新城幸也がバーレーン ヴィクトリアスと契約更新 積み上げたもの、変わったこと

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2022新城契約更新

3年ぶりのジャパンカップ開催前日、新城幸也による単独の記者会見が行われた。そこではジャパンカップのために来日していたフランコ・ペリツォッティ監督も同席し、2023年新城がバーレーン ヴィクトリアスで引き続き走ることが発表された。記者会見の模様をレポート。

バーレーン ヴィクトリアスと積み重ねた信頼

2022新城契約更新記者会見

10月14日、バーレーン ヴィクトリアスのSNSから新城幸也と1年契約を延長したという発表があった。翌日から始まるジャパンカップ出場のために帰国した新城は、チームプレゼンテーション前に栃木県の宇都宮にて来季についての単独記者会見を開いた。

「また来季もバーレーン ヴィクトリアスで走ることになりました。チーム立ち上げ当初からこのチームに関わらせてもらって、ずっと信頼を得てここまで来たので、また1年このチームのために走ることうれしく思います」と新城は最初にコメントした。
契約に関しては、夏前からチームと話をして更新に至ったという。

2022新城契約更新ペリゾッティ監督

会見に同席したペリツォッティ監督

会見に同席したバーレーン ヴィクトリアスのフランコ・ペリツォッティ監督は、新城に関してこう評価する。
「彼はすごく経験がある選手で、特にステージレースの経験がとても豊富な選手です。監督からの指示がなくても今どうしなくてはいけないかをすごくわかってる選手で、いいポジションにいける、そういう選手。そういったところを評価しています」

新城自身も話すように、築き上げてきた「信頼」は大きい。2017年のバーレーン・メリダ立ち上げ当初から残り続けているメンバーはもうハインリッヒ・ハウスラーと新城の二人のみだという。
チームの選手だけでなくスタッフや関係するスポンサーなど、メンバーも変わればやり方も少しずつ変わってきたと新城は話す。しかし、急激な変化というのは逆になく、居心地という面では変わらないそうだ。

「今はベテランと若者がうまく交わりあってるというか、1人リーダーがチームにいて、ベテラン選手がいて、それプラス若い選手が大体レースに1人、2人出てくるので彼らは自分のチャンスをつかむこともできるんですよ。だからステージレースで若者が勝ったりする。ベテラン選手にも若い選手にもチャンスが巡ってくるいいチーム。いい方向に回ってるなと思います」

環境の変化がもたらしたもの

2022新城契約更新全日本チャンピオンカラーのメリダスクルトゥーラ

全日本チャンピオンカラーのバイクでジャパンカップを走る

また、新城は今年、フランスからアンドラ公国に拠点を移して初めてのシーズンとなった。この1年で変わったことについてこう話す。

「全部が変わりましたよね。住む場所が変わったことで、トレーニング環境も全然違いますし、もちろん気温も違います。今年日本もそうだったと思うんですけど、ヨーロッパも猛暑だったんですね。標高が4000mあるアンドラでさえ40℃になってたので。スペイン側に行くともう40℃を超える。でもその分、今年猛暑のヨーロッパの中でも標高の高い、僕は1000m付近に住んでいて、上は2400mまで上がれるので、そういう暑い時期でもアンドラでトレーニングできたので暑さにやられずに済みました。普通に家に帰ってくる方が暑いんです。上に行ってトレーニングすれば涼しい。
今まで1時間で山を登るっていう環境でもなかったし、そういう部分でもトレーニングの仕方も変わってきますよね。
また、新しい道で選手とすれ違わない日はない。アンドラにも100人近く選手が住んでいるんですよね。そういうところでもある意味モチベーションになります。今までは誰ともすれ違わないところで走っていたので(笑)。いろんな選手を見ると、あぁ頑張らなきゃなっていう気持ちにもなります。
住む場所を変えたのは、もう全てが手探りなところがあって、トレーニングコースも新しく人に聞いて行ったり、ロードバイクでグラベル走ったりもしましたし(笑)。(フランスにいたときは)いつも僕は山の練習するときは自分で車でピレネーまで行って練習してたんですけど、今はもう家出ればすぐ山の練習になるんで。今まで過去10年トレーニングしてきた場所とは全く違う。またちょっと脚質が変わってきたかなという感じはしますよね。
高い強度で1分~2分というよりは、もうちょっと強度が高い部分で1時間とか、上りを淡々と踏むっていうところでは、少しずつ自分の長所が伸ばせたかなとは思います」

ただし、グランツールで出てくるような長い上りで適応できるような能力、とはまた別だと続ける。

「最近、上りの速さがおかしいんです。皆さんテレビで見てると思うんですけど。僕もテレビ見ていて大変だなって思うんですよね(笑)。トップの人にはついていけないので、僕はもうその前の手助けをする登り口まで。
僕自身も謎なんですが、平坦の(パワーが)350Wと上りの350Wだと、上りの350Wの方がきついんですよね。普通、(上りの方が)楽なはずで平坦で350W出すほうが多分大変なんですけど。でもそれが僕の役割で、それをずっとレースでやっているので、やっぱそこが強くなっていったというところなんでしょうね。上りの強さは別です。全然強くなってないですね(笑)」

さらなる経験値の積み重ね

2022新城契約更新

2022年シーズンはグランツールへの出場とはならなかった新城だが、春にはチームメンバーの病気や故障等により、今までに出場経験がなかったクラシックレースへ立て続けに出走した。長い間、ヨーロッパの第一線に立ち続けて多くを見てきた新城だが、あえてこれから出たいレースはあるか聞くとこう答えた。

「まあグランツールは出たいですよね。ツールは2016年以来出ていないので、もう一度出たいなってもちろん思いますし、もうこの歳になってキャリアをあと何年できるかというのも正直あるんで。何に出たいというかは、もうとにかくいろんなレースに出たいですね。
今年は初めてパリ~ルーベに出ましたし、ベルギーのクラッシックほぼ全部。ツール・ド・フランドル以外はご縁があって(笑)。3回ぐらい飛行機キャンセルしてベルギーに残ってたんですけど、デイリークラシックは初めて走りましたし、そういう面でもいい経験になりました。ベルギーの3月、4月のクラシックは、僕が今まで経験したレースともう全然違っていて、それを経験した中で今思うのは、本当もう何でも、これに出たいというか、何でもレースに出たいですね。このチーム強いじゃないですか。成績出すし、やっぱりレースに行けば勝ってくれるし、走り甲斐というのがすごくあるんですよね。なので、何に出たいというか僕が出たレースでチームメイトが勝ってほしいっていうことが大きいですね」

2022新城契約更新チームプレゼンテーションにて

チームプレゼンテーションで全日本チャンピオンジャージを披露した新城

明日、10月16日はジャパンカップ本戦。シーズン終盤にUCIポイントを重ねるべく、例年以上にいいメンバーが顔をそろえた。
帰国したばかりの新城は、「絶賛時差ボケ中です」と笑いながらも全日本チャンピオンジャージを着て、日本のレースを走れることがうれしいと話した。狙うはチームの勝利、そして阿部良之以来の日本人優勝。
「阿部さんが勝ったときも全日本チャンピオンジャージを着ていたので……巡り合わせかもしれないですね」と新城は話す。
バーレーン ヴィクトリアスのメンバーの調子も良く、「コマはそろっているので」と自信を示した。