コルナゴの最上級ロードバイク「V5Rs」を試乗&インプレッション

目次

コルナゴ V5Rsを試乗

Presented by AKIBO CORPORATION

いつの時代もロードレースとともにあるイタリアンブランド、COLNAGO(コルナゴ)。同社の最新鋭ロードバイク、V5Rsにジャーナリストの安井行生が試乗した。その価値は? ツール・ド・フランスや世界選手権でも勝利している前作V4Rsとの違いは?

 

COLNAGO V5Rs / コルナゴ・V5Rsの特徴

コルナゴ・V5Rs

コルナゴ・V5Rs 【試乗車】シマノ・デュラエースDi2完成車(244万2000円)/サイズ:455S/カラー:SDM5 [ UAE Team Emirates XRG ]/ペダルなし実測重量:6.84kg

 

ロードバイクのそもそもの出自は「競争のための自転車」だが、コルナゴほどロードレースとのつながりを強く感じさせるブランドはなかった。1954年の設立当初から選手に勝つための自転車を供給し、スチールの時代からラグドカーボンフレーム(C40を始祖とするCシリーズ)を実戦投入。C50、その派生モデルであるエクストリームC、エクストリームパワー、EPS、その次世代機であるC59、C60と進化させながら最前線に立ち続けた。

ロードバイクの技術的メインストリームが軽さ&剛性へと移行してからも、モノコックフレームのM10(2010~)でそれに対応。M10の後継車であるV1-r(2014~)、V2-r(2017~)と矢継ぎ早に進化させ、レースシーンからCシリーズを退役させつつ、それら軽量モノコックバイクを投入する。

2019年にはV3-RSをデビューさせ、タデイ・ポガチャルがツール・ド・フランスを2連覇。コルナゴに悲願の「ツール総合優勝」の冠をもたらした。2022年に発表されたV4Rsは、キープコンセプトながらジオメトリが最適化、形状はV3-RSと酷似していたが、専用ハンドルを使用することで時速50km(ライダー込み、ケイデンス90、同形状のリムを使用)で13.2Wの必要ワット低減を実現したという。V4Rsは2024年にジロとツールのダブルツールを達成、世界選手権も制覇し、レース結果だけで見れば昨年最も成功した一台となった。

先日、コルナゴはその最新作であるV5Rsを発表。「レーシングバイクに求められる全性能(空力性能、軽量性、剛性)をバランスさせる」という王道のコンセプトは初代から不変だが、シートポストなどの形状を変更することでさらに空力性能を高めつつ、フォークとヘッドをリニューアルしてダウンヒルでの挙動をより正確なものにしたという。また、フレーム素材と積層を吟味し、剛性や堅牢性を維持したまま前作V4Rsより100g近く軽量化。未塗装フレームで685gというコルナゴ史上最軽量バイクとなった。

コルナゴ V5Rsのシートポスト

シートポストの形状は、前作のD字断面から、空力性能を強く意識した形状に。これに伴ってシートチューブも細身になっている。なお、塗装前ながら、V5Rsのフレーム重量は685g、フォークは342g。これはコルナゴ史上最軽量だという。ちなみに前作V4Rsは、フレームは798g、フォークが375g。トータルで146g軽くなったことになる

コルナゴ V5Rsのフォーク

フォークはフレームサイズに応じてオフセットを2種類用意しており、ハンドリングを最適化した。また、前作より細身になって前面投影面積を削減している。なお、コルナゴはハリファ大学(UAE アブダビ)/ミラノ工科大学(イタリア)との共同で、CFDソフトを構築。それにより、CFD測定値と実測値の平均差は30%(コルナゴのデータによる現在の業界標準値)から15%に減少したという

コルナゴ V5Rsのヘッドチューブ

ヘッドベアリングは前作の上下1.5インチから、上側1-1/8インチ/下側1-1/4インチに。これはヘッドチューブを細くして前面投影面積を削減するためだ

コルナゴ V5Rsのフォークコラム

ヘッドチューブを細くしつつケーブル内蔵を実現するため、コラム断面はD字となる。なお、前作のV4Rsでは採用されていたマルチツールセットの付属はなくなり、それによりトップキャップの固定方法が変更になっている

コルナゴ V5Rsのオリジナルハンドル

完成車には、コルナゴオリジナルのステム一体型ハンドル、CC.01が付属する

コルナゴ V5Rsの前面投影面積

前面投影面積はV4Rs比で13%小さくなった。これによって、50km/hでの必要パワーは9W減少。35km/hでも2~3Wの空力性能向上を見ている

 

COLNAGO V5Rs / コルナゴ・V5Rs試乗インプレッション

コルナゴ V5Rsを試乗

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト/安井行生 原稿料の大半を自転車につぎ込んできたジャーナリスト。近年はロードバイクのみならず、グラベルライドとMTBトレイルライドにも取り組んでいる。その深みのある読ませる文章と鋭いインプレッションは評価が高い

 

稀代のスーパースター、タデイ・ポガチャルも乗る最新バイクを、北関東のつづら折れで走らせた。

コンセプトは「万能」であり、エアロ特化でもなく、軽さに全振りしたわけでもないが、その形状には無駄な装飾やデザイナーのお絵描きの痕跡は全くない。「軽さ、空力、剛性の全てを追求したらこうなるよね」という、万能レーシングバイクのお手本のような形状だ。

あのコルナゴの、フレーム価格100万円にもなんなんとするハイエンドバイクなのだから当然といえば当然だが、加速、登坂、ハンドリング、快適性、巡航性、あらゆる性能のレベルが高い。インプレの原稿としてはこの上なく平凡だが、「すさまじくよくできた万能レーシングバイク」という言葉しか思い浮かばなかった。それほどまでにV5Rsの完成度は高い。

よく走るバイクは他にも多数存在するが、V5Rsの美点は「高い動力伝達性といい塩梅(あんばい)のペダリングフィール」、そして「シャープなハンドリングと落ち着いた挙動」という、相反しやすい性能を両立していることだ。

先述のとおり、ペダルへの入力に対する反応性や登坂性能は高性能化が進むロードバイクの中でもトップレベルにあるが、フレームの剛性感は刺々(とげとげ)しくなく、筆者ごときの脚力でもペダリングを継続させやすい。あくまで高負荷を前提にした仕立てではあるが、低負荷から高負荷まで「走らせやすさ」は陰らない。

ハンドリングはシャープで、ダンシングでは軽やかな挙動を示すが、どんな負荷域でも入力と反応のリニアリティが取れており、扱いやすい。直進から転舵してコーナリングし、曲がり終えて加速して脱出するという一連の動作、シッティングからダンシングに移行して、再びサドルに腰を下ろすという一連の動作が、最初から最後まで滑らかに繋がる。それによって、機材のことを何も意識せず、速く走ることに集中できる。

風洞実験の結果と重量と重量剛性比。ロードバイクの判断基準がその3つだけの人には理解できない、深みのある性能である。

本当に優れた道具は、プロだけでなく、一般人にも扱いやすいものだ。弘法筆を選ばずと言うが、いいバイクは乗り手を選ばない。プロの脚力と速度域を前提にしたがゆえに、アマチュアには扱いづらくなってしまったバイクは多いが、V5Rsはそうではなかった。この「絶対的性能」と「扱いやすさ」の両立レベルは、前作V4Rsより高まっている気がする。このバイクの性能を楽しめるのは、ポガチャルだけではないのだ。

これまでのコルナゴは、強い個性を持つバイクだった。かつてはそれがイタリアンロードであり、レーシングバイクというものだった。しかし、コルナゴはバイクメーカー各社の実力が拮抗し始め技術勝負の時代になると見るや、個性はラグジュアリーバイクとなったCシリーズに任せ、Vシリーズで性能を追求する。その対応の早さが、コルナゴが今もトップランカーであり続けている理由の一つだろう。そのVもこれで5代目。万能レーシングバイクとして、一つの完成形に近い。

 

COLNAGO V5Rs / コルナゴ・V5Rsのラインナップ

フレームカラーは、精悍なVRBK(ブラック)、ホワイト/シルバーの車体に濃紺のロゴが生えるVRWB(グロスホワイト)、UAEチームエミレーツのチームカラーであるSDM5、アルカンシェルのストライプが入るVRWCの4種類で、VRWCのみ10万円強高くなる。

通常の販売形態は3パターン。フレームセットのほか、シマノ・デュラエースDi2完成車と同・アルテグラDi2完成車が用意される。フレームセットにはシートポストとヘッドパーツが付属し、CC.01ハンドルは別売り(12万9800円)。完成車のハンドルにはCC.01が採用され、サイズは90/390mm、90/410mm、100/390mm、100/410mm、110/390mm、110/410mmの6種類から選択可能だ。ホイールは、シマノ・デュラエースDi2完成車が同・WH-R9270-C50-TL、同・アルテグラDi2完成車がヴィジョン・SC45となる。

 

価格

●フレームセット:

103万4000円

114万4000円(VRWCカラー)

 

●シマノ・デュラエースDi2 完成車:

244万2000円

255万2000円(VRWCカラー)

 

●シマノ・アルテグラDi2 完成車:

187万円

198万円(VRWCカラー)

 

サイズ展開

420S

455S

485S

510S

530S

550S

 

カラー展開

SDM5 [ UAE Team Emirates XRG ]

VRWB [ Fully Gloss White ]

VRBK [ Black ] 

VRWC [ White / WC color stripes ] ※このカラーのみ価格が異なる

 

プレミアムパッケージについて

また、プレミアムパッケージという日本独自の完成車も用意。通常完成車と同様にシマノ・デュラエースDi2完成車(ホイールは同・WH-R9270-C50-TL)と同・アルテグラDi2完成車(ホイールは同・WH-R8170-C50-TL)の2種類があるが、本国が設定する完成車より大幅にお得な価格となる。

 

Dura Ace Di2 + COLNAGO CC.01
シマノ・デュラエースDi2完成車価格:195万8000円
※ホイールなし仕様もあり(157万3000円)

 

ULTEGRA Di2 + COLNAGO CC.01
シマノ・アルテグラDi2完成車価格:167万2000円
※ホイールなし仕様もあり(140万8000円)

 

Brand Info〜COLNAGO(コルナゴ)について

1954年にエルネスト・コルナゴによって設立されたイタリアンブランド。黎明期よりプロレースシーンへの機材供給を始め、ジャンニ・モッタ、エディ・メルクス、ジュゼッペ・サロンニといった名選手がエルネスト製作のフレームで活躍した。80年代にはフェラーリとのコラボレーションがスタート。94年には名車C40を発表し、2000年代にかけてロードレースシーンを席巻。2010年には世界初となる量産ディスクロード、C59で話題を呼んだ。2020年、2021年にはV3-RSを駆ったタデイ・ポガチャルがツール・ド・フランスを連覇。2024年にはV4Rsでジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを総合優勝、ダブルツールを達成している。

 

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