Fumy’s eye 別府史之が見た世界 étape13

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別府史之が見た世界2021第1回

本場ヨーロッパで活躍するプロロードレーサー・別府史之選手の「今」を、本人の言葉で読者の皆さんにお伝えする連載。2年目の初回は、スタートした新シーズンの「いつもとは違う」点についてお届けします(編集部)。

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Bonjour!
みなさんこんにちは、別府史之です。

この連載「Fumy’s eye」も、大変ありがたいことに、2年目に突入しました。今年もどうぞよろしくお願いします。そして、いよいよ、新しいチームでの新しいシーズンがスタートします!

今はそのシーズンに向けて、南フランスでトレーニングキャンプの真っ最中です。このご時世なので、チーム全員で集まれたわけではありません。選手は12人だけ。つまりチームの半分以下です……。監督も来てないですし、コーチと選手でこじんまりとやってる感じですね。

別府史之が見た世界2021第1回

同じ時期にスペイン領カナリア諸島のテネリフェでトレーニングしている選手もいますし、コロンビアやアメリカの選手は地元で各自練習をしてます。(中根)英登もまだヨーロッパには来てないです。まあ気楽に渡航してまた地元へ帰る、なんてことが無理な状況ですから。シーズン前恒例のチーム全体のフォトセッションもなくて、みんなと顔合わせができないのはやっぱり残念です。それに本来ならしっかりシーズン前合宿があって、チームやスタッフのやり方を理解をするための時間があって、だからこそ選手も安心してシーズンへと向かえるんですけど。でもそういう意味で、今年は、特に慣れていない選手にとってはちょっとてんてこ舞いな年になるかもしれません。

 

トレーニングメニューは?

ただ選手が必要な情報はスマホできちんと管理されてますし、トレーニングのデータもガーミンで監督とシェアしてます。隅々までしっかりコントロールが行き届いているいいチームだな、という感覚です。むしろ僕にとって17回目のシーズン入りを前にして、なんか今までとはちょっと違うな……と感じたのは、「トレーニングがすごくハード!」っていうこと。

たとえばトレック時代は、この時期のトレーニングキャンプはまだまだリラックスした感じの練習が多かったんです。たしかに全員で集まると、選手のレースプログラムによって仕上がり具合が違うから、どうしてもそこまで厳しく追い込む練習はできないんですよ。だから今も「始めから飛ばしすぎ〜」なんて参っている選手もいます。ただ僕は11月、12月と、ある程度の強度を保って練習を続けてきましたし、ちょうど良いですね。

別府史之が見た世界2021第1回

たとえば合宿初日からいきなり重いギヤでスプリント30秒全開、そこから30秒は緩めて、その後4分間50回転で走る。これを8本。さらに10秒スプリントを8本。50回転のトレーニングも上りでやったので、相当の負荷でしたし、全部で2500mくらい上りました。

2日目はFTP100〜110%で最初から最後までずーっと走るという練習。本当は6時間のはずだったんですけど、雨が降ったので5時間に短縮されましたが……それでも十分に長いです! ロングディスタンスを延々と高い強度で走って、20分ごとに先頭交代。これってかなりのきつさですよ。ひたすら黙々と走りました。広くて平坦な道ではローテーションしながらスピードを上げる練習もやりました。より実践に近い走り方です。レースに向けて足りないところを埋めていく、そういう練習ですね。

 

暖かい南仏はトレーニング地として人気

他にも南仏でトレーニングしているチームはいくつかあって、デルコやルーベ(コンチネンタルチーム)とすれ違いました。アントニー・ルー(グルパマ)も1人で走ってましたね。もちろん同じくNIPPOがスポンサーをしているコンチネンタルチームも、一緒に合宿してます。

この時期はスペインのカルペやアルテアで合宿するチームが多いですし、EFも去年までは、チームの欧州本拠地があるジローナ近郊でキャンプしていたようですね。今年はNIPPOに加えて、南フランスの自治体がスポンサーについたので、初めての南仏合宿だそうですが、僕にとっては自宅から車で行けるので気軽で助かります。近ごろは雨も多いですけど、気温が暖かくて練習しやすいですよ。12〜13℃くらいかな。

だって自宅の近くはほんと寒いんです。マイナス5℃とか普通です。僕が自転車で走る横で、子供たちはスキーやそり遊びをしているという……。今年に入って路面が完全に凍った時があって、その時は前後輪が同時に滑って、「あ、終わった」って覚悟したことさえあります。「ちょっと待てよ、ここで動けなくなったら、発見されるのは春先じゃないか!?」って(笑)。電話も圏外だし、手がかじかんでパンク修理もできないし。いやぁ、だってトレーニングメニューが本当にびっしり送られてくるんですから。どんな寒い日だろうが真面目に走りにいってました。これはさすがに無理だろう、なんて思いながらも、気合い入れてがんばって練習に行ってました。

だから南仏で雨が降ってても平気ですよ。気温が高いから問題なし。「寒い〜」とか言ってる選手もいますけど、いやもう全然! 遠くに青い空が見えるってだけでも、ものすごく気分が上がります。

 

ニューノーマルに合わせて変わったこと

あ、あと、「いつもとは違うな」って思ったのは、ホテルが1人部屋なこと。普段なら選手は2人部屋なので、ルームメートといろいろ会話できて楽しいんですけどね。もちろん感染防止対策の面ではありがたいです。

朝食もだから部屋のキッチンで各自で用意して食べてます。昼と夜は食堂で食べますが、朝くらいはマスクや消毒を気にせずゆっくりと部屋で支度ができるので、そこはいいですね。ただ、そのせいで、「各自の朝ご飯を写真にとって、コンテストしようぜ!」ってミッチェル(ドッカー)が言い出しちゃった。チームから選手たちに届けられる食材はみんな同じなんですけど、みんな張り切って工夫してます。僕も早起きして本気モードです。今まで食事の準備は普通にしてきましたけど、他の人に見てもらえるように綺麗に盛り付けることはなかったので、なかなか苦労してます。

別府史之が見た世界2021第1回

そうなんです。どうしてもコロナのせいで今までどおりとはいかないし、トレーニング中にみんなでカフェに立ち寄ってコーヒーを飲んだりする機会さえ持てないけど、意外とこうしてみんなで和気あいあいと楽しくやってます。

今回一緒に合宿してるミッチェルやセバスチャン(ラングフェルト)はそもそもが元チームメートなので、ミチェルからは「フミ、俺のことが好きだからって、追いかけてこないでくれよ〜」なんて冗談言われたり。(トム)スカリーとはプロトン内でよくおしゃべりしてた仲ですし、(ミカエル)ヴァルグレンもすごく気さくな選手ですね。僕の朝食の写真見て「うまそ〜明日食いに行くからよろしく!」とか。レースが実際に始まるとどんどんピリピリした雰囲気になっていくんですが、今はまだわいわいやる時期なんですよ。「ところでフミっていくつなの!?」「今年で38歳になるよ」「ええ〜俺より年上!?」「白髪が生えてるお前より、白髪の一本もない俺のほうが肉体的に若いよ!」みたいに(笑)。

コンチの合宿に来てる織田(聖)くんとも話しました。話題は主にヨーロッパでの生活をどうサバイバルしていくか。まだまだ年齢も若いし経験も浅いので、きっとこれから手探りの生活を始めることになるのでしょう。もちろん自分で学んでいくことも大切です。でも、生活に関するアイデアとか、レースの仕方とか、ちょっとしたアドバイスひとつでスムーズに順応できることってたくさんあるんです。だから僕みたいな年上の選手から色々と話を聞いて、参考にしてくれるといいですね。モチベーションの高さを感じますし、こちらに順応していけるポテンシャルは十分にある選手だと思います。外国選手からは「ちょっとシャイかな」と言われてますけど、それでも英語で積極的にコミニュケーション取ってますよ。いい感じだな、と見守ってます。

シーズン開幕が近づいてきています。僕としては楽しみでもありつつ、緊張感も少しずつ高まってきています。

コロナ禍がままだまだ収まらない中で、これから先なにが起こるか本当に分かりません。いまだにレースがどんどん中止になって、走るチャンスも限られていきます。ただ僕としては、余計なことを考えすぎて足を止めてしまうのではなく、ひたすら集中して走るだけ。1日1日しっかり練習を積み重ね、1つ1つのレースをきちんと走り、自分が走れるところを見せていく。それだけです。

1月末にはいよいよ新しいジャージデザインも披露されると思うので、ぜひ楽しみにしていてください!

それでは、また。

別府史之

 

※今回は僕のトレーニング前の朝食を写真でご紹介しましたが、みなさんはロングライドに行く前はどんな食事を摂ってますか!?できれば写真も投稿していただけたら嬉しいです

メッセージはinfo@cyclesports.jpで。メールタイトルには「Fumy’s eye」とご記入ください。またTwitterやFacebookコメント欄からの投稿や、別府選手への質問もお待ちしております!

 
(宮本あさか)