ロードバイクに本格的に乗るときはピチピチのサイクリングウェアを着ないといけないの?
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ロードバイクで本格的にサイクリングしている人の多くが、“ピッチピチ”のサイクリングウェアに身を包んでいる。体のラインがはっきり見えてしまうので、着るのに抵抗感がある人もいるだろう。これって着ないといけないんだろうか? 今回は、そんな疑問にお答えする特集だ。
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【出オチ】別に着なくてもいいけど、多くの人が着るのには理由がある
ということで、今回はサイクリングウェアの専門家として、日本の大手サイクリングウェアブランド、パールイズミの大西勇輝さんに疑問をぶつけてみた。

パールイズミ コミュニティマネージャー 大西勇輝さん
「ロードバイクに本格的に乗るときはピチピチのサイクリングウェアを着ないといけないの?」というテーマを設定しておきながら、いきなり出オチとなってしまうが、別に着なくてもよいだろう。
「そのとおりです。ロードレースなどの競技に取り組む人の場合は着用がほぼ必須ですが、普通にサイクリングする分には別に着用する義務などはありません。服装は自由だと思います」と大西さん。
ですよね。そういう法律があるわけじゃないし。
ただ、多くのロードバイクライダーが着用しているということは、やはり着るメリット、理由があるはずだ。
「そのとおりです。ロードバイクでサイクリングするときに一番重要になるのは、“快適に楽しく乗る”ということだと思います。その“快適さを作る”のが、スポーツ自転車専用に設計されたサイクリングウェアなんです」。
どういうことだろう?
体にフィットしていることで風の抵抗をおさえてくれる
「ロードバイクのようなスポーツ自転車は速度域が高いので、風の抵抗を強く受けます。通常の洋服ですとバタつきが出て風の抵抗が大きくなり、走りにくくなりますが、体にフィットしたサイクリングウェアなら風の抵抗を抑え、快適に走れます」。
サイクリングパンツのパッドがお尻の痛みを軽減してくれる

サイクリングパンツに配されたパッド
「これも重要なポイントです。サイクリングは長時間サドルに座り続けますので、どうしてもお尻に痛みが生じやすくなります。しかし、パッドつきのサイクリングパンツを履いていれば、そうした痛みを軽減し、快適に走り続けることができます」。
ロードバイクに特有の前傾姿勢に最適化された設計

「ロードバイクでは前傾姿勢を取り続け、ペダリングし続けるという、独特のフォームとなります。サイクリングウェアはそれに適した設計となっているので、それに乗ってペダリングするうえで動きやすいので。これも快適性につながります」。
汗をうまく排出してくれる
「ロードバイクは夏場はもちろん、冬場でも想像以上に汗をかくスポーツです。通常の服ですと、夏場なら汗びっしょりになって不快ですし、寒い時期でも意外と汗をかくもので、その場合は汗冷えにもつながります。
サイクリングウェアは吸汗性と速乾性に優れた素材になっているため、そうした事態を防いでくれます。この点も非常に重要です」。
たしかに、ロードバイクにTシャツで乗っていて汗びっしょりになり、全然乾かなくて不快な思いをした、なんて経験、あなたも一度はあるのではないだろうか?
さてさてなるほど。最初はピチピチのシルエットに抵抗感を覚えるかもしれないが、ロードバイクで快適に楽しく走るために、非常に役立つ、着用すると多くのメリットがサイクリングウェアにはあるということが分かってきた。
では、実際に着用してみたい、と思った人に向けて、後半ではサイクリングウェアの基本中の基本について大西さんに教えてもらう。
サイクリングウェア 基本中の基本〜サマーシーズン編
では、まずは暖かい・暑い時期のウェアの基本について教えてもらおう。なお、ここではテーマのとおり体にぴったりとフィットした“ピチピチ系”の(スポーツとしてのパフォーマンスが最も高いタイプの)ウェアについて扱うが、他にもっとゆったりとしたタイプやかなりカジュアルなタイプもある。それについては、また別の企画で取り上げてみたい。
サイクルパンツ+サイクルジャージが基本のキ!
さて、では最も優先度が高く、最初にそろえるべきものとは?

サイクリングパンツの例。写真はパールイズミ・アクセル ビブ パンツ(1万7050円)
「はじめに説明しましたが、パッドつきのパンツです。これは、サドルに座ったときにお尻が当たる部分にパッドと呼ばれるクッション(厚みや形状はブランド、モデルによってさまざま)が配されています。
ロードバイク初心者で多い悩みといえば、お尻の痛みですよね。特にロードバイクのサドルは普通の自転車のサドルに比べて硬いものが多く痛みが出やすいので、ぜひ最初にそろえてほしいですね。痛くなってしまったら、乗るのがつまらなくなってしまいますからね」。

ビブパンツの一例。写真は先ほど紹介したパールイズミ・アクセル ビブ パンツ
「なお、ある程度経験を積まれた方だと、サイクリングパンツの中でも“ビブパンツ”と呼ばれる肩ひもがついたタイプを使う方が多いと思います。好みは分かれるところではありますが、パッドを肩ひもで引き上げてずれないようにし、フィット感をより高めてくれる効果があります」。
サイクリングパンツの中に下着は着ない!?
多くの人が最初に疑問に思うことは、サイクリングパンツの中に“下着としてのパンツ”を履くのかどうか、ということだろう。
「基本的には履かないです。これらは中に下着を着用せずに履くように設計されています。むしろ下着を着用してしまうと下着とパッドとが擦れたりずれてしまい、逆に不快に感じる可能性があります」。
な、なんと・・・。これも慣れの問題か。

サイクルジャージの一例。写真はパールイズミ・ファースト レース ジャージ(1万2650円)
「次に、サイクルパンツと合わせてそろえたいのが、サイクルジャージ、つまりトップスですね。基本的に、先に説明したように体にフィットする設計で、かつ速乾性に優れた素材となっている製品がほとんどです」。

サイクルジャージに配されたポケット
「これらには基本的に背中部分にポケットが配されており、ここにライドに必要な携行品を入れておくことができます。バックパックを背負うスタイルの方もいますが、このポケットを活用することで、何も背中に背負うことなく、身軽に快適に走ることができます」。
小物系もぜひそろえたい
「グローブ、ソックス、アームカバーなど、小物系も快適なライドをサポートしてくれるアイテムです」。
グローブ

グローブの一例。写真はパールイズミ・メガ グローブ(5500円) 写真:パールイズミ
「手は、サドルに対するお尻と同じように、ライド中に長時間にわたってハンドルと触れている部分です。路面からの振動や自重がかかることでだんだん手のひらが痛くなってしまうことがあります。また、それが肩の凝りにつながってしまうことも。
そこで、自転車用のグローブを着用するのがおすすめです。薄いパッドが手のひらに当たる部分に配されており、モノによっては厚手タイプもありますが、手のひらの痛みを軽減してくれます。また、万一転倒したときに手を保護してくれる効果もあります。安全性の理由でも着用したいところです。
夏場だと上の写真のように“指切り”と呼ばれる指が出ているタイプが基本となります」。
アームカバー/レッグカバー

アームカバーとレッグカバーの一例。写真はパールイズミ・コールド シェイド アームカバー(左・4400円)、同・コールド シェイド レッグカバー(右・7150円) 写真:パールイズミ
「例えばヒルクライムで標高の高い山に上り、下りは寒いけど下り切ってからは暑くなる、なんてシチュエーションはよくあります。朝と昼で気温が全然違うなんてこともよくありますよね。
そこで、細かな体温調節で便利なのが、アームカバーとレッグカバーです。着脱が容易で携行もしやすいです。
また、冷感素材を用いた日焼け防止用のアームカバー/レッグカバーも発売されています。こちらを体温調節用と兼用で使うのもアリです」。
ウィンドブレーカー

ウインドブレーカーの一例。写真はパールイズミ・ヘリウム ウィンドブレーカー(1万5400円)。手のひらサイズに畳むことができる
「夏場でも急な雨に見舞われたり、標高の高いところで冷えることはあります。そうした場合に備えて便利なのがこれです。コンパクトに畳めるものが多く、ジャージのポケットに収納して携行しておくと何かと重宝します」。
サイクリングソックス

サイクリングソックスの一例。写真はパールイズミ・トルク ソックス(1980円)
「ソックスもサイクリング用があります。やはり速乾性に優れているので、シューズ内の環境を快適に保ってくれます。また、自転車専用に設計されペダリングをサポートしてくれるので、その点でも快適なライドに一役買ってくれるでしょう」。
アンダーウェアも重要

アンダーウェアの一例。写真はパールイズミ・クールフィット ドライ ノースリーブ(5500円)
「縁の下の力持ち的な存在で、ぜひジャージと合わせて着用したいのが、アンダーウェアです。ジャージ自体にもすぐ乾く性能はあるんですが、特に夏場で発汗が多い時期は、ジャージだけだと汗の排出が追いつかなくなります。
そこで、インナーとして吸汗・速乾に特化した素材のアンダーウェアを着ておくことで、汗の排出を助け、ベタつきを抑えてより快適に走れるようになります」。
サイクリングウェア 基本中の基本〜ウィンターシーズン編
寒い時期はどうしたらよいのだろうか?
「基本的な考え方はサマーシーズンと同じで、それを冬用に置き換えることになります。
サマーシーズンと違うのは、脚と腕全体を覆うロングスリーブジャージ、ロングパンツを用いることです。これらは、高いフィット感でかつ自転車に乗るうえで動きやすく、さらに防風性・保温性に優れてもいます。裏起毛になっていたり、全面には風を通しにくい素材が配されるなど、工夫がされています」。

ロングパンツの一例。写真はパールイズミ・ウィンドブレーク ビブ タイツ(2万1230円)

ロングスリーブジャージの一例。写真はパールイズミ・サーモ ジャージ(1万5950円) ※本商品は2025年秋頃発売予定のモデルです
冬場はアンダーウェアが結構重要に

冬用アンダーウェアの一例。写真はパールイズミ・コンフォートヒート ハイネック ロングスリーブ(1万450円)
「インナーとして冬用のアンダーウェアを組み合わせることが、暖かく快適に走るためには実は非常に重要なポイントとなります。
冬用のアンダーウェアは、風を受ける前面は風を抑えつつ発熱素材で暖かさもキープする、という機能を持っているものが多いです。また、同時に吸汗・速乾性能も高く、寒いとはいえ汗もかきますので、不快な汗冷えも防ぐことにつながります」。
末端の冷えを防ぐアイテムも
「また、末端の冷えを防ぐことも重要で、それに適した小物を着用することになります。特に、手と足の指先と、そして頭部です。こうした末端の冷えを防ぐことで、体感温度がグッと上がるとも言われています」。

冬用フルフィンガーグローブの一例。写真はパールイズミ・ウィンドブレーク ウィンターグローブ(9790円)
「グローブはフルフィンガータイプで、かつ防風性と保温性の高いものを着用しましょう。寒い時期は指先が冷えてしまい、下手をすると痛くなってハンドル操作がおぼつかなくなって危険です」。

シューズカバーの一例。写真はパールイズミ・ウィンドブレーク サーモ シューズカバー(9790円) ※本商品は2024年までのモデル・価格です。
「サイクリングシューズは通気性がよく作られていますが、そのぶん冬は足先が冷えてしまいます。手指と同様に下手をすると痛くなってしまい、ペダリングどころではなくなります。そこで、上の写真のような、防風性と保温性の高いシューズカバーを着用しましょう」。

ウォームキャップの一例。写真はパールイズミ・ウォーム キャップ(3300円) 写真:パールイズミ
「そして頭部です。やはり、スポーツバイク用ヘルメットは通気性が高いものが多いですから、冬は頭部が冷えて痛くなってしまったり、また耳も露出していますから、耳も冷えて痛くなってしまったりします。そこで、耳まで覆える保温性の高いウォームキャップを着用すると良いですね」。
まとめ〜いろいろと着用してみて自分なりのスタイル/着こなし術を確立してほしい
「今回は、弊社、パールイズミのアイテムを事例に体にぴったりとフィットするタイプのサイクリングウェアの基礎知識について説明しましたが、基本的に他のブランドでも同様の傾向でアイテムが用意されています。
各ブランドから暑さ、寒さに対して効果的なウェアがさまざまに展開されていますので、今回紹介した内容をもとに、自分なりに選んでみてほしいと思います。
重要なのは、実際にいろいろと試してみて、“自分なりのスタイル”あるいは“着こなし術”と呼べるものを確立していくことだと思います。
また、機能面はもちろんですが、“自分が好きだと思えるもの”を選ぶことも、ウェア選びの一つの重要な観点だと思います。ですからぜひ、楽しみながら自転車とセットで、“あ、私イケてるな”と感じられるようなものを選べると、より自転車が楽しく、そして快適に続けられると思います」。
ぜひ、読者の皆さんもこの記事を参考に、自分なりのスタイルを確立してみてほしい。












