ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース 岡のチームへの思い、入部の引退

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ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース

2025年11月9日に行われたツール・ド・おきなわ。チャンピオンレースの模様を選手のコメントで振り返る。

 

朝焼けのレース序盤

夜間から早朝の間に路面を濡らした雨が止んだ6時45分、男子チャンピオンレースがスタートした。

序盤はアタック合戦が続き、横塚浩平(VC福岡)、リー・ティンウェイ(チャイニーズタイペイナショナルチーム)、孫崎大樹(ヴィクトワール広島)、谷順成(アステモ・宇都宮ブリッツェン)、入部正太朗(シマノレーシング)、ボレッシュ・ユリアン(REMBE|RAD-NET)、山本元喜(キナンレーシングチーム)の7人が抜け出す形となった。

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KOM1回目を7人の逃げグループから飛び出して取りに行った孫崎

 

1回目の普久川ダムのKOMに向けた上りに7人のまま入ると、「KOMを取るくらいしかできなかったので」と、手のけがを押して出場していた孫崎がスピードを上げた。山本元喜がその後を追いかけるが、そのまま孫崎が先頭通過。KOM時点で逃げと集団とのタイム差は2分50秒。集団を引いていたのはイタリアのクラブチーム、スワッドクラブ。その後もスワッドクラブが集団先頭で3分前後にタイム差をコントロールし続けた。

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スワットクラブが集団前方を固めた

 

KOMを過ぎて、補給などの兼ね合いで先頭がティンウェイとユリアンの2人と日本人選手たち5人に分かれると、2人が抜け出してしまい、5人は追走をかけることに。

追走にいた入部は、「まだ100㎞あるのになんでここで仲間割れしてるんだとなって。結局追いついたんですけど、前に行った2人は多分途中でドロップしたと思います。それはそうだろうって。あそこは7人で綺麗に行きたかったですね。そうしたらまだもうちょっと逃げが続いていたかもしれないですね」と話す。

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再び7人になった逃げグループ

 

再び先頭は7人になったが、2回目の普久川ダムの上りのピークでスワットクラブが引く集団は先頭を捕らえた。逃げていた入部は振り返る。「集団がブワッと上げてまだ先頭が見えないってなった時って、結構頂上で止まるときがあるんですよ。僕らはそれを狙うしかなかったんですけど、もうすぐ後ろに来てたので終わったと思いました」なお、2度目のKOMも孫崎が先頭通過し、山岳賞を確定させた。

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集団は2回目のKOMに向かうまでにも人数を減らした

 

7人が集団に吸収された後、残り60㎞付近で今度はトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)が飛び出し、それに山本大喜(TEAM UKYO)がつく。TEAM UKYOとしては、最大人数の5人ではなく4人の参戦で、コンディションもバラバラ。誰かのために脚を使うのではなく全員がエースのつもりで優勝を狙っていく作戦だったそうだ。

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前半は集団中ほどにいた山本大喜

 

改めてスワットクラブが集団が引き始めると、2人の逃げもイタリアチームの支配下に置かれ、タイム差は1分以内に抑えられた。

集団にいた岡篤志(アステモ・宇都宮ブリッツェン)はこう話す。「スワットクラブがあんなに牽引力あるとは。何の躊躇もなく、エースの1人以外、全員回してたんじゃないかなというくらい本当に強くて。トマと大喜が2人が抜け出した後も、そのまま行っちゃうかもなと思ってたんですけど、彼らがまとまって引いてくれた。クラブチームなんですけど、イタリアのレースの実績を見てもどう見ても強かったので、このままコンディションいい状態で来ていたらかなり手強いなと思いました

 

上り区間でのアタック合戦

残り20㎞付近で2人が吸収されると、最後の勝負所となる羽地ダムへの上りにかけてアタック合戦が始まる。ルージャイ・インシュアランスの選手やベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)が飛び出そうと動き、岡や新城雄大(キナンレーシングチーム)などもそこに加わる。序盤から速いスピードでコントロールされていた集団にいた選手たちの多くは、耐えきれずドロップしていった。

残り10㎞付近で岡、新城、増田成幸(TEAM UKYO)、ダイボール、チョン・ウホ(ソウルサイクリング)、ジャコモ・ガラヴァリア(スワットクラブ)の6人が完全に抜け出す。さらに羽地ダムの上りでダイボールが先頭固定でペースアップを始めると、新城が落ち、ガラヴァリア、増田も離れるが、ガラヴァリアは増田を置いて一人で先頭へと一気に追いついた。

かつてこのレースで独走勝利を挙げた経験を持つ増田は、「自分も絶好調ではないですけど、トレーニングは続けてはいました。しかも、おきなわは大好きなレースなので頑張ったんですけど、ラストの上りで人にちぎられながら走っていたら、あぁ世代交代かな……と一瞬思いながら走っていました。でも今日は自分が今日もてる100%を出せたので悔いはないですね」と語った。

ダイボールのペースアップで先頭は4人となる中、今度はガラヴァリアがアタックし、岡がチェックに入る。しかし、少し岡が離れた。「スワットサイクリングの選手とちょっと離れちゃって、詰めたんですけど、かなり脚がきつくて。ここでちぎれたら終わると思いました。でもポーカーフェイスで全然きつくないですよみたいな感じで追いついたら踏みやめてくれて」と岡は話す。

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ダイボールのスプリントに反応した岡

 

下り始める前にダイボールも追いつき、先頭は3人。単騎で下りの区間で追いついてきたウホも加わり、最後のストレートに入ると4人は完全に牽制状態に。岡が先頭に出ると、後ろの様子を伺う。

残り200mでダイボールがスプリントを開始するのに岡が合わせると、ダイボールを抜き先頭に躍り出る。岡はそのまま先頭でフィニッシュラインを切った。

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個人としても結果の出た年、そしてチームの浮上

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チームメイトと最終戦勝利を分かち合った岡

 

岡は、ツール・ド・おきなわは実に7年ぶりで4回目の出場だった。「最後の上りに入る前に、6人で抜け出すことができて、強いクライマーの選手もいたんですけど、一番警戒していたベンジャミ・プラデス(VC福岡)らを置いていくことができました。スプリントとなればかなりチャンスがあるので、ちぎれないことを意識して最後まで耐えてプリントで勝てました」と話す。

10月25日に群馬で行われたJプロツアーの最終戦も勝ち切った岡は、「とりあえずロードの公式戦としてはおきなわが最後になります。UCIのカレンダー的には、おきなわはもう2026年のシーズンになってくるので、UCIポイントをしっかり取って来年につなげたいです」と話していた。そして見事優勝し「2026シーズンで暫定チームランキング1位のはず。この後、台湾選手権があるので、そこでまた変わりますが」と笑った。

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ブリッツェンの監督鈴木真理、岡、TEAM UKYOの増田

 

宇都宮ブリッツェンとしては、増田や岡など主力メンバーが一斉に抜けたことで、昨年までチーム全体の成績が落ち込んでいる状況であった。今年、ブリッツェンに戻った岡にはこんな思いがあったそうだ。「(去年までは)全然表彰台にもほとんど上がれなかったような状況だったと思うので、そこから今年、本当にチームを自分自身で強くしていくという気持ちで、そういったモチベーションを持って移籍してきました

今年は、岡個人ではツアー・オブ・ジャパンでのステージ優勝や大分クリテリウムでの優勝もあり、さらにはJプロツアーではチーム総合で優勝し、チーム全体を浮上させたような形だ。

岡は来年の目標についてこう語った。「Jプロツアーもですけど、UCIレースをもう少し来年は回れたらいいなと思います。海外のレースでまだ勝ったことがないので、そこで勝ちたいなというのはあります

 

引退レースでも「まだできる」ところを

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レース後に胴上げされた入部

 

このレースでの引退を表明していた入部だが、今回はもともと逃げに乗る予定はなかったそうだ。シマノレーシングとしては香山飛龍や天野壮悠を逃げに送り込むつもりで、序盤のアタック合戦を観察していた。

2人が中心になってやってくれていたんですけど、2人で対応は厳しいかなというのと、勝手な僕の判断でもし香山があれだけ行ってくれて、それで逃げに乗ったとしても、多分かなりきつい状態だったと思うので、それはちょっとまずいかなということで、僕が行こうかなと思って。いいタイミングが来たので行ったら、それが決まった感じでした」と、相変わらずの嗅覚を見せた入部。

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おきなわを走ったチームメイトと

 

さらに逃げが吸収された後も入部は、集団に残っていたチームメイトの風間翔眞や山田拓海のためにボトル運びなども行っているうちに、気づけば最後の勝負所にも残っていた。

羽地のところまでで何かできないかなと思って、気づいたら羽地のとき15人ぐらいになっていて。残っているし、10人までUCIポイントが取れるからこれはと思って頑張ろうとしたんですけど、脚が攣って無理でした。最後の飛び出しのところに対応できればよかったですけど、ちょっともうきつくて。そういうのに風間が行ってくれていて、惜しくも乗れなかった感じでした。乗れていたらトップ10に入れていたと思うので、惜しかったです

ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース

ステージでこの日2度目の胴上げ

 

まだまだ上位に食い込めるチャンスがある中で、引退にあたって入部には決めていたことがあった。

僕はまだできると思われて辞めたかったんです。大分アーバンクラシックでは3位になれて、アジア最優秀をとって辞めるといったときに、まだできるよねと思わせることができたと思うので。止まるまでやりたいという思う人もいると思います。僕の中では惜しまれるくらいで辞めて、次のステップに向かうというのが求めていた形でした。もしずるずるやって、来年同じ結果が出せなくてで納得ができなかったら、もう1年、もう1年とどんどいくじゃないですか。そうするとどんどん落ちていくんですよ

今回のレースでも、逃げに乗り、最後の勝負所の展開こそ見送ってしまったが、最後のUCIポイント獲得まであと僅かのところまでいっていた。

もうやり切ったと思います。逃げられたし、捕まってワンチャン10位っていうところを見せられて、完走できて。両脚を攣っていたので、あれ以上無理でした。そういう意味では90点。やりきり度合いは100点ですけど、UCIポイント取れていたら100点でした

ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース

チームメンバーと現役最後の日を笑顔で終えた

 

フレームビルダーだった父親が特に計測もせずに用意したフレームで自転車を始め、厳しい高校時代を経て、大学時代はトラックを中心に走っていた入部。それを見たシマノレーシングの野寺秀徳監督が「何かに特化している人を見つけたい」と、シマノへと誘った。シマノレーシングで8年走り、2019年の全日本チャンピオンを機にトップカテゴリーのワールドチームも経験した。戻ってきてからはクラブチームで再スタートし、再びシマノレーシングで若い選手たちの指針となった。

競技生活を振り返って、入部はこう語る。「振り返ったら幸せだったなと思います。後輩に支えてもらって、いい思いさせてもらったので。僕がいいところどりさせてもらうところは結構あったと思います。しぶとく生きてきた部分がありますけど、もうやり切ったかなと。みんなにありがとうと言いたいですね

集団最後尾にいるかと思えば勝負がかかるシーンでは必ず前にいる嗅覚を持った選手であり、逃げる姿も多くあった。「最後に入部さんと逃げられて良かったです」と今回のレース後に入部のもとを訪れて感謝を伝えていた選手もいたが、「今は泣けないですね」と入部は話した。レースの中で指針となるのはこれが最後。次のステージでの活躍を楽しみにしたい。

 

ツール・ド・おきなわ2025 リザルト

チャンピオンレース
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 岡 篤志(ASTEMO宇都宮ブリッツェン)4時間42分28秒
2位 ジャコモ・ガラヴァリア(スワットクラブ)+0秒
3位 チョン・ウホ(ソウルサイクリングチーム)+0秒

 

 

チャンピオンレース山岳賞
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
孫崎大樹(ヴィクトワール広島)

 

 

チャンピオンレースU23最優秀選手賞
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
松井丈治(愛三工業レーシングチーム)

 

 

女子国際100㎞
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
5回目の挑戦で初めて優勝をつかんだと話す手塚。前回は小集団スプリントの中で最下位だったが、羽地の上りで金子広美と2人なり、再びスプリントに。「今回こそはという気持ちだけで勝てました」と笑顔で語った

 

ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 手塚悦子(IMEレーシング)3時間5分1秒
2位 金子広美(三重県自転車競技連盟)+1秒
3位 石井嘉子(Team HoneyB Bike Buju)+1分21秒

 

 

市民レース140㎞オープン
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 田崎 友康(F(t)Racing)3時間39分7秒
2位 櫻庭 悠真(MGM GROMA RACING TEAM)+29秒
3位 長谷川 大(イナーメ信濃山形)+1分14秒

 

 

市民レース140㎞マスターズ
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 雑賀 大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド)3時間53分22秒
2位 板子 佑士(ソレイユ)+3分0秒
3位 小宮 貴裕(セマスR新松戸)+5秒

 

 

市民レース100㎞オープン
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 左迫間 昭一(チームGINRIN熊本)2時間49分34秒
2位 小林 柊友(岐阜第一高校)+0秒
3位 上谷 蒼志(クラブワンピースハクサン47/17)+0秒

 

 

市民レース100㎞マスターズ
ツール・ド・おきなわ2025 チャンピオンレース
1位 花田 俊太 2時間46分43秒
2位 岡 正二郎(カデナロケッツ)+1分26秒
3位 安武 英治(チームGINRIN熊本)+1分27秒

 

 

第37回ツール・ド・おきなわ 2025大会

開催日:2025年11月8日(土)・9日(日)

開催地:沖縄県北部地域

http://www.tour-de-okinawa.jp/

 

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