READY STEADY TOKYOトラック五輪テストイベント 代表選手たちが仕上がりを披露

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READY STEADY TOKYOトラック五輪テストイベント

4月25日(日)、東京オリンピックのトラック競技が開催される伊豆ベロドロームにて東京オリンピックに向けたテストイベント、READY STEADY TOKYOが無観客で行われた。コロナの影響により、国内選手のみで種目を絞って開催された1日の様子を写真を中心にレポートする。

 

行われていなかったトラック競技のプレ五輪

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観客席が増えた伊豆ベロドロームだが、本番の東京五輪でそれが使われるかどうかは定かではない

本来であれば、昨年ロードレースやMTBなどで行われたように各国から選手たちが訪れ、本番と同じ静岡県の伊豆ベロドロームで東京五輪に向けたトラック競技のプレ大会も行われるはずであったが、新型コロナウイルスの拡大により延期。現在もなお感染拡大が予断を許さない状況ではあるが、感染防止対策を講じられつつ、昨年予定されていたテストイベントと同時期の4月25日に国内選手のみで開催された。

ナショナルチームに所属するほとんどの選手たちが参加し、中距離女子の種目と短距離の女子チームスプリントを除く種目が1日の中に全てプログラムされ、選手たちは走り通しの1日となった。

トラック競技ナショナルチームの選手たちが公開でレースを行うのは、昨年11月に群馬県前橋市のグリーンドーム前橋で行われた全日本選手権ぶり。東京五輪まで100日を切った代表選手たちの仕上がり具合にも注目が集まった。

 

接戦の短距離種目

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一番最初にスプリント予選の200mTTのスタートを切った新田

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200mTTの最終走者の深谷が日本記録に迫るタイムを出す

男子スプリントの予選から始まり、9.568秒と日本記録に迫る200mTTのタイム(日本記録は昨年世界選手権で新田祐大が出した9.562秒)を出したのは、昨年末の全日本トラックでも勝利を挙げている深谷知広。

東京五輪でケイリンとスプリントに出場が内定している脇本雄太は9.636秒と2位、同じく代表内定の新田祐大も9.643秒で3位とそれぞれ順調に駒を進めた。

 

 

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スプリントの予選の200mTTで日本記録をマークした小林

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佐藤水菜も集中した表情を見せる

女子スプリントの予選でも、代表内定の小林優香が自身が持つ日本記録(昨年の世界選での10.712秒)を上塗りし、10.612秒という記録をマーク。

2位に太田りゆの10.800秒、3位に梅川風子が10.931秒と続いた。

 

 

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直近での世界大会ではケイリンにしか出場していなかった脇本がスプリントを走る

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深谷は駆け引きの余裕を伺わせるスプリント対戦を見せた

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4分の1決勝では東京五輪代表の新田と脇本が対戦

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新田vs,脇本のスプリント対決は、新田が勝利

その後、男子は勝ち上がった選手たちが一発勝負の4分の1決勝戦、さらに、2勝を先に挙げた方が決勝へと進む2分の1決勝戦を行っていった。決勝に残ったのは、深谷と新田だった。

 

 

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スプリント決勝。揺さぶりをかける深谷に対して冷静に対処していた新田

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警戒する新田の後ろから深谷が虎視淡々と勝機を探る

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深谷の動きを見逃さぬように振り返る新田

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まるで走路を抉るかのような轟音を響かせながら駆け抜けたスプリント対決を新田が制する

3本勝負中、2本先取で優勝者が決まる男子決勝では、これまでの世界大会などを含めた戦績からしてもスプリントという種目において巧者である深谷が優勢と思われたが、接戦ながら2戦をストレートで勝ち切ったのは新田だった。

新田は、昨年の全日本時点ではスプリントの走り方についての対策は特にしていないと話していたが、今回のテストイベントまでの間に深谷から直接スプリントの走り方について学びを得たと話す。東京五輪が延期されたからこそ得られたスプリントに向けた対策が東京五輪本番でどう生かされるか、楽しみにしたいところだ。

 

 

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対戦形式でも粘り強さを見せた小林

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2分の1決勝で当たった太田と梅川は、太田の勝利

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決勝では太田と小林の接戦が繰り広げられた

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2戦を走って、太田の反則判定があったことにより、両方とも小林が制し、優勝を決めた

女子は出走人数が少ないため、全員が2分の1決勝へと進んだ。決勝戦へと勝ち上がったのは小林と太田。決勝では、1戦目を太田が取ったが、危険走行による反則と判断され、小林の勝利に。続く2戦目では、接戦しながらも小林が取り、2戦先取して優勝を決めた。

 

男子スプリント リザルト

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新田がまずはスプリントを制した

1位 新田祐大(HPCJC)
2位 深谷知広(HPCJC)
3位 脇本雄太(HPCJC)

 

女子スプリント リザルト

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スプリントでもケイリンでも優勝した小林

1位 小林優香(HPCJC)
2位 太田りゆ(チームブリヂストンサイクリング)
3位 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)

 

ケイリン

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4人での一発勝負となった女子ケイリンのレース

テストイベントの最後に行われたケイリンでは、女子は人数の関係で一発勝負の決勝戦。ここでも勝負は拮抗したが、ゴール前最後の直線で捲り切った小林が優勝。

 

 

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男子ケイリンの決勝

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スタートしてからの並びは、新田も脇本も後方に位置した

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ラスト1周のバックストレートで抜け出した新田が差を保ったまま最終コーナーに入る

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ゴールラインまで逃げ切った新田

男子は、一回戦、敗者復活戦、準決勝と順に行われ、決勝に勝ち残ったのは、新田、脇本、深谷、松井宏佑、寺崎浩平、中野慎詞、村田祐樹の6人。すでにスプリントでも本数を走り、疲労が蓄積する選手たちの中で、最後まで爆発力を発揮した新田がスプリントに続いて勝利を攫った。

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優勝を決め、ガッツポーズを見せる

男子ケイリン リザルト
1位 新田祐大(HPCJC)
2位 松井宏佑(チーム楽天Kドリームス)
3位 寺崎浩平(チーム楽天Kドリームス)

女子ケイリン リザルト
1位 小林優香(HPCJC)
2位 太田りゆ(チームブリヂストンサイクリング)
3位 佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)

 

男子チームスプリント  リザルト

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公式レースとしては初のメンバーでのチームスプリント (HPCJC)

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1走が抜け、2走がさらに引っ張る

1位 HPCJC(荒川仁、菊池岳仁、村田祐樹) 45.125(決勝タイム)
2位 日本大学(遠藤拓巳、伊藤京介、高木駿) 46.975(決勝タイム)
3位 日本体育大学(荒川達郎、橋谷成海、服部幸之助)

 

中距離男子の実践レース

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先陣を切る橋本

今回のテストイベントでは、男子の中距離種目はオムニアム、マディソン、チームパシュートと、東京五輪で開催予定の種目全てが行われた。東京五輪のオムニアム種目で代表内定している橋本英也は今回、3種目全てに出場し、全てで優勝。国内での圧倒的な強さを見せつけた。

 

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オムニアムのスクラッチレーススタートを待つ選手たち

スクラッチ、テンポ、エリミネーション、ポイントレースの4種目で行われるオムニアムには、17人が出場。それぞれの種目は、UCIで定められる距離よりも短い設定で行われた。

最初のスクラッチでは、最終周回で窪木一茂と橋本が飛び出し、ゴール前で橋本が差し切って勝利。

 

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要所で存在感を見せる窪木

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近谷は、今回の大会が競輪養成所入所前最後のレースとなった

テンポでは、序盤に佐藤健が集団から抜け出し、ポイントを獲得していくが集団に吸収される。その後、近谷涼が単独で抜け出してポイントを加算。近谷に追いつく形でチームブリヂストンサイクリングの近谷、橋本、窪木、今村駿介、兒島直樹の5人が飛び出し、集団をラップ。第二種目を終えて、近谷が首位に立った。

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テンポレースでは、チームブリヂストンサイクリングのメンバーが集団から抜け出す場面も

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単独で抜け出した近谷を追う今村と橋本

 

 

エリミネーションでは、ラスト4人に絞られたところで橋本が最後尾となり、エリミネートのピンチの場面も見られたが、ライン間際で前の選手を抜き、そのままの勢いで単独で抜け出した。残った今村、近谷が橋本を追うが、スピードに乗った橋本に追いつくことはできず、最後まで残った橋本がポイントをリードした。

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エリミネーションで残った4人でのラインの直前。最後尾が橋本

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ラインを過ぎてそのまま加速する橋本

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橋本は独走に持ち込んだ

 

最終種目のポイントレースでは、橋本と今村の飛び出すなど動きのある展開で、6人が集団ラップを成功させポイントを重ねたが、この種目のスタート時点で首位の橋本には届かず。そのまま橋本が優勝を決めた。

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ポイントレースのゴールラインで優勝を確信

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勝利を確定させ、笑顔を見せる橋本

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トップ3はブリヂストン勢が独占

男子オムニアム リザルト
1位 橋本英也(チームブリヂストンサイクリング) 149pts
2位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 131pts
3位 近谷 涼(チームブリヂストンサイクリング) 111pts

 

男子マディソン

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橋本・今村ペアのブリヂストンAチーム

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近谷と新村穫のペア

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窪木・兒島ペアが橋本・今村ペアを追い上げようとする

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今村と兒島のスプリント

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橋本・今村ペアが勝利を喜ぶ

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男子マディソン表彰式

男子マディソン リザルト
1位 チームブリヂストンサイクリングA(橋本英也、今村駿介) 27pts
2位 チームブリヂストンサイクリングB(窪木一茂、兒島直樹) 21pts
3位 日本大学(生野優翔、髙橋舜) 13pts

 

男子チームパシュート

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チームブリヂストンサイクリングからは、橋本、今村、窪木、兒島の4人

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5月の香港でのネーションズカップでもこの4人でのエントリー

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4人でのチームパシュートは初披露となったが、交代もスムーズに行われていた

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相手チームの日大に追い抜きを成功して優勝を決めた

男子チームパシュート リザルト
1位 チームブリヂストンサイクリング(橋本英也、今村駿介、窪木一茂、兒島直樹) 4:01.866
2位 日本大学(生野優翔、髙橋舜、佐藤健、岡本勝哉) 4:09.648

 

 

レースを終え、感染対策のためにオンラインで行われた会見では、今回出場した小林、新田、脇本、橋本の東京五輪代表の4選手がそれぞれ良い刺激になったと話し、次戦へ、そして東京五輪に向けての感触を語った。

次戦は今のところ、5月13日~16日に香港でのネーションズカップが予定されており、規定期間の隔離措置などがなされる中での開催となるはずだ。五輪前最後の世界大会と考えると、参加国は決して多くなく、特にヨーロッパの強豪選手たちの名前は現状のスタートリストにはない。

ヨーロッパ内だけでのトラックの大会なども直近では開催されているが、昨年の3月の世界選手権を最後にまだ世界大会は行われていない。

日本ナショナルチームは、香港でのネーションズカップで弾みをつけ、この5年間の集大成を東京五輪で存分に見せられることを期待したい。