マウンテンバイク バームのコーナリング【MTBはじめよう! Vol.9】

目次

マウンテンバイク バームのコーナリング

特別協力:スペシャライズド・ジャパン 撮影場所協力:フォレストバイク

MTB(マウンテンバイク)トレイルライドの基礎から学べるシリーズの9回目。今回はMTBの醍醐味の一つと言える、バームのコーナリング法について特集しよう。

 

動画で見たい人はこちら

 

基本フォームは同じだがライン取りの要素が絡む

今回も教えてもらうのはプロMTBライダー/インストラクターの板垣奏男さんだ。

板垣奏男(いたがき かなお)さん

板垣奏男(いたがき かなお)さん。東京サイクルデザイン専門学校を卒業後に本場カナダへ渡り、高度なライディングスキルからトレイルビルディングに至るまでを習得。現在はプロライダー/インストラクターとして活躍している。Instagram:kanao_i_into_the_ride  YouTube:kanao itagaki

 

「バームというのは、コーナリングがしやすいように補佐をしてくれる、なめらかな傾斜(バンク)をつけた部分を言います」。

コーナーに設けられるバーム

コーナーに設けられるバーム

 

「以前の『マウンテンバイク コーナリングの基本』の記事で教えたのは、平地で練習するコーナリングの基本動作でした。これはあらゆるコーナーで通用する基本的な動きです。バームの場合は傾斜がついているので、この基本動作にライン取りと傾斜の度合いに合わせた動きの要素がプラスされてきます」と板垣さん。

詳しくレクチャーしてもらおう。

 

【基本1】外から入り大きな円を描くライン取り

バームのライン取りのポイント

バームのライン取りのポイント

 

「バームの場合は傾斜がつけられているので、これをうまく曲がるためにはライン取りが重要になります。

ポイントは、外から入ってバームの円弧を大きく使うことです。ここで特に大切なのは、バームへ侵入する最初のラインです。ここでしっかりとバームの外側から入りましょう。

こうすることで大きな円弧で走れるので、コーナリングの基本フォームを100%使うことができ、安定して曲がることができるのです」。

悪いバームのライン取り

悪いバームのライン取り

 

「よくやってしまいがちな悪い例は、バームに侵入するときに内側から入ってしまうことです。こうすると、コーナーの切れ角が鋭くなってしまい、バームの後半で曲がりきれずにハンドルを切るような動作が入ってスムーズに曲がれなくなります。スピードが上がっているときは、最悪バームを曲がりきれずに外へ飛び出てしまう可能性もあります。

最初は怖いかもしれませんが、とにかくバームに外から入って大きな円を描くよう、繰り返し練習してみましょう」。

 

【基本2】 “自転車の上に立つ”フォーム

バームのコーナリングで“自転車の上に立つ”フォーム

バームのコーナリングで“自転車の上に立つ”フォーム

 

「次にフォームです。基本は『マウンテンバイク コーナリングの基本』の記事で教えたとおり、①外足荷重にする、②自転車を内側に倒す、③自転車は内側に倒すが体の軸は一緒に倒れず地面に対してできるだけまっすぐを保つ、④曲がりたい方向へ目線と胴体を向ける、です」。

バームのコーナリングでよくある悪い例

バームのコーナリングでよくある悪い例

 

「これがバームになると傾斜がついてくるので、③が難しくなってきます。よくある悪い例としては、自転車と一緒に体もバームの内側に傾いてしまうことです。こうなるともし転倒したときにダメージが大きくなりますし、コーナリング中に何かイレギュラーなこと、例えばタイヤが滑って転びかけたときにバイクの傾きを戻すなどの対処が難しくなってしまいます。

ですから、バームで傾斜がついている中でバイクを内側に倒し込んでいても、“バイクの上にしっかりと立つ”フォームを維持することが大切です。こうすれば“自転車ではなく乗り手が軸になる”ので、さまざまなことに対処しやすいのです。

三脚を立てたり誰かにスマホで動画を撮ってもらって、自分の姿を確認してみると上達が速いです」。

 

【基本3】ペダルを80〜100%上げ下げして外足荷重

外足を100%下げたフォーム

外足を100%下げたフォーム(右コーナーを例に)。なお、写真ライダーの板垣さんは右足が前に出るタイプだ

外足を80%下げたフォーム

外足を80%下げたフォーム(右コーナーを例に)

 

「最後のポイントはペダルの位置です。

上級者がバームをコーナリングするとき、まるでペダルが左右の足で地面に対して平行になっていように見えるときがあります。実際、バームでは左右で足を地面に対して平行にして走りましょう、と教える人もいるようです。

しかし、やはり大切なのは外足荷重です。ただし、勾配やバームの傾斜に応じてペダルの上下位置を微調整するとスムーズに走れます。それが人によっては地面に対して平行に見えることがあるわけです。

どちらか片方のペダルを完全に真下へ降ろした状態が100%だとすると(バームのない平地のフラットコーナーやきついバームで使うことが多い)、傾斜や勾配に応じて80%までペダルを上げてOKです。逆のコーナーであればそれを反対側の足に適応します。すると、ペダルを80〜100%の範囲で上げ下げして外足荷重していることになります。

ペダルを下げ気味にするか、上げ気味にするかは、バームの状況とご自身のやりやすさなどの感覚で調整してみてください。

なおこのときに注意なのは、例えば右コーナーから左コーナーに連続する場面で、右足と左足で前に来る側を切り替えないようにすることです。そうすると地面のコブなどの障害物にペダルが当たって転倒の原因となります。ですので、左右どちらかの足を常に前に出して固定し、切り替えないようにしてください。

なお、この前に出す方の足を右足にするのか左足にするのかは、自分の得意と感じる方でOKで、ずっとそれをどんな場面でも変えないでください。ひたすら得意な方の足を前に出していれば良いです。これがあなたの、いわばMTBに乗るうえでの利き足となります」。

 

【注意】自転車を傾ければ傾けるほど良いわけじゃない

バームコーナリング中の自転車の傾き具合

バームコーナリング中の、路面に対する自転車の傾き具合

 

「最後に一つ注意点があります。バームでコーナリングすると、ものすごく自転車が内側に倒れているように見えます。ただ、これはバームによって傾斜がついているためで、実際にバームの路面に対してタイヤが極端に内側に倒れて当たっているわけではないのです。

上の写真だと、バームの路面に対してタイヤはほぼ垂直に当たっています。当然ながら、この状態だとタイヤのグリップを大きく発揮することができます」。

自転車を傾けられる最大の角度

自転車を傾けられる最大の角度(写真は30°ほど)

 

「平地でバイクを傾けてコーナリングしてみると分かりますが、現実的に自転車を傾けられるのは路面に対して最大で斜め45°くらいです。これは、タイヤのノブ(ボコッとしたブロックパターンがついている部分のこと)が配置されているのがこのくらいの角度までだからです。それ以上倒すとグリップを失って転倒しますよね。

ですので、バームをコーナリングするとき、自転車を内側へ倒せれば倒せるほど偉いというか、良いわけではありません。バームの傾斜に応じて自転車の倒し具合も調整してください。理想は、バームの路面に対してタイヤが垂直に当たっている角度〜タイヤのサイドノブが配されている部分までの角度です。この範囲だとタイヤのグリップを最大限に発揮することができます。

これが感覚として分からなくなったら、また平地でコーナリングする練習に戻ってみてください。どのくらいまで自転車を傾けられるのか、タイヤのグリップはどのくらいの角度まで持つのかの感覚を養うことができます」。

次回トレイルに行ったとき、早速実践してみよう!