パナレーサー”EVO4″への進化
目次
定番のレーシングタイヤ、パナレーサー・レースシリーズが全面リニューアル。その進化の方向性とは?ライター安井がレースAの全タイプに試乗した。
レーシングタイヤの理想を目指して
理想のロードバイク用タイヤとは何か。まず必要なのは転がり抵抗の低減と軽量化だろう。要するに「いかに速く走るか」だ。そしてグリップの増強。「いかに速く曲がるか」。摩耗・劣化しにくくパンクしにくく快適であることも大切だ。さらに「扱いやすさ」や「乗り味の良さ」などという曖昧な指標も性能要目に入る。当然、安全性は大前提。
これらは相反することが多いため、おのずとレーシングタイヤの開発目 標は全項目最適化になる。「コッチを立てればアッチが立たず」が何パターンも存在し、それが絡みあっている商品。だからタイヤは面白い。日本の自転車乗りの足元を支えてきたパナレーサーは今春、トップモデルのレースシリーズをエボ3からエボ4へと進化させた。前作エボ3は公平に見て前述の最適化レベルがかなり高いタイヤだったが、新作は「走行性能と快適性のバランスを高めた」という。レベルをさらに底上げしたということだ。
その手段はコンパウンドと断面形状の変更。コンパウンドでグリップを上げつつ走行抵抗を下げ、断面形状でコントロール性を上げた。モデルによっては数十gの軽量化を実現しているが、基本構造は変わっていないから定評ある耐パンク性は落ちていない。チューブレスをチューブレスレディに変更したことで、快適性にも大きく手を入れた。 実直に全方位進化を目指した新世代のレースシリーズ。理想までの距離はどれほど縮まったのか。
Detail
ZSGアドバンスドコンパウンドへ
●主な変更点はコンパウンド。軽量タイヤ、ジラーに採用された「ZSGアドバンスドコンパウンド」を改良し、エボ3から転がり抵抗を10%軽減、グリップを20%強化した。異物によるトレッドの傷も入りにくくなっているという
チューブラーは杉目のトレッド
●レースAクリンチャーとチューブレスレディはスリックだが、チューブラーは荒れた路面にも対応したミックストレッドパターンを採用する。
センターのとがりが抑えられた
●レースシリーズの特徴であるオールコンタクトトレッドシェイプ(中心がとがった断面形状)は、中心部分の高さが抑えられ、ややおとなしくなった。これによってハンドリングの癖が低減、グリップを維持したままコントロール性が高まっているという
New Line Up
チューブレスレディに当たる「チューブレスコンパーチブル」が加わるレースAエボ4シリーズ
クリンチャー、チューブレスコンパーチブル(チューブレスレディに当たる)、チューブラーの3タイプが用意される。チューブレスコンパーチブルは210gと驚くほど軽量に仕上がっている。また、今まで生産技術的に困難とされていたチューブラーでのオールコンタクトトレッドシェイプを実現したことも注目だ。チューブラーの欠点である真円度も向上しているという。クリンチャーには目的別にA、D、Cがある(チューブレスコンパーチブルとチューブラーはAのみ)。
Model01
クリンチャータイプ
DATA
●価格/5400円(税抜・1本)
●サイズ/700×23C、25C、28C
●参考重量/230g(25C)
●カラー/黒、黒×赤サイド、黒×青サイド
※28Cは黒のみ
Model02
チューブレスコンパーチブルタイプ
DATA
●価格/6500円(税抜・1本)
●サイズ/700×25C、28C
●参考重量/210g(25C)
●カラー/黒
Model03
チューブラータイプ
DATA
●価格/9800円(税抜)
●サイズ/700×25mm、27mm
●参考重量/280g(25mm)
●バルブ/2ピース仏式(52mm)
●カラー/黒
「C」「D」も刷新された
万能モデルのレースAと同時に、耐パンク性・耐久性に優れツーリングやロングライドに最適なレースD、コントロール性をさらに高め荒天時にも強いレースCも一新されている。なお、軽量担当のレースLは軽量モデル「ジラー」に一本化される。
Model04
レースCエボ4
DATA
●価格/5400円(税抜・1本)
●サイズ/700×23C、26C、28C
●参考重量/220g(26C)
●カラー/黒×スキンサイド
Model05
レースDエボ4
DATA
●価格/6000円(税抜・1本)
●サイズ/700×23C、25C、28C
●参考重量/240g(25C)
●カラー/黒、黒×茶サイド
オリジナルのシーラント剤も登場
チューブレスレディを展開するに当たって、同社は専用のシーラント剤も用意。既製品の流用ではなく独自開発品で、6mm程度の大きなパンク穴にも対応する。日本製。
シールスマート
DATA
●価格/800円(税抜・120ml)、2100円(税抜・500ml)
●容量/120ml、500ml
Impression
本誌でインプレや技術系記事を担当するライター。理系出身者ならではの視点を持ち、自転車の探求に余念がない。パナレーサーの進化を長年つぶさに見てきたライダーでもある。
癖のあった前作から、よりオールラウンドに変化した
今回はホイールを同銘柄(ヴィジョン・メトロン30SL)に統一し、レースAの25C全モデル(クリンチャー、チューブレスコンパーチブル、チューブラー)に試乗した。クリンチャーは、断面形状の変化により扱いやすくなっただけでなく、走りが上質になった印象だ。チューブレスコンパーチブルは驚くほど快適性が高い。滑るような滑らかさも持ち合わせており、チューブレスの構造的メリットをうまく生かしたタイヤになっている。最も気に入ったのがチューブラー。パナレーサーらしいコシがあり、しかも減衰が速く乗り味がいい。負荷を掛けると羽のようなしなやかさが顔を出すなど、従来のチューブラーらしさと現代的な高性能とをうまく融合させている。新世代のレ ースA、理想に向かって前進したと言っていい。