ロードバイクで立ちゴケしない低速走行テクニック

目次

低速でどんな位置からでもペダルを外して足を着く

ロードバイクは低速になると不安定になりやすいが、意外と低速で走る機会は多い。そんなときバランスを崩して立ちゴケすると危険だ。そこで、低速で安定して走れるテクニックを身につける必要がある。そのために必要な4つの練習法を実践してほしい。低速でも安定して走れれば、結果的に速く走る力にもつながる。

 

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速く走る前にゆっくり安定して走れるようになれ!

今回教えてもらうのは、元プロ自転車レーサーで現在は自転車競技の日本ナショナルチーム監督として活躍する、小笠原崇裕さんだ。

小笠原 崇裕(おがさわら たかひろ)さん

小笠原 崇裕(おがさわら たかひろ)さん

「ロードバイクはとかくトレーニングして速く走るとか、そういったことばかりがフォーカスされがちですが、それ以前に低速でもしっかりとバランスをとって走れるようにしないと危険です。その先に速く走る技術がともなってきます。

というのも、例えば信号待ちで渋滞していたり、あるいは交差点で曲がるときなど、低速になることはロードバイクではしばしばあるのです。そんなとき、バランスを崩していわゆる“立ちゴケ”したら非常に危険ですよね」と小笠原さん。

「そうした事態を防ぐために、今回は低速走行テクニックであり、練習方法でもある4つのことをお教えします。

とかく楽しくライドに出かけたくなるものですが、例えば1週間〜2週間に1回でもいいので時間をとってもらい、安全な場所で今回紹介することを練習してほしいと思います」。

詳しく教えてもらおう。

 

【テクニック①】ゆっくり低速でまっすぐ走る

ゆっくり低速でまっすぐ走る

「歩くくらいの速度で、ゆっくりまっすぐふらつかずペダリングして進むテクニックです。これ、簡単なようでけっこう難しいですよ。渋滞していて前の車がノロノロ運転になっているときなど、さまざまな場面で役立つテクニックです。

ポイントは、まず目線です。下ばかり見ているとふらつくので、まっすぐ進行方向を見るようにしてください。次に、上半身と腕まわりをリラックスさせ、ハンドルをギュッと握り締めないようにすることです。最後に、腰まわりでバランスをとることです。これがキモになります。ペダリングするときには、若干腰をサドルから浮かせるようなイメージにするとうまくバランスがとれます」。

めちゃくちゃ基本的な動きだが、みなさん、果たしてこれができるだろうか。まずは安全な場所で試してみて、練習してみよう。

 

【テクニック②】低速でふらつかずに後方確認する

低速でふらつかずに後方確認する

「後方確認は自転車の必須テクニックですよね。ところが、低速になったとき、果たしてふらつかずにこれが行えるでしょうか? 意外と低速になった状態で後方確認の必要性に迫られる場面はありますよね。

ポイントは、まずハンドルに荷重しすぎないことです。ハンドル荷重になっていると、右に振り向いて後方確認したら右側にふら〜と移動してしまいます。車と事故の可能性があって危険です」。

ハンドル荷重で後方確認するとふらつく

ハンドル荷重になっていると、振り向いた側にふら〜っと移動してしまい危険だ

「ハンドルではなくて、サドルにしっかりと乗り(荷重し)、バランスを取るようにするのがコツです。

また、必要に応じて“カウンターステア”をあてるのも良いです。日本の道路の場合は後方確認するとき通常右側で振り返りますが、その場合はハンドルの左側に若干荷重してあげることで、よりバランスがとりやすくなります。試してみて良いでしょう」。

 

【テクニック③】半コギ

半コギ

「半コギというのは、ペダルを1回転させずに、ペダル位置が時計の針で言う1時くらいから3時くらいまでだけペダルを踏み、逆回転させてまた1時の位置へ戻すことを繰り返して進んでいくテクニックです。片足だけでちょこちょこペダルを半回転(半分だけこぐ)させ、一定の速度とバランスを保って進んでいきます。

これは、渋滞して前の車がノロノロ運転になっているときなど、さらに低速で走らないといけない状況で役立ちます。ペダルを1回転させずに、ペダル位置が左右で水平に近いところに位置し続けるので、ふらつきにくいのです。

ギヤは若干重めにするのがポイントです。軽すぎると不安定になってしまいます。ペダルを1時の位置まで引き戻すときは、特に力を入れる必要はありません。左右の足をシーソーのようにして、踏んでスッと戻す→踏んでスッと戻すを繰り返すのがコツです」。

 

【テクニック④】低速でどんな位置からでもペダルを外して足を着く

低速でどんな位置からでもペダルを外して足を着く

「低速になったときの立ちゴケを防ぐために、どんな状況でもペダルから足を外して着くことができるよう練習しておくことも重要です。もちろん、そういう状況にならないよう心がけることが大事ですが、実際のライドではそうはいかないものです。

練習するパターンとしては……(左足を外す場合)

外す足のペダル位置が9時(ペダルが左右で水平)

外す足のペダル位置が9時(ペダルが左右で水平)

外す足のペダル位置が12時(上死点)

外す足のペダル位置が12時(上死点)

外す足のペダル位置が6時(下死点)

外す足のペダル位置が6時(下死点)【注意】→下で詳しく

「この他に、“外す足のペダル位置が3時(ペダルが左右で水平だけど後ろ足になっている)”というパターンもありますね。

位置によってはペダルを外しにくいのですが、とっさに足をつかないといけない場面ではペダルがどの位置に来るかは選べないものです。そんなときに備えてあらゆる位置を想定して外す練習をしてください」。

外す足が下死点にあるときの一連の流れ

外す足が下死点にあるときの一連の流れ

「この中で、ペダル位置が下死点(6時)に来た場合は1動作プラスされるので、注意が必要です。この場合はもう片方の足が上死点(12時)なので、そのままだとバランスが取れず、腰をサドルから降ろすことができません。よって、ペダルを外したらいったん別の足側を下死点まで下げる必要があり、この一連の動作を素早く行わなければならないというわけです」。

※サドルに座ったまま足を着く方法もあるが足を着きづらく危険なので、サドルから腰を降ろす方法を練習しておいた方がいい。

「また、全パターンで左右どちらの足でも行えるように練習してください。日本の道路は左側通行なので基本的に左足を着くのがマナーですし安全です。それはそれとして、実際には右側に倒れそうになって右足を着かざるを得ない状況は発生するものです。そんなとき、右足をペダルから外して足を着けないと、道路の右側の方へ転んでしまいます。そのあと車が来たら……。大事故にもつながりかねません」。

 

【チャレンジ】一瞬静止してから足を着く

【チャレンジ】一瞬静止してから足を着く

「最後に、かなり練習が必要な上級テクニックとなりますが、ぜひチャレンジしてみてほしい方法を紹介します。

ブレーキをかけて止まるとき、サドルに座ったままスタンディングに近い動作をして、一瞬静止します。そのあと、落ち着いて足を外して着きます。

これも、前後の足が水平のペダル位置だったり、上死点だったり下死点だったりと、さまざまな位置で、左右どちらの足でもできるようにするとベストです。

これができると、とっさに止まってもすぐ足を外さずにバランスを取れるので、そのあと余裕を持って足を外すことができます。習得すれば立ちゴケする可能性はほぼゼロになるでしょう」。

いかがだっただろうか? ぜひ定期的に、考えなくても自然に体が動くレベルまで練習してみてほしい。結果として安心してロードバイクでライドができるので、より速く楽に走れるようになるはずだ。