デローザを代表するロードバイク「アイドル」最新作を試乗インプレッション

目次

デローザを代表するロードバイク「アイドル」最新作を試乗インプレッション

70年以上の歴史を誇るイタリアの老舗ブランド、デローザ。創業者ウーゴ・デローザの自転車作りへの情熱は、今や三代にわたる親族へと受け継がれている。その新時代を象徴する意欲作として登場したのが、新型「アイドル」だ。かつてはミラノの工房を訪れるなど、ブランドの神髄を知る自転車ジャーナリスト・吉本司が、新生アイドルの魅力を体験する。

 

デローザ・新型アイドルの特徴

デローザ・アイドル

デローザ・アイドル 【試乗車スペック】●価格/109万3400円(シマノ・Di2完成車、カンパニョーロ・シャマル デュアルプロファイル アップグレード仕様) ●メインコンポーネント/シマノ・アルテグラDi2 ●ホイール/カンパニョーロ・シャマル デュアルプロファイル ●タイヤ/ミシュラン・パワーカップ 700×28C(完成車と仕様は異なります) ●ハンドル/ヴィジョン・メトロン エアロ ACR ●ステム/FSA・NS SMR-Ⅱ ●サドル/セライタリア・モデルX スーパーフロー Fec(デローザロゴ入り) ●シートポスト/専用カーボン製 ●ボトルケージ/デローザ・カスタム レース ボトルケージ(完成車には付属しません) ●サイズ/51 ●試乗車カラー/ホワイト ●ペダルなし実測重量/7.6kg

デローザ・アイドル

デローザ・アイドル 【試乗車スペック】●価格/74万8000円(シマノ・105 Di2完成車、ノーマルホイール仕様) ●メインコンポーネント/シマノ・105 Di2 ●ホイール/フルクラム・ソニック AL 2ウェイフィット ●タイヤ/ヴィットリア・ルビーノ 700×28C ●ハンドル/ヴィジョン・メトロン エアロ ACR ●ステム/FSA・NS SMR-Ⅱ ●サドル/セライタリア・モデルX スーパーフロー Fec(デローザロゴ入り) ●シートポスト/専用カーボン製 ●ボトルケージ/デローザ・カスタム レース ボトルケージ(完成車には付属しません) ●サイズ/51 ●試乗車カラー/ステルス ●ペダルなし実測重量/8.3kg

 

2007年に初代が発表された「アイドル」は、今年で登場から19年となるロングセラーモデル。5代目へと進化を果たした最新版は、ウーゴの三男で現代表のクリスティアーノが開発の総指揮を執り、その息子であるニコラスがデザインやカラーリングを担当。現在の旗艦機である「セッタンタ」はウーゴが最後に監修をしたモデルだが、アイドルは彼の没後、クリスティアーノ親子がタッグを組んで放つ新世代のデローザと象徴する存在と言える。

トップチューブからシートステーにかけてのラインが途切れない流麗なフォルムは、初代から受け継ぐアイドルのデザインにおけるアイコニックな造けいだ。シルエットだけでそれと認識できる唯一無二のフレームデザインは、走行性能だけでなく独創的な美しさを重んじるデローザらしいこだわりを感じさせる。

もちろん、最新ロードバイクの必須科目である空力性能もぬかりない。カムテール形状のチューブを適所に配し、フォーククラウンやシートステーのクリアランスを拡大することで空気抵抗の低減を図った。さらに、34Cまでのタイヤ幅に対応し、リヤディレーラーハンガーはUDH規格を採用するなど、最新トレンドを網羅。フレーム重量は900g、フォーク重量は385g(ともに単体)もマークする。

新型アイドルは完成車とフレームセットで販売されるが、完成車で展開される「THE CHOICE IS YOURS」のサービスにも注目したい。フレームサイズやカラー、コンポーネントに加え、ハンドル幅やステム長まで選択が可能。これにより、オーナーに最適なフィッティングの一台を手にすることができる。

標準仕様のホイールはフルクラムのアルミモデル「ソニックAL」を装備するが、有料オプションでカンパニョーロの「シャマル カーボン」や「シャマル デュアルプロファイル」を選択して、さらなる性能向上を図ることも可能だ。

プロダクトの進化はもとより販売方法もユーザーフレンドリーになり、より魅力を増した新型アイドル。今回は標準仕様と、アップグレード版のシャマル デュアルプロファイルを装備した2つの走りを体感する。

シートステー集合部

シートステーの接合位置を落としたドロップド式が主流の昨今だが、アイドルのシートまわりの作りは独創的だ。トップチューブからシートステーにかけて途切れることのない流麗な形状が美しい

シートピン

カムテール形状としたオリジナルのシートポストの固定は、シートチューブの後方から小さな2本のイモねじにより行う。目立たないのでフレームの美観を保ち、なおかつ確実にポストを固定する

ハンドル

ケーブル類の内臓はFSAのACRシステムにより制御する。さらにFSAの「NS SMRⅡ」ステムとヴィジョンのカーボン製エアロハンドル「メトロン エアロACR」を搭載して空力性能を高めている

フォーククラウン

フロントフォークはクラウンまわりのクリアランスを大きく設計して空力を向上する。タイヤクリアランスも34Cでロードモデルとしては十分な仕様だ

BBまわり

BBまわりは無駄がなく引き締まったシルエット。もちろん剛性不足はなく、むしろ脚当たりのいいペリングフィールに貢献する。BB規格はT47

リヤエンド

リヤエンドのデイレイラーハンガーはUDH規格を採用する。最新のスラム製コンポーネントもスマートに装着できる

 

デローザ・アイドル ラインナップ

●完成車販売:
シマノ・アルテグラDi2仕様/83万6000円
シマノ・105 Di2仕様/74万8000円

●ホイールアップグレード:
カンパニョーロ・シャマル カーボン/19万5800円プラス
カンパニョーロ・シャマル デュアルプロファイル/25万7400円プラス

●サイズ:
43、46、48、51

●カラー:
ステルス、ホワイト

●ステム長選択可能:
70、80、90、100、110、120mm
※ただし、数量限定です。

●ハンドル幅選択可能:
380、400、420mm
※ただし、数量限定です。

 

デローザ・アイドル試乗インプレッション〜この上ない上質な振る舞いに、圧倒的な安心感を覚える

デローザ・新型アイドルを試乗インプレッション

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト・吉本 司/フリーの自転車ジャーナリスト。デローザにはサイクルスポーツ誌の取材で足を運んだ経験があり、その際「ネオプリマート」をウーゴ直々に採寸してもらいオーダーした。90年代後半からデローザの主要モデルの試乗経験がある

 

アイドルというモデルは、筆者にとって非常に思い出深い存在だ。デローザの門を叩いた2006年12月、ミラノ郊外クザーノにある工房で、デビュー間もない初代アイドルと対面した。それは、プロ選手供給モデルが職人の手によって一台ずつ形作られる、特別な瞬間の目撃でもあった。あれから20年。5代目となったデローザの“人気者”は、そのDNAを色濃く受け継ぎながら、最新のロードバイクへと着実な進化を遂げていた。

アイドルのキャラクターを一言で表現するなら「突き抜けた従順さ」だ。これは歴代のデローザに脈々と流れる特性でもある。これまでスチールからカーボンまで、素材を問わずデローザの主要モデルに試乗してきたが、どのモデルも跨がれば何の違和感もなく、長年の愛車のように走り出せる。同じイタリアンブランドでも、コルナゴやピナレロが強烈な個性で迫ってくるのに対し、デローザは対照的だ。どこまでもライダーの感覚に寄り添ってくれる。

特にアイドルは、その「従順さ」において、数あるロードバイクの中でも随一ではなかろうか。ペダリング、乗り心地、ステアリングに至るまで、あらゆる挙動に“角”がなく、ストレスを感じさせない。そう聞くと軟派な印象を持つかもしれないが、決してそうではない。剛と軟のバランスが絶妙なのだ。

ペダルを踏み込めば、するりと軽く、流れるように滑らかに走り出す。それでいて、フレーム剛性はやわじゃない。脚当たりは抜群に良いが、フレームには一本芯が通っている。例えるならパスタのアルデンテだ。じわっとした粘りの中に確かな踏み応えがあり、トルクフルなフィールを楽しめる。中高負荷域でもペダリングを維持しやすく、長距離でも脚を削られにくい。無心で回していると、次第にバイクの存在が消えたかのような感覚に陥り、人馬一体となってライディングに没頭できる。その瞬間が実に心地よい。いい意味での“存在感のなさ”こそが、デローザ、ひいてはアイドルの真髄である。また、スプリントのような局面でもあっても踏み負けることもないので、加速の後半でも速度がもうひと伸びしてくれる。

路面からの振動収束も極めて速い。乗り心地は極上だが、ふわふわ感はないので、軽快さもしっかり担保されている。ニュートラルなステアリング特性と相まって、高速の下りやコーナリング、荒れた路面といった状況でも、地に足の着いた走りでライダーに安心感を与えてくれる。この上質な振る舞いは、まるでRTM製フレームのような密度の高さを感じさせ、ライダーを優しく包み込むように運んでくれる。

現在のデローザのラインナップにおいて、プロ選手が駆るピュアレーサーが「セッタンタ」や「メラク」であるのに対し、アイドルはグランフォンディスタをはじめとする一般ライダーを主要ターゲットに据える。北米ブランド的な分類なら「エンデュランスロード」に属する性格だが、アイドルは安易にそこへは収まらない。ジオメトリーを含め、あくまで“ピュアレーサー”という文脈の中で、ホビーサイクリストに最適化されているのだ。ここにはロードレースの国、イタリアの矜持が漂う。だからこそ、加速の煌めきといったレーシングバイク特有の運動性能も存分に享受できる。

アイドルは昨今のレースバイクのように、乗り手に対して「速く走れ」と急かすことはない。そっと手を添えてくれるような優しさがあるからこそ、ホビーサイクリストでも気負わず仲良くなれる。レースバイクという仕立ての中で表現された、速さと快適性の“甘辛のバランス”が絶妙なのだ。

ピュレーサーで刹那的な加速を楽しむのもロードバイクの魅力だろう。だが、誰かと争うことを主目的とせず、タフなコースやダイナミックなロケーションで自分の力を出し切るようなライドを望むなら、アイドルのようにいかなるときも寄り添ってくれる一台が最良のパートナーとなるはずだ。その思想は、軽量性こそ及ばないものの、スペシャライズド・エートスなどが持つ世界観にも通じる。この初代を愛車とし、そろそろ乗り換えを考えている筆者にとっても、5代目となるアイドルの走りは次なる愛車候補の筆頭といえる仕上がりだった。

今回は標準仕様に加え、カンパニョーロの「シャマル」を装備した状態でも試乗したが、結論から言えば、アルミホイールのままでもアイドルの魅力は十分に堪能できる。低速域の反応や登坂ではホイールの重さを少々感じる場面もあるが、実用速度域に入ればデメリットは目立たない。むしろアイドルの流れるようなキャラクターには、ホイールの慣性が効果的に働き、中高速域での気持ちいい巡航を支えてくれる。もちろんシャマルに交換すれば、空力と軽さが作用して走りはよりポジティブに変化する。とはいえ、まずは標準仕様でその真髄を味わい、浮いた予算で各地へ走りに出かけて、アイドルとの時間を深める……そんな選び方も、このバイクにはよく似合っている。