マウンテンバイク（MTB）の基本が学べるシリーズで、脱初級者を目指す人のための“シーズン2”。今回は醍醐味と言える「バーム」のコーナリングについて。バームって、実は基本どおり曲がる方法では対処できないものがあるって、知ってました？

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バームにもさまざまな“クセ”がある

今回も教えてもらうのは、板垣奏男さんだ。

板垣奏男（いたがき かなお）さん。東京サイクルデザイン専門学校を卒業後に本場カナダへ渡り、高度なライディングスキルからトレイルビルディングに至るまでを習得。現在はプロライダー／インストラクターとして活躍している。Instagram：kanao_i_into_the_ride 　YouTube：kanao itagaki

以前の回で、バームを曲がるためには大きな円を描くことが重要で、なるべく外側から入ってバームの形に沿って走っていくのが基本だ、と教わった。しかし、実はそれだけじゃない？

「実は、バームもラインを読むことが重要なんです。確かに、バームは外側から入って大きな円を描くように曲がっていくのが基本で、それは間違いではありません。

しかし、実はバームにも“クセ”があり、作り手、つまりトレイルビルダーの癖が反映されていたり、あるいは劣化で崩れて補修がうまくされていなかったりと、千差万別なんです。

そこで重要になるのが、“どこを走れば最もタイヤのグリップを最大限に使えるか”を読んでいくことなんです。それができるようなると、トレイルやコースの見方が変わってきて、また一歩先の次元へと行けるようになります」と板垣さん。

考えたこともなかった。そういえば、ふだんライドしていて、どうもこのバーム曲がりにくいんだよなぁ〜と思う箇所がいくつもある。それって実は、そのバームのクセをうまく読めていなかったということ？

「その可能性は大きいですね。みなさん、走る楽しさが優ってしまって、バームを読む、ひいてはトレイル・コースを読むということをしない傾向があります。イエーイ！ と楽しく走ってなんとなくバームをこなしてしまい、最適な走り方を見抜けないままになっていることが多いと思います。

そこで、ここはひとつ冷静になってしっかりとバームを読むことができれば、もっとレベルの高い、楽しい走りができるようになると思います。今回はそんなことをレクチャーしたいと思います」。

詳しく教えてもらおう。

【CASE①】“圧点”が最初にある（イレギュラー）

「では大宅さん（筆者）、いきなりですがイレギュラーケースをやってみましょう。下のバームを曲がってみてください」。……ということで、やってみる。

基本どおりやったはずなのに、なぜかコースアウトしてしまった。何がいけなかったのか？

「確かにバームの曲がり方としては間違ってはいないんです。しかし、このバームがイレギュラーだったんです」。

「よくこのバームを見てみましょう。入り口のあたりはバームの壁がわりと立っています。ところが、後半になるにつれてなだらかになってしまっています。なので、基本どおりバームをなぞるように走ってしまうと、後半のなだらかなところでタイヤの圧がかかりにくくなり（グリップしにくくなり）、コースアウトしてしまうのです。

おまけに、前半では土が多くあまり砂利は浮いていないのですが、後半のなだらかな箇所では砂利が多く浮いています。これによって余計にタイヤの圧がかかりにくい状況が生まれています」。

そ、そうか！ 言われてみると確かにこのバーム、そうなっている。

「たとえばMTBパークならシーズン後半でバームが崩れてきて、その補修まで手が回らなくなっていたりすると、割とこういうバームが現れてきます。要するに、いつもバームが同じ形状であるとは限らないということです。時期や状況によって変化していくので、常にどう曲がるのが最適かを読む必要があるわけですね。

ですので、いちいち止まってよく確認しろとまでは言いませんが、初めて走るバームやシーズンはじめの時期などは、まずはゆっくり走ってバームの状況をよく確認することが重要です。それによって、ヒヤリとしたり最悪転んでしまうリスクを最小限に抑えられます。要は、“バームを信じちゃだめ”ってことですね」。

目からウロコだ。では、このケースではどう曲がればよかったのか？

「最初に“バームが立っていて”、後半で“バームが浅くなる”ケースの場合は、タイヤの圧をかけられるのが前半だけ、という状況となります。このタイヤの圧をかけられるポイントを“圧点（あってん）”と呼ぶことにしましょう（※本来持つ言葉の意味とは違います）。

この場合は、最初のバームが立っている（かつ砂利の少ない）部分でぐいっとバイクの方向を変えてやる必要があります。バイクをより大きく倒してあげるわけですね。そして、後半のところでは前回やった抜重を行い、タイヤの圧を抜いてあげます。他にもやり方はありますが、これが取り組みやすい攻略法だと思います。ちなみに、全体的に浅いバームほどバイクをグイッと大きく倒さないと曲がれなくなりますよ。

では、実際にやってみます（下の写真）」。

【CASE②】“圧点”が後半にある

「続いて、先ほどのイレギュラーなケースと逆のケースです。上の写真のバームは、前半がなだらかで後半にかけて反りたっている構造をしています。言ってみれば最もオーソドックスな作りのバームです。

このバームは、基本どおりに曲がればOKです。前半では外から入り、あとはバームをなぞって行けば良いです。後半がちゃんと反り立っているので最後に安心してタイヤの圧をかけられ、コースアウトもしにくいです。本来バームはこうあるべきなんですよね。じゃないと最後に飛び出してしまいますから。

なので、前半のなだらかな部分では特にグイッとバイクを倒す必要はなく、ある程度ラフに入ってしまって大丈夫です。むしろここでグイッと倒すと滑るかもしれません。レディポジションもさほど深くとる必要はないでしょう」。

最もタイヤの圧をかけられる部分

「ここで一つ覚えてほしいのは、どこで最もタイヤの圧がかけられるか（グリップを利かせられるか）を判断する方法です。バームは、多くの人がタイヤの圧をかける部分でどんどん土が踏み固められ、土質にもよりますがそこがへこんで砂利が浮いていない状態になります。また、こうした部分では踏み固められて押し上げられた土がバームの上部に雪庇（せっぴ）のようなものを形成します。これを一つの判断材料に、どこで最もタイヤの圧をかけられるか（バイクを倒し込めるかとも言える）が分かります。

では、ここを曲がってみますね」。

「なお、バームによっては最初に圧点がきて、後半にももう一度圧点がくる場合もあったりします。なので、やはりケースバイケースで判断していくしかないんです」。

深い……。

【CASE③】“圧点”が全部ある

「最後に、最初から最後までバームが反り立っていて圧点があるケースです。このケースはバームを信じて外から入ってバームに沿って大きく回っていけばOKです」。

「ただし、このバームはところどころ石が出っ張っている部分がありますね。この程度の石なら乗って行ってしまって問題ないと思いますが、“食らう”とバランスを崩してしまうかもしれないので、注意はした方が良いです。

このように、バームの中に障害物となるものがあるケースもあるので、また繰り返しとなりますが、やはり都度バームを読んで見極めていくことが大切となります」。

いかがだっただろうか。これであなたのトレイルやコースを見る目がまた一つ変わるはずだ。早速次のライドからバームを読むことにチャレンジしてみよう！

MTBはじめよう！

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●撮影協力：
フォレストバイク