全日本シクロクロス2025は織田聖が勝利し4連覇〜爆風の中の砂浜地獄
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2025年12月13日(土)~14日(日)、大阪府貝塚市の二色の浜にて第31回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロスが開催され、男子エリートは織田聖が4連覇。女子エリートは石田唯が初勝利を飾った。
爆風の日曜日
晴天で暖かい気候となった13日(土)にはマスターズやエキシビジョンのシングルスピードのカテゴリーなどが行われ、朝に雨が降ってその後太陽が差し込んだ14日(日)にはジュニアやU23、男女エリートのレースが開催された。

女子エリート序盤。石田らは深い砂浜区間を走りで、小林は波打ち際を乗車でクリアしていく

独走に持ち込んだ石田

持ち前のテクニックで前を追った小林

自転車を担いで砂浜区間を走る渡部
女子エリートは、石田唯(TRK Works)が独走で初めての全日本シクロクロスのタイトルを獲得。
石田は表彰台で、「ここまでは一人じゃ絶対に来られなかったし、たくさんの支えがあってここまで来られたので本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今日は風が強いレースだったので、できるだけ早く一人で(先頭に)出たいと思って、途中から自分の走りに集中して最後まで走り切ることができました。(ジャージを獲得できて)最高の気分です」と語った。

ガッツポーズでフィニッシュした石田

TRK Worksの小林輝紀コーチと喜びを見せた石田
序盤でついた差

前年度チャンピオンの織田聖らが先頭に並び、男子エリートのスタートを待つ
大会最後のレースとして14時20分にスタートした男子エリートの出走は67人。号砲が鳴り、周回コース内に入ると縦一列に一気に伸びていく。1周目のタイムを元に、3.23㎞のコースを8周する26.44㎞で争われた。

1周目、砂浜区間を前に沢田が先頭に出る。後ろには横山、松本、副島、織田が続く
1周目、先頭では横山航太(ペダル)が砂浜区間を乗っていくなか、後ろには沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン)、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、副島達海(TRK Works)、松本一成(W.V.OTA)らがしっかりとつく。これまで男子エリートで3連覇を果たしている織田は、「他の選手のラインも知りたかったですし、ちょっとのんびり走りました」とスタート争いには加わらず、静観していた。

2周目の砂浜区間は織田が先頭で入る
1周目の終盤、階段から平坦区間に入るところで織田が先頭に出ると、砂浜区間で後続との差がだんだんと開いていく。
織田は、「ペースがちょっと遅くて、僕的にはもうちょっときつい展開にしたかったので、ペースアップしました。ちぎるというよりは、ちょっとペース上げたって感じですね」と話す。

砂浜区間で差を開けた織田

元チャンピオンも織田に声援を送る
朝に雨が降ったことで、このコースの大半を占める砂浜区間は前日とコンディションが変わっていた。沢田は、「雨が降って砂が結構固まっていたので、テクニックもですけど、どっちかというとパワーコースな印象でした」と話す。
これまでのJCXシリーズで織田と戦ってきた沢田だが、織田の後輪を捕えることができなかった。「たぶん織田選手からするとアタックした感じではなかったと思うんですけれど、単純に砂を抜けるパワーで開いて、きついと思って自分がそこから車間を開けてしまって、ちょっと後ろの選手に申し訳なかったんですけど、つけなかったですね」
副島が沢田の後ろから飛び出し、一時、織田、副島、沢田がそれぞれ単独となったが、後半には副島と沢田の2位パックが形成された。

副島と沢田はどちらも譲らず

結局フィニッシュまで2人で周回数を重ねることに
2位パックでは2人とも一歩も譲らずデッドヒートを繰り広げる中、先頭の織田は砂区間でのミスがないように、脚が攣らないようにと8割程度の力でちょうどフィニッシュで力を出し切れる程度に先頭で走り続ける。2位パックとの差は序盤は30~40秒だったが、終盤には1分程度と差をつけていた。
後続と差を保った織田はフィニッシュラインが見えると拳をかかげ、観客とのハイタッチに応じた。ラインを切るとバイクから降り、クランクの位置を整えてからバイクを掲げ、会場に集まった多くの観客からの大きな声援に応えた。

集まった多くの観客の歓声に応えた織田

4連覇を果たした織田はバイクを掲げる
2位パックの沢田と副島はスプリント勝負に。副島が先行して2位、沢田が3位となった。

2位争いは横並びのスプリント勝負

副島が声援を力にかえて2位に
副島は、「もう本当に記憶がないぐらいで、もう何をしてたか分からないぐらいでやっていました。最後は本当に正直、時さんには失礼かもしれないですけど、勝つ気でやっていたからこそ、あそこ(2位パック)で走ってる場合じゃないし、最後は本当にこのすごい声援の中で、声援が背中を押してくれたような感じがしました」と語った。
今回、地元での開催となった副島には、スタートから非常に多くの声援が送られていた。「集中しようにも、もう歓声が多すぎて。ワクワクはしながらも、(走っていると)現実が見えてくる。本当に勝つ気でやっていましたし、全然僕も調子は良くて走れているんですけど、それ以上に本当に聖さんが強いという感じですね。まだ全日本では2回しかまだ戦ってないので、そう簡単にいってもダメだし、まだまだ大きな壁があるっていうのが、僕の人生を豊かにしてくれると思うので、これからもっと高いところに連れてってもらえる一つの試練だと思って、まだいつになるか分からないですけど、できる限りこの大きな壁を乗り越えるために、これからももっと挑戦していきたいなと思います」
ゴール後、倒れ込んだ副島だったが、立ち上がると織田に近づいて勝利を祝福した。完走できたのは67人中、14人だった。
ロードでもシクロクロスでも

関西シクロクロスも行われているこの会場。観客もアツい応援を送り続けていた
この後、ヨーロッパでのシクロクロス遠征が控えている織田は、4連覇を果たして安心した様子だった。「海外遠征が、エアチケットの関係とか、レースのエントリーの関係とかで、先に決まって準備していて。やっぱり日本チャンピオンでヨーロッパに行きたいっていうのがあるので、取れなかったらやめるとかそういうこともできない。もう本当に意地で取り切るしかないというプレッシャーの中、しっかり取り切ることができてホッとしてます」

砂浜を乗車でクリアする織田。2025年の全日本はロード、MTB、シクロクロスの男子エリートが全て連覇という結果に
ヨーロッパ遠征での目標についてはこう語る。「ワールドカップも出ますし、 UCI のクラス1のベルギーとオランダのレースも出るので、そこでしっかりとフルラップ完走を確実にできるような、そういう選手になっていって、ゆくゆくはしっかりとリザルトに名前が残るような選手になりたいなと思ってます」

会場で行われたトークショーに招かれた渡辺航先生とSKE48の荒野姫楓さんも織田を祝福
夏はロードレースを走り、冬はシクロクロスを走る織田。どちらも手を抜くつもりはないという。来年はロードは愛三工業レーシングチームで走ることも発表された。
「シクロクロスもロードも、どっちかがおろそかになるっていう考えもありますけど、そう考えてる人たちの常識を覆していきたい。マチュー(・ファンデルプール)とワウト(・ヴァンアールト)はそれを覆しているので。さらに、実際に日本でもそれを覆していかないと今後、ロードもシクロクロスもどっちも世界から置いていかれちゃうと思うので、そういう第一人者になれるように頑張っていきたいと思います。来年はロードではアジアツアーの機会もいただけると思うので、そこでしっかりと成績を出して、やっぱり織田聖はロードでも強いなと、存在感を示していきたいと思います」
本場ヨーロッパで揉まれて世界標準の強さを身につけ、日本のこれまでの常識を覆していく姿を楽しみにしたい。
女子エリート リザルト
1位 石田 唯(TRK Works)52分38秒
2位 小林あか里(Liv Racing Japan)+37秒
3位 渡部春雅(Olanda Base/Watersley)+51秒
男子エリート リザルト

1位 織田 聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) 59分46秒
2位 副島達海(TRK Works)+1分9秒
3位 沢田 時(Astemo宇都宮ブリッツェン)+1分10秒
第31回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス
開催日:2025年12月13日(土)~14日(日)
開催地:大阪府貝塚市・二色の浜











