キャノンデール・キャード13-進化したカーボンキラー-アサノ試乗します!その36

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自転車のフレームの素材として定番となったアルミフレームの中でも、キャノンデールのCAAD(キャード)シリーズは別格の存在。高性能を手が届きやすい価格で実現し、“カーボンキラー”の異名を持つほどだ。今回の「アサノ試乗します!」では、最新モデルのキャード13のシマノ・105油圧ディスクブレーキ搭載モデルをテスト。歴代キャードシリーズと比べて何が進化したのか、キャード10をプライベートで愛用するライターアサノがチェックする。

キャード13-キャノンデールの歴史を象徴するアルミフレームの最新モデル-

キャノンデール・キャード13ディスク105(26万4000円)/チームレプリカ

キャードシリーズは、2021年で創業50周年を迎えるキャノンデールの歴史を語る上で欠かせないアルミフレームロードだ。CAADとはCannondale Advanced Alminium Design(キャノンデール・アドバンスド・アルミニウム・デザイン)の頭文字をとったもの。1997年にはイタリアの強豪チーム・サエコに所属するスプリンター、マリオ・チポッリーニがジロ・デ・イタリアでステージ5勝を挙げる活躍をするなど、サイクリストの注目を集めることになった。

その後もS字に曲げ加工が施されたアワーグラスシートステーを採用して快適な乗り心地を実現したキャード4、ダミアーノ・クネゴによる2004年のジロ・デ・イタリアでのステージ4勝と個人総合優勝を支えたキャード8とモデルチェンジごとにバージョンアップを重ねていった。この過程で、2003年にはジルベルト・シモーニのジロ・デ・イタリア総合優勝をはじめ、世界選手権優勝も制するなど数々の勝利を記録。“アルミフレームの雄”というキャノンデールの地位を不動のものとした。

さらにエポックメイキングなモデルが、当時最軽量のアルミフレームとして登場したキャード10。価格が安く、軽さと剛性を高い次元で両立しており、並みのカーボンフレームを食うほどの完成度ということで“カーボンキラー”の異名を得た。その後スーパーシックスエボ第2世代のテクノロジーを受け継いだキャード12を経て誕生したのがキャード13だ。

キャード13の13は、単なるモデルナンバーではなく、アルミの元素記号を意味している。最新のオールラウンドレーシングロード・第3世代スーパーシックスエボのテクノロジーを継承し、ダウンチューブに翼断面形状の後端を切り落とした断面形状を採用して整流効果を高め、シートステーのシートチューブ側接合位置を低くすることで前面投影面積を減らすなど、空力面での進化を果たしているのが最大の特徴だ。

他にもケーブル類のフレーム内装を実現し、空力性能の追求と電動変速へのさらなる対応とを果たしたなか、ディスクブレーキ専用フレームも登場。ロードバイクシーンのトレンドに則ったアップグレードが果たされた。

ラインナップは、ディスクブレーキ仕様はスラム・ライバルAXS、シマノ・105、シマノ・ティアグラの各コンポを搭載するモデルを用意。リムブレーキ仕様はシマノ・アルテグラ、シマノ・105の各コンポーネントを搭載するモデルがある。今回紹介するのはEFチームカラーのフレームにシマノ・105を搭載したディスクブレーキ仕様のモデルだ。

キャード13の細部-ディスクブレーキ化とケーブル内装化に対応-

キャード13は、兄貴分に当たるカーボンフレームロード・スーパーシックスエボシリーズの第3世代のデザインを色濃く受け継いでいるのが特徴だ。一目見て分かるのがコンパクトなリア三角。シートステーはシートチューブ側の接合部をより低い位置にすることでシートポストやシートチューブをしなりやすくし、後輪側の突き上げを緩和して快適性を高めるねらいがある。

ダウンチューブやシートチューブには翼断面形状の後端を切り落としたような断面形状を採用することで、重量増を抑えながら空力性能を高めることに成功している。

また、ケーブルはダウンチューブからフレームに内装する方式を採用し、露出を少なくすることで空気抵抗の低減も実現している。

ハンドルバーとステムは、別体のオーソドックスなタイプ。カーボンフレームの兄貴分・スーパーシックスエボシリーズのようにケーブルが内装できるステム一体型の専用ハンドルは用意されず、フレームのヘッドチューブ前方にもケーブルルートが設けられないため、ハンドルまわりのケーブルが露出している。

ハンドルバーとステムは、別体のオーソドックスなタイプ。カーボンフレームの兄貴分・スーパーシックスエボシリーズのようにケーブルが内装できるステム一体型の専用ハンドルは用意されず、フレームのヘッドチューブ前方にもケーブルルートが設けられないため、ハンドルまわりのケーブルが露出している。

変速ケーブルやリアブレーキケーブルは、ダウンチューブのヘッドチューブ付近に設けられたケーブル取り込み口から内装される。電動変速コンポーネントを組み込む場合も、ここからケーブルを内装することになるので、スーパーシックスエボほどしっかりと内装されるわけではない。

変速ケーブルやリアブレーキケーブルは、ダウンチューブのヘッドチューブ付近に設けられたケーブル取り込み口から内装される。電動変速コンポーネントを組み込む場合も、ここからケーブルを内装することになる。

KNOT(ノット)27シートポストを採用。アルミ製で、後端がフラットなD字型の断面になっており、ダウンチューブやシートチューブと同様に空力性能の向上に貢献している。シートクランプはフレームに内蔵されており、トップチューブとダウンチューブの交点付近にボルトも隠されている。

KNOT(ノット)27シートポストを採用。アルミ製で、後端がフラットなD字型の断面になっており、ダウンチューブやシートチューブと同様に空力性能の向上に貢献している。シートクランプはフレームに内蔵されており、トップチューブとダウンチューブの交点付近にボルトも隠されている。

フロントフォークはフルカーボン製。ディスクブレーキ仕様のモデルでは、タイヤは最大30mm幅まで対応する。

フロントフォークはフルカーボン製。ディスクブレーキ仕様のモデルでは、タイヤは最大30mm幅まで対応する。

キャード13をインプレッション-総合力ではキャードシリーズ歴代ナンバーワン-

浅野真則:仕事でもプライベートでも自転車漬けの自転車ライター。ロードレースやヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、最近はTTに精力的に取り組んでいる。JBCFエリートツアーにも参戦中。海外のグランフォンドへの参加経験もある。ロングライドやポタリングも好き

キャードシリーズと言えば、キャノンデールのアルミフレームの代名詞。個人的に特に印象に残っているのは、初代カーボンキラーことキャード10だ。希代の軽量レーシングロードとして知られる初代スーパーシックスエボとほぼ同じジオメトリーを持ち、キャノンデールが長年培ってきたアルミフレームの製造技術と融合して当時最軽量と言われたアルミフレームロードで、10万円台前半というフレームセット価格に見合わないほど高い走行性能を誇り、一世を風靡したモデルだ。インプレして衝撃のあまりプライベートで購入し、もちろん今も愛用している。

今回テストするキャード13は、キャード10の2世代後のモデルになる。キャード10が初代スーパーシックスエボ、キャード12が2代目スーパーシックスエボと、それぞれ兄貴分に当たるカーボンロードと同じようなジオメトリーを採用しているが、キャード13も3代目スーパーシックスエボのフレームデザインをアルミフレームで再現したような形になっている。

キャード13とスーパーシックスエボを54サイズ同士で比較すると、シートチューブが4mm、スタンドオーバーハイトが2mm、ヘッドチューブ長とスタックが各1mmずつキャード13の方が長いぐらいの違いだ。しかし、キャード10などと比べると、ヘッドチューブは10mm以上、ホイールベースは30mmほど長くなっている。ハンドル位置は高くなり、車体の重心もやや高くなり、ホイールベースやヘッドアングルが寝ることによる直進安定志向の向上がどんな影響を及ぼしているのか気になった。

フレームに空力性能を高める形状を取り入れただけに、ある程度スピードに乗ってからさらに加速するようなケースでの伸びや、高速巡航性能が強化されているような印象を強く受けた。直進安定志向が高くなったジオメトリーは、高速域での安定感をもたらしてくれる。しかし、コーナーでは反応が鈍すぎるわけでもなく、かといって過敏すぎることもなく、ちょうどいい塩梅のステアリングフィールだ。コーナーでの安心感は、スルーアクスル化によるフレームとホイールの一体感が増したことも大きいと思われる。

重量はアルミフレームと考えれば十分軽い。上りもそつなくこなし、短めの上りなら重量も苦にならないレベル。標準装備のアルミリムのホイールからより軽量なカーボンホイールに履き替えれば、上りや加速時の切れ味もさらに増すはずだ。

快適性も高まっている。特にサドルに腰を据えた状態での後輪側の突き上げが軽減されていると感じた。これは、フレームのシートチューブ上端をトップチューブ上面とそれほど変わらない高さにまで下げ、シートクランプを内蔵することで、シートポストの出しろが増やしてしなりやすくしているからだろう。シートステーのシートチューブとの接合位置を下げ、シートチューブも適度にしなるようになっているのかもしれない。ディスクブレーキモデルは30mm幅のタイヤもはきこなすので、エアボリュームの多いタイヤも快適性向上をもたらす要因のひとつと言える。

泥よけを装着可能なダボ穴が設けられるなど、デイリーユースが想定されている点も進化したポイントと言えそうだ。

キャード13は、走行性能はもちろん、快適性や拡張性なども含めた総合力において、間違いなくキャードシリーズで最高レベルに達している。

とはいえ褒めてばかりでも能がないので、気になったところも正直に告白する。個人的には長くなったヘッドチューブのため、ハンドルを低くしたい場合に十分下げられないことが気になった。腕が長く、ハンドルの低いポジションが好みの自分の場合、特殊なステムを使わないとポジションが出せないと思われる。こうしたケースはまれかもしれないし、むしろハンドルが高いポジションで乗る場合はスペーサーを入れなくて済むのでルックスがスマートになる可能性もある。自分とは逆にこのことがメリットに感じられる人もいるはずだ。

これらを踏まえてどのようなサイクリストにお薦めか考えてみると、大前提としてロードバイクに速さを求める人であるのは間違いない。その上でレースだけでなく通勤や輪行などのさまざまな用途に使えるタフな1台がほしい人や、レース志向でなるべく機材にお金をかけたくないサイクリストにはピッタリと言えるだろう。

キャード13-スペック-

価格:26万4000円
素材:アルミ
サイズ:44、48、51、54、56、58、60
コンポーネント:シマノ・105

キャノンデール・キャード13ディスク105のジオメトリ

問い合わせ先

キャノンデール・ジャパン
https://www.cannondale.com/ja-jp