XCCを沢田時、XCEを松本佑太が勝利/MTBショート種目・全日本選手権2022

目次

MTBショート種目・全日本選手権2022

XCCを2連覇した沢田。表彰台では、これまで12年間走り続けたチームブリヂストンサイクリングへの感謝を述べた

11月5日〜6日、マウンテンバイクのショート系種目であるクロスカントリー・エリミネーター(XCE)とクロスカントリー・ショートトラック(XCC)の全日本選手権が、千葉県千葉市の千葉公園内にて行われた。

XCEのタイトルを松本佑太(FUKAYA RACING)と広瀬 由紀(Cyclone)が獲得。XCC男子エリートは沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が2連覇を果たした。

MTBショート種目・全日本選手権2022

XCC、序盤の様子。沢田時を先頭に平林安里、松本佑太と続く

 

都市型MTB種目の全日本が千葉市中心部の公園で開催

マウンテンバイクのXCEとXCCの全日本選手権が千葉駅に程近い千葉公園内の特設コースにて行われた。これら種目は距離も時間も短いサーキットレース。この大会のように街の公園でも開催できるアーバン型のMTBレースとして、世界的に人気が高まっている。

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2日間にわたり、レースは千葉市の千葉公園内で行われた。電車で散歩ついでにMTBレースを目にした人も多かったはず

 

両種目ともに全日本選手権の前に、小学生〜17歳までのライダーたちが出場できるレースが『PIST6 アーバンMTBフェスティバル』として選手権と同じコースとフォーマットで行われていた。

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MTBフェスとして行われたジュニアクラスのXCEレース。ここから未来のライダーが育つ

公園の中を縦横無尽にマウンテンバイクで走って競争するという、簡単そうで今時なかなかできない楽しさを、参加したジュニアたちは存分に味わっていた。ここから未来のエース選手も出ることだろう。

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コース内には上りのパンプが置かれ、リズムとペダリングをうまくすれば加速できる

 

XCE ー 着実に勝てるレース運びを重ねた松本が制覇

XCEは4人で走るトーナメント制の短いサーキットレース。予選は個人タイムトライアル、決勝は4人が同時スタートし上位2人が勝ち上がるのが基本ルールだ。

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XCEを勝利した松本佑太、最終ヒートまで丁寧に走り続けて勝利を掴んだ

コースは公園内を軽く上って軽く下る。乾いたコーナーは滑りやすく、上りストレートが脚を削ぎ、パンプやジャンプで縦のリズムも強いられる。

レースタイムは短く、予選タイムトライアルの走行タイムはトップは51秒強、最終位でも1分ほど。第1コーナーまでに先行するホールショットを取るとかなり有利となる。

女子のクラスはマスターズとして広瀬のみが参戦。エキシビジョンという形で周回を走り切っての結果となった。

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先行する相手を抜ける数少ないポイントが、ラインを選べるコーナーの立ち上がりだ

 

そして男子エリート。決勝に進んだ32人から、予選1位だった澤木 紀雄(acu-power Racing Team)が順調に勝ち進み、予選2位の松本がトーナメント表の反対側から勝ち進む。決勝は澤木と松本、遠藤 紘介(Sonic-Racing)、黒瀬 文也(NESTO FACTORY RACING)の4人となった。

最短の右レーンからスタートした松本がホールショット、第1コーナーから澤木、黒瀬、遠藤の順で追う。第2コーナーに入ろうとする2位の澤木に黒瀬が突っ込み2人とも減速した。

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フィニッシュへ向かう松本佑太、後ろから遠藤紘介が追うも届かない

 

その隙を遠藤が後ろから抜き去って2位に浮上。そのまま松本、遠藤、黒瀬の順でフィニッシュ。すべてをホールショットで1位通過という、言わばパーフェクトなレース運びで今年のXCEタイトルを勝ち取った。

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勝利の喜びを見せる松本悠太

 

「このコースでは 前を抜けるポイントは1つあるかないか、というぐらいでしたし、抜くとなると相当脚を使う。決勝まで4戦ある中で、脚を決勝にも取っておくとなると、ホールショットを取るのが上に進みやすく脚も残しやすかったです。

この大会は、立ち上げに少し関わらせてもらった思い入れのあるもの。今回は選手に集中させてもらい、勝てて本当に良かったなと」(松本)

 

XCC女子レースはキャンセル、男子マスターズは岡本紘幸が勝利

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XCC男子マスターズのスタート

 

オリンピック競技のXCOと比べると、短い距離のサーキットを周回するXCC。2回の予選を行いこのレースではそれぞれ10人が決勝進出、合計20人が1km前後のコースを10周、30分ほどかけて走る。

長いコースならストレートセクションや下りなど力の抜きどころがどこかしらにあるが、このショートサーキットではほとんど休むところがない。常に全力を出しながらも繊細なラインをトレースする。集中力が大きな勝負、XCOとはまた違った戦略、体力、精神力が必要となる。

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XCC男子マスターズを勝利した岡本紘幸。スタート後、数周で独走体制を作っての優勝だった

 

女子レースはキャンセルとなり、男子レースがスタート。エリートに先駆けて行われた男子マスターズクラスでは、結果優勝する岡本紘幸(NESTO FACTORY RACING)がレース中盤から独走。そのまま後方に20秒近くの大差をつけてフィニッシュし、マスターズのタイトルを獲得した。

一方で2位以下の戦いは激しく、4位までの3人の選手が激しくデットヒートを繰り返し、結果、古郡キヨシ(minzuuBike)が2位を獲得した。

 

闘志をぶつけ合った選手、XCC男子エリートはアツい展開に

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XCC男子エリート。先頭から平林安里、沢田時、北林力

 

男子エリートも、興奮するレースだった。レース直後のホールショット争いを制したのは昨年のレース覇者、沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、それに先週のレースから調子を上げている平林安里(TEAM SCOTT TERRA SYSTEM)が続く。この2人の圧倒的な先頭争いに、レース序盤で北林力(Athlete Farm SPECIALIZED)が合流。3人で先頭グループを作る。

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とにかく速く、目まぐるしく、そしてドキドキした

 

長くライバルを続ける平林と沢田がことわざどおりにしのぎを削る。ワンミスでぶっ飛んでしまいそうな細いラインの上を、さらに加速しながら走る。アスファルトで意識が抜けるとその瞬間に後ろからガンガンにスピードを上げて抜かれる。

前を走る平林を沢田が抜く、その次の周回では同じ上りで抜き返す。次の周回には北林が先頭を走っている。もう見ているだけで速い。何もかもがギリギリだ。力と力のぶつかり合いだった。チュンチュンである。今日は誰が一番強いんだ、そういう勝負だった。

 

7選手入り乱れての先行争い、北林と沢田の真っ向勝負にッ!

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途中先頭に出た高橋翔。後方から学生選手たちが追いつき全部で7人のパックに

 

前で放たれ続ける闘志に若さが呼応した。後ろに離れていた4人の集団、村上 功太郎(松山大学)、高本 亮太(立命館大学)、山口 創平(日本体育大学)、高橋 翔(Teens MAP)が確実にペースを上げてきた。学生4選手は、レース中盤の数周をかけ、やがて、届く。

集団は7人になる。この7人が順位を入れ替えながら走っている。高橋も沢田、平林、北林の先頭争いに加わり、それぞれが常に脚を掛け合い、全開で先頭を狙った。早口で状況を説明していたレースMCが突然「すごい。。」と言って絶句した。稀に見るアツいレースだった。

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劇的なスプリントで揺さぶりをかけるも失速した平林安里(右)と2番手から冷静に最後まで脚をもたせた沢田時

 

とその時、平林のペースが落ちた。しきりにリヤメカを見ているが、明らかに遅れていく。順位と落とす平林が結果、集団を伸ばしていった。そして残り2周、北林が仕掛けた! これに沢田がついていく!

ふたりは後続をチギってトップ争いへ。最終周回を前に北林を抜き去った沢田、ラスト1周の打鐘が鳴る。そのまま沢田が伸びた。北林は追いつけず、残り1/4周で沢田は独走モード。そしてXCC全日本2連覇、勝利のフィニッシュラインをくぐった。

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この後に北林力がアタックをかけ、それに沢田のみが反応できた

 

「途中からは自分達の周回もわからなかったんで、とにかく2位以内にいるってことだけ意識して。本当は最後までキープで行きたかったんですけど、(北林)リキに先に取られたんで。 もう最後、油断してるところを抜くしかなかったんで、そこで行きました」(沢田)

 

今注目の高校2年生選手たち

マウンテンバイクのこの新しい都市型2種目で全日本のタイトルを獲得したのは経験あるプロ選手たちだったが、この2種目で表彰台に2人の17歳選手が上った。

XCEで2位を獲得した遠藤は伸びの良いスプリントとコーナーでの巧みなライン取りを武器に、2位が多かったが決勝まで上がってきた。決勝でも、前を行く選手が詰まった隙に別ラインから見事なスプリントで抜き去り、やっぱり2位を獲得した。

その戦歴を紐解くと小学1年生の頃から勝利を重ねてきた、17歳にして表彰台の常連のJCF強化指定選手。まさに未来を担う選手である。

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スプリント力、野生的なライン選び、確かなスタイルでXCEの2位を獲得した遠藤紘介・高校2年

 

そしてXCCで3位に入り、途中は先頭にも絡む目覚ましい走りを見せた高橋。最後は沢田・北林の猛攻撃にも粘り続け、最後の振り落とし勝負で3位表彰台を獲得した。

前週のジャパンMTBカップでジュニア優勝、その前週のアジア選手権でもジュニア優勝という破竹の勢いを見せる、同じく17歳、高校2年生。これらの2選手が、この次世代型MTBレースのエリートクラスで表彰台に上ったというのがとても印象的だった。

またこの2人に加え、2022年フランス・レジェの世界選手権に出場した嶋崎亮我(FineNovaLAB)、古江昂太(TEAM BG8)らも同じ年齢で、高橋とはよく連んでいるそうだ。

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アジア選、UCIレースとここ1カ月で何度も表彰台に上った。XCCで3位を獲得した高橋翔・高校2年(写真右)

 

同じ年齢の選手たちが、一緒に遊びながら一気に全体レベルを上げていくのはこれまでよく見たMTBシーンの構図だ。

体力や経験ではなくセンスとスナップが必要な、都市型で画像映えするアーバン系種目。ここでジュニア世代が台頭しているのは、間違いなくいいことである。

MTBショート種目・全日本選手権2022

MTBは楽しみながら速くうまくなるし、速くうまくなるともっと楽しくなる自転車だ

 

第35回全日本自転車競技選手権大会 マウンテンバイク XCE/XCC リザルト

●XCE クロスカントリ・エリミネーター
2022年11月5日

MTBショート種目・全日本選手権2022

■男子エリート
1 松本 佑太(FUKAYA RACING)
2 遠藤 紘介(Sonic-Racing)
3 黒瀬 文也(NESTO FACTORY RACING)
4 澤木 紀雄(acu-power Racing Team)

 

 

MTBショート種目・全日本選手権2022

■女子エリート
1 広瀬 由紀(Cyclone)

 

 

MTBショート種目・全日本選手権2022

■男子マスター
1 岡本 紘幸(NESTO FACTORY RACING)
2 古郡 今日史(minzuuBike)
3 木村 響(B・B・Q Masters)
4 塩見 学(B・B・Q Masters)

 

●XCC クロスカントリ・ショートトラック
2022年11月6日
0.81km × 12Laps = 9.72km

MTBショート種目・全日本選手権2022

■男子エリート
1 沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)21:51.25
2 北林 力(Athlete Farm SPECIALIZED)21:54.80
3 高橋 翔(Teens MAP)21:57.22

 

 

MTBショート種目・全日本選手権2022

■男子マスター
1 岡本 紘幸(NESTO FACTORY RACING)20:54.14
2古郡 今日史(minzuuBike)21:55.25
3 片岡 誉(Team轍屋)21:58.02

フルリザルトはこちら
https://www.wsresult.com/Results/2022/20221106_02/