ジャイアントのエアロロード「プロペル」が第4世代へ進化【解説・試乗】
目次
ジャイアントのエアロロード「プロペル」がフルモデルチェンジを遂げた。究極の速さを求め、コンプリートバイクとしてのさらなる完成度を追求し、空力性能はもちろん、軽量性、剛性、快適性に至るまで全方位に磨きをかけてきた。第4世代へと進化した新次元のパフォーマンスを、元プロロードレーサーの佐野淳哉と自転車ジャーナリスト・吉本司が体験する。
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ジャイアント・新型プロペルの特徴

ジャイアント・プロペル 写真はアドバンスド SL グレードの完成車「プロペル アドバンスド SL 0」
ジャイアントのエアロロード「プロペル」は、2022年に登場した第3世代において、単なる空力特化型から軽量性や快適性をも兼ね備えた「エアロオールラウンダー」へと進化を遂げた。そして今回発表された第4世代は、その万能性を維持しつつ、核心である空力性能をさらなる新次元へと昇華させている。
開発の鍵は「究極のスピード」に向けた新しいアプローチだ。「絶対的なスピード」「瞬発的なスピード」「持続可能なスピード」という3つの要素から、フレームやパーツを個別に設計・評価するのではなく、それらが連動し、さらにライダーが乗った状態での最適化を図る総合的な開発手法を導入。空力はもちろん、剛性や操作性といった各要素をこの新コンセプトで評価することで、実際の走行シーンでより高い効果を発揮する性能を目指した。
水平に近いトップチューブや、後端を切り落とした翼型形状「トランケイテッド・エリプス」によるエアロチューブなど、基本のフレーム形状は前作を踏襲しつつ、細部は徹底的にブラッシュアップされた。製造面でも、カーボンシートの大型化、成型用ブラダーの削減などにより精度を向上。その結果、アドバンスド SL グレードのフレームセットにおいて、前作からねじり剛性は3.4%、ペダリング剛性は2.4%向上し、フレーム単体で45gの軽量化を果たし800g(フォークは360g)を実現。剛性重量比は5.7%も高められている。
このフレームセットの性能をさらにバイクの総合性能として飛躍させるのが、フレームと同時に開発された専用コンポだ。ステム一体型ハンドル「コンタクト SLR エアロ インテグレーテッド」をはじめ、「カデックス・MAX 50 ホイールシステム」や「カデックス・エアロ」タイヤを投入し、これらが一体のシステムとして機能することで、高速走行時の抵抗を旧世代比で18.4Wの削減に成功した。さらに、この手法は軽量化にも大きく貢献しており、バイクシステムの構成(フレーム、ホイール、タイヤ、コックピット)では、前作比で355gもの大幅な軽量化を達成している。
こうした新たな設計プロセスにより、バイクシステムとしてのハンドリング効率は14.8%、ペダリング効率も14.2%高められている。また、エアロロードの弱点とされがちな快適性についても、シート周辺の連動設計によって垂直方向の柔軟性が最大25%向上した。フロントセクションも新型ハンドルセットの効果で柔軟性が12.8%高まっている。
新たなコンセプトによって全方位で性能を磨き上げ、「エアロオールラウンダー」としての極致に達した新型プロペル。ジャイアント史上最強のエアロロードが、ここに誕生した。

空力性能における要所の1つであるヘッドチューブは、前作比で後方へ延長された。前端の鋭い船首形状と中央部のくびれが相まって、空気抵抗を低減し、後方へ淀みなく気流を導く

前作よりも上下に薄く、シートチューブ側を極限まで細めた新設計のトップチューブ。メーカー側は明言していないが、この造形は乗り心地の向上やフレーム全体の剛性調整に大きく寄与していると推察される

フロントフォークはトランケイテッド・エリプスのチューブで構成。クラウンは極限の薄さで、キャリパーとの一体感を強めたディスク台座により、空力性能を徹底的に追求した。タイヤ幅は最大32mmまで対応

前作ではシートチューブに直接接続されていたシートステーだが、今作ではシートチューブ手前でベンドし、オフセットさせる新たな造形を採用。空力性能と快適性のさらなる向上を図っている

最上級のアドバンスドSLはISP仕様となる。シートヘッドは肉抜きの形状を変更して、カーボンのポスト部分への負担を軽減

新設計のステム一体型ハンドルは、アップバーをわずかに前方にオフセットさせ、またドロップをフレア仕様にすることで、エアロ性能とともにライダーに快適なポジションを提供する

フレームと同時開発されたカデックスの製品で足回りを最適化。1250gの超軽量ホイール「MAX 50 ホイールシステム」と、64個のグルーブを刻む新型タイヤ「エアロ」との相乗効果により、空力を含む走行抵抗を徹底的に削減している

「MAX 50 ホイールシステム」は、カーボン製のハブシェルとスポークを一体成型することで、高い剛性と圧倒的な軽量性を両立。さらに、リム側のニップルでスポークテンションを調整する構造を採用しているため振れ取りも可能だ

標準装備されるボトルケージはダウンチューブとシートチューブそれぞれへの専用設計となっており、軽量性と空力性能を両立。一般的な74mm径ボトルを確実にホールドできるため、専用品ながら高い汎用性も兼ね備えている

リヤエンドには、最新のロードバイクにおいて事実上の標準となったUDH規格を採用。細部に至るまで、一切の妥協なく最新仕様へのアップデートを果たしている

基本的なアウトラインに大きな変化はないBBまわりの造けいだが、無駄を省いたスマートなシルエットにより、駆動に必要な剛性を確保しつつ重量を抑える。シェル規格はPF86
ジャイアント・新型プロペルのラインナップ
新型プロペルは3グレードのフレームセットを展開。ワールドチームのジェイコ・アルウラーが駆る最高峰が「プロペル アドバンスド SL」で、シート形状はISP仕様。重量はフレーム単体が800g、フロントフォークは360g。セカンドグレードの「プロペル アドバンスド プロ」はカーボン素材が異なり、セパレート式のシートポスト構造となる。フロントフォークとステム一体型ハンドルは上位グレードと共通だ。ベースグレードの「プロペル アドバンスド」は、フレーム単体重量863g、アドバンスドグレードのカーボンとなるフォーク重量は410g、ハンドルセットはセパレート型となる。全グレードで完成車が用意され、上位2グレードはフレームセット販売も行われる
【アドバンスド SL グレード完成車】
プロペル アドバンスド SL 0

●価格/159万5000円
●フレーム/アドバンスド SL カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・デュラエースDi2
●ホイール/カデックス・MAX 50 ホイールシステム
●タイヤ/カデックス・エアロ チューブレス 700×28C
●ハンドルステム/ジャイアント・コンタクト SLR 0 エアロ インテグレーテッド
●サドル/カデックス・AMP
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/サテンプリズムパール
●参考重量/6.3kg(Sサイズ)
プロペル アドバンスド SL 1

●価格/121万円
●フレーム/アドバンスド SL カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・アルテグラDi2
●ホイール/ジャイアント・SLR 0 50 カーボンホイールシステム
●タイヤ/カデックス・エアロ チューブレス 700×28C
●ハンドルステム/ジャイアント・コンタクト SLR 0 エアロ インテグレーテッド
●サドル/ジャイアント・フリート SLR
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/サテンロウカーボン
●参考重量/6.8kg(Sサイズ)
【アドバンスド プロ グレード完成車】
プロペル アドンバンスド プロ デュラエース

●価格/121万円
●フレーム/アドバンスド カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・デュラエースDi2
●ホイール/ジャイアント・SLR 0 50 カーボンホイールシステム
●タイヤ/カデックス・エアロ チューブレス 700×28C
●ハンドルステム/ジャイアント・コンタクト SLR 0 エアロ インテグレーテッド
●サドル/ジャイアント・フリート SLR
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/スーパーノヴァグレイ
●参考重量/6.9kg(Sサイズ)
プロペル アドバンスド プロ 0

カラー:アビスティール

カラー:オブシディアンパルス
●価格/99万円
●フレーム/アドバンスド カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・アルテグラ Di2
●ホイール/ジャイアント・SLR 0 50 カーボンホイールシステム
●タイヤ/カデックス・エアロ チューブレス 700×28C
●ハンドルステム/ジャイアント・コンタクト SLR 0 エアロ インテグレーテッド
●サドル/ジャイアント・フリート SL
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/アビスティール、オブシディアンパルス
●参考重量/7.1kg(Mサイズ)
プロペル アドバンスド プロ 1

●価格/82万5000円
●フレーム/アドバンスド カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・105 Di2
●ホイール/ジャイアント・SLR 1 50 カーボンホイールシステム
●タイヤ/ジャイアント・ガヴィア コース チューブレス 700×28C
●ハンドルステム/ジャイアント・ SLR 1 エアロ インテグレーテッド
●サドル/ジャイアント・フリート SL
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/サテンクライオシルバー
【アドバンスド グレード完成車】
プロペル アドバンスド 2

カラー:マッハブルー

カラー:ホワイト
●価格/49万5000円
●フレーム/アドバンスド カーボン
●フォーク/アドバンスド カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・105
●ホイール/ジャイアント・P-A1 ディスク
●タイヤ/ジャイアント・ガヴィア コース チューブレス 700×28C
●ハンドル/ジャイアント・コンタクト SL エアロ
●ステム/ジャイアント・ コンタクト SL エアロ
●サドル/ジャイアント・フリート SL
●付属品/コンピューターマウント、専用ボトルケージ2個、チューブレスバルブ、シーラント
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/マッハブルー、ホワイト
【フレームセット】
プロペル アドバンスド SL フレームセット

カラー:サイバーサンセット

カラー:ナイトロパープル
●価格/58万3000円(サイバーサンセット)、60万5000円(ナイトロパープル)
●フレーム/アドバンスド SL カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●サイズ/XS、S、M、M/L、L
プロペル アドバンスド プロ フレームセット

カラー:サテングレイシャーティール
●価格/36万3000円
●フレーム/アドバンスド カーボン
●フォーク/アドバンスド SL カーボン
●サイズ/XS、S、M、M/L、L
ジャイアント・新型プロペル 試乗インプレッション〜エアロロードの枠を超えた「万能性」の真価

インプレッションライダー① 元プロロードレーサー・佐野淳哉さん 2014年の全日本選手権を制した元プロロード選手。現役時代は筋肉量の多い体つきを生かしたルーラーの脚質により、逃げ切り勝ちやTTを得意としていた。現在はライディングインストラクターなど多方面で活躍する

インプレッションライダー② 自転車ジャーナリスト・吉本 司 フリーの自転車ジャーナリスト。ロードバイクを主軸とするが、40年以上のキャリアにおいてさまざまな車種と遊び方に触れ、幅広い見識を持つ。前作プロペルをはじめ近年のジャイアントの主要モデルは全て試乗している
ここからは、注目の新型プロペルの走りを体感する。インプレッションライダーは、脚力こそ異なるが共に「ルーラー」の脚質を持つ佐野淳也さんと吉本司さん。エアロロードとの相性が極めて良い2人の視点から、その真価を探る。
CS:まずは、新型の第一印象を伺えますでしょうか。
吉本:前作のプロペルも、エアロロードというカテゴリーでありながら総合力に優れたバイクという印象でした。今回の新型はそのコンセプトをしっかりと踏襲しながら、走行性能をさらに高い次元へと進化させています。
CS:佐野さんは元プロ選手として、選手目線での印象はいかがでしたか。
佐野:独特な表現かもしれませんが、「ロードのエアロバイク」という言葉がしっくりきます。実際のレースは平地だけでなく、アップダウンや曲がりくねった道も登場します。そうしたあらゆる状況をしっかりと走り切れる性能をベースに持ちながら、そこにエアロ要素をプラスしたという感覚です。空力性能のみを追求したのではなく、汎用性の高いロードバイクに仕上がっていますね。
CS:エアロロードの肝である「平地の巡航性能」については、どのような感触でしたか。
吉本:フレーム剛性は非常に高いです。しかし、ペダリングで嫌な硬さを感じにくく、脚当たりが非常に良いのが特徴ですね。中負荷で踏み続ける巡航でも、フレームが推進力を維持してくれるような「流れ感」が強いため、脚を無駄に消耗することがありません。そこから高速域へ加速するためにガツンと踏み込めば、フレームの剛性をしっかりと感じますが、決して踏み抜けないような硬さではない。剛性バランスが絶妙で、それが平地性能の高さに直結しています。
CS:佐野さんにはプロレベルの高速域でも試走していただきましたが、いかがでしたか。
佐野:フレーム剛性の高さは、やはり高速域で活きてきます。踏んだ力が一切ロスされません。ただ硬いだけでなく、突き上げの角を丸めてくれるようなマイルドな感触があるのも素晴らしいですね。
CS:加速の局面での反応はどうでしょうか。
佐野:完成車重量が非常に軽いため、加速は実に鋭いです。私のように体格の良い選手は加速に大きなエネルギーを使いますが、軽さと剛性の相乗効果で、時速10~15km程度の低速からの加速でも非常に気持ち良く進んでくれました。
CS:乗り心地の向上も今回の開発のポイントとのことですが。

吉本:一般的にエアロロードは「縦に硬い」と言われます。今回は新型ホイールのカデックス・MAX 50 ホイールシステムが装備されていました。以前試乗した同・MAX 40 ディスク チューブレスがかなり高剛性だったので、よりリムハイトの高い「MAX 50」を履いた際の快適性を少し心配していましたが、それは杞憂でした。フレーム側で振動をしっかりといなす感覚があり、路面からの嫌な突き上げはほとんど感じません。エアロロード特有のネガティブな要素は見当たりませんでした。
佐野:僕は体重があるため、多くのフレームを柔らかく感じてしまう傾向があるのですが、プロペルは安心感を持って踏み込めます。それでいて、シッティングで回している場面でも不快な硬さは全くありませんでした。
CS:先ほど佐野さんは「オールラウンド」とおっしゃっていましたが、ハンドリングや操作性についてはいかがですか。
佐野:レース現場を想定すると、集団内での居心地が良いフレームだと感じました。ハンドリングは若干クイックですが、意のままに操作しやすい。それが集団内での動きやすさやコーナリングの正確性を生み、結果として精神的なゆとりにつながります。
吉本:直進安定性が悪いわけではなく、舵角を与えたときの動きが極めてシャープなんです。レーシングバイクとして正当な進化ですが、バイク操作に自信のないサイクリストの方だと、最初は少し緊張感を抱くかもしれません。とはいえ、タイヤ幅の選択や空気圧の調整で十分に対応可能な範疇です。
CS:完成車重量6.3kg(プロペル アドバンスド SL 0、Sサイズ、ペダルなし)という軽さですが、上り性能はどう評価されますか。
吉本:そんなに軽いんですね! エアロロードでありながら、軽量モデルのような「パリッとした軽快感」があります。今回の試乗では長いヒルクライムはありませんでしたが、この軽快さならそれもこなせると想像できます。極限まで上りを攻めるなら軽量モデルの「TCR」ですが、多様な地形を走るホビーサイクリストなら、プロペルを選んでおけば間違いなく守備範囲は広いと言えます。
CS:新設計のハンドルについても、使い心地を教えてください。
佐野:形状も握り心地も非常に良かったです。それと思いのほか剛性が高かった。僕は体重が80kg台後半あるので、下ハンドルを持って全力でもがくとハンドルがたわんでしまうこともあるのですが、それが全くなくて安心感がありました。
CS:参考重量は269gで、めちゃくちや軽量ですが、しっかりしているんですね。
吉本:単に軽量・高剛性なだけでなく、形状が非常に秀逸です。上ハンドルがわずかに前方へベンドしているため、リラックスして手を置きやすい。後端がとがっていないので手の平への圧迫感もなく、ドロップ部分もハンドルを遊ばせるように握れる設計です。荒れた路面などでは大きなメリットになるはずです。
CS:最後に、全体を通しての感想をお願いします。

佐野:エアロロードですが、どこでも対応できる高い汎用性を持ったバイクです。ジャイアントにはTCRもありますが、プロペルの方がBBまわりのしっかり感がある。僕みたいなパワーライダーだとペダリングの感覚がしっくりくるので、この一台でどこへでも行きたいと思わせてくれます。上りコースであっても、僕はプロペルを選択しますね。
吉本:エアロ性能は一見レースだけの性能に思われがちですが、単独で走る時間が長いホビーサイクリストにこそ、実利が大きいんです。もちろんエアロだけではダメなんですけど、プロペルは佐野さんがおっしゃる通り、まさに万能。ジャイアントのバイクはどのモデルも抜群に扱いやすいのが特徴ですが、性能を特化させつつ万能性を両立させるのは非常に難しいことです。新型プロペルに、改めてジャイアントの技術力の高さを見せつけられた気がします。
CS:ありがとうございました。
サイスポ・ニュース
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