ビワイチ振興で街まで変化した滋賀県守山市

目次

守山市サイクリング

いまやすっかりインスタスポットになった感のある琵琶湖サイクリストの聖地碑

サイクリストウェルカムな守山市を探索

ビワイチはいまや全国的に知られるサイクリングルートだ。なんでも年間約10万人のサイクリストが琵琶湖一周を走っているという。約200kmに及ぶ湖周道路は完走すれば大きな達成感が得られる。概ねフラットなコースはチャレンジしやすい。これらがビワイチの人気の理由だろう。
さてそんなビワイチに対し、ひときわ熱いサイクリスト誘致を行っている街がある。それは滋賀県守山市。琵琶湖の東岸のくびれたあたりにある市で、のどかな田園風景と琵琶湖岸のリゾート開発が行われている街だ。ビワイチをしたことがあるサイクリストなら一度は必ず通っている街だろう。訪れてみるとわかるが、とにかくサイクリストウェルカムな街なのである。それは湖岸エリアのみならず、街の至るところに浸透している。
今回はビワイチだけではない守山市を探索してみることにした。

守山市サイクリング

ビワイチの発着ポイント守山市(守山湖岸振興会提供)

今回のガイドをお願いしたのは新野恭平(しんの・きょうへい)さん。「JCA(日本サイクリング協会)公認サイクリングガイド」資格を持つJCGA(日本サイクリングガイド協会)サイクリングガイドだ。生まれも育ちも守山という新野さんの本業は「ジャイアントストアびわ湖守山」のプロスタッフ。守山市や滋賀県がビワイチ振興に本気で取り組んだことで誘致に成功した、ビワイチの拠点ともいえる同店に5年前の開店時から勤務している。プライベートでは「輪の国びわ湖推進協議会」に参画し、通勤も休日も好きなMTBに乗るという、人生の大部分が自転車漬けの真性サイクリストとして地域を盛り上げてきた立役者。そんな新野さんなら、きっと我々の知らない守山市の魅力を伝えてくれるに違いない。というわけでさっそく取材チームは守山市に乗り込んだ。

守山市サイクリング

ビワイチの街、滋賀県守山市を案内してくれたのは、守山在住のサイクリングガイド新野恭平さん

 

ビワイチ発着ポイント、守山市の湖岸エリア

待ち合わせしたのは琵琶湖大橋東詰にある大型商業施設PIERI(ピエリ)守山。ファストファッションやアスレチックショップ、生活用品から食料品、レストランに温泉までなんでも揃う。このPIERI守山はビワイチのサイクリストやランナー向けに駐車場を無料解放している。

守山市サイクリング

PIERI(ピエリ)守山の広大な駐車場。その一画の「E区画」がサイクリストとランナーに無料で解放されている(※駐車可能時間7:30〜24:00)。これはありがたい。ただ単に利用するだけでなくぜひ温泉入浴や買い物をして帰りたいところだ

ビワイチをするときには結構駐車場に困ってしまう。利便性の高い湖岸沿いの有料駐車場というのは琵琶湖全周に渡って非常に少ない。とはいえ湖岸沿いの公道などに長時間駐車するわけにもいかないし、湖岸まで離れた市街地の駐車場では距離が億劫になってしまう。そんなサイクリストにとってPIERI守山は最高のスタート地点だろう。異論の余地はない。

新野さんとPIERI守山の駐車場「E区画」で合流。さっそく案内がスタートした。「守山は魅力たっぷりな街です。1日じゃ回りきれないぐらい。今日はたくさんご案内しますね」新野さんが目を輝かせて言う。春の訪れを感じるやわらかな日差し。最高の天気。絶好のサイクリング日和だ。

守山市サイクリング

PIERI駐車場の裏口から湖岸に入ることができる。後方に見える「琵琶湖大橋」がビワイチのメインルート「キタイチ(北湖1周)」の南端となる

「案内したいホテルがあるんです」スタートしてすぐに新野さんは2つのホテルへと向かった。新野さんいわく湖岸エリアのホテルはサイクリストウェルカムなところが多いとのこと。したがってまずは守山市に泊まり、そこからビワイチや市内ライドをするという滞在型ビワイチがお勧めだという。理由は簡単、この辺りのホテルは、サイクリストを理解してくれていて、愛車をとても大切に扱ってくれるから。サイクリストなら宿泊時にどこかに愛車を預けるのは少し気がかり。ましてやそれが屋外だったりすると気が気ではなくなる。やっぱり自転車をバラさずにそのまま部屋に持ち込めるならとても安心だろう。そして部屋の中でメンテナンスまでできればさらに安心なはずだ。その心の余裕が生まれるからこそ、ビワイチの前後に市内観光にでかけたり、長めに宿泊したりするものだと思う。

今回取材したのは、琵琶湖マリオットホテルとホテル琵琶湖プラザ。いずれもロビー、エレベーター、通路、そして客室にまで自転車を持ち込めるように配慮されている。
どちらもサイクリストに優しいホテルなのだ。そしてともに部屋からの眺望が最高。琵琶湖の対岸には比叡山と比良山を見渡すことができるし、真ん中にはシンボリックな琵琶湖大橋が横たわる。改めて琵琶湖の大きさを感じられるだろう。

まずホテル琵琶湖プラザを訪問。琵琶湖大橋のたもとにあるので湖岸ルートへのアクセスがとても良い。そのせいなのか、最近ビワイチの利用者がとても増えているとのこと。サイクリストが客室で自転車を保管しやすいように、フロントで専用スタンドを貸し出している(先着・予約5人まで)。うれしいサービスだ。

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琵琶湖大橋東詰南側にあるホテル琵琶湖プラザ。とてもアクセスしやすい立地

フロントの担当者に部屋まで案内してもらった。廊下部分も非常に広く、安心して自転車を押していける。ホテルルームの内部は、半分近くの面積が自転車のために用意されているかのように広く取られている。

守山市サイクリング

ホテル琵琶湖プラザのツインルーム。入口で靴を脱いで板張りに上がるスタイルはリラックスできそう

次に訪れた琵琶湖マリオットホテルはプレミアムなグレードのホテル。ホテルの施設内に自転車をそのまま持ち込める。こちらも愛車と一緒にステイできるのでとても安心だろう。客室は自転車を置いてメメンテナンスができるように面積も十分に確保され、バスルームへのアクセスなども楽々。ホテル内のレストランやアミューズメントも充実しており、サイクリング以外の宿泊だけでも十分に満足できそう。長逗留には最高のホテルだ。

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琵琶湖マリオットホテルはプレミアムなしつらえのホテルルームが特徴。広い床で自転車やエキップメントも楽々

琵琶湖マリオットホテルの1階には「ジャイアントストアびわ湖守山」がテナントとして入っている。ストアではジャイアントの最新バイクが揃っているとともに、レンタルバイクも数多く用意されている。ホテルに宿泊してカジュアルにサイクリングしたり、最新のハイエンドバイクをレンタルしてビワイチでその性能を堪能することもできる。ビワイチの頼れるベースだ。

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琵琶湖マリオットホテルには新野さんの勤務先でもある「ジャイアントストアびわ湖守山」がある

ホテルを出発して湖岸を北上すると、すぐに琵琶湖サイクリストの聖地碑に着く。いまや完全にインスタスポットになった感のあるモニュメント。この日も我々が到着する前に数人のサイクリストが記念撮影を行なっていた。この聖地碑は、実際に見てみると意外に小さくこじんまりしている。景色と馴染ませるためだろうか。
このモニュメントは、ビワイチの発着地点としての守山市の意志の現れなのだ。宿泊、バイクショップ、発着ポイント、ビワイチに必要なものが全てそろうこのエリアのシンボルとして設置されたものだ。ここにサイクリストが集い、ビワイチを楽しんでまたこの場所に帰ってくる。そんなサイクリストの拠り所になりたいという決意がこの聖地碑に込められている。広大な琵琶湖を一周し、またこのモニュメントを見届けるぞ、という気持ちで走っていただけると良いだろう。そういう意味でもビワイチのときはしっかりと押さえておきたい場所だ。

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いまやすっかりインスタスポットになった感のある琵琶湖サイクリストの聖地碑

「次はとっておきの場所をご案内しますよ」と言って新野さんが連れていってくれたのは、びわこ地球市民の森。川沿いに作られた3.2kmにもおよぶ細長い公園で、自然がいっぱいの美しい公園だ。この公園内の川の両岸に整備された道がつけられており、オフィシャルに自転車が走行することができる。公園の中なので自動車や他の交通は入ってこない(もちろん歩行者最優先で走行しよう)。とにかく気持ち良い道なのだ。緩やかに蛇行する道はあえて見通しを無くしてあるようで、ゆえにずっと遠くまで続いているように錯覚してしまう。川には鴨たちが泳ぎ、亀が甲羅干しをしている。堤防では近所の人が山菜を採っている。湖岸から少し入るだけでこんなに美しい風景があるとは思いもよらなかった。思わず和んでしまう。しかも、ここは新野さんの自転車通勤コースだという。毎日こんなところを通勤ライドできるなんて羨ましいかぎりだ。

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びわこ地球市民の森。総延長3.2km幅100〜200mの長い公園内は自転車走行可能。川沿いの道を気持ちよく走れる。遠くにマリオットホテルが見える

 

守山市の宮本市長にインタビュー

さて次に訪れたのは守山市役所。宮本和宏(みやもとかずひろ)守山市長に面会いただいた。取材日は議会の会期中だったが、「自転車のPRならば」ということで貴重な時間を割いていただいた。宮本市長はジャイアントストアの誘致やサイクリストの聖地碑など、早くからサイクルツーリズムの造成に力を入れ、サイクリストウェルカムなまちづくりを推進してきた、自転車活用推進のトップリーダーである。

守山市サイクリング

撮影時にわざわざジャージを着てくださった宮本市長。もう5年以上愛用しているというロードバイクは「びわ湖イメージカラーのブルー」がポイントだそう。よく手入れされている印象だった

さっそくビワイチについて、守山市、滋賀県全体での自転車活用の推進についてお話しをいただいた。
「ビワイチをするサイクリストはいまかなりの数まで増加している。もちろん国や県全体での取り組みもあるが、やはり守山市独自でビワイチのポータル(入り口)として推進してきたことも大変大きな要因だ」という。それは「世界的に有名な自転車メーカーのブランドショップの誘致、ドライブ&ライドを楽しむ2×4サイクリストに向けた駐車場の確保、立ち寄りスポットの設置、サポートカー体制の構築、そしてアコモデーションの整備など、ありとあらゆるサイクリストアシストを追求してきた結果」だという。事実、守山市発着でビワイチを走るサイクリストは確実に増えており、地域貢献にもひと役買っているということだ。今後は県内各所のスポットにもリーチしたいという。例えば守山市発着で比叡山まで走るツアーなど、湖岸周回以外のサイクリング好適地を開発されたいということだった。ますます守山市が滋賀県のサイクリングの中心になっていく予感がした。

守山市サイクリング

ビワイチライダーのアシストを行うサポートカー。守山市のサイクリングに懸ける本気度がうかがえる

ところで宮本市長は東京大学自転車部旅行班に所属していた生粋のサイクリスト。キャンプで全国各地を走り回った経験があるという。サイクリストが何を欲し、自転車が地域社会に対して一体どんな効用があるかを熟知している稀有な政治家だ。だから自身の知識と経験に基づくものをすぐに市政に反映し、タイムリーに公共効果を出すことができるのだと思う。なんとも素晴らしいことだ。

しかしそれは決してスポーツサイクルだけにとどまらない。守山市は江戸時代に作られた旧中山道の宿場町を中心に発展してきた古い街だが、現在は大阪まで1時間かからずに通勤できる好立地のため劇的に人口が増加している。駅前を中心に新築マンションや戸建てが立ち並ぶ新しい街に生まれ変わりつつあるのだ。それは大変喜ばしいことだが、反面、古い街並みに潜在する道路インフラの問題が露呈することにもつながりかねない。よってそれらを解消するために主要道路にはナビラインが引かれ、通学路はゾーン30に、自転車レーンも至る所に整備されている。また、自転車購入補助金制度など、市民の自転車生活に直接的な影響を与える施策も実施されている。
つまり普遍的に自転車活用を促進すべく道路インフラの問題解決を図り、市民生活の円滑化を推進しているわけだ。国土交通省出身の市長だからこその施政だと思う。

これほどまでの自転車への理解と愛情と実行力がある市長と共にある守山市民に対して少し羨ましさを感じた。
最後に、守山市内のおいしい食事の話で、おもわず顔をほころばせた市長の笑顔が印象的だった。

守山市サイクリング

湖岸だけでなく駅前の商店街や細い旧道にも矢羽がペイントされていた。ピュアサイクリストではない市民の安全走行を守ることで守山市全体での自転車活用を促している

守山市サイクリング

守山市の湖岸沿いは自転車専用通路になっていた

 

ビワイチと同じぐらい魅力的な中山道

ビワイチばかり有名になっている感があるが、守山市にはもう一つ道に関する見どころ、寄りどころがある。中山道の宿場町だ。中山道はいわば江戸時代のハイウェイ。日本の最も重要な道のひとつが守山を通っていたということなのだ。「京発ち守山泊まり」とは、中山道をゆく旅人の多くが京都を出発して最初の投宿先を守山宿にすることが多かったためにできた言葉。よって守山宿は大変賑わった宿場町だったらしい。その名残は随所にのこされていて、石造りの道標が辻に残されていたり、県内唯一の昔のままの一里塚があったりと、往時の雰囲気を垣間見るようで実に味わい深い宿場町なのだ。
そんな話を新野さんとしていると、「じつは僕の実家は一里塚の近くにあるんですよ」とのこと。サイクリングをするようになって中山道に興味を持ち始めたと言う。サイクリングと歴史はとてもマッチングがいいと言う。

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守山市中心部の旧中山道沿いにある古民家「うの家」。江戸時代の造り酒屋の建物をリノベーションした市民交流の家となっている

取材を進めるうちに日はすっかり13時を過ぎ、になってしまっていた。みんなお腹が空いてしまっていた。どおりでペダルが回らないわけだ。そこで宮本市長にお薦めいただいた近江牛を求めて中山道沿いの古民家にあるレストランに向かった。
この古民家「うの家」は宿場町にあった造り酒屋の建物をリノベーションしたもので、とても重厚感がある。

守山市サイクリング

うの家の和食レストラン「咲蔵(さくら)」。写真は人気の「さくら御膳(サーロイン)+せいろ1段(3500円・税込)」

コロナ禍の中とは言え、やはりおいしいところには人が集まるものだ。この日も満員だった(もちろんコロナ対策をした上での満員)。しばらく待って運ばれてきたお膳に舌鼓を打ちつつ、中山道守山談義に華が咲いた。

守山市サイクリング

美味しそうにお肉を頬ばる新野さん。取材陣もいただいたが、すっかり取材を忘れてしまうほど美味だった

さてお腹もいっぱいになってサイクリングに戻ろうとした新野さんだが、バイクを再びラックにかけた。
「そういえばここのコーヒーとスイーツも絶品なんですよ。」そう話す新野さんの手はすでにカフェのドアを開けていた。
「Café du Boku」は「うの家」の蔵を使ったおしゃれなカフェ。一見するとそこにカフェがあると思えないようなこしらえで、まさに蔵そのもの。だがそんな雰囲気とは裏腹に店内は若い女性でいっぱいだった(もちろんコロナ対策がしっかりされていた)。取材陣もともにコーヒーとスイーツをオーダー。新野さんが頼んだのはイチゴパフェ。守山市名産のイチゴが生クリームに壁のように貼り付けられているボリューム満点のパフェだ。

守山市サイクリング

ランチを食べて、さあサイクリングという時にカフェに目がいく新野さん。食後のコーヒーをいただくことになった。「Café du Boku」も「うの家」の敷地内にある

守山市サイクリング

地元のイチゴをふんだんに使ったパフェ。サイクリストにとっては最高のエネルギースイーツ

守山市サイクリング

さまざまな表情を見せる守山市でのサイクリングを熱く語る神野さん

市街から再び湖岸に戻り、滋賀県で最も流域の広い野洲川の河口を目指す。ここにもサイクリスト向けのギミックが仕込まれている。野洲川の守山側の堤防と河川敷は歩行者と自転車が通れるように作られている絶好のサイクリングロードなのだが、従来は湖周道路との接続がなかったのだ。しかし現在では湖側から転回できるようにアンダーパスが作られている。なんとも親切な道。琵琶湖岸を走ってきた流れのまま野洲川の堤防に入っていける。スムーズに気持ちよく走るのもサイクリングの醍醐味。ここを通れるのは歩行者と自転車だけ。なんとなく優越感を覚えてしまった。

守山市サイクリング

「しあわせの丘」には無理な横断を未然に防ぐアンダーパスが設置されている

ところで、新野さんのガイドでアンダーパスを通り抜けたときに気がついたのだが、新野さんは左折時や減速時、転回時に腕を使ってハンドサインをしてくれる。そしてその度に我々一人ずつに対し、しっかりとアイコンタクトまでしてくれていた。なんとも安心感のあるガイディング。期せずしてプロフェッショナルなガイドの技術を見ることになった。

野洲川の河川敷に入ると扇状地特有の広大な土地が目に入ってきた。遠くに見える近江富士と称される三上山がなかなか近くならない。とにかくかなり長い道だ。ちなみにこの道は、今年の5月に守山市を舞台に開催予定のトライアスロン大会「レイクビワ トライアスロン in 守山」で使用予定だという。
「せっかくなのでトライアスロンのバイクコースを走ってカロリー消費しましょうか?」笑顔で新野さんが言う。ここは自動車が入ってこない道だから、しっかりと走るときにはもってこいなのだという。長く見渡しのよい堤防のコースを飛ばし気味に走る。ところどころ地元ライダーやランナーが走っているのが見えた。やはりトレーニング場所としてもポピュラーなのだろう。
しばらく走って河川敷側の道に降りる。河原に降りると堤防に囲まれている感じがしてまた雰囲気が変わる。そして川面の風が気持ちいい。ややもすると単調に思える直線路も、この上下で変化を楽しむことができる。
トライアスロン大会でもこの上下をうまく使ってバイク同士がすれ違わずに周回できるよう計画されているとのこと。見通しが良く安全なので、トレーニングから大会まで使い勝手の良い道だと思う。

守山市サイクリング

野洲川の河川敷は自転車通行可能。しかも上下にツートラックあり、それぞれ整備が進んでいる。遠くに「近江富士」と呼ばれる三上山が見える

さて一生懸命走って少し汗をかいたところで日が傾き始めたため、やや汗冷えしかけている。
「ちょっと冷えてきましたね、そろそろPIERIまで戻ってお風呂にはいりましょう!」
平野部の田園地帯を通ってPIERI守山を目指した。

日中は穏やかな暖かさだったが、まだ3月だ。到着したときはすっかり身体が冷えてしまっていた。
「天然温泉 守山湯元 水春(すいしゅん)」はPIERI守山にある温泉施設。サイクリストのために大きなバイクラックが用意されているのでグループで訪れても安心。さっそく温泉に入る。冷えた体に温かいお湯が染み渡る。

守山市サイクリング

PIERI守山の「天然温泉 守山湯元 水春(すいしゅん)」階下のバイクラック。奥に停まっているのはJRの各駅に送迎するシャトルバス

 

地元サイクリストとして感じる変化

守山市がビワイチへの取り組みに本腰を入れてから約5年、守山市を取り巻くサイクリング事情はどう変わったのか? 温泉の湯船に浸かりながらその間の変化を新野さんに聞いてみた。
ちょうど5年前の「ジャイアントストアびわ湖守山」の開店当初からメインスタッフとして勤務し続けている新野さん。年々レンタルサイクルの貸し出し数も増え、目に見えて形でサイクリストが増えていると感じるという。
「守山市、滋賀県は本当にサイクリング好適地です。でもそれはビワイチだけじゃない。それをもっと知ってほしい。もっと伝えていきたい。」
ナショナルサイクリングルートとしてのビワイチは確かにチャレンジする価値のあるコースだが、同時に守山、滋賀という地域をもっと知ってもらう努力をすべきだと新野さんは考えている。
「地域の魅力こそがサイクリングを盛り上げてくくれます。」
なるほど、地域の魅力をほどよく抽出してサイクリングに活用することがサイクリングガイドの仕事であり、存在価値なのだろう。ソロや知り合いのグループで走るだけでは大きな変化もなかなか訪れないだろうから、将来的にはこうした地域に精通したプロのサイクリングガイドにアテンドしてもらうことで、今までになかったサイクリング体験を得ることができるに違いない。
新野さんの話を聞いて、サイクリング振興にはファシリティーやインフラだけでなく、適切な人材も同様に必要なのだろうと強く感じた。

守山市サイクリング

地元のサイクリングガイドとして、そしてジャイアントストアびわ湖守山のスタッフとして、5年間の変化をみてきた新野さん。守山のサイクリングの次の5年間にも期待をふくらませている

 

地元産品が揃う店

水春のロビーでくつろいでいると「もう一か所ご案内したいところがあります。地元産のフレッシュな野菜を売っているところがあるんです。」産地直送と聞いて行かない手はない。ということでここから5kmほど走ることに。
「今は菜の花がキレイなんですよ! 菜の花畑を通るコースでいきます」と新野さん。道端には菜の花畑が広がっており濃い黄色の花が咲き乱れている。

守山市サイクリング

菜の花も守山市の名産

黄色い花が咲き誇る畑をぬけて辿り着いたのは「おうみんち」という野菜の直売施設。
広大な売り場には新鮮な地元産の野菜や花、青果が並んでいる。よく見ると……とてもリーズナブルな価格だ。すこし驚くぐらいの値段。しかもどれもこれも新鮮なものばかり。
「あれと、これと、それと……」と閉店間際のお店で手早く沢山の野菜を買い込んでバックパックに詰め込む新野さん。普段から買い物をしているからか手際良い。笑顔で野菜を詰め込んでいる新野さん。家族のためにも頑張っている様子が伺えた。

筆者も取材を忘れて買い物に走る。守山産の子持ち鮎の甘露煮を買ってみたが、すごく美味だった。こうした地元の農水産品を買って回るのもサイクリングの醍醐味だと思う。

守山市サイクリング

「おうみんち」で地元産野菜を買い込む。閉店時間に間に合って安堵する新野さん

守山市サイクリング

なんとかバックパックに野菜を詰めて帰路に。いつもハンドサインを忘れない新野さんにサイクリングガイド魂を見た

今回の取材で感じたのは、守山市はとにかく自転車に乗っている人が多い。そしてそれはピュアサイクリストだけにとどまらず、一般市民にまで浸透しているという印象だ。まさにサイクルシティそのものだった。そしてなによりサイクリストに向ける地域の人たちの眼差しも温かい。訪れて気持ちの良い街、守山市。読者の皆さんもぜひビワイチの前後に守山市エリアでの周回サイクリングを追加してみて欲しい。

おうみんちで購入した守山産の子持ち鮎で晩酌しながら、もうすでに次の守山サイクリングに思いを馳せる筆者だった。

守山市サイクリング

卵でお腹がパンパンになった子持ち鮎の甘露煮。味もサイズも立派なのにデパートや通販の半値以下なのは現地直販ならでは

 

【取材先リスト】

琵琶湖マリオット ホテル
所在地:〒524-0101 滋賀県守山市今浜町十軒家2876
電話:077-585-6100
アクセス:琵琶湖大橋東詰より北へ車で5分

ホテル琵琶湖プラザ
所在地:〒524-0102 滋賀県守山市水保町2892-2
電話:077-585-4111
アクセス:琵琶湖大橋東詰より南へ車で1分

ジャイアントストアびわ湖守山
所在地:〒524-0101 滋賀県守山市今浜町 十軒家2876 琵琶湖マリオットホテル1F
電話:077-584-2033
営業時間:9:00〜19:00
定休日:火曜日

うの家
所在地:〒524-0022 滋賀県守山市守山1丁目10-2
電話:077-583-2366
営業時間:9:00〜22:00
定休日:なし

咲蔵(さくら)
所在地:〒524-0022 滋賀県守山市守山1-10-2
電話:077-583-5108
営業時間:11:30〜15:00、17:00〜22:00
定休日:火曜日

写真のメニュー:
さくら御膳(サーロイン)+せいろ1段 3500円(税込)

他のオススメメニュー:
さくら御膳(サーロイン)2500円(税込)
すき焼き御膳【月】2500円(税込)
せいろ蒸し御膳【月】2500円(税込)
ステーキ重 3500円(税込)
近江牛づくし 3500円(税込)

Café du Boku(カフェ ド ボク)
所在地:〒524-0022 滋賀県守山市守山1-10-2
電話:077-596-3774
営業時間:平日 11:00〜16:00、土日祝 11:00〜17:00
定休日:木曜日と臨時で休みもあり

メニュー:
いちごパフェ 1180円(税込)
コーヒー 450円(税込)
プリン 400円(税込)
バスクチーズケーキ 500円(税込)

守山湯元水春 ピエリ守山
所在地:〒524-0101 滋賀県守山市今浜町2620-5
電話:077-599-1126
営業時間:平日 10:00〜24:00(最終受付23:30)、日祝 7:00〜24:00(最終受付23:30)
定休日:なし
入浴料金:大人(中学生以上) 平日850円、土日祝950円

ファーマーズ・マーケットおうみんち
所在地:〒524-0103 滋賀県守山市洲本町2785
電話:077-585-8318
営業時間:9:00~18:00(4〜9月)、9:00~17:00(10〜3月)
定休日:毎月第2水曜日(1月および5~8月を除く)、年末年始(12月31日~1月4日)