ジャイアントの名車TCR 第9世代が登場!

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TCR2021

ジャイアントの軽量オールラウンドレーシングロードTCRの9世代目の最新モデルが先日発表された。フラッグシップモデル・TCRアドバンスドSL0ディスクに試乗し、開発テーマとされる重量剛性比、空力、コントロール性能という3つの性能がどの程度進化しているかチェックする。

 

TCRはどんなバイク?

1997年に誕生したジャイアントの軽量オールラウンドレーシングロードTCRは「トータル・コンパクト・ロード」の頭文字から名付けられた。軽量化と高剛性化、動力伝達性能の強化を図るため、トップチューブがヘッドチューブからシートチューブに向かって斜めに下がっているコンパクトフレームを初代モデルから一貫して採用しているのが特徴だ。

このフレームを設計したのはバルセロナ五輪でクリス・ボードマンが金メダルを獲得したバイクの生みの親マイク・バロウズ。今ではスローピングフレームとして数多くのブランドに採用されているこのコンセプトをいち早く採用したのはジャイアントだったのだ。

TCRは初代モデルこそアルミフレームだったが、2002年に発表された2代目以降はフルカーボンフレームとなる。その後も3代目でISPを採用し、5代目ではケーブルの内装を実現するなど、次々に革新的なテクノロジーを採用し、進化を遂げてきた。歴代モデルは、オンセやTモバイル、ラボバンク、ジャイアントアルペシン、サンウェブ、CCCといった名門チームをサポートし、世界最高峰のレースで多くの勝利を収めている。

 

9代目TCRはどこが進化したのか?

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9代目となる最新TCRは、「トータルレースバイク」をコンセプトに、重量剛性比、空力、コントロール性能という3つの性能強化をテーマに開発が進められた。

重量剛性比向上は、自社工場で原糸から生産し編み上げたカーボンシートと耐衝撃性を高めるためカーボンナノテクノロジーを採用したレジンを組み合わせて素材レベルから実現。さらにこのシートをレーザーカッティングで切り出し、積層も機械化することでフレームとフォークの重量を限界まで削減している。さらに最上位モデルのTCRアドバンスドSL0ディスクでは、塗装の使用料を最小限に抑えて50gの軽量化も達成し、フレームセット全体では先代モデルより140gの軽量化を果たした。

空力性能の追求は、フレーム各部にカムテール形状を用いることで実現。ディスクブレーキ仕様ではヘッドまわりの空気の流れを整えることでさらに空力性能が向上している。風洞実験ではライダーが乗車してペダリングする状況を再現するため、動的マネキンを利用したという。

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フレーム各部にカムテール形状が用いられている

コントロール性能の向上は、ディスクブレーキとスルーアクスルの採用、ディスクブレーキモデルで最大32mm幅のタイヤを搭載可能とすることで実現している。フロントフォークを左右対称の形状に近づけることで、素直なハンドリングも実現している。

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ディスクブレーキとスルーアクスルを採用

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ディスクブレーキモデルでは最大32mm幅のタイヤが搭載できる。このTCRアドバンスドSL0ディスクのタイヤはカデックス・カデックスレースチューブレス25C(チューブレスレディ)

 

9代目TCRのラインナップ

全モデル・グレードでカーボンフレームを採用。フラッグシップモデルでは最高品質のカーボンフレーム・アドバンスドSLを採用し、フレームセットも用意される。それ以外のモデルはコストパフォーマンス重視のアドバンスドカーボンフレームを採用し、完成車のみの販売となる。詳しいラインナップについては下記を参照。

【完成車】
●TCRアドバンスドSL0 ディスク:120万円(税抜)
●TCRアドバンスドSL1ディスクKOM:74万円(税抜)
●TCRアドバンスドプロ0ディスク:62万円(税抜)
●TCRアドバンスドプロ1ディスク:45万円(税抜)
●TCRアドバンスドプロチームディスク:45万円(税抜)
●TCRアドバンスドプロ1(リムブレーキ仕様):40万円(税抜)
●TCRアドバンスド1KOM(リムブレーキ仕様):26万円(税抜)
●TCRアドバンスド2ディスクSE:26万5000円(税抜)
●TCRアドバンスド2KOM:21万円(税抜)

【フレームセット】
●TCRアドバンスドSLディスクフレームセット:36万円(税抜)
●TCRアドバンスドSLフレームセット(リムブレーキ仕様):33万円(税抜)

 

インプレッション:総合力はTCR史上最高。上半身をうまく使うと暴力的に加速する

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バイクにまたがって加速した瞬間に、ヘッドまわりの剛性感の高さを感じた。普通に走っていても十分軽快に加速するのだが、ペダリングに合わせてハンドルをリズミカルに押し引きすると、上半身の力もペダリングに加わって暴力的な加速を味わえる。ジャイアント独自のコラム規格・オーバードライブ2が上半身の力をしっかりと受け止めてくれ、405mmとディスクブレーキロードとしては短めなリヤセンターがペダリングで生み出したトルクを効率よく推進力に変換してくれるからだろう。

同時に挙動の軽快さが印象に残った。加速時はもちろん、上りも軽やかだ。これは先代モデルと比べて140g軽くなったフレームの影響もあるが、アッセンブルされているフックレスカーボンホイールとタイヤの足まわりがいい仕事をしていると思う。フックレスカーボンホイールはチューブレスレディの良さはそのままに重量を削減しており、これが転がり抵抗の少なさやホイールの外周重量の軽さとして現れたのではないか。

ピュアレーシングバイク特有の過敏なハンドリングではなく、直進時は比較的安定志向が強く、ハイスピードでコーナーに突入しても安定感があり、気持ちにゆとりを持ってコントロールできるのも印象的だった。ディスクブレーキ化による低重心化やスピードコントロールのしやすさ、スルーアクスル化によるフレームやフォークとホイールの一体感がもたらす素直な挙動がそう感じさせるのだろう。

全体として挙動も素直で扱いやすく、フレームの硬さはあるもののレーシングバイクとしての快適性も及第点。何よりポジション調整の自由度が高いのも魅力だ。ステムはジャイアント独自規格だが、角度も突き出し量も複数用意されていてポジションの調整幅は大きい。自転車は機材スポーツだからバイクをライダーの身体や乗り方に合わせてどれだけ調整できるかという点は重要だからだ。

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新型TCRとともに新たに設計された「コンタクトSLR OD2ステム」(2万6000円・税抜)は角度も突き出し量も複数用意されている

フックレスカーボンホイールやリヤ12速のスラム・レッド、パワーメーターを標準装備しており、トータルパッケージではTCR史上最強。他社のライバルとも互角以上にやり合える戦闘力を持っている。

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TCRアドバンスドSL0ディスクは、ホイールにカデックス・カデックス42チューブレスディスク、コンポーネントにスラム・レッドeタップAXSを採用。クオークのパワーメーターを標準装備する

浅野真則
自転車ライターとして活動しながら、プライベートでJエリートツアーやホビーレースに参戦。愛車は軽量レーシングモデルばかりだが、最近はグラベルロードにも興味がある。

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