猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第10回

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第10回

青森合宿でカッコいいサイクリストについて教えを頂いたワンダーボーイはメガネとヘルメットを新調してきた

坂バカ部はいよいよ2022年の初戦を迎える事になった!
向かったのは熊本!絶景ヒルクライムで名高い阿蘇パノラマラインヒルクライムに出場するのだ。

しかも今回は何と2days!2日連続でレースに出られるなんて有難い話だが、年寄りの猪野は一晩でどれくらい回復するのか不安もある。でも、今年からコーチングサービスにお世話になっているので、是非結果につなげたいところだ。

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第10回

「少し体を絞って来ましたよ!」と空港に現れたワンダーボーイ。スタッフから焼売弁当を渡されると貪るように喰い始めた

 

早速現地に着くと皆で試走する事になった。
五郎監督を先頭に200wで走る。
しかし私は、お世話になっているNコーチから試走は130wぐらいでと言われていた。

今考えれば見習いの私は部員の皆様よりパワーが低いので、一人で試走するべきだった。
しかし久々に皆んなと走るヒルクライムの楽しさが勝ったのと、200wでも呼吸が一切乱れない仕上がりの良さについつい調子に乗ってしまったのだ。
冬の間こつこつトレーニングを積んできた。
今年こそは何とか努力が報われて欲しいものだ。

試走して分かったが今回はヒルクライムというよりロードレースだ。
前半は勾配が緩く途中にあるトンネルはほぼ平坦区間だ。

私は無理をしてでも前半は集団に付いて行きタイムを稼ぐ作戦をとる。
しかし、この作戦が私を地獄へと導く事になる。

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第10回

何処を走ってもパノラマな景色。阿蘇は何度走っても気持ちの良い場所だ

 

それにしても阿蘇の山は遮るものがなく絶景の連続。
まるで海外のレースを走っているかのようだ。

絶景に見惚れているとゴールが近づいてきた。
私はコーチから90秒だけVO2MAX(280ワット)を入れるように言われていたので、五郎監督に90秒だけ少し上げると告げペダルを踏んだ。

すると何やら妙な気配が背後にする。
青いレーパンと赤いレーパンがぴったりマークしているではないか!?
何故だ!!

90秒が終わり緩めると、2人とも雄叫びを上げて更に強度を上げて消え去っていった。
坂バカ部試走名物”無駄アタック”だ。
試走を終え五郎監督からこっぴどく怒られた事は言うまでもない。

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試走に向かう坂バカ部。奥にそびえる山を駆け上がる。今年は表彰台に上れるのだろうか

 

一夜明けレース本番!
このレースは珍しくクラス別ではなく一斉スタート!
少しだけでも速い集団に付いて行きたい。

戸丸は一番前に陣取っている。さすがワンダーボーイだ。
その少し後ろに階段王と五郎監督。
私はその少し後ろに陣取る。

小雨が降るなかレーススタート!
いきなり300w越えの高強度だ!
それでも無理して付いて行く。
何故なら集団後方は全く無風で信じられないくらい楽だ。

しかし上りが始まるとグンッと360wまで上がる。
しかしすぐに勾配が緩み平坦になると200wまで下がる。
まるで20秒のタバタ式インターバルをやっているようだ。
7分ぐらいインターバルを繰り返しただろうか?
これ以上は危険だとペダルを緩め離脱する。

すると様子がおかしい…視野が狭くなり脚に激痛が走る。
オールアウトだ!7分のオーバーワークで私の体内の酸素はすっからかんになってしまっていた。
そして見事に腰痛も再発だ!

一度失うと取り戻すには時間がかかる。
何とか絞り出すようにペダルを回しながら回復を待つがパワーは170wまで下がっている。
徐々に踏める様になり215wまで回復した頃にトンネルが現れた。

ここは平坦だ!平坦といえば集団だ!
前に5人くらい見える。死に物狂いで回して小集団に追いつくが、猛烈に苦しい。

暗闇のトンネルを何とか小集団に付いて行く。
トンネル抜けると、そこは雪国ではなく激坂だった。
その頃にようやく視力が戻り、脚も回復し230wで踏めるようになってきた。
付いて行くのに必死だった小集団からラクに抜け出す。

あぁ気持ち良い!これが本来のヒルクライムだ。
後ろを見ると1人だけ付いてきている。
向かい風が強いのでローテを促すが、もう脚が無いと拒否される。

一段ギヤを上げて引き離す!
残り500mに差し掛かる。
前にいる一人を捉えたいが彼もスプリントを始めた。
どうやら最後はスプリント勝負がこのレースの通例のようだ。

私もスプリントを開始!必死にもがいていると後ろから猛烈な勢いで差し込まれた!
先ほど脚が無いと拒否られた選手だ。
三味線だ!
私は俳優なのに彼の演技が見抜けなかった!

しかしクラスは別なので順位には関係ない。
そしてスプリントというのは、やはり楽しいものだ。

レースが終わった時点で暫定7位。
6位入賞まであと一人。
オールアウトしてしまったがそこそこの結果となった。

下山してリザルトを見ると9位まで下がっていた。
なぜ下がったか気になるところだが、順位よりも何よりもパワーのアベレージが昨年より高かった事が救いだ。
冬の間に積み重ねたSSTが無駄ではなかった。
数年ぶりに努力が少しだけ報われたのだ。

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第10回

お昼休憩の時もカッコいいサイクリストについての指導は終わらない

 

2日目のレースは朝6時30分スタート!
少しでも回復したいため、夜10時には就寝したのであった。

しかし夜中に階段王の部屋からするガタゴトという音で起こされる。
どうやらレース前のアップ開始したようだ!
早過ぎる!アップが早過ぎるぜ階段王!

仕方なく起きて外を見ると土砂降りの雨。
波乱のレースが待ち受けるのであった。

猪野 学 公式Twitter