コルナゴの新型エアロロード「Y1Rs」を試乗&インプレッション

目次

コルナゴ・Y1Rsを試乗

Y1Rs

Presented by AKIBO

平坦ステージだけでなく山岳でも活躍し、タデイ・ポガチャルのツール・ド・フランス連覇に貢献したCOLNAGO(コルナゴ)のエアロロードバイク、Y1Rs。コルナゴは近年、エアロロードをラインナップしていなかったが、その完成度はいかほどか。この奇抜な形状の走りはどうなのか。ジャーナリストの安井行生が試乗した。

 

COLNAGO Y1Rsの特徴

コルナゴ・Y1Rs

コルナゴ・Y1Rs 【試乗車】シマノ・デュラエースDi2完成車(260万7000円)/サイズ:S/カラー:YSWC [ White / WC color stripes ]/ペダルなし実測重量:7.31kg

 

 

コルナゴはかつてコンセプトというエアロロードを持っていた。2017年に同社初となるエアロロードとしてデビューしたそれは、ディスクブレーキ仕様を加えつつ、レースシーンにも投入された。V5Rsの記事でも触れたように、伝統のラグ構造を採用したCシリーズはラグジュアリーバイクへと立ち位置を変化させ、代わりにVシリーズを前線へと投入していたコルナゴ。これで、軽量万能バイク、エアロロード、ラグジュアリーバイクというコルナゴらしい3本柱になるのかと思いきや、コンセプトは後継を残さぬまま、2020年に退役してしまう。

以降、エアロロードがメインストリームになりつつあるこの時代に、コルナゴはVシリーズ一本でレースを闘ってきた。それでもグランツールを何度も制しているのだから実力十分なのだろうが、Vシリーズの世代交代(V4Rs→V5Rs)と時期をほぼ同じくして、完全新作となるエアロロード、Y1Rsを完成させる。

その姿に誰もが驚いた。ときおり製作するショーモデルやコンセプトバイクを除き、コルナゴのロードバイクはイタリアの自転車作りの伝統を色濃く残すものだった。奇をてらわず、質実剛健。塗装を除いては決して派手ではなかった。

しかし、Y1Rsは違う。ヘッドチューブを覆うカウルと一体化したフロントフォーク。ステムという概念を消し去るY字形状のエアロハンドル。複雑に折れ曲がるダウンチューブ。シートチューブはシートステーとの交点で消え、シートポストは宙に浮いているようだ。特異な構造のエアロロードが増えている今の状況にあっても、それは群を抜いて奇抜な形をしていた。コルナゴの市販車史上、ある意味最もコルナゴらしくない一台かもしれない。

空力を決定づけるバイク前半部分の空力性能を重視し、自転車単体だけではなくライダーも考慮に入れ、自転車の速度域を考慮したヨー角を踏まえた空力設計。現実世界との乖離が少ないというCFDの構築。3Dプリンタを活用した風洞実験。大胆に異形となった専用ハンドル。ダウンチューブ一体型ボトルケージ。後発だけあって、発表されたホワイトペーパーを読むと、それは最新の空力設計のトレンドをきっちり押さえたものになっている。

ジオメトリはヘッド角・シート角がやや立った前乗りに対応したもので、スタックは低めに設定されている。見るからに癖がありそうなフレーム形状だが、フレームサイズ5種類に対してフォークのオフセットは4種類も用意されており(ヘッドチューブ前面を覆う特殊な形状のフォークだけにサイズ毎に専用設計にしないといけないという事情はあるにせよ)ハンドリングには気を遣ったものとなっていることが分かる。

「レースを想定したセットアップの結果では、Y1Rsで時速50kmを出すのに必要な力は、V4Rsよりも20W少なくなりました」との一文で技術説明は締められている。

CC.Y1

CC.Y1と名付けられた専用ハンドル。ステム部分が二股に分かれており、前面投影面積の低減と剛性の向上を狙う。フォーク上部にダイレクトマウントされる

Y1Rsのヘッドチューブ

フォークはヘッドチューブ全面を覆う形状となっている。UCIの3:1ルール改正を受けて、ヘッドチューブはかなり前後に長い

Y1Rsのハンドルを切ると……

舵角に制限はあるが、通常使用では問題ない範囲。クラウン部分もダウンチューブと連続する形状になっており、いまやフロントフォークは完全にフレームの一部となった。ハンドルを大きく曲げるとフレームのヘッドチューブにCOLNAGOのロゴが覗く

Y1Rsのダウンチューブ

フロントホイールにできるだけ近づけたいという意図が感じられるダウンチューブ。ダウンチューブ側のボトルケージは空力的に統合設計されている

Y1Rsのシートまわり

Y1Rs最大の特徴でもあるシートチューブ。シートチューブを後輪に近づけて空力性能を向上させつつ、シートポストを浮かせてしなりやすくすることが設計の意図。そのぶんサドル高の調整範囲はかなり狭い

Y1Rsを正面から見た様子

「自転車の空力性能はバイク前半でほぼ決まる」という定説をそのまま体現したかのようなフォーク~ハンドル

Y1RsのBB

BBのスレッド式回帰が進むなか、コルナゴもその流れに合流。「フレーム剛性が高まったことでプレスフィット式を採用する必要がなくなり、BB本体を含めたバイク全体の軽量化にもなる」とのこと

 

COLNAGO Y1Rs 試乗インプレッション

インプレッションライダー

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト/安井行生 原稿料の大半を自転車につぎ込んできたジャーナリスト。近年はロードバイクのみならず、グラベルライドとMTBトレイルライドにも取り組んでいる。その深みのある読ませる文章と鋭いインプレッションは評価が高い

 

ちょうどこの原稿を執筆している最中、ツール・ド・フランス2025ではUAEチームエミレーツXRGがY1Rsでレースを席巻していた。山岳ステージでも山岳タイムトライアルでもこのエアロロードを使っていたことが世界的に話題になった。しかし、当然ではあるが、FTPが400Wを超える彼らが乗るバイクに、我々が乗っていいとはまったく限らない。

V5Rs以上に身構えて走り始める。なにせこの異形の姿で250万円である。なにかあったら「すいません」では済まない。ハンドルを右に切ったら左に曲がるんじゃないかくらいの慎重さでちょうどいい。

思ったとおり、ハンドリングにはやや癖があった(ちゃんと右には曲がったが)。微舵領域ではコルナゴらしく直進性が強く、切り込むとわずかなオーバーステアに転ずるような印象だ。また、ハンドル~フォークの剛性が高く、「Y1Rs用のダンシング」をしてやる必要がある。

しかしそれらの違和感はこの種のエアロロードとしては最小限に抑えられており、数分も走ればリラックスして走らせられるようになる。おそらくフォークのオフセット最適化が効いているのだと思う。

そのハンドリング特性をつかんでしまえば、Y1Rsは見た目に反して非常に乗りやすい自転車だった。驚いたのは剛性感である。ペダリングに対する剛性はV5Rsよりしなやかに感じる。しかし、柔らかすぎてパワーが吸われるという不始末は見せない。適度な剛性感がゆえにペダルを踏み下ろしやすく、ペダリングを持続させやすく、結果として速く走れるという仕立てになっている。

そのペダリングフィールのおかげでヒルクライムも苦にしない。激坂でもペダリングは軽いままだ。高ケイデンスのダンシングを武器にヒラヒラと舞うタイプのライダーには向かないが、シッティングで淡々と標高を稼ぐ走り方には合っている。

「上れるエアロロード」とはいえ、やはり登坂であればV5Rsのほうが適任。ポガチャルは上りでも平坦並みのスピードを出せるのでエアロロードのほうが有利になるのだろうが、一般ライダーであれば、このY1Rsの舞台は平坦~下りだ。

先述の直進性の高さが活き、平坦路では路面に吸い付くような安定感を見せる。件の剛性感も後押しし、高速巡航は得意だ。フロントまわりが硬いのでさすがにハンドルには振動が上がってくるが、サドル部分は快適。ややサドル荷重にしてペダルを踏み込むと、車体をビターッと水平に保ち滑空する。心なしかロードノイズも低い気がするが、さすがに気のせいかもしれない(試乗車のタイヤはピレリ・Pゼロ)。

サドルまわりには上下動を許し、ハンガーまわりは絶妙にしならせ、ヘッドまわりはがっちり固める。それによって醸成されるY1Rsの巡航性能は独特である。

下りでの安定感も高い。つづら折れのようなタイトターンでは意図的にバイクの向きを変えてやる必要はあるが、高速になる下りでは直進性の高さが自然な安定感に転じ、動きが落ち着く。試乗中、山中の狭いワインディングを下っていたらセンターを割った対向車が目の前に表れて思わず叫びそうになったが、Y1Rsはスムーズにレーンチェンジをし、危なげなく回避してくれた。

結論。奇抜な外見に対して、中身はびっくりするほど真っ当なエアロロードだった。剛性感やハンドリングといった目には見えない中身の玉成にも力が注がれていることが伺える。作り込みにかけた開発工数は相当だろう。外部に丸投げではこうはならないと思う。さすがはコルナゴ、抑えるべきところはきっちり抑えているのだ。

オーソドックスなイメージのあるコルナゴだが、新しいアプローチでエアロロードの世界に踏み込んだ。まずその挑戦を称えたい。次に、その中身を真面目に作り込んでくれたことがうれしい。「私らイタリアの老舗だけど斬新なこともやって時代にちゃんと付いていってますからね~」という表面上のアピールだけではなかったのだ。

自称名門、上塗りだけ老舗、中身のない伝統。自転車業界でもよくある話だが、コルナゴはそうではない。Y1Rsに乗ってそれがよく分かった。

 

COLNAGO Y1Rsのラインナップ

フレームカラーは、UAEチームエミレーツXRGのチームカラーであるSDM5、高貴なイメージのYSWW、スピード感のあるYSBO、アルカンシェルの5色が入るYSWCの4種類で、YSWCのみ11万円高くなる。

販売形態は3パターン。フレームセットのほか、デュラエース完成車とアルテグラ完成車が用意される。フレームセットにはヘッドパーツ、シートポストのほか、CC.Y1ハンドルも付属する。ホイールは、デュラエース完成車がシマノ・WH-R9270-C50-TL、アルテグラ完成車がヴィジョン・SC45となる。

 

価格

●フレームセット:

118万8000円

129万8000円(YSWCカラー)

※専用ハンドルステム「CC.Y1」、専用シートポストが付属する

 

●シマノ・デュラエースDi2 完成車:

249万7000円

260万7000円(YSWCカラー)

 

●シマノ・アルテグラDi2 完成車:

192万5000円

203万5000円(YSWCカラー)

 

サイズ展開

XS

S

M

L

XL

 

カラー展開

SDM5 [ UAE Team Emirates XRG ]

YSWW [ Fully Gloss White ]

YSBO [ Black / Blue ]

YSWC [ White / WC color stripes ] ※このカラーのみ価格が異なる

 

プレミアムパッケージについて

プレミアムパッケージという日本独自の完成車もラインナップ。通常完成車と同様にデュラエース完成車(ホイールはシマノ・WH-R9270-C50-TL)とアルテグラ完成車(ホイールはシマノ・WH-R8170-C50-TL)の2種類があるが、本国が設定する完成車より大幅にお得な価格となる。また、プレミアムパッケージにはホイールなしというパッケージも用意される。いいホイールをすでに持っているというユーザーにはありがたい。

 

Dura Ace Di2 + COLNAGO CC.Y1
シマノ・デュラエースDi2完成車価格:198万円
※ホイールなし仕様もあり(159万5000円)

 

ULTEGRA Di2 + COLNAGO CC.Y1
シマノ・アルテグラDi2完成車価格:169万4000円
※ホイールなし仕様もあり(143万円)

 

Brand Info〜COLNAGO(コルナゴ)について

1954年にエルネスト・コルナゴによって設立されたイタリアンブランド。黎明期よりプロレースシーンへの機材供給を始め、ジャンニ・モッタ、エディ・メルクス、ジュゼッペ・サロンニといった名選手がエルネスト製作のフレームで活躍した。80年代にはフェラーリとのコラボレーションがスタート。94年には名車C40を発表し、2000年代にかけてロードレースシーンを席巻。2010年には世界初となる量産ディスクロード、C59で話題を呼んだ。2020年、2021にはV3-RSを駆ったタデイ・ポガチャルがツール・ド・フランスを連覇。2024年にはV4Rsでジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを総合優勝、ダブルツールを達成している。

 

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