カンパニョーロ・ボーラWTO33DB–アサノ試乗します!番外編

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カンパニョーロ・ボーラWTO33DB (35万2000円・シマノ、35万900円・カンパ)

カンパニョーロ・ボーラWTO33DB (35万2000円・シマノ、35万900円・カンパ)

さまざまなバイクを乗り比べ、その特徴や性能、パッケージングから、どのようなサイクリストに向くかまでチェックしていく本連載。今回は番外編としてカンパニョーロのディスクブレーキ用ホイール「ゾンダDB」「シャマルカーボン」「ボーラWTO33DB」を乗り比べる。第3弾はカンパニョーロレー新ホイールの最高峰・ボーラWTOシリーズからボーラWTO33DBをチェックする。

 

ボーラWTO33DBの細部をチェック!

ボーラWTOシリーズは、1994年に登場したボーラシリーズの最新バージョン。カルトベアリング採用のウルトラシリーズとUSBベアリング仕様があり、それぞれリムハイト33mm、45mm、60mmの3モデルをラインナップする。

風洞実験を経てリム形状やスポーク形状を最適化し、空力性能に磨きをかけているのが特徴だ。またクリンチャーとチューブレスの両方式に対応する2ウェイフィットのみとなったものの、前後ペア1450gと軽量に仕上がっているのもトピックだ。

今回テストするボーラWTO33DBは、前後ペアでスポーク組みはカンパニョーロの象徴とも言えるG3パターンで本数は前後とも24本。

リムハイト・スポーク組み

リムハイト・スポーク組み

リムハイトは前後33mm、リム外幅はいずれも26mm。スポーク組みは、前後輪ともにG3 パターンの24本。前輪は左側のブレーキ側から16本、ドライブ側から8本、後輪は左側のブレーキ側から8本、ドライブ側から16本という組み方になっている。フロントのブレーキ側、リアのドライブ側を強化する目的なのは、前回までに紹介したゾンダやシャマルカーボンと同様だ。

ハブ・フリーボディ側

ハブ・フリーボディ側

ハブボディは駆動伝達効率を高めるアルミ製を採用。風洞実験を経て空力性能を追求した形になっているのが特徴だ。フリーボディは他のモデル同様、シマノのほか、カンパニョーロ、XDRが選べる。ハブフランジは後輪はドライブ側、前輪はブレーキ側の径を大きくしているのも他のモデルと同様だ。

ハブ・ブレーキローター側

ハブ・ブレーキローター側

ディスクブレーキローターの取り付け方式は、ロックリングで固定するAFS仕様のみ。ロックリングは外周に溝がある外セレーションタイプで、BB用のツールを使って着脱する。
後輪のブレーキローター側と前輪の非ブレーキローター側のハブフランジは、ドライブ側と比べて小さく、スポーク数も半分になっている。これもシャマルカーボンなどと同じ。

ベアリングはUSBセラミックボールベアリングで、理想的な玉当たりを出しやすく整備も容易なカップアンドコーン式。マイクロ・セッティング・テクノロジーを採用した調整ロックにより、遊びの発生もしっかり抑える。より回転性能に優れた最上級のセラミックベアリング・CULTへのアップグレードも可能だ。

スポーク形状&ニップル

スポーク形状&ニップル

スポークは空力性能を追求したエアロスポークで、すべてストレートプルタイプ。ニップルはアルミ製のブラック・アノダイズド・セルフ・ロック・ニップルを採用し、リムの外周部に配置。スポークテンションが緩みにくく、メンテナンス性も高い。ちなみに最上位モデルのボーラWTOウルトラシリーズでは、ニップルはリムに内蔵され、さらに空力性能を高めている。

リム内幅

リム内幅

リム内幅は19mm。タイヤは700×25Cから700×28Cに最適化され、ディスクブレーキモデルは33mm幅のシクロクロスタイヤまで装着可能。ロードレースだけでなく、シクロクロスでの使用も想定している。

2ウェイフィット

2ウェイフィット

ボーラWTOシリーズはクリンチャーとチューブレスの両方式に対応する2ウェイフィットのみ。以前のボーラのようにチューブラー仕様が用意されないのは、チューブレスタイヤのほうが転がり抵抗が少ないというデータに基づいて速さを追求したため。付属のチューブレス用バルブとチューブレスタイヤを組み合わせることで、チューブレスホイールとして運用でき、インナーチューブを入れてクリンチャーホイールとしても使える。クリンチャーに加えチューブレスのタイヤも選択肢に入るため、使えるタイヤの種類が多いのも魅力だ。

 

インプレッション-リムハイトの低さを感じさせない空力性能の高さ

ボーラWTOシリーズは風洞実験で培われた空力性能が最大のセールスポイント——。これが試乗前のざっくりとしたイメージだった。だが、今回試乗するモデルはリムハイトはわずか33mm。空力性能と軽さを高い次元で両立する傾向にあるミドルハイトではなく、どちらかというと軽さに振ったローハイトというべきリムハイトだ。

一般的に、リムハイトが低いホイールの方がリムの重量は軽くなる傾向にあり、上りや加減速のあるコースを得意とする。また、横風の影響を受けにくいため強風の中でも扱いやすい。さらにリムハイトが低いことでリムの縦剛性が高くなりすぎず、乗り心地がよくなる傾向にもある。逆に空力性能はディープリムホイールに劣る傾向にあり、特にリム外周が軽いローハイトの軽量ホイールは高速巡航を苦手とするモデルも少なくない。果たしてこのモデルはどうなのだろうか?

試乗してみると、ローハイトリムのメリットはそのままに、高速巡航時に弱点をそれほど感じさせない点に感動を覚えた。今回試乗したホイールの中ではシャマルカーボンよりハイトが低いものの、高速域のスピードの伸び・持続性ともに今回テストしたホイールの中で最もよいと感じたのだ。これはおそらく風洞実験施設でリムやハブの形状を煮詰めた恩恵でもあるだろうし、今回テストしたホイールの中で唯一エアロスポークを採用していることも影響していると思われる。こうした一つひとつの要素が合わさってリムハイトから想像される以上の空力性能を獲得しているのだろう。

加減速を繰り返すような場面や上りでは、軽さがもたらす切れ味の鋭さが際立つ。特に上りでは上りの途中まで足を止めた状態でそこからペダルを踏み込んで加速すると、すっとリニアにスピードが乗る。もちろん平坦でアタックを想定した加速をしたときも切れ味鋭い走りを見せてくれる。レスポンスの良さはピカイチだ。

乗り心地はレーシングホイール然としてソリッドではあるが、決して剛性過多ではなく、レーシングホイールにしては快適性も高い部類だ。これはリムハイトが低めということも関係していそうだ。高剛性なレーシングホイールにありがちな、いわゆる“踏み負ける”という感覚はなく、ロングライドも守備範囲と言っていいだろう。

 

25mm幅のレーシングタイヤとのマッチングが良好

ボーラWTO33DBに採用されるリム内幅19mmの19Cリムは、新エトルト規格の700×25Cや28Cのタイヤの設計時の基準サイズになっている。つまり、このサイズのリムに新エトルト規格の700×25Cや28Cのタイヤを装着すると、実測幅がそれぞれ25mmや28mmとなり、設計者の意図した形状になるため、タイヤの性能を最大限に引き出すことができるということだ。

それもあって、今回テストした3つのモデルの中では、ピレリ・Pゼロレース700×26Cとのマッチングが一番しっくりきていると感じた。軽さ、コーナーでの軽快かつダイレクトなハンドリング、乗り心地の良さなど、あらゆる要素が高いレベルでそろっていて、タイヤの持ち味が最大限に引き出されていた。全く同じタイヤなのに、走った際の印象が異なるのは、タイヤとリムの相性によるものだろう。

メーカーではこのホイールには700×23Cのタイヤも28Cのタイヤもマッチするとうたってはいるが、23Cではリムに対してタイヤがやや細く、28Cではリムに対してタイヤがやや太く感じそうだ。おそらくレースで使うなら25Cか26Cのタイヤがこのホイールにはベストだろう。ロングライドで快適性を重視するなら28Cのタイヤもありかもしれないが、おそらくタイヤの重量やコーナーでのヨレなどのネガティブな要素が走りに悪い方に影響を与えるような気がする。

 

速さを求める乗り方で本領を発揮する武闘派ホイール

ボーラWTO33DBがどのようなサイクリストに向くか、というのはもはや愚問だろう。レースで使ってこそ本領を発揮するホイールであるのは間違いない。コースで言えば、伊豆CSCのようなきつい上りがあるところで本領を発揮しそうだ。加減速の多い平坦のクリテリウムでもレスポンスの良さが生かせそうだし、Mt.富士ヒルクライムのような比較的斜度がゆるく、平均時速が高めのヒルクライムにも良さそうだ。

ロングライドに向かないかというとそういうわけではない。今回はクリンチャータイヤを履かせて乗ったが、おそらくチューブレスタイヤを組み合わせると速さに直結する転がり抵抗の少なさはそのままに、空気圧次第では快適性を高めることも可能だろう。ただ、快適性を重視するなら、カンパニョーロにはより太いタイヤとの相性がよいシャマルカーボンという選択肢があるわけで、少なくともホイールの第一条件に「速さ」を求めるサイクリストでないとボーラWTOシリーズの高性能をもてあますのではないだろうか。タイムや順位を競わないロングライドで「速さ」というとピンとこないかもしれないが、例えば山岳グランフォンドで長時間快適に走ることよりも上りを軽快に走破することを重視する人向け、というイメージだ。

BORA WTO 33 DB 2WAY

価格:35万2000円
素材:カーボン(リム)、ステンレス(スポーク)、アルミニウム(ニップル)、アルミニウム(ハブ)
スポーク本数:24本
リム高さ:33mm
カタログ重量:1450g(前後)

 

ゾンダDB・シャマルカーボンDB・ボーラWTO33DBを比較

今回カンパニョーロのホイール3本を乗り比べたが、違いをまとめてみよう。

●リム素材やリムハイト、リム外幅

リム素材やリムハイト、リム外幅

リム素材やリムハイト、リム外幅

ボーラWTOはリムハイト33mm、外幅26.1mmのカーボンリム。シャマルカーボンはリムハイトが前35mm/後40mm、外幅28.1mmカーボンリム。ゾンダDBはリムハイトはニップル取り付け部が28mm、それ以外の切削されて低くなっているところが26mm、外幅22mmのアルミリムを採用する。ゾンダがハイトが低めで幅の狭めなリムを採用するのは、アルミリムゆえの重量増対策だと考えられる。

 

●リム内幅


ボーラWTOは内幅19mmのリムを採用し、23〜28mm幅のロードタイヤと最大33mm幅のシクロクロスタイヤに対応。シャマルカーボンは内幅21mmのリムを採用し、メーカーによると25mm幅のロードタイヤから最大50mmのグラベル用タイヤまで履きこなす。ゾンダDBは内幅17mmのリムを採用。指定タイヤ幅は25〜50mm幅までとなっている。リム内幅が広い方が太めのタイヤとの相性はいいので、この3本の中ではシャマルカーボンが一番ワイドなタイヤをはきこなせる。

●スポーク組み

リムハイト・スポーク組み

いずれもカンパニョーロホイールのアイコンとも言えるG3スポークパターンを採用。ボーラWTOとシャマルカーボンは前後輪ともG3パターン×8組の24本、ゾンダDBは前後輪ともG3パターン×7組の21本という違いがある。

●スポーク形状


ボーラWTOは空力性能を追求するためステンレス製のエアロスポークを採用。すべてのスポークがストレートプルタイプになっている。
シャマルカーボンはニップル側とハブフランジ側の径が太く、中央部が細い丸断面のダブルバテッドスポーク。材質はステンレス製。前輪のブレーキローター側(反ドライブ側)と後輪のドライブ側には丸首スポークを採用し、反対側はストレートプルタイプのスポークになっている。
ゾンダDBはニップル側とハブフランジ付近が2mm、中央部が1.6mmの丸断面のダブルバテッドスポーク。すべてストレートプルタイプになっている。シャマルカーボンのスポークと似ているが、それぞれ専用に設計されている。

●対応タイヤ

ボーラWTOとシャマルカーボンは、クリンチャーとチューブレスの両方式に対応する2ウェイフィット、ゾンダDBはクリンチャーのみだ。2ウェイフィット採用モデルは、クリンチャータイヤもチューブレスタイヤも使えるため、タイヤの選択肢が増えるのが魅力だ。