猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第48回
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坂バカ俳優、猪野学(いの まなぶ)。NHK BS1の番組「チャリダー★」で活躍する姿は、多くのサイクリストが知るところだ。Cyclist(サイクリスト)で連載中だった「猪野学の坂バカ奮闘記」が、サイト閉鎖にともないサイクルスポーツへお引越し。さらなる活躍をレポートしていく。今回は猪野さんが参加した九州での自転車イベントでのお話だ(編集部)。
「マイナビ ツール・ド・九州2025 筑後・八女(やめ)ステージライド」にゲスト参加
今年はさまざまな自転車イベントでゲストライダーを務めさせてもらった。8月は北海道そらちグルメフォンド。そして9月はツール・ド・九州を盛り上げるイベント「マイナビ ツール・ド・九州2025 筑後・八女ステージライド」にゲストとして招待され、参加した。今回はこのイベントでの、渋くて甘い…、まるで八女茶(やめちゃ)のようなできごとを書かせてもらう。
前日に福岡県の久留米市に入った私は、さっそくイベントスタッフと一口餃子を食べながら打ち合わせ。スタッフから「久留米市のイメージは?」と質問がきた。久留米といえば久留米ラーメンだ! 久留米ラーメンはなんと豚骨ラーメン発祥の地らしい。そしてその豚骨ラーメンのルーツは長崎のちゃんぽんから来ているとのこと。その土地に来ないと知ることができない情報や歴史を知れるのもイベントライドの醍醐味だ。
飯島 誠さんとトレーニング話で盛り上がる

スタート前、飯島 誠さんと。初めて走っている姿を拝見したがフォームが美しく…大御所感が半端なかった。
そして今回楽しみなのは、元プロ自転車レーサーで“兄貴”こと飯島 誠さんもゲストライダーとして参加していることだ。飯島さんと会うと、なぜかトレーニングの話で盛り上がる。イベントスタッフをそっちのけで、今年取り組んできたトレーニングについて相談する。SSTはノルウェーが発祥だとか、高強度はタバタが良いとか。さらに自転車の乗り方、上腕から背中の使い方までとても親切に教えてくれるのだ。
ちなみに飯島さんは今年(2025年)、「Mt.富士ヒルルクライム」のゴールドを目指していた。4月に会ったときは「今FTPが270Wなんであと3キロ絞ればゴールド獲れます!」と意気揚々だったが、結局仕事で出場できなかったそうだ。私も今年は仕事で「乗鞍ヒルクライム」に出場できなかった。職業ライダーのつらいところだ。
坂で参加者を盛り上げるミッション!

大茶園ヒルクライム。距離は短いが後半に勾配がキツくなる。
イベント当日。初めて開催するイベントにも関わらず300人近くの参加者が集まった。私は100kmのコースを走る。目玉は八女茶畑の大茶園! そしてマイナビ ツール・ド・九州2025 福岡ステージにおけるKOMの坂!!
10人ほどのグループで出発。とても緩やかなペースで稲穂の輝く田園地帯を走る。少し緩すぎるので、私はギヤを上げてグループを抜けて単独走。それには理由がある。イベントサイドから大茶園の坂で参加者を盛り上げるミッションが私に課されていたのだ。
大茶園入り口に着くと、先に出発したグループが坂に苦しんでいる。お仕事開始だっ!! 「ナイス・クライムです!」と言いながら参加者を鼓舞する。頂上に着くとすぐに下山! 次のグループのヒルクライムを応援する。坂バカを坂で見ると皆なぜか笑う。熊本駅でクマモンを見るのと同じ原理だろう。

頂上では冷たい八女茶とクッキーが振る舞われる。
すると仙人のような立派な白いお髭の年輩ライダーが自転車を押しながら歩いている。仙人「昔は由布岳をブイブイ上れたんじゃが、歳には勝てんのぉ」と息も絶え絶えだ。私はすかさずスプロケを見た! するとオニギリくらいの大きさの小さなスプロケが付いているではないか!? お父さん!! ギヤが小さすぎますよ! 昭和の男ギヤブームの名残りだろう……。
「こんな重いギヤじゃ踏めないのは当たり前ですよぉ〜」と仙人を持ち上げる。これもゲストライダーの仕事だ。すると絶望していた仙人に明るさが戻った! 仙人は回収車に回収されることなく、大茶園を徒歩で登りきった。坂にはさまざまな人間模様がある。
合計7本大茶園を往復し、私のミッションは終了した。お次は福岡ステージのKOMだ!
女性インフルエンサーとヒルクライム

鼻の下が伸びる筆者とベキさん(中央)とカッシーさん(右)
大茶園からさらに山間部に入っていく。途中で九州在住の自転車系インフルエンサー・ベキさんとカッシーさんに遭遇し一緒に走ることになった。プライベートでの女性とのサイクリングなんていつぶりだろうか? 自然と伸びる鼻の下……。私個人の印象だが、九州の自転車系インフルエンサーは強い人が多い。ベキさんはブルベ、カッシーさんはヒルクライムで大暴れしている。
ずっと220Wで巡行する……やはり速い。坂バカ俳優としては何としても千切れる訳には行かない!! するとKOMのコースが現れた。ぐっとキツくなる勾配!! 先行する女性インフルエンサー!! パワーは250Wまで上がる。いつもなら千切れるパワーだが、今年の私は己史上最高に仕上がっている。とあるレースのためにトレーニングして来たのだ!(それについては後日書かせてもらう)
それにしても250Wでも呼吸が乱れない……。52歳になっても強くなるものだとうれしくなる。それよりもうれしかったのは女性とのヒルクライムが何と華やかなこと!! やはり仙人より女性インフルエンサーの方がテンションが上がる。インフルエンサーに千切られることなく、無事にKOMを駆け抜けた。そこからは下り基調で鼻の下が伸びに伸びてゴール!!
そういえばインフルエンサーは自ら撮影もして楽しそうだった。私が自転車を始めた頃にはなかった光景だ。時代だ……。おにぎりスプロケの仙人……美人インフルエンサー。時の流れを痛感したライドであった。

飯島さんにご馳走になった久留米ラーメン。豚骨よりスープがクリーミーなのが特徴。











