冬の間もライドを身近にするバーチャルサイクリング Zwiftをはじめよう!
目次
まもなく冬がやってくる。寒空の下でサイクリングするのがおっくうなら、インドアで楽しめるZwiftの始めどき。ヘビーユーザーにZwiftの魅力を聞けば、あなたも「Ride On(いいね)」したくなるはず!

ADVISER 野村綾乃さん:新潟県のサイクルベースあさひ燕三条店のスタッフ。ZwiftのサイクリングチームNICO-OZに所属し、全国の仲間たちとレースやワークアウトに取り組んでいる。最速店長選手権in Zwift 2ndで3位入賞。(※写真にあるスマートトレーナーのキッカーコアは旧バージョン)
Zwiftって何?

米国発のバーチャルサイクリングサービス。パソコンやスマートフォンのZwiftアプリとスマートトレーナーをペアリングしてペダルをこぐと、バーチャル空間のアバターが走る。さらにバーチャル空間の勾配変化に合わせて上りではペダルが重くなり、実走に近い感覚でライドを楽しめる。イベントやレースに参加したり、ワークアウトに取り組むこともできる。
Zwiftの楽しさって?
その1・スキマ時間で簡単に乗れて、ゲーム感覚で没入できる
その2・仲間や世界中の人と走れる
その3・乗れば乗るほど自身のバイクのレベルアップや、アイテムが集められる
Zwiftはガチ勢だけのものではない。レースやワークアウトのほか、自分のペースで走れるライドイベントも随時開催され、完走するとジャージなどのアイテムをもらえることも。Zwift内で使えるバイクも様々なブランドから選べ、憧れのバイクや自分の愛車もあるかも。距離を走ると自転車を軽量化したり空力性能を高めたりできる。チャット機能もあり、遠くのライド仲間や世界中のライダー(ツールに出るようなプロ選手も!)とつながることもできる!
Zwiftのはじめ方
① Zwift READYスマートトレーナー or Zwiftスマートバイクを用意
スマートトレーナーと自転車、もしくはトレーナーと一体型のスマートバイクを用意。基本的にトレーナーに設置するバイクと同じ段数のスプロケットをスマートトレーナーに付けて設置するが、バーチャル変速を可能にするZwift COG&CLICKを使う場合、バイクの変速段数は関係なくなるので、古いロードバイクやクロスバイクでもZwiftを楽しめる。
おすすめスマートトレーナー①

ワフー・キッカーコア2 ウィズ Zwift COG & CLICK
価格/13万2000円
問・インターテック ☎050-8892-3697
▶︎本格的な機能を備えながらお値打ちな価格で人気機種キッカーコアに、バーチャル変速を可能にするZwift COG & CLICKを搭載したモデル。初めてZwiftをする人も、これを買っておけば間違いない。
おすすめスマートトレーナー②

エリート・リーヴォ ウィズ Zwift COG & CLICK
価格/10万9100円
問・カワシマサイクルサプライ ☎072-238-6126
▶︎10万円台という価格ながら、最大パワー2000W、再現勾配18%と上位モデル並みのスペックを誇るエリートのスマートトレーナー。Zwift COG & CLICKを標準装備し、Zwiftを快適に楽しめる。
Zwift COG & CLICKがバンドルされた一体型バイクもおすすめ!

ワフー・Zwiftライド ウィズ キッカーコア2
価格/22万4000円
問・インターテック ☎050-8892-3697
▶︎キッカーコア2に専用バイクフレームが付属するセット。ブラケットのところにZwift CLICKと同等のスイッチが付いており、アバターの操作などが手元でできる。室内にトレーナーを常設できるなら便利。
COG&CLICKのローラー台でより手軽に、操作を楽しく!



COGが付いたスマートローラー台だと、Zwift内でのバーチャルシフトで変速音がなく、カセットスプロケットを使用する従来品よりも格段に静音性が高くなっている。Zwiftの操作やコミュニケーションができるコンパニオンアプリと組み合わせて手元で全ての操作を完結できるのもポイント。
②スマホやタブレットなどにZwiftアプリをインストールしたらすぐにスタート!

スマートフォンやタブレット、パソコン、Apple TVなどにZwiftアプリをインストールして起動。スマートトレーナー、パワーメーター、ケイデンスセンサーのタブをクリックし、ペアリングしたら準備完了。試しにレースやイベントに出てみよう。月額メンバーシップ(2400円/月)の場合は14日間の無料トライアル期間があり、年間メンバーシップ(24000円/年)なら月払いより2か月分お得な料金で1年間利用できる。
Zwiftアプリのダウンロードはこちらから!
https://www.zwift.com/ja/download
Zwift1つで楽しみ方は様々!

フリーライドでは好きなコースで自由にバーチャルサイクリングを楽しめる。このほか、仲間同士で呼びかけ合って走るミートアップ、24時間随時開催されているレースやイベント、FTP強化、エンデュランス能力強化など目的に合わせてトレーニングできるワークアウトなど、ガチ勢からエンジョイ勢まで様々な楽しみ方ができる。
ライド&グループライド

●まずはその日に公開されている好きなコースを走ってみよう。人と走りたいならグループライドなどのイベントに参加してみよう。仲間とつながったり、チームに入ったりしたら、イベントを作って呼びかけて一緒に走るミートアップもしてみよう
ワークアウト

●Zwift内にはFTP強化やエンデュランス強化、リカバリーなど、目的に応じたワークアウトがたくさん用意されている。FTP計測ができるワークアウトもある。負荷の調整は全てスマートトレーナーが自動的に行ってくれる。
レース

●Zwiftでは24時間何かしらレースが開催されている。ロードレースだけでなく、ヒルクライムレースやクリテリウムもある。自分の実力に最適化されたZwiftレーシングスコアによって出られるカテゴリーが決まるため、脚力の近いズイフターと対戦できるようになっている
目的に合わせた使い方もできる!
・ダイエットや冬の間も健康的に体を動かしたい人に
Zwiftは必ずしもレースを目指すガチ勢だけのものではない。バーチャルの世界でサイクリングしたり、ロングライドイベントに参加したりしてもOK。パリやロンドンなど実在の都市をモデルにしたコースもある。また、距離を走って愛車をパワーアップしたり、新しい自転車を購入したり、イベントに参加してもらえるアイテムを集めたりするのも楽しい。
寒い時期に外にライドに行きたくない人でも、健康維持のためや、ダイエット目的としてもZwiftは有用。バーチャルの世界でサイクリングしたり、ロングライドイベントに参加したりすることでゲーム感覚で気軽に隙間時間で運動が続けられる。パリやロンドン等の実在の都市をモデルにしたコースなども複数あり、飽きずに運動習慣を付けるのに役立つ。
・目指すレースに向けたトレーニングをしたい人に
Zwiftはトレーニングにも活用できる。豊富に用意された目的別ワークアウトに取り組んだり、自分だけのカスタムワークアウトを作ったりして、雨の日でも夜でも好きなときにトレーニングできる。レースも24時間365日開催中。パワーデータで分けられたクラスで同レベルの選手と走れるので、トレーニングの一環としてレースに出るユーザーも多い。
野村さんに聞くZwiftのコト

子育て世代のママでも、スキマ時間に乗れる
野村さんがZwiftに出合ったきっかけは、コロナ禍の緊急事態宣言下で外で自転車に乗れなくなったこと。「Zwiftを使い始める人が増え、勤務していたショップでもスマートトレーナーが売れ始めて。私も始めてみようと思いました」
冬は雪が降る寒い地方に住んでいて、冬場はインドアトレーニングをすることもあったが、インドアトレーニングには元々苦手意識があったという。
「スマートトレーナーではないので、負荷も変わらず、淡々と同じ強度で脚を回すだけだし、景色も変わらないのでつまらなかったんですよね。気分を紛らわせるために動画を見ながら走っていても、人とつながれるわけではないので孤独感があって……」
だが、ズイフトは違った。景色が変わるし、チャットで海外の人が話しかけてきたりする。ミートアップを使えば仲間と一緒に走れる。当時務めていたショップの店長の勧めでサイクルスポーツの「最速店長選手権in Zwift」の女性店長・スタッフクラスに出場し、いきなり3位になったり、ZwiftのサイクリングチームNICO-OZに加入したことがきっかけで、ますますZwiftにはまることになった。
自宅の自転車部屋にスマートトレーナーと自転車を設置してあって、子どもが学校に行ってから出社するまでの隙間時間にZwiftをしているそう。週3回~5回、1回あたり30分~2時間程度で、時間がないときはきつめのワークアウトをすることもある。
「小さい子供がいると外に乗りに行くのが難しいですし、仮に行けたとしてもメイクしたり着替えたり準備に時間を取られるので、結局余り乗れなかったりします。でもZwiftならすっぴんでもいいし、思い立ったらすぐ乗れるので、時間がないときでも乗れます。ミートアップで全国の自転車仲間とチャットしながら走るのも楽しいです! インドアトレーニングがおっくうな人、外乗りの時間がとれない人には特におすすめです」
野村さんのおすすめワークアウト
自転車店に勤めながら家事にも育児にも大忙しの野村さん。多いときで週5回Zwiftをしているという。隙間時間に取り組んでいるおすすめのワークアウトを教えてもらった。
▶︎30分しかないときに Lavender Unicorn

●メインは3分Z3 →1分 Z4 →30秒 Z5を連続で3回繰り返し、4セット目はラストが30秒Z6になる。Z5の後、Z3の区間で一定ペースを保ちながら回復するのが狙いで、実践的なワークアウトだ
▶︎追い込みたいときに Lactate Shuttle Short

●3分Z6の後、1分レスト–1分Z5のインターバルを8本繰り返し、最後の1分Z5の後はレストなしで1分Z6を続ける。乳酸除去能力を強化するのが狙いで、時間は30分と短時間ながらかなりハードだ
※パワーゾーンとは、FTP(1時間継続できる上限の平均パワー値)を基準とした段階別での運動強度を示したもの。Z1が~59%、Z2が60~75%、Z3が76~89%、Z4が90~104%、Z5が105%~118%、Z6が118%以上で区分される。
Zwiftヘビーユーザーたちの声
Zwiftを愛用している4人にどんな使い方をしているか、おすすめのワークアウトなどについて聞いた。
ゆみやみさん

ゆるぽた系のサイクリングや機材など自転車に関して幅広くYouTubeなどで配信を行っているメディアクリエイターであり女性サイクリスト。Zwiftではクラブチームを主催している。
使用機材:タブレット2台 使用端末:Zwift Ride Smart Frame + エリート・リーヴォ with Zwift Cog and Click
▶︎健康維持やダイエットにもZwiftは役立つ!
「CLUB YUMMY」を主宰し、毎週火曜日20時からワークアウトをメインに練習会をしているゆみやみさん。週に一度は必ずZwiftをしてダイエットを続けようと思ったのがZwiftをはじめたきっかけ。クラブライドには健康維持やダイエット目的の方やもっと強くなりたいという方々が世界中から集まり、チャットで最近の出来事などを話すなど交流する。「Zwiftってスキマ時間でできるので、ライドが習慣になるし、健康維持やダイエットにも向いていると思います。時間を合わせて世界中の人と一緒に走れますし、きついワークアウトもみんなで励まし合いながら取り組むと最後まで頑張れるのがいいですね!」
好きなワークアウト:Ham Sandwich

●2分ごとに30秒Z5のダッシュを行うSSTを2セットの間に、30-30インターバルを挟み込む。「パワーグラフの色がサンドイッチみたいになる、とクラブでも盛り上がりました」とゆみやみさん
永田隼也さん

●2015年に全日本選手権DHIを制し、MTBエンデューロ競技の国内第一人者として2020、2021、2023年にエンデューロナショナルシリーズで総合優勝。現在はけがからの復帰を目指す
使用機材:PC 使用端末:ワフー・Zwiftライド ウィズ キッカーコア2
▶︎選手生命を脅かすけがからの復帰にZwiftを活用
2020年のコロナ禍で外で自転車に乗れなくなったときにZwiftを始めたという永田さん。それまではトレーニングは実走が中心だったという。永田さんは近年たびたびけがに悩まされており、なかなか屋外でのトレーニングができない時期にリハビリの一環としてZwiftを再開した。
「30歳を過ぎてから選手生命を脅かすようなケガに何度も見舞われました。屋外だと骨折で腕を固定した状態では自転車に乗ることはできませんが、Zwiftならそんな状態でもペダリングすることさえできればバーチャル空間でバイクに乗れます。自転車に乗らないと心肺機能も筋力も落ちていきますし、そのことがメンタルにも悪影響を及ぼしそうでしたが、負傷からのリハビリでZwiftを続けてきたことは、フィジカルをなんとか維持し、メンタルをいい状態に保つのに役立ちました」と永田さん。
主にZwiftでは30分~1時間程度のワークアウトに取り組み、たまにレースに出場することもあるという。
「ワークアウトも豊富にあり、競技特性に合わせたトレーニングもできます。自分の場合はダウンヒルやエンデューロで求められる立ち上がりのダッシュを繰り返すようなワークアウトが中心。IGNITEやThe Wringerなどはよくやっています」
Zwiftのいいところについて、永田さんは「タイパがよいこと」を挙げる。
「実走だと準備に時間がかかるけれど、Zwiftはその準備が最小限でいい。ワークアウトも必要なことがギュッと凝縮されていて、ごまかしがきかないし、弱いところがあぶり出せるから確実に強くなれます」
最近Zwift Rideを導入したそうで、永田さんが乗らないときは奥さんがZwiftを楽しむようになったそう。「Zwift Rideなら、ハンドルやサドルの高さを簡単に変えられて、1台あれば家族みんなで楽しめる。妻もジムに行かなくてもバイクに乗れるとかなり気に入っています。Zwiftはこれから自転車を始める人にもおすすめです」
好きなワークアウト:The WRINGER

●永田さんが主戦場とするMTBエンデューロは、コーナーの立ち上がりで何度もダッシュを繰り返す。その特性にマッチするのがこのワークアウト。「短時間で終わるのもいいですね」と永田さん
遠藤健太さん

●新潟県のサイクルワークスフィンズ店長。全日本最速店長選手権inZwiftの初代優勝者で、過去に3度の優勝を誇る。Zwiftの強豪チームZWCのキャプテンを務める業界屈指のヘビーユーザー
使用機材:ノートPC 使用端末:ワフー・キッカーV5
▶︎国内トップアマチュア選手と毎日しのぎを削る
最速店長選手権in Zwiftで歴代最多の3勝を挙げるZwift通の中のZwift通の遠藤さん。Zwiftを初めて体験したのもかなり早く、2016年1月にスマートトレーナーの体験を兼ねて1か月間Zwiftをしていたという。元々インドアトレーニングが苦手で、雪国に住んでいながら冬でも外に走りに行くほどだった遠藤さん。
「当時のZwiftは、今のようにコースのバリエーションもないし、登録者も少なかった。他のズイフターを見かけたりすれ違ったりするだけでも感動する状態で、あまりに人がいなすぎてつまらないと思ってしまった」という。
その後、アカウントをしばらく放置していたが、7年ほど前から冬場にお客さんとZwiftのミートアップを始め、「これなら冬でも人と走れる」とのめり込んだという。
今では国内のJBCFエリートツアーの強豪選手や主要ヒルクライムレースの優勝者などトップアマチュア選手が集うレースに出場したり、練習会に参加してワークアウトをこなしている。
「Zwiftのレースに参加するようになって、以前は苦手だったインターバルトレーニングとか瞬発系の能力が鍛えられましたが、毎日のように国内トップ選手と走れるのはZwiftの魅力。クラブに入って仲間を作ると楽しみが広がります」
遠藤さんはスマートトレーナーだけでなく、3本ローラーとパワーメーター付きの自転車を使ってトレーニングすることもあるという。
「スマートトレーナーばかり乗っていると、スマートトレーナーでパワーを出すようなペダリングになってしまいます。僕の目標は実際のレースで結果を出すことなので、時々より実走に近い3本ローラーでZwiftをするようにしています。Zwiftで一緒に走るアマチュアトップクラスの選手も同じようにしていますよ」
好きなワークアウト:The Gorby

●ガチ系サイクリストの間で定番の5分Z5–5分レストを5セットというシンプルなワークアウト。「最初は完遂するのも難しいレベルですが、これさえすればロードレースで勝てる!」と遠藤さん
三島雅世さん

●トライアスロンから自転車のヒルクライムに挑戦し、2022年の乗鞍で2位に入り存在感をアピール。2024年乗鞍ヒルクライム優勝、2025年Mt.富士ヒルクライム優勝。2026年からロードレースデビュー予定
使用機材:タブレット 使用端末:ワフー・Zwiftライド ウィズ キッカーコア2
▶︎Zwiftなら集中して追い込めるから安心
元々室内トレーニングが苦手で、普段は自宅近くの峠で近所の練習仲間と実走トレーニングすることが多いという三島さん。Zwiftを使い始めたきっかけは2024年のMt.富士ヒルクライムの優勝賞品にZwiftのメンバーシップ1年分があったことだった。今はZwift Rideを使ってZwiftを行い、週6回のトレーニングのうち、2回程度をズイフトで行い、雨の日のトレーニングやVO2maxより高い強度のインターバルなどはZwiftですることも多いという。
「外で走るとどうしても周囲の車や歩行者に気をつけながら安全第一で走ることになり、高強度トレーニングできっちり追い込むのは難しいと感じます。Zwiftなら周囲を気にせずブラックアウト寸前まで追い込めますし、雨や暑さといった外的要因に左右されずにトレーニングできるのもいいですね」と三島さん。
トレーニング以外ではヒルクライムのイベントに参加することもある。イベントを通じてZwiftの楽しさにも気付いたそうだ。
「世界中のライダーや離れている人ともリアルタイムで同じ時間に走れるのは面白いですね。参加者とチャットで会話することもありますよ」
Zwiftをどのような方に薦めたいかと尋ねたところ、三島さんは次のように答えてくれた。
「高強度の練習がしやすいのと、豊富なワークアウトが選べるので、ハードに追い込む人はもちろんおすすめです。初心者にもいいんじゃないかなと思っていて、クルマが多いところで走るのが不安という方、ビンディングペダルが不安という方にもおすすめです。忙しい人、雨男や雨女、寒がりな人や暑がりの人にもいいんじゃないでしょうか」
好きなワークアウト:EF Pro Cycling’s Red Day Workout

●三島さんがリカバリー時によく行うワークアウト。4分Z2を3分のレストをはさんで4回繰り返す。「日本にいながら海外プロチームの練習を体感できるのもZwiftの良さ」と三島さん











