20万以下ロードバイク一気乗り!各モデルの比較&まとめ アサノ試乗します!その45

目次

浅野試乗します45

前回まで3回にわたって行ってきた20万円以下ロードバイク一気乗り。今回は総括として3台の比較や、現在20万円以下ロードバイクを購入する際に気をつけたいポイントについてライターアサノとサイクルスポーツ中島編集長が語る。

 

3台のバイクの細部を比較●細部の違いが個性につながる

今回比較したバイクは下記の3台。各バイクの詳細を比較することで個性の違いを明らかにする。
各バイクの詳細については下記リンクの個別のインプレ記事を参照のこと。
ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスク
ジャイアント・コンテンドAR4
キャニオン・エンデュレース6

 

●拡張性
泥よけやキャリヤを後付けしたい場合は重要

エントリーモデルのロードバイクには、キャリヤや泥よけを増設するためのねじ穴が設けられているモデルも少なくない。このグレードのバイクは通勤ライドなどに使われることも少なくないことの証左だろう。とくにキャリアを増設したい場合は、シートステーやフロントフォークに対応のねじ穴が用意されているものを選びたい。泥よけに関しては、ベルクロで簡単に付けられるものやシートポストに装着できるタイプもあるので、ダボ穴がなくてもそれで対応することも可能だ。

今回のバイクでは、ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスクには、フロントフォークとチェーンステーにねじ穴があり、前輪にフェンダーを取り付けたり、後ろにはキャリアも増設できそう。ジャイアント・コンテンドAR4はチェーンステー内側にフェンダーを増設するためのねじ穴が設けられていた。一方、キャニオン・エンデュレース6は、トップチューブ上面にトップチューブバッグ増設用のマウントを搭載していた。トップチューブバッグはマウントがなくてもベルクロで固定できるモノもあるが、安定感を重視するならユニバーサル規格のマウントにねじ止めできるタイプがよい。

 

ヴィアニローネ7のフロントフォーク

ヴィアニローネ7のフロントフォーク

コンテンドAR4のシートステー

コンテンドAR4のシートステー

エンデュレース6のトップチューブ

エンデュレース6のトップチューブ

 

●タイヤのクリアランス
太めのタイヤを装着できると、走れる場所のバリエーションが増える

対応する最大タイヤ幅は、キャニオン・エンデュレース6が700×35C、ジャイアント・コンテンドAR4は700×38C、ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスクは700×40C。ワイドなタイヤに対応する方がタイヤの選択肢が増えるほか、太めのタイヤの方がエアボリュームが多くなって乗り心地がよくなる傾向にある。また、太めのグラベルタイヤをはかせることができれば、軽いグラベルも安心して走れるため、走れるフィールドが広がるだろう。

装着できるタイヤ幅は、フロントフォークとのクリアランス、フレームのチェーンステーやシートチューブとのクリアランスに依存するので、バイク購入時点で決まってしまう。特にレースを志向するわけでなければ、太めのタイヤを装着できるかどうかを基準にするのもありだ。

 

エンデュレース6のフロントフォークのクリアランス

エンデュレース6のフロントフォークのクリアランス。3台全て700×32Cのタイヤを標準装備する

コンテンドAR4のフロントフォークのクリアランス

コンテンドAR4のフロントフォークのクリアランス

ヴィアニローネ7のフロントフォークのクリアランス

ヴィアニローネ7のフロントフォークのクリアランス

 

●ドライブトレイン
載せ替えをしてまで乗らないなら、最初からある程度いいものを選びたい

3台ともカセットスプロケットのトップは11T、ローは34T、チェーンリングは50/34Tなので、最大・最小のギヤ比は同じだ。ただし、コンポーネントの変速段数は3台とも異なる。キャニオン・エンデュレース6がリヤ10スピードのシマノ・ティアグラ、ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスクがリア9スピードのシマノ・ソラ、ジャイアント・コンテンドAR4がリア8スピードのシマノ・クラリスとなっている。

スプロケットの段数が多いほど1段変速したときの歯数差が少なく、ストレスなく走れる。変速段数を増やすとなるとコンポーネントの載せ替えが必要になり、それなりにコストがかかる。状況に応じてきめ細やかな変速を実現したいなら、変速段数は多いに越したことはない。

 

エンデュレース6のリヤドライブトレイン

エンデュレース6

ヴィアニローネ7のリヤドライブトレイン

ヴィアニローネ7

コンテンドAR4のリヤドライブトレイン

コンテンドAR4

 

●ブレーキ
ディスクブレーキはもはやスタンダード。油圧式の快適性は魅力

今回紹介した3モデルは、いずれもディスクブレーキを採用する。ただし、キャニオン・エンデュレース6のみが油圧式ディスクブレーキで、ほかの2モデルは機械式ディスクブレーキが標準装備される。

ディスクブレーキはリムブレーキと比べて雨天時にも安定した制動力を得られるというメリットがある。これは油圧式でも機械式でも共通だ。油圧式ディスクブレーキと機械式ディスクブレーキの差は、レバーの引きの軽さにある。油圧式ディスクブレーキは機械式より圧倒的にレバーの引きが軽いので、ロングライドの終盤や長い下りが続く場面でも安心して走れるというメリットがある。

機械式ディスクブレーキを油圧式にアップグレードする際は、キャリパーだけでなく、デュアルコントロールレバーも専用のものに交換し、機械式のケーブルを油圧式用のケーブルに変更する必要もあるので、かなりコストがかかる。予算が許すなら油圧式ディスクブレーキを標準装備するモデルをはじめから選びたい。

 

ヴィアニローネ7のリヤディスクブレーキ

ヴィアニローネ7のリヤディスクブレーキ

コンテンドAR4のフロントディスクブレーキ

コンテンドAR4のフロントディスクブレーキ

 

総括●コストの制約がある中、何に重点投資するか?

今回の企画を締めくくるにあたって、インプレから得た「初心者がバイクを選ぶ際に何を重視するとよいか?」についてライターアサノとサイクルスポーツ中島編集長が熱く語った。

 

ヴィアニローネ7に乗る中島編集長と浅野さん

中島編集長(左)、ライターアサノ(右)

 

浅野 今回3台のバイクを乗り比べましたが、同じ価格帯のバイクでも個性があって面白かったです。エントリーバイクは、ハイエンドバイクのように性能に妥協しないためならコストを際限なくかけられるわけではなく、まず完成車としての予算ありきで、それをどのように分配するかが個性につながってくるのかなと感じました。

 

中島 なるほど、キャニオン・エンデュレース6だったら油圧式ディスクブレーキやリヤ10スピードのコンポーネントにお金がかかっているし、ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスクとジャイアント・コンテンドAR4はチューブレスレディー対応ホイールにお金をかけているという感じですね。

 

浅野 おっしゃるとおりです。それがパッケージの状態での各バイクの個性にもつながっている部分もあるのかなと感じています。あとはお好みでアップグレードなりカスタムなりをして自分好みのバイクに仕上げていけば……。

 

中島 個人的にはエントリーモデルのコンポーネントやホイールを載せ替えて乗り続ける人って減っているように思うんですよね。最初に買ったバイクをアップグレードするのではなくて、ミドルグレード以上のバイクに乗り換える人が多いと思います。で、最初のバイクを通勤バイクとか日常の足にすると。

 

浅野 確かに、以前と比べてコンポーネントが高性能化して価格も高くなったので「20万円のバイクにさらに20万円ほどかけてシマノ・105のDI2&油圧式ディスクブレーキに載せ替えよう」とはなりにくそうですよね。「そこまでコストをかけるなら新しいバイクに乗りたい」と思うのも自然です。となると、エントリーモデルを買うときには、初期装備が重要で「そのバイクは何にコストをかけているか」と「自分だったらどの性能にお金をかけたいか」がマッチしているのがその人にとっていいバイクを選ぶポイントになりそうですね。中島さんだったら何を重視してバイクを選びますか?

 

中島 僕はブレーキかなぁ。可能であれば、最初から油圧式ディスクブレーキが付いているほうがいいと思います。レバーの引きの軽さと安定した制動力は、スポーツバイクビギナーほど恩恵を感じられるはずで、それがライドクオリティの高さとして感じやすいと思うんです。下りで長時間ブレーキを握らなきゃいけない場面とか、ロングライドの終盤で疲れて握力も落ちてきたときとか、油圧式ディスクブレーキの恩恵を感じられる場面は多いですよ。エントリーモデルは後々コンポーネントの載せ替えなどのアップグレードをしないことが多いと思われるので、はじめから油圧式ディスクブレーキを搭載しているモデルを選ぶのがいいと思います。

 

エンデュレース6に乗る中島編集長と浅野さん

 

浅野 ライドクオリティを上げるなら、僕はドライブトレインの多段化も結構重要かと。今回試乗した3台はいずれも前50/34T、リヤ11-34Tと、最大と最小のギヤ比は同じなんです。ただ、キャニオン・エンデュレース6はリヤ10スピード、ビアンキ・ヴィアニローネ7ディスクはリヤ9スピード、ジャイアント・コンテンドAR4はリヤ8スピードなので、ギヤ1段あたりの歯数の増減の仕方が違うんですね。10段あると1段あたりの歯数の変化も少ないですが、8段だと1段変速したときに歯数が大きく変わってしまいます。変速段数が少ないと「このギヤだと重いけど、その隣のギヤだと軽いから、ちょうど間の歯数がほしい!」という事態になりがちで、結構ストレスでした。

 

中島 わかります。でも、それは僕たちが11スピードとか12スピードのより多段化されたドライブトレインに慣れてしまっているからそう感じる部分もあるのかな、という気がします。ママチャリやシティーバイクから乗り換えるなら確実に変速段数は増えるでしょうから、初めてロードバイクに乗る人はそこはあまり気にしないのでは。一方、ブレーキは安全性にも関わる部分なので、そちらの方が重要性が高い気がします。

 

浅野 確かに、初めてスポーツバイクに乗ったときに「こんなにギヤがいっぱい付いているのか」と驚いたのを思い出しました。

 

中島 ですよね。

 

浅野 話は変わりますが、意外に感じたのが3台中2台がTLR(チューブレスレディ)対応のホイールを標準装備していたことです。チューブレスレディ対応ホイールは、クリンチャータイヤを組み合わせられますし、バルブやリムテープを対応品にすればチューブレス化もでき、使えるタイヤの選択肢が多いのがいいなと。

 

ヴィアニローネ7のホイール・タイヤ

ヴィアニローネ7のホイール・タイヤ

コンテンドAR4のホイール・タイヤ

コンテンドAR4のホイール・タイヤ

 

中島 エントリーグレードのバイクのコンポーネントやホイールのような大物を載せ替える人は少ない気がしますが、タイヤは交換サイクルの早い消耗品で価格もそれほど高くないのでアップグレードしたりカスタムしたりするのはありだと思います。タイヤの交換が走行性能に与える影響は、ホイールを変えるのに匹敵するぐらい大きいですしね。

 

浅野 今回乗った3台は、ロード用としては太い35mm幅クラスのタイヤもはきこなせるので、乗り味も大きく変えられます。タイヤを替えれば乗り味も大きく変わるでしょうから、“キャラ変”させて長く楽しめるとも言えそうですね。

 

中島 いろいろ意見が出てきたところで、そろそろまとめましょうか。エントリーモデルを選ぶ際は、価格や見た目も大事ですが、コンポーネントやホイールを大幅にアップグレードしないケースが多いというのを頭の片隅に入れながら、どういうパーツが装備されているかを見比べて選ぶと、いい買い物ができると思います。

 

浅野 エントリーモデルは価格帯なりの予算の中でどこにどのようにコストをかけるかが個性につながっています。自分が妥協したくないパーツにコストがかけられているバイクを選ぶとよさそうですね。

 

コンテンドAR4に乗る中島編集長と浅野さん