キャニオンのグラベルバイク「グリズル」最新版を試乗
目次
独創的なプロダクトでグラベルシーンを牽引するドイツのキャニオン。そのアドベンチャーモデル「グリズル」が第二世代へと進化した。さらなる走破性と拡張性を手に入れたこの一台は、サイクリストをより遠く、より自由な冒険へと連れ出してくれる。キャニオンを知り尽くした自転車ジャーナリストの吉本司によるインプレッションをお届けする。
キャニオン・グリズルの特徴

キャニオン・グリズルCF8 Di2 【試乗車スペック】●価格/61万9000 ●コンポーネント/シマノ・GRX RX820 Di2、デオーレXT Di2 ●ホイール/キャニオン・GR 30 CF ●タイヤ/シュワルベ・GワンRXパフォーマンス 45mm ●ハンドル/キャニオン・HB0067 ●ステム/キャニオン・ST0046 ●サドル/フィジーク・アルゴテラX5 ●シートポスト/キャニオン・S15 VCLS 2.0 CF ●ボトルケージ/キャニオン・サイドローダーボトルケージ(完成車には付属しない) ●サイズ/M ●ペダルなし参考重量重量(Mサイズ)/9.16kg ※試乗車は現在日本で販売のないカラーです
「グラベルロード」という言葉が浸透して10年余り。今やレースから未開の地をゆくアドベンチャーまで、その楽しみ方は広がり続けている。現在は多様なスタイルに対応する「レーシング」と「アドベンチャー」の2プラットフォーム展開が主流だが、キャニオンはいち早くこの流れに対応。速さを追求した「グレイル」と、冒険を支える「グリズル」をラインナップしている。
5年前にデビューした初代グリズルのコンセプトは、先行したグレイル(第1世代)に対し、オフロードでの走破性と積載性を高めて「冒険をダイナミックに楽しむこと」にあった。その思想を正統に進化させ、最新技術を惜しみなく注ぎ込んだのが、第2世代となる新型グリズルだ。
設計面では、現行グレイル(第2世代)でも定評のある「ロングトップチューブ×ショートステム」の設計思想を継承。ジオメトリーは下りでの安定性を高めるよう最適化され、タイヤクリアランスは54mmまで拡大した。さらに、DTスイスと共同開発したフロントサスペンション「RIFT(リフト)」搭載モデルも用意され、グラベルバイクとして屈指のオフロード性能を追求している。
アドベンチャーモデルに不可欠な積載性も抜かりない。フレームの前三角を大型化してマウントを増設し、前後キャリアの装着にも対応。過酷な長期ツーリングにも余裕で応えるスペックへと進化した。
今回は、シマノのDi2と1×(ワンバイ)のトライブトレインを搭載した、注目モデル「グリズル CF 8 Di2」の実力を探る。
キャニオン・グリズルCF8 Di2
●価格:61万9000円
●サイズ:2XS、XS、S、M、L、XL、2XL
●カラー:パイナップルグミ
キャニオン・グリズル試乗インプレッション〜突っ込みを入れられないほどに高い完成度

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト・吉本 司/40年超のスポーツバイク歴から、ジャンルを問わず深い造けいを持つフリーの自転車ジャーナリスト。キャニオンは日本で販売される以前より乗っていたという筋金入りのキャニオン好きで、これまで5台を乗り継いだ
冒頭から私事で恐縮だが、グラベルバイクを手放してからずいぶんと時間が経過してしまった。そろそろ新車を迎え入れなければと考えているのだが、活況なグラベルシーンゆえに市場には多種多様なモデルが溢れ、次の一台を決めあぐねている。
用途はあくまでサイクリング。イベントに出るとしてもせいぜい「ニセコグラベル」程度で、タイムを競うような走りを求めているわけではない。農道や田舎道のグラベルを繋いでオン&オフロードを走り、時には近所の里山へも足を向ける。そして、輪行やバイクパッキングを伴う長距離ツーリングにも出かけたい。
となればアドベンチャー系のモデルが適しているのだが、オンロードバイクの軽快な走りに慣れている身としては、重量がかさみ動きの鈍重なモデルには二の足を踏んでしまう。もちろん、投じるコストもできる限り抑えたい。グラベルバイクの増車を検討しているロードサイクリストの多くは、私と同じような要望を抱いているのではないだろうか。
そこで、やはり目に留まるのがキャニオンの新型グリズルである。「OG」モデルは、最安値の「CF 6」が36万9000円、「CF 7」が42万9000円、そして今回試乗する「CF 8」は61万9000円と、極めて現実的な価格設定だ。グラベルバイクは泥や埃にまみれ、時には転倒も辞さない遊びの道具。猫可愛がりするような工芸品ではなく、多少の傷など気にせずバリバリ使い倒せる価格と仕様こそが私の正義だ。
それにしても、コストパフォーマンスの高さは安定のキャニオンクオリティだ。CF 8は、GRXのSTIレバーにデオーレXTのリヤディレイラーを組み合わせ、1×(ワンバイ)のドライブトレインを制御。さらに、25mmの内幅を持つカーボンリムのホイールまで標準装備されている。他社ブランドであれば、安く見積もってもあと10~15万円は高い値付けになるはずのスペックだ。
フィールドへと連れ出すと、グリズル CF 8の魅力はさらに輝きを増す。これまでオン・オフ問わず数々のキャニオン製バイクを試乗してきたが、どのモデルにも共通するのは、破綻のない性能と抜群のバランスの良さだ。近年のグラベルモデルにおいては、そのバランスがさらに極まっていると感じる。特に、軽快なペダリングフィールと、安心感をもたらすコントロール性能のハーモニーが絶妙なのだ。
とかくアドベンチャーモデルは、太いタイヤによる走破性と引き換えに、軽快さは期待できないと思われがちだ。しかし、グリズルならそれを諦める必要はない。エアボリュームの大きな45Cタイヤを履いているとは思えないほど、オフロードを軽やかに駆け抜ける。私は現行型のレーシングモデル「グレイル」にも何度も試乗しているが、グリズルにそれとの圧倒的な差を感じることはなかった。シビアなレースシーンならグレイルに軍配が上がるが、我々のような一般サイクリストであれば、グリズルの軽さがあればレース系イベントでも十分に戦えるはずだ。
試乗車は適正より1サイズ小さなMサイズだったが、それでも安定感に一切の不安はなかった。フレームの剛性感も絶妙な塩梅で、路面の凹凸で弾かれにくく、ハンドリングも極めてナチュラル。グラベル走行のスキルに自信のない筆者でも余裕を持ってバイクをコントロールできる。フラットダートを高速で突き進める一方で、低速のシングルトラックに分け入っても実に楽しい。安定感に寄与する長めのホイールベースも、タイトターンやシングルトラックでの足かせになることはなく、キビキビと進んでくれる。さらに、軽いペダリングフィールと鋭い踏み出しは、オフロードで頻発する低速域からの加速もスムーズ。脚当たりに過度な硬さはなく、オン・オフ問わずハードなライディングにおいて、ライダーの消耗を最小限に抑えてくれるはずだ。
パーツアッセンブルにしてもストレスフリーな電動変速に、走りの軽さを引き上げるカーボンホイール、そして乗り心地を高める衝撃緩和機能付きシートポストまで備わっている。正直なところ、購入後にパーツを交換する必要性は微塵も感じられない。
走行性能を含めた完成度があまりに高く、アラを探し出せない自分に、自転車ジャーナリストとしての虚しさを覚えてしまうほどである。グラベル遊びやロングツーリングの相棒を探しているのなら、これを選んでおけばまず間違いはない。箱から出したその瞬間から、最高にゴキゲンなグラベルライドが約束されている。
試乗した「CF 8」は、私の予算を少々オーバーしている。しかし、購入後からのカスタムが一切不要であることを考えれば、多少無理をしてでも手に入れる価値は十分にあるはずだ。――そんなことを考えながら、期待に胸を膨らませてキャニオンの公式ホームページを訪問したのだが、私にフィットするLサイズの在庫は……なかった(泣)。
キャニオン東京テストセンター
https://coubic.com/canyonjapan
→試乗が可能なうえ、メンテナンス・修理の受付もしている。自分に最適なサイズを確かめたり、購入を検討するバイクのテストなどで利用してみたはいかがだろうか(編集部より)


















