Fumy’s eye 別府史之が見た世界 étape11

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別府史之が見た世界11

本場ヨーロッパで活躍するプロロードレーサー・別府史之選手の「今」を、本人の言葉で読者の皆さんにお伝えする連載の第11回目。今回は12月上旬に行われるEスポーツ世界選手権に向けたトレーニングについてです(編集部)。

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Bonjour!こんにちは、別府史之です。

シーズンオフではありますが、なんだかいつものシーズンオフとは違う……。そんな日々を過ごしてます。

というのも例年と違ってジャパンカップやさいたまクリテリウムにも出ていないですし、そもそも日本にも帰国していないせいか、気持ちを完全にスイッチオフするきっかけがなかったんですよね。こんな状況ですから、家族と旅行にも行けませんでしたし。変わらない毎日が延々と続いている、不思議な感覚です。

もちろん12月上旬のEスポーツ世界選手権への出場が決まっていて、10月半ばに最後のレースを走った後も、ゆっくりながらトレーニングを続けてきたせいでもありますね。だって1か月半しか間が開いてないですから、気を抜いたり、のんびり休んだりするわけにはいかなかった。

だからフランスはロックダウン中ではありますが、屋外に走りに行ってます。前回とは違って、今回はプロのアスリートは証明書さえ携帯していれば、外での練習は許されているんですよ。しかも春先のロックダウン中も屋内でトレーニングは続けていましたから、結局は一度も完全に下げ切る機会がないまま、1年間ずっとある程度の調子を保ったままここまできましたね。

 

別府史之が見た世界11

別府史之が見た世界11
別府史之が見た世界11

 

Eスポーツ世界選手権に向けてトレーニング

でもこの時期はやっぱり普段ならばシーズンオフですから、この間、うっかり外が寒いことを忘れて走りに出かけちゃったんですよ。夏の感覚のまま補給食を持たずに練習に行ったら、ハンガーノックになっちゃった(笑)。家まで残り15kmくらいしかないのに、急に、あれ、なんかおかしい……身体が動かない、もうダメだ……って。急いでパン屋さんに駆け込みました。

夏場なら、200kmも走らない限り、そんなに食べなくても水分補給だけで結構大丈夫なんです。でも冬は距離や時間から想像する以上に、カロリーを消費するんですよね。しかもE世界選用にインターバルとか強度の高い練習もしてますし。あれ以来、自転車にフレームバックをつけて、補給食をしっかり入れて練習に行くようにしてます。

あと今の季節、朝早い時間帯には、家の周りが深い霧で覆われてることも多いんです。そういう日は霧が晴れるのを待ってから練習に出かけるか、もしくはホームトレーナーでの練習に切り替えます。周りがなにも見えなくて、自動車との事故に巻き込まれると危ないですから。それに霧の中を走るとすごく寒い。しかもびしょ濡れになっちゃう。雨の中を走っているのと変わらないんですよ!

 

別府史之が見た世界11

 

ズイフトには攻略のコツがある

ホームトレーナーではEスポーツ世界選に特化したトレーニングを心がけてます。普段のロードレースとはかなり感覚が違いますからね。ズイフトのレースというのは最初から最後まで踏み続けなきゃならない。一発バーンと高い値を出せば決まるわけではない。その後も延々と高い値を出し続けることが必要なんです。いわゆる個人タイムトライアルのような感じですね。

 

別府史之が見た世界11

 

しかもズイフトって、独特の「コツ」があるんですよね。ただ踏んでればいいだけでもなくて。たとえば山は上りに入ってから踏むのではなく、もうちょっと前から踏み始めなきゃならないとか。スタートでちょっとでも遅れを取ると、もう追いつけなくなっちゃうとか。どこでどういう風に踏めば差がつくのかを熟知していて、かなりマニアックに綿密な作戦を練ってくる選手も絶対にいるはずですよ。

オーバーヒートしないようにすることも大切です。この大会用に僕は大きな扇風機さえ購入しました。それに本番は庭先でやるつもりです。屋内だとどうしても熱がこもっちゃって、身体が熱くなりすぎて、汗が滝のように流れますから。普通に走りに行く場合とは違って、ズイフトは外気温が低いくらいでちょうどいいかな。

そうなんです、Eスポーツ世界選は、普段のロードレースとはまったく違う細々とした準備が発生するんですよ。だって世界中に散らばっている選手たちが、各々好きなところからログインして争うわけですもんね。

個人的には扇風機の他に、走行中に画面が見やすいようにプロジェクターも買いましたし、ズイフトからは専用のホームトレーナーも送られてきました。出場選手全員に同じものが貸与されるシステムです。レース前には身長や体重を計測し、その画像をUCIに送ります。その際には日付を証明するものが写り込んでいなければならないし、体重が正確に計測されているかどうかを10kgの重りでチェックもする必要もある。それに本番中はスマホとタブレットとで、走る自分を撮影もします。

 

 

今回もコメントや質問ありがとうございます!

1)プロロードチームは毎年のようにメンバーの入れ替わりがありますが、新しいスタッフやチームメートと打ち解けるコツはありますか?(ぽっしゅさん)

たとえチームは一緒でも、各自トレーニングは自宅周辺でやっているので、チームメートと顔を合わせるのはレースや合宿の時だけなんです。しかも1月に入ればすでにレースモードですから、合宿でも各々が自分の練習に集中してます。仲間とのコミニュケーションにばかり時間を裂いているわけにはいかない。

だから12月の顔合わせキャンプって結構大切です。和気あいあいやって、みんなと打ち解ける絶好の機会なんですよね。自己紹介タイムを設けたり、のんびり走りながらみんなでおしゃべりしたり。合宿中の1日くらいはみんなで飲みに行ったりもします。

そうそう、レディオシャック時代にはジョフロワ・ルキャトルがいろいろ企画を練って、ネオプロのウェルカムパーティーを開いたこともありました。やってることはちょっとしたゲームというか、いたずらだったんですけどね。小さな障害物コースを作って、バットを額につけて、ぐるぐる10回まわってふらふらな状態でさあスタート! 誰が一番早いか!? みたいな。もちろんSNSには絶対に投稿しないこと、というお触れが出ました(笑)。

 

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2)料理をされる別府さんですが、日本食も作りますか?(とにおさん)

日々せっせと料理はしているんですけど、う〜ん、これぞ日本食、っていうものはあまり作らないかもしれないです。ただフランスの人たちに日本食を振る舞うときなんかは、甘辛い味付けのものが喜ばれますね。親子丼とか照り焼きとか。料理に砂糖を入れると「おお!?」となるみたいです。

この間の水曜日には、娘と一緒に餃子を作りましたよ。『水曜日は、ラビオリの日!』っていうタイトルの本を娘が持っているんです。ラビオリって餃子のことなんですけど、それで「餃子が作りたい」って言い出したので。ひき肉に、白菜、にんにく、生姜のみじん切りを混ぜて、皮で包んで。うん、美味しくできました。今回は皮は作らなかったんですけど、本では餃子の皮から作ってるので、「今度は皮から一緒に作ろうね〜」って言ってます。

別府史之が見た世界11
別府史之が見た世界11

時々は自家製納豆を作ったりもします。大豆をまず水で1日ふやかして。その後、圧力鍋で加熱して、日本から買ってきた納豆菌を混ぜて、ボイラー室に入れておくと出来上がり。温度を25度くらいに保っておかなきゃいけないのがなかなか難しいですし、結構手間がかかるので、時間と気力のあるときしかやらないですけど。でも手作りすると大豆の甘みが感じられて美味しいですよ。市販の納豆とはまた違った味わいがありますね。

 

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とにかく12月9日開催のEスポーツ世界選手権へ向けて、今は集中力を切らさず、しっかりと準備を積んでいくつもりです。記念すべき第1回大会ですし、長年ズイフトでアンバサダーを務めてきたこともありますし、なにより日本代表のジャージを着て走るのですから、いい走りがお見せできるよう頑張ります。

別府史之が見た世界11

そして次回のこの連載では、みなさんに色々と良いご報告ができると思います。ぜひぜひ楽しみに待っていてください!

それでは、また。

別府史之

 
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(宮本あさか)