猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第53回

目次

オフロードのタイヤを履いたいつものロードバイク

すぐにパンクしたオフロードのタイヤを履いたいつものロードバイク。下からの衝撃で手の感覚がまったくなくなった。坂バカ俳優も楽ではない

坂バカ俳優、猪野学(いの まなぶ)。NHK BS1の番組「チャリダー★」で活躍する姿は、多くのサイクリストが知るところだ。Cyclist(サイクリスト)で連載中だった「猪野学の坂バカ奮闘記」が、サイト閉鎖にともないサイクルスポーツへお引越し。さらなる活躍をレポートしていく。今回は、グラベルクラシックやくらいでの竹谷賢二さんとの対決に向けた試走編だ(編集部)。

前回のお話(打倒! 竹谷賢二企画スタート編)

 

やくらい試走に挑む

「グラベルクラシックやくらい」で師匠でもある竹谷さんに勝つために。

1日3食生活を始めた私は、いよいよレース本番のコースでグラベルのテクニックを学ぶことになった。

新幹線と車を乗り継ぎ4時間。宮城県は加美町にやって来た。宮城県と山形県の県境近くの山間部だ。至る所に「熊出没注意」の看板があって少し怖い。

今回は試走会ということで平日にもかかわらず50人近くのグラベルライダーが集まった。中には日本トップクラスの選手もいてレベルの高さがうかがえる。

今回わたしにグラベルロードのテクニックを教えてくれるのは山本和弘(カズ)さん。オフロードのスペシャリストだ。

しかし竹谷さんには何度も負けているらしく今回の打倒竹谷企画にはモチベーションが高い。

「猪野さん! 勝てますよ! 竹谷さんに!」

そ、それはどうことですか?と質問すると竹谷さんはメカトラやパンクが多いらしい……。やはりメカトラ頼みだ(しかしそれは本当に起こった)。メカトラだろうが何だろうが勝てばいい!ということでいざ! グラベルロードへ!!

私はグラベルロードを持っていないのでロードバイクに700×34Cの太さのオフロードのタイヤを履いて試走に挑んだ。スタートしてすぐ激坂が現れる。2kmほどの激坂を終えるといよいよ第一グラベル区間。今回は5つのグラベル区間がある。

 

山本和弘さんと猪野さん

今回わたしにグラベルロードの全てを教えてくれたカズさん! グラベルなのに美しいペダリングが目に焼き付いている

 

グラベル走行の肝

ロードバイクでも上りはオフロードを走れた。

問題は下りである。ロードバイクは衝撃を吸収してくれないのでコントロールが難しい。ガツンっ!という音と共にパンクしてしまった。リム打ちだ。空気圧が少な過ぎたらしい……。次々と試走会参加者に抜かれていく。「撮影のためにわざとパンクですか?」とイジられるが当然わざとではない。

2度目のパンクを防ぐために空気圧を高めにして再スタート。どうやら今回のレースは「空気圧」が肝になりそうだ。空気圧が高いとパンクのリスクは減るがグリップ力が減る。上りは踏むと滑るし下りはグリップ力を失いコースアウトしそうになる。

ロードバイクでは勝負にならないぞとヘコんでいるとカズさんが「乗ってみます?」とキャノンデールのグラベルロードを差し出してくれた。その言葉を待っていた!

走り出して2秒で驚く! 何だこれは?? ロードが軽トラックだとしたらグラベルロードは観光バスの乗り心地だ。全く下からの衝撃を感じない。サスペンションが付いていないのになぜだ? 

その答えはやはり「空気圧」なのだ。貸してもらったグラベルロードは何と700×45Cの太さのタイヤまで履ける。タイヤが太いと空気圧は減らせる。すると衝撃を吸収しグリップ力が増すのである。なるほどそういうカラクリか!?

ガレ場の下りでも空を飛んでいるみたいに衝撃を感じずスイスイ下れて気持ちいい!! MTBのように飛んだり跳ねたりはできないが、グラベルロードは形状がロードバイクなので空気抵抗が少なく圧倒的にオフロードを速く走れる。この爽快感はクセになる魅力だ!

 

カズさんにライン取りを教わる猪野さん

カズさんにライン取りを教わる筆者。グラベル区間はライン取りひとつで全然スピードが変わる面白さがある

 

カズさん曰くグラベルロードができて8年くらいだが毎年開発が進み進化が凄いらしい。驚くことにロードバイクとの重量差はそれほど大きくない。さらにキャノンデールはブルベなどの超長距離用のバイクも開発しているらしい。

本番のレースも、キャノンデールのまだ日本に一台しかない、最新グラベルロードをお借りすることになった。NHKでは決して放送できないが竹谷さんがスペシャライズドで私がキャノンデール。アメリカ大手のメーカーの戦いでもあるのだ!

試走会が終わりカズさんから最後に本番での空気圧を決めておこうということになった。3気圧から始まり0.5気圧ずつ下げていく……。0.5気圧下げるだけで全く違う乗り物になる。下げすぎるとリム打ちのリスクもあるので結局1.5気圧で挑むことになった。

この試走会により空気圧も決まり、本番のコースも把握した。竹谷さんは試走なしで挑むらしい。この時点で私が一歩リードしているわけだ。

食事と機材がそろった! あとは戦えるフィジカルを作れば完成である!!

私は今回新たなコーチ陣を迎えた……。53歳の身体は地獄の高強度無酸素地獄に耐えられるのだろうか? 次回っ!! 我が家で何度も吐いた! 無酸素地獄へようこそ! 編へと続く。

 

試走前の宿飯

試走前の宿飯。ご飯大盛りで勝てる身体作りも怠らない