ライダーの安全性をインテグレーテッド キャノンデール 新型シナプスカーボン

目次

シナプスカーボン

車には事故を予防する安全装備が当たり前に搭載されるようになった。走行性能を追い求めてきたロードバイクの世界にも、その波が来るか。キャノンデールがその扉を開く。

 

シナプスカーボン

 

ロードバイクの進化は、軽さ、空力性能、快適性、これらのベクトルを進化の指標としてきた。新型シナプスカーボンは、そこに安全性という新たなベクトルを加えた意欲作だ。

これまでもトレックが被視認性の向上に着目したキャンペーンを展開していたし、アクセサリーメーカー各社は、ライダーを交通事故から守るためのライトやドライブレコーダーを開発してきた。それを最初から完成車スペックに組みこんだのだ。走行性能の進化する幅は、年々小さくなっていると、日々新製品に試乗していて感じているところだが、新しい性能として安全が加わるトレンドの先鞭を付けるモデルになるか。

その核となる機能が「スマートセンス」。ライトと後方レーダー、バッテリーをバイクにインテグレーテッドした。素直に面白いと思うし、レフティーフォークに代表されるように、キャノンデールの個性的で挑戦的なギミックを搭載してきた歴史からも、今回の機能で存在感を出せたといえる。

 

シナプスカーボンのフロントライト

フロントライトはレザイン製。最大350ルーメンの明るさを有する。点灯モードはアプリで自在に変更ができ、背面のボタンからも変更可能。もちろん防水IPX7。配光はワイドで、センター部分がやや明るめ

シナプスカーボンのテールライト

テールライトは、急激な減速を感知すると自動的にブレーキアラートモードになる。フロントと併せて暗い場所に来たり、車の接近を感知すると激しく明滅してライダーの存在をアピールする。テールライトの下に収まるのがバリアレーダー。ガーミンと共同開発したもの。後方から自車より速い車両が近づくと検知し、ハンドルに取り付けられたディスプレイ(IMPRESSION内の写真)に位置と台数が表示される

スマートセンス用バッテリー

ダウンチューブにはスマートセンス用のバッテリーが搭載される。フレーム形状も合わせてくぼみがデザインされている。バッテリーの容量は3100mAh。DI2と電源は共有できない

キャノンデールのホイールセンサー

2019年に発表された現行のスーパーシックスエボから本格的に採用された、キャノンデール独自のホイールセンサー。同社のアプリとペアリングすることでライドログを記録できる

 

フレーム単体としては、エンデュランスモデルにエアロと適度なワイヤ内装処理を施し、台座を要所に配してフェンダーやバッグ類の取付キャパシティも確保した、まさに今風のツーリング車である。

フレームは全グレード共通! 構成パーツに違いがある5グレード展開だ。紹介するのは上から4つ目の2RL。リヤレーダーを搭載したモデルのなかでは一番安いモデルだ。

 

キャノンデールアプリでセッティング

バイクのユーザー登録からメンテナンス時期まで把握できるアプリ。ダウンロードして、バイクのホイールセンサーと同期するだけでサイズ、パーツ、カラーが登録される。走行ログから消耗品交換時期も知らせてくれる。

 

キャノンデールアプリ
キャノンデールアプリ

 

スマートセンスのセッティングもアプリから可能。前後ライトの点灯パターンを4種類設定でき、さらに各モードをタップすれば、ライトの明るさも微調整できる。例えば点灯モードで明るさが違う2つのセッティングを用意することもできる。

 

キャノンデールアプリ
キャノンデールアプリ

 

ユーザービリティ重視の規格

DETAIL_01

シナプスカーボンのフォーク

フォークは、後端が切り落とされたカムテール形状を採用。前後スルーアクスルだが、前5mm、後6mmと必要な工具のサイズが違う。スマートトレーナーへの取付を考慮した仕様。輪行の時はやや不便に思う

 

DETAIL_02

シナプスカーボンのヘッドチューブ

ヘッドチューブには新しくなったキャノンデールのヘッドロゴ。見る角度によって色が違って見えるフレームカラーがキレイ。上ワンはオーバーサイズ、下ワンは1-1/4インチの上下異径

 

DETAIL_03

シナプスカーボンのレバー

48、51サイズのSTIレバーは操作面が広いタイプを採用。手の小さい人でもブレーキング操作がしやすくツーリングバイクとしてのパーツチョイスがいい

 

DETAIL_04

シナプスカーボンのBB

キャノンデールといえばBB30という印象を持つが、ユーザービリティを上げるためスレッドタイプを採用。タイヤは最大35mm幅まで対応する

 

DETAIL_05

シナプスカーボンのトップチューブ

写真のトップチューブほか、ダウンチューブの下側にも台座が付いているので、バッグやボトルケージで積載力を確保できる

 

DETAIL_06

シナプスカーボンのシートチューブ

エンデュランスロードでもエアロを忘れないシートチューブ形状。シートステーの位置を下げて快適性も両立しているという

 

DETAIL_07

シナプスカーボンのダウンチューブ

ワイヤ類はダウンチューブ上部から内装される。シフト、ブレーキに加えてスマートセンスの電源コードがある

 

-IMPRESSION-バリアレーダーの実力は?

シナプスカーボンに乗る中島さん

 

レーダーなどに頼らなくても車の気配は察知できる! と高をくくっていたのだが、いざバリアレーダーを使ってみると、その安心感に驚いた。140m後方まで検知可能で、都心のようなひっきりなしに車が走るところではあまり意味を感じない(常にアラート状態)が、郊外の車がまばらだが、道が空いているからこそ車がスピードを出しているような地域では非常に心強い。速度差が大きい車が近づいてくると、下写真のディスプレイのサインが赤く光って警告してくれるのもいい。また、ライトとレーダーを個別で買うとそれだけ充電するモノが増えるが、バッテリーが一つにまとまっているのはうれしい。標準装備のディスプレイ以外にも、ガーミンやワフーのサイクルコンピュータの機種に表示させることも可能だ。

 

シナプスカーボンのディスプレイ シナプスカーボンのディスプレイ

 

究極の初心者バイク

エンデュランスロードと聞いて走り出してみたが、その先入観よりもペダリングへの反応は機敏。とはいえ、レーサーよりも長めのホイールベースと深いBBドロップは、全体的にゆったりした走りを演出してくれる。フレーム自体が快適性をそこまで担っているようには感じなかったが、タイヤのキャパシティが大きいので、快適性がもっと欲しい、もしくは軽快さが欲しいという自分のニーズをタイヤに反映するのがいいセッティングだ。

RIDER 中島丈博

本誌編集長。自転車歴20年余りのサイクリスト。トライアスロン、TT、輪行でサイクリングなどさまざまなテンションで自転車を楽しんでいる。

 

試乗車スペック

シナプスカーボン2 RL
シマノ・R8000アルテグラ完成車価格/48万9500円

SPEC

フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
メインコンポ/シマノ・R8000アルテグラ
ホイール/フルクラム・ラピッドレッド900
タイヤ/ヴィットリア・ルビノプロ 700×30C
ハンドル/キャノンデール・2アルミ
ステム/キャノンデール・2アルミ
サドル/フィジーク・アリアンテデルタ
シートポスト/キャノンデール・3スマートセンスアルミ
サイズ/48、51、54
カラー/ビートルグリーン
試乗車重量/9.3kg(51サイズ、ペダルなし)

GEOMETRY

シナプスカーボンのジオメトリー

SIZE

シナプスカーボンのサイズ表

 

LINEUP

シナプスカーボン1 RLE

シナプスカーボン1 RLE

シマノ・R9200デュラエース完成車価格/115万5000円
サイズ/48、51、54
カラー/ステルスグレー

新型デュラエースと、カーボンホイールで武装したトップグレード。ハンドル、シートポストにSAVEテクノロジーを採用したパーツを使っていて快適性もトップ。

 

シナプスカーボンLTD RLE

シナプスカーボンLTD RLE

シマノ・GRX DI2完成車価格/79万2000円
サイズ/48、51、54
カラー/ガンメタルグリーン

ある程度のオフロードを含んだコースに繰り出したいならこれ。コンポはGRXで、WTBのアドベンチャー系タイヤを標準装備している。

 

シナプスカーボン2 RLE

シナプスカーボン2 RLE

シマノ・R8100アルテグラ完成車価格/71万5000円
サイズ:48、51、54
カラー:チャコールグレー、クイックサンド

コンポーネントに最新のリヤ12速アルテグラを搭載したモデル。変速も電動のDI2を使うので、そのバッテリーとスマートセンスのバッテリーの2個搭載。

 

シナプスカーボン3L

シナプスカーボン3 L

シマノ・105完成車価格/37万4000円
サイズ/ 48、51、54
カラー/パープルヘイズ、ジェットブラック

シナプスカーボンシリーズの末っ子。スマートセンスの機能のうちバリアレーダーは非搭載で、コンポーネントを105にして価格を抑えたモデル。