウンドグラベルのタイトルスポンサーであり、一番大きなブースを構えていたガーミンでは、発売となった新エッジシリーズをはじめ沢山のデバイスを展示しており熱心なユーザーがサイズ感の確認や使い方をスタッフに聞いている姿が印象的だった。
350マイルを走るXLクラスや200マイルクラスでは20時間以上の走行の可能性もあるため、長時間持つバッテリー性能や強力なGPS性能が必要となるのは間違いない。
(敬意を表し私も参加前にEDGE840solarを購入してしまったのは家族には内緒だ)

ガーミンブース ガーミンブース

また大規模なイベントなため、タイトルスポンサー以外にもシーラントではオレンジシール、タイヤではIRC、車両ではマツダ、というように各分野でオフィシャルスポンサーがあるのも特徴で、それぞれのブランドではアンバウンドグラベル公式を強く押し出している姿を会場やSNSで見ることができる。
沢山のブランドがあるのでぜひ公式HPをチェックしてみて欲しい。

バイクブランドでは気になったのが小規模のブランドとワールドワイドに展開する大規模なブランドのブースの熱気の差である。小規模バイクブランドの方が展示にも力を入れ積極的にユーザーと話をしていたよう感じた。おそらくこれは目的の違いがあると思う。
大規模なバイクブランドは選手のサポートと研究開発という側面が強かったようでレース当日は多くのスタッフ達が忙しくされていた。
小規模バイクブランドはアメリカブランドが中心で、ALLIED CYCLE WORKS、Bridge Bike、Mosaic Cycles、Alchemy Bikesといった日本でもエンスーな人なら知っているブランドから、(写真1枚目ALLIED CYCLE WORKS、2枚目Mosaic Cycles)

アライドサイクルワークス モザイクサイクル ブリッジバイク

OBED BIKES、OTSOといった中々知られていないようなブランドまで幅広く展開があり、グラベルファンなら心ときめくことは間違いない。(写真1枚目がOBED BIKES、2枚目がOTSO)

オービッドバイク オッツォ

アメリカつながりの変化球として往年の名選手、グレッグレモンの展開するLeMondも出展があった。こんなすっきりとした印象であるがライトまで内蔵したeグラベルバイクなのである。

レモンのeグラベルバイク

ワールドワイドの完成車ブランドは昨年の男子200マイルクラスの覇者Ivar Slikが駆るウィリエールを筆頭にスペシャライズド、トレック、キャニオン、スコット、BMC、ルック、ピナレロ、ビアンキなどお馴染みのブランドが顔を揃えた。
ブースの展示・対応はもちろんしているのだが、それよりも抱える選手のサポートに注力するブランドが多く、アンバウンドグラベルでの勝利の価値の高さを感じさせるのだった。
ラインナップとしてはやはりグラベル“レーシング”バイクが中心にあり、選手の特別カラーのバイクを準備している姿も散見した。

ウィリエール

ウィリエールブース

BMC

BMCブース

スコット

スコットブース

キャニオン

キャニオンブース

バイクブランド以外ではホイールやバッグ、ウェアはもちろん、特にタイヤや小物類のブースが盛り上がっていた。特にタイヤブランドは昨年が4社だったのが今年は8社と倍になっており、成長率でいうと一番伸びているカテゴリーとなっている。
この辺りからもアンバウンドグラベルの価値が上がっているのを感じさせるのだった。

インダストリーナイン ヘッド リベレートデザイン セラミックスピード シリカ シュワルベ

日本からはシマノ、パナレーサー、IRCが出展し、各社日本人スタッフが来て参加者達とコミュニケーションを取っていた。
多くの人が訪れており、グラベルの最先端で日本ブランドが支持されていることは大変誇らしく感じる。ここで得られた情報をもとにまた新しいプロダクトが生み出されたいくのだろう。

シマノ パナレーサー iRC

ブランドブース以外にも参加者を楽しませる試みとして有名ライダーが中心となる親睦ライド(シェイクハンドライド)やサイン会が公式イベントとして行われ、試走を入念に行わないといけないようなシリアスなレーサー以外が数日前から会場に入っても楽しめるようになっている。

シェイクハンドライドのスタート前

こちらはシマノ/スコット/パナレーサーのサポートを受けるISABEL KINGとのシェイクハンドライドのスタート前だが、参加者は100人以上いたとのこと、もはや下手なイベントより大規模だ。

EFのサイン会の準備

こちらはワールドツアーチームチームのEFエデュケーション・イージーポストに所属するLachlan Mortonのサイン会準備の様子、SNSでしか見たことがないような有名選手がその辺りにいたりする距離感の近さには驚かされた。

ブースやライドで遊ぶのに疲れても地元のビールやフードトラック、コーヒーブース、アイスクリームが並んでいるので安心だ、会場の雰囲気は明るく多くの近隣の人達も楽しみに来ている。
筆者は仕事中のため飲めなかったのだが振る舞われていた地元ビールは美味しかったとのことである。

オールシングスグラベルエキスポ アイスクリーム

自転車を知らない人でもふと立ち止まってしまいそうになるアメリカらしい(?)センスのある展示も多く飽きさせない。

デフィート イーストン トムソン

また会場の各所にバイクラックが置かれており、参加者や関係者のバイクがかけられているのだが、日本では見られないブランドや、独自のスタイルがありこういう所もリアルイベントの魅力である。

バイクラック バイクラック バイクラック

木曜日と金曜日という平日での開催となるが来場者は非常に多かったようだ。
日本ではグラベルブームはまだまだ始まったばかりだが、最先端ではこんなにも大きく強い盛り上がりがあるのだと再認識させられた2日間だった。

金曜日の17時にはエキスポは幕を閉じ、この地域特有の雷雨に駆られながら慌てて片付けが始まった。雨では冷め切らない熱気をスタートラインとなるコマーシャルストリートに残したままいよいよ本番のレースが始まるのである。