ジャパンバイクテクニーク2019 新世代ツーリングバイクの祭典
目次
- 1. 新たなツーリングバイクの祭典「ジャパンバイクテクニーク」とは?
- 2. 山音製輪所・MONTSON・MONTSON
- 3. 柳サイクル・YANAGI・YANAGI
- 4. 自作自転車秘密研究所・NAGARA・NAGARA
- 5. サイクルグランボア・GRANDBOIS・GRANDBOIS
- 6. 絹自転車製作所・テンションシルク・テンションシルク
- 7. ベロクラフト・ベロクラフト・VELOCRAFT
- 8. Cスピード・エキップCスピード 鉄中年林走会 KeihinPista・course nove
- 9. 東京サイクルデザイン専門学校・ひろちゃんず・SPROUT
- 10. 東京サイクルデザイン専門学校・SHIBU・SHIBU
- 11. 東京サイクルデザイン専門学校・TCD・comod
- 12. EMERALD BIKES・EMERALD BIKES・EMERALD BIKES
- 13. 今野製作所・CHERUBIM・CHERUBIM
- 14. タカギサイクルワークス・タカギサイクルワークス・WILDGOOSE
- 15. パナソニックサイクルテック・Panasonic Bike・Panasonic
- 16. M.マキノサイクルファクトリー・サイクルスポーツ・MAKINO
- 17. オオマエジムショ・オオマエジムショ・après
本誌「進め!ネオ・ランドナー」でもご存じ、「ジャパンバイクテクニーク」。自転車づくりの腕を競うこのイベントは、長野県高山村のYOU游ランドをメイン会場に、初日のプレゼンテーションと2日目の走行会の2パートに分かれて開催された。ここではプレゼンテーションに参加した16チームのバイクをご覧いただこう。劣悪なダートの下り16kmを含む75km累積標高差2300mのコースを走るために、各チームはどんなバイクを作ってきたのだろうか?
新たなツーリングバイクの祭典「ジャパンバイクテクニーク」とは?
ここでちょっとジャパンバイクテクニーク(JBT)のレギュレーションについて解説しておこう。ダートの下りを含む走行会は午前4時にスタートし、序盤23kmの笠ヶ岳峠への着順で10位までにポイントがつく。また、「前後の走者に迷惑をかけないと認められるサイズ」のドロヨケにもポイントが。わざわざ梅雨時にこのイベントを設定したのもこんな理由がある!
面白いのが、コース途中でお饅頭を渡し、そのままダートを下らせてお饅頭が型崩れしていないかを審査するという点。つまりダートを速く下るのが勝ちではなく、安全かつスムーズに下ることに意義があるのだ。 日本らしさが際立つ点としてはもう1つ、フィニッシュ直後に輪行タイムトライアルを行うというものがある。
各バイクはライトやキャリア、バッグ、それにドロヨケなどに工夫を凝らし、輪行の練習を繰り返してジャパンバイクテクニークに来た!
ここからは各チームのバイクとその特長を紹介していく。(見出しは工房名・チーム名・バイクブランド名)
山音製輪所・MONTSON・MONTSON
山音製輪所のチーム名はブランド名でもあるMONTSON(モンソン)。フレームビルダーが自らライダーとなったチームのひとつだ。カイセイ8630Rで軽量に作られたフレームに前後ドロヨケをフル装備したが、このドロヨケの取付方法がすごかった。ビルダーの尾坂氏はフレームだけでなくバッグも製作できるテクニックを生かし、ドロヨケをワンタッチで外すためにホックを採用。ネジを使いドロヨケの裏から固定と見せかけて、実はホックでドロヨケが外れるのだ!
柳サイクル・YANAGI・YANAGI
柳サイクルのバイクは700×33.3Cタイヤを履いたドロヨケなしの仕様。パイプはアグレッシブな走行に対応するためタンゲ・プレステージの0.8-0.5を採用。コースを下見した時点では「もう少し太いタイヤが欲しい」と言っていたビルダーの飯泉氏だが、フレームが完成したあとなのでやむを得なかった。ハンドルバーは日東・RM03で、グラベル用のハンドルバーの中でもコンパクトなものを選んでいる。
自作自転車秘密研究所・NAGARA・NAGARA
自作自転車秘密研究所を名乗る服部氏のブランド、ナガラ。服部氏は自宅でフレーム製作から塗装まですべてをこなすホビービルダーだ。これまで7台の自転車を自作したが、それらはスチール、木、カーボンなどを素材とし、斬新なチャレンジを続けている。このバイクもそうで、前三角は四角断面のカーボンをラグで繋ぎ、さらにキャリアやドロヨケまでも自作している。並み居るプロのビルダーたちに勝負を挑む心意気がひしひしと伝わってくる一台だ。
サイクルグランボア・GRANDBOIS・GRANDBOIS
2017年、JBTのお手本となったフランスのコンクール・マシーンに出場したサイクルグランボア。ビルダーの土屋さんはこのときのフレームをベースにさらに細部をブラッシュアップさせてJBTに臨んだ。ハンドメイドの超軽量フロントバッグやアルミのリベットで留められたイデアルのサドル、非接触式ダイナモなどなど。集計はオープン参加扱いとなったが、おそらくダントツの首位だったはずだ。
絹自転車製作所・テンションシルク・テンションシルク
シルクサイクルズは自転車のサイドバッグに分解したもう1台のフレームを入れ、車輪1ペアをリアサイドに吊して会場に乗り入れた。つまり、自転車で自転車を運んできたのだ。コンパクトになるフレームの秘密はダウンチューブの位置に来る「ヒモ」。これで大丈夫なのかという問いにも「80kgのライダーに乗らせ、走行会で完走して証明する」と言い切った。
プレゼンテーションの前に重量計測と検車があったのだが、「それじゃ意味がない」と先にプレゼンで組み立てて見せてから検車に臨んだ。
ベロクラフト・ベロクラフト・VELOCRAFT
ベロクラフトは装備を含めた車重10554gと基準の10kgをわずかに上回っただけで収め、かつドロヨケや発電式前後ライトなど加点ポイントをしっかり抑え、優等生なツーリングバイクを作ってきた。1日目終了時点からポイント首位に立ち、走行会も上りは3位通過、輪行もかなりシンプルな方法でまとめ、総合1位で初開催のJBTを終えた。
Cスピード・エキップCスピード 鉄中年林走会 KeihinPista・course nove
フィックスドライブの実力を見せるために固定ギヤで参加のシースピード。JBTのレギュレーションでは変速機構を持ったギヤシステムが必須要素だったのですわオープン参加扱いかと思われたが、なんと超絶古い変速システムを前後に装着しての登場だ。2.6倍と2.1倍の2種類でどんな坂でもこなせる、はずだったが、走行会では……やはり固定ギヤでダートを下るのは大変か。
東京サイクルデザイン専門学校・ひろちゃんず・SPROUT
東京サイクルデザイン専門学校(TCD)からは3チームが出場。こちらは「ひろちゃんず」、ビルダーは梶内さん、ライダーは笠井さん。「新しい時代のツーリングバイクを目指した」と梶内さんがプレゼン。コンポを105でまとめたあたりも学生らしい。ライダーが走行会途中で体調を崩しリタイアに終わったのは残念。
東京サイクルデザイン専門学校・SHIBU・SHIBU
TCDの2チーム目は「SHIBU」。学校のある渋谷の渋と、走行会のコースにある渋峠とを掛けた名前らしい。なんとリアエンドやフォーククラウンはメンバーが自宅で自作したCNCマシンを使って削り出したそうだ。よく見ればチェーンステーもとってもヘンなカタチをしてる!「プロに伍するものは作れないだろうと思ったけれど、新しくツーリングバイクを始める人向けに作った」
東京サイクルデザイン専門学校・TCD・comod
TCDの3チーム目はなんとeバイクを持ち込んだ!シマノのユニットを使ってハンドメイドフレームを製作。バッテリーを支えるためにダウンチューブは50φのパイプを使った。BBを基準に作る従来型のフレーム作りでは製作が難しく、ダミーでシートチューブとBBを付けて全体を製作してから削り落としたとのこと。車重はフル装備で18キロ!
EMERALD BIKES・EMERALD BIKES・EMERALD BIKES
エメラルドバイクは枻出版で働く友廣氏のブランドだ。「鉄でやるからには鉄らしいシルエットを」と、650Bホイールとディスクブレーキをスタイリッシュなフレームに落とし込んだ。ただ機械式ブレーキレバーで動かす油圧ディスクが検車時点ではうまく動かず焦る場面も。「触り慣れているシマノと同じかと思ったら全然違った」と苦笑い。
今野製作所・CHERUBIM・CHERUBIM
ケルビムはブランドイメージから太いタイヤをどう作ってくるかに興味があったが、650x32Bでダートを走りきれるライダー(実はビルダーの関谷氏)というチョイスで登場。トランスミッションはワンバイ、スルーアクスルに油圧ディスクとスキのないアッセンブルで注目を集めた。走行会は当然のように先頭でフィニッシュ
タカギサイクルワークス・タカギサイクルワークス・WILDGOOSE
タカギサイクルワークスはTCDの講師である高木氏の出場。イギリスのロードスターをお手本にした散歩車のようなシルエットで、ギヤは内装3段と極めて潔い。BBハイトも比較的高めで「浮遊感を楽しみたいからワイルドグースと名付けた」。BB下のダブルレッグスタンドも意外なところだが、その秘密は走行会後の輪行タイムトライアルで明かされた。
パナソニックサイクルテック・Panasonic Bike・Panasonic
13人の職人が年間1000台のオーダーフレームをこなすパナソニックが威信をかけて出場。チタンバイクかと思いきや今回はクロモリで、ラインナップのORCD05エンデュランスロードをベースにグラベルを走れるようカスタムしてきた。バナレーサー・グラベルキング32Cにドロヨケを装備し、登録選手の伊藤氏が乗って万全の構え。
M.マキノサイクルファクトリー・サイクルスポーツ・MAKINO
サイスポチームはご存じM.マキノサイクルファクトリー製のバイク、装備含め9525gと重量ポイントでは3位に。ヒルクライムも7位でこなし、総合成績ではいいところに行くかに見えたが…。詳細は本誌9月号で!
オオマエジムショ・オオマエジムショ・après
筆者のチーム、オオマエジムショのアプレ・JBT。ごくごくオーソドックスな軽量化を行ったが、やはり軽量化はちりも積もれば……の究極形態。前日にリチウム電池に入れ替えたり、涙ぐましい努力が報われ、装備を含めての総重量は9392g。バイク単体ではおそらく8400g程度と思われ、そのアドバンテージが総合4位をもたらした。