サーヴェロ新型R5登場! 軽量化と剛性の最適化で全方位的に性能アップ

目次

R5

フレーム重量実測695g、先代モデルと比べてより軽く

春のクラシックで、ユンボ・ヴィズマによって実戦投入されていた新R5がいよいよヴェールを脱いだ。最新R5の特徴は、軽量化の追求、剛性の最適化、空力性能の強化というキーワードに集約される。

軽量化では、フレームやフォーク単体の軽量化だけでなく、塗装やフレーム小物の軽量化などのトータルでの軽量化が図られている。

まず、フレーム重量は、チームカラー仕様の実測で695g(51サイズ)とリムブレーキ仕様の軽量モデル並みの軽さを実現している。2021年モデルのR5ディスクが800gだったので、100g以上の軽量化を実現していることになる。

さらにフロントフォークは、コラムカット前で335g。2021年モデルのR5ディスクはコラムカット後で344gなので、コラムカットした同じ状態で比べたら少なく見積もっても10g以上の軽量化を果たしていることになる。

R5のフォーク

さらにマット塗装で先代モデル比14%の軽量化、スルーアクスルのシャフトで12gの軽量化を達成したのを始め小物類でも軽量化を実現している。これらの積み重ねによって、特別な軽量パーツを使わなくても完成車重量7kgは余裕で切ることが可能で、パーツセレクト次第ではUCIの重量規定である6.8kgを大幅に下回ることも難しくないという。

 

R5のスルーアクスル

旧モデルのスルーアクスル(上)にたいして、新作(下)は、同じ12mmスルーアクスルながらシャフトの厚みが削られている

 

 

専用のコラムスペーサーは、ヘッドキャップのバリエーションと合わせて最大で52mmまで高さを調節可能

 

ヘッドまわりは剛性アップ、BBまわりの剛性も最適化

剛性アップも新R5を語る上で欠かせないキーワードだ。ひたすら軽くて固いフレームを追求するのではなく、剛性が必要なところは固く、そうでないところは適度な剛性にチューニングしているのが特徴だ。

例えばヘッドチューブは上下異径ベアリングを採用したテーパードコラムに対応するが、ベアリング径は先代モデルからサイズアップして上1-1/8→1-1/4インチ、下1-1/4→1-1/2インチとなっている。これにより制動時やコーナーリング中の挙動の安定がもたらされる。

R5のヘッドチューブ

さらにBBまわりはあえて剛性をマイルドにしている。これは「今までのモデルは剛性が高すぎて骨に響くようなダメージがあり、ステージレースの連戦が厳しいと感じられる」というプロライダーからのフィードバックに応えたものだという。「プロ用レース機材は剛性の高さが正義」という常識に一石を投じる剛性のチューニングは、アマチュアレーサーやホビーライダーにとっても歓迎すべき変化と言える。

R5

ディスクブレーキ&電動変速専用でケーブルフル内装化

これまでのR5はリムブレーキモデルとディスクブレーキモデルが用意され、いずれも電動変速と機械式変速兼用だったが、最新のR5はディスクブレーキ専用かつ電動変速専用となっているのも特徴だ。

さらに専用のハンドルとステムを採用し、ハンドルとステムに内装したケーブルをヘッドチューブ前方からフレームに内装する形をとることで、ケーブルのフル内装化も実現。ケーブルの露出を減らすことで空力性能も高めている。

R5

R5のハンドルとステムの下から

空力性能に関しては、ダウンチューブなどに従来から採用しているD字型断面のスクオーバル形状を取り入れ、軽さと剛性を損なわずに空力性能を高めている。

R5

R5らしさを残しつつ、細部を煮詰めて低重心化

ルックスは一見これまでのR5シリーズと大きく変わらないキープコンセプトなものに思われる。実際、スタックやリーチというハンドル位置やサドル位置などのポジションに影響する部分は変更せず、シートステーの接合位置もトップチューブ後端と同じ高さになっている。昨今、空気抵抗低減を狙って、シートステーの位置を低くするモデルもあるが、新型R5は比較的トラディショナルなシルエットを持つ。

 

R5

 

しかし、ジオメトリーにも微妙に手が入っている。ダウンチューブをより低い位置に来るようにしてタイヤとフレームの距離を近づけることで整流効果を高めて空力性能を強化しているという。また、フロントフォークのオフセット量も57mmから57.5mmに延長し、直進安定性を少し高めている。さらに従来モデルよりワイドな34mm幅のタイヤもはけるようにフレームやフォークのクリアランスも確保しているそうだ。

R5
R5

R5らしさは残しつつ、最新のロードバイクのトレンドに則ったアップデートが測られていることが分かる。

____________________

新R5は、完成車とフレームセット販売を行い、カラーバリエーションは3色用意される。
・チームカラー(フレームセット)
・ファイブブラック(シマノ・デュラエースDI2、スラム・レッドeタップAXS完成車)
・ライムブラック(シマノ・アルテグラDI2、スラム・フォースeタップAXS完成車)

R5

サーヴェロ・R5フレームセット(チームカラー)

R5

サーヴェロ・R5デュラエースDI2完成車(ファイブブラック)

R5

サーヴェロ・R5フォースeタップAXS完成車(ライムブラック)

 

サーヴェロ・R5ディスク価格

フレーム(専用ハンドル&ステム・シートポスト付属) 価格/69万3000円
シマノ・R9270デュラエースDI2完成車 価格/159万5000円
シマノ・R8170アルテグラDI2完成車 価格/118万8000円

スラム・レッドeタップAXS 完成車 価格/165万円
スラム・フォースeタップAXS完成車 価格/115万5000円

 

試乗「軽快さと安定感が同居。誰もが操りやすいレーシングバイク」

試乗前にバイクを持ち上げてみて、なんとなく思い描いていた重量感よりずいぶん軽いことに驚いた。試乗車はシマノの先代デュラエースR9100シリーズのDI2、ホイールやパーツ類にも飛び道具的な特別な軽量モデルを使っていないにもかかわらず、軽いのだ。間違いなく試乗車のスペックで6.8kg前後だろう。

実際に乗ってみると車重の軽さが効いていて、加速が小気味よい。しかし単に軽いことが影響しているだけでなく、ペダリングをしっかりと後輪の駆動力として伝えてくれることによるものだと感じる。BBまわりからリアトライアングルにかけての剛性チューニングが硬すぎず柔すぎず、とてもいい塩梅に仕上がっている印象だ。特にBBまわりはプロ選手の要望を受けてややマイルドに仕上げたというが、いわゆるガチガチな硬さでなく、踏み込んだときに芯を感じてその直後にほどよい反発を感じるようなしなやかさを伴う硬さになっていると感じた。

重量の軽さは上りでも効く。ダンシングで体重を乗せながら高トルクのペダリングをしても、シッティングで高めのケイデンスでペダリングしても小気味よく進む。とはいえ、これも軽量化だけによるものではない。ヘッドが大径化したことによって剛性感が上がり、ハンドルの押し引きの際に力が逃げず、ペダリングにうまく連動させられる印象だ。もちろんリアトライアングルの剛性バランスの良さも関わっている。

平地や下り、コーナーでは速度感が麻痺する印象を受けた。そんなに飛ばしているつもりはないのに、サイクルコンピューターの数値を見ると結構いいスピードで走っているのだ。軽量レーシングモデルにありがちな高速域で走っている時に路面のちょっとした段差や横風に過剰に反応することがないし、コーナーでも過敏な挙動とはならないから非常に乗りやすい。これはトレール量が若干増えて直進安定志向が少し強まったことも影響しているのかもしれない。

今回は上りも下りも含めてかなりしっかりと試乗することができた。この間、上りでは結構強度を上げて上ったり、平地でも何本かダッシュもしているのだが、いわゆる“踏み負ける”という感じにはならなかった。おそらく長距離レースやロングライドでも脚を温存しながら走れるのではないだろうか。

軽量なレーシングバイクでロードレースやヒルクライムなどレース全般に適性があるのはもちろんだが、意外にもロングライドも守備範囲という印象を受けた。

一方で気になったのは、ヘッドチューブが長く、サドル位置に対してハンドルを低くするポジションが出しにくいことだ。記事の執筆時点で詳しいジオメトリーが届いていないので分からないが、おそらく自分の今のセッティングをこのバイクで再現しようとすると、ステムを長くするだけでは無理なので、フレームサイズをひとつ小さくする必要がありそうだ。レースバイクなだけにその点だけは残念だ。(後ほど確認したところ試乗した54サイズでは、ヘッドチューブ長が125mmから137mmへと変更されていた)

とはいえ、走行性能と乗りやすさを非常に高いレベルで両立しており、現時点のレーシングロードでも屈指の完成度であることは間違いない。ポジションが出せるのであれば間違いなく“買い”の1台だ。

R5