20万以下ロードバイク一気乗り!キャニオン-アサノ試乗します!その44

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中島編集長(左)、ライターアサノ(右)

さまざまなブランドの完成車を乗り比べ、パッケージングの分析や乗り味の評価を行う連載「アサノ試乗します!」。サイクルスポーツ中島丈博編集長とともに20万円以下のロードバイク3台を乗り比べる企画の最後の1台は、キャニオンのエントリーロード・エンデュレース6だ。

 

エンデュレース6

キャニオン・エンデュレース6

 

エンデュレース6のプレビュー

キャニオンのエンデュランスロード「エンデュレースシリーズ」は、カーボンフレーム採用モデルだけでなく、エントリーグレードとしてアルミフレーム採用モデルを用意する。今回紹介するエンデュレース6は、16万円台とキャニオンのロードバイクの中でも最も手の届きやすい価格を実現したエントリーモデルだ。

エントリーモデルでありながら、シマノの10スピードコンポーネント・ティアグラをメインコンポーネントとし、油圧式ディスクブレーキを標準装備するなど、他社の同クラスのバイクと比べてもグレードの高いコンポーネントを搭載。アルミフレームは溶接痕を丁寧に研磨し、一見するとカーボンバイクと見まごうほどで、エントリーモデルでありながら高級感のある1台に仕上がっている。

キャニオンのエアロロード「エアロード」や軽量オールラウンダーの「アルティメット」シリーズと比べ、トップチューブが短くヘッドチューブが長め、ホイールベースが長い、リラックスしたフォームで乗れて直進安定性に優れるジオメトリーを採用。スポーツバイクビギナーでも乗りやすいのも特徴だ。

 

エンデュレース6の細部をチェック

続いて、エンデュレース6のフレームやフォークなど車体の細部、装備されるパーツをチェックしよう。

 

エンデュレース6のフォークとタイヤ

フロントフォークのクリアランス

 

標準装備されるタイヤは700×32Cだが、最大700×35Cのタイヤを装着可能なクリアランスが確保されている。カーボンフレーム採用の上位モデルより太いタイヤが装着できるため(カーボンフレーム採用のCF SLXやCF SLシリーズは最大32mm幅のタイヤまで装着可能)、太めのオールロードタイヤに交換すれば、ちょっとしたグラベルライドにも対応できる。

 

エンデュレース6のトップチューブのストレージ台座

トップチューブのストレージ台座

 

トップチューブにはストレージをネジ止めできるボルト穴が用意される。ボルト穴の間隔はユニバーサル規格で、市販される多くのトップチューブボックスに対応。ロングライド向けにストレージを増設する際に、確実に設置できるのは魅力だ。

 

エンデュレース6のBBまわり

BBまわり

 

BB規格はBB86。通常はベアリングを圧入するタイプだが、このモデルにはBB内で左右のベアリングがねじ込まれるスレッドフィット採用のトーケンのBBが採用されており、音鳴りを低減する。また、各チューブの溶接痕が丁寧に研磨されていて、カーボンフレームと見まごうほどの洗練された美しい外観を実現している。

 

エンデュレース6のリヤドライブトレイン

リヤドライブトレイン

 

メインコンポーネントは、シマノのリヤ10スピードのロードバイクコンポーネント・ティアグラ。ディスクブレーキは油圧式で、ケーブル引きの機械式ディスクブレーキと比べて圧倒的にレバーの引きが軽い。エントリーグレードとしては他ブランドより1ランク上のコンポーネントが標準装備されているのは魅力だ。

 

エンデュレース6のホイール・タイヤ

ホイール・タイヤ

 

足まわりは、フルクラムのエントリークラスのホイール・レーシング900DBとシュワルベ・ワンの700×32C。ホイールは前後とも12mmスルーアクスル対応だが、クリンチャーのみでチューブレスには非対応。重量も前後ペアで2000g近くあるため、足まわりはアップグレードの余地がありそうだ。

 

Endurace 6

価格:16万9000円 ※配送/梱包料金、VAT(付加価値税)、関税は含まない
カラー:ステルス
素材:アルミ
サイズ:3XS、2XS、XS、S、M、L、XL、2XL
メインコンポーネント:シマノ・ティアグラ
ホイール:フルクラム・レーシング900DB

詳細(https://www.canyon.com/ja-jp/road-bikes/endurance-bikes/endurace/al/endurace-6/2732.html?dwvar_2732_pv_rahmenfarbe=BK%2FBK

 

エンデュレース6のジオメトリ図

エンデュレース6のジオメトリ表

ジオメトリ

 

アサノ&ナカジ編集長のインプレッション

ライターアサノとサイクルスポーツの中島編集長の2人でエンデュレース6をインプレッション。長所だけでなく、気になったポイントもホンネで語る。

 

中島編集長と浅野さん

中島編集長(左)、ライターアサノ(右)

 

メーカー直販だからこそできたこの価格でのこの装備

浅野 20万円以下で手に入るロードバイクインプレッション、最後の1台はキャニオンのエンデュレース6です。僕は個人的にキャニオンのグラベルバイクに乗っているのですが、キャニオンのバイクって同じようなパーツスペックのバイクを比較するとかなりお値打ちに手に入るし、同価格帯のバイクなら装備がワンランク上がると感じています。このバイクも、今回試乗した3台の中では最もグレードの高いコンポーネントが標準装備されていて、リヤ10スピード&油圧式ディスクブレーキが採用されていますね。

 

中島 完成車のパッケージで行くと、今回のバイクの中では頭ひとつ抜けている印象ですね。それでいて価格は16万9000円ですから、お値打ち感はかなりのものです。ただ、キャニオンはBtoCの直販ブランドなので、実際に購入するとさらに送料と消費税がかかります。総額では20万円ぐらいにはなるのかな。

 

浅野 総額20万円だと考えても、レバーの引きが軽くて安定した制動力が得られる油圧式ディスクブレーキが最初から付いてくるのは魅力的ですね。ロングライドの終盤とか、長い下りを走る時とか、やはり油圧式ディスクブレーキのレバーの引きの軽さは魅力ですし、個人的には初心者ほど油圧式ディスクブレーキの恩恵を感じやすいと思います。あとは、変速段数も多いに越したことはないので、8スピードよりは9スピード、9スピードよりは10スピードのほうがいいと思います。平地巡航しているときでも、風向きが変わったり勾配が微妙に変わったときに、やっぱりリアに10枚ギヤがあると、1段変速したときの歯数変化が少なくなるので、「変速前と変速後の間の歯数のギヤがほしい!」というイライラは少なくなりますね。長い上りならなおさらです。

 

中島 確かに、このクラスのバイクって、購入後にコンポーネントをアップグレードして乗り続けるかというとなかなか微妙なので、予算が許すならはじめからそこそこいいパーツが付いているほうがいいですね。ちょっと前までは最初に買うロードバイクとしてシマノの105を搭載する20万円以下の完成車というのがひとつの基準になっていましたが、今や20万円で105完成車は買えません。必然的にティアグラクラス以下のコンポーネントを搭載する完成車がターゲットになりますが、この価格でリヤ10スピード、油圧式ディスクブレーキ搭載の完成車が手に入るのは、BtoCの直販ブランドであるキャニオンの強みですね。

 

上りは軽快、快適性も良好。キャニオンらしいデザイン哲学もいい。

浅野さん

中島 走りの印象はどうでしたか? 個人的にはロードバイクらしい俊敏性よりは安定性が強く感じられるバイクだなという印象でしたが。

 

浅野 確かに直進安定性が高いという印象は受けました。コーナーでも安定感が勝っていて、若干挙動が安定志向すぎる気もしますが、スポーツバイク初心者だとこれぐらいの味付けの方が怖くないのかも。

 

中島 同じキャニオンのクライムバイク・アルティメイトやエアロロード・エアロードの同一サイズとジオメトリーを比較すると、エンデュレースはホイールベースが10mmほど長く、チェーンステーも5mm長いです。チェーンステーが長いのは、太めのタイヤに対応するためとも考えられますが、ホイールベースが長いから安定性が高いのでしょうね。ヘッドチューブも145mmと長めで、ハンドルが高めのアップライトなポジションにしてもコラムスペーサーをそれほど入れなくてもいいので、格好良くはできますね。

 

浅野 カッコ良さと言えば、個人的にはキャニオンのバイクのデザインってすごく好きなんです。キャニオン本社のデザイン担当者の話だと、キャニオンのフレームデザインが直線基調なのは、虚飾とか余分なものを排除するために点と点を直線的に結ぶからなのだと。それを聞いて、建築のシンプルモダンデザインに通じる機能美というか潔さがいいなと思いました。エンデュレースにもそのデザイン哲学が生きていて、エントリーモデルとは思えない上質な感じが漂っていますね。個人的にはこのカッコ良さだけで買ってもいいと思えるレベルです。

 

中島 ずいぶんほめますね(笑)。

 

浅野 もちろん見た目だけでなく、パッケージとしても魅力ですし、基本的な走行性能もよかったですよ。快適性も今回乗った3台の中ではジャイアントのコンテンドと同じぐらい高いと感じました。シートポストはオーソドックスな形なんですが、おそらくシートステーが縦方向に薄く、かつシートチューブとの接合部がトップチューブ付近の高いところに付いているため、リヤ三角の縦方向の剛性が抑えられていて、快適性につながっている気がしました。

 

オンライン購入のみというデメリットは? 初心者が乗ってもOK?

中島編集長

中島 そろそろまとめに入りましょう。キャニオンのバイクはオンラインでしか購入できませんが、オンラインで自転車を買うのっていろいろ不安があると思うんです。そのひとつに「適正サイズが分かりにくい」ということが挙げられると思うのですが、キャニオンに関してはフレームサイズ展開の豊富さでそれをカバーできているなと感じました。3XSから2XLまで8サイズあり、スペック表によると身長150cm台から200cm以上の人まで対応していますからね。しかも、フレームサイズに応じて、ハンドル幅やステムの長さ、クランク長も変えられています。

 

浅野 キャニオンのWEBサイトでは、すべてのバイクについて身長と股下のサイズを入力すると適正サイズのバイクを提案してくれるので、適正じゃないサイズの完成車を購入してしまうことはなさそうですね。ただ、完成車に付いているパーツのサイズはフレームサイズによって決まっているので、「クランクがちょっと長い」とか「ハンドル幅が広い」とか「ステムが短い」とかいろいろ不満は出てくるかもしれません。それが気になるようだったら、実店舗でフィッティングを受けてパーツを購入して交換してもらうのがいいと思いますが。

 

中島 このバイク、というか、キャニオンのバイクを初心者に勧めていいと思いますか? オンライン購入は安く購入できるというメリットがある一方、メンテナンスなどの面倒を見てもらえるお店を自分で探すか、メンテナンスを自分でするかしなければならないというデメリットもあります。特に初めてスポーツバイクに乗るような方だと、日ごろのメンテナンスの不安とか、ちょっと気になるところがあるときとか、気軽にお店に相談できた方がいいと思うんですよね。

 

浅野 メンテナンスしてくれるお店を近くで見付けられるか?というハードルは確かにあります。キャニオンのメンテナンスに対応する「キャニオン持ち込みメンテナンス対応ショップ」も2022年9月現在で全国に50店舗ありますし、「メンテナンスに対応してくれるショップを自分で探さなくてはいけない」というハードルは低くなりつつあると思います。もし近くにショップがなかったとしても、キャニオンジャパンのサービスセンターで有料でオーバーホールなどのメンテナンスに対応してもらえます。発送の手間やコストはかかりますが、それさえ割り切れるならどこに住んでいてもメンテナンス難民になることはないので、初心者が最初のバイクに選んでも大丈夫じゃないですかね。

問い合わせ先

キャニオン バイシクルズ ジャパン
https://www.canyon.com/ja-jp/