猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第35回

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猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第35回

伊豆半島はとにかく景色が良い。快調過ぎて暇なイノコ・エヴェネプール。

今年の目標はズバリ!1000kmのブルベで完走する事!

出走予定の1000kmのイベントに出場するにはSR(スーパーランドヌール)を取得しなければならないらしい。
SRはブルベで200km、300km、400km、600kmの全ての距離のイベントを完走すれば与えられる称号だ。
という訳で今年はコツコツとブルベを走ってきた。

手始めの300km

最初に手を付けたのは300kmだ。
たまたまネットで検索したら「あおば300」という文字が目に止まった。
伊豆を一周して最後に箱根を上るコースだ。
気になるのは獲得標高が5600mという事と、HPに「 酷」という字がデカデカと書いてあった事だ。
だが細かい事は気にしない。
家から近いし、伊豆は番組で何度も走っていて土地勘もある。

ブルベ前日にスタート地点である神奈川県の平塚入りし、しっかりとカーボローディングして翌朝スタート地点に向かう。
参加者は30人くらいだろうか。
話を聞いているとリピーターが多く、上りがキツいと口々に話している。

ブリーフィングが始まると主催者が「伊豆半島を一周するだけの簡単なコースです!西伊豆まではド平坦ですしね」
参加者から自虐的な笑いが起こる。
伊豆半島はアップダウンの連続だ。
そして西伊豆に入ると本格的なヒルクライムがいくつも現れる。

 

絶景と思い出と

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第35回

西伊豆から見る富士山が…1番美しいと思うのである。

 

混雑を避けるために、早めに車検をクリアしスタートした。
小田原までは交通量が多い。前者との車間を10mあけて時速35kmで巡航。
小田原を過ぎた辺りで4人くらいの集団がものすごいスピードで追い抜いて行く。
すかさず快速特急に乗車させてもらう。

上りは350W出るが短いのでついて行ける。
そして下りになると踏む。
ロードレースをやっていた人達なのだろう…ブルベにもスピード思考の人が居るのだと関心していると、あっという間に湯河原に着いた。

湯河原から熱海への上りは長いので集団を見送る。
高速トレインのおかげで平塚から熱海を1時間で走り切った。

熱海市街地でルートを見失いRide with GPSの起動にもたついていると、後続の参加者が現れたのでしばらく間隔を空けて付かせていただく。

海岸線をひたすら南下する…暇だ。
何となしに下ハンドルを持つ….すると前の走者との差がスルスルと縮まる。
空気抵抗か?暇なのでレムコ・エヴェネプールのように背中を伸ばしてエアロポジションをとってみる。
すると滅茶苦茶、巡航速度が上がるではないか!
これは…イノコ・エヴェネプールの誕生だ!!
暇過ぎてくだらない事しか思い浮かばない。

しかし下ハンドルがこんなに有効だとは思わなかった…DHバーならもっと楽なのだろうか?
しかし今回のブルベはDHバーが禁止だ。

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西伊豆に入ると更に景色が良い。疲労の色が見え出したイノコ。

 

下ハンのお陰であっという間に西伊豆の戸田に着いた。
戸田といえば戸田峠!
東京オリンピックの取材では、トラック競技日本代表の女子選手の方々と戸田峠でヒルクライムをした。
己史上もっとも鼻の下が伸びたヒルクライムだ。
トラック競技だからか重いギヤを低いケイデンスで踏んでいたのが印象的だった。

自転車を始めた頃は重いギヤで坂をねじ伏せる事が喜びであった。
そこから色々な方に「踏むな!回せー!」とか「回すな!踏めー!」とか色々言われてきたが、統計的に「回せ!」と言う人の方が多かった気がする。

しかし、だ…低ケイデンスは心拍が上がらない=消費カロリーが減る=内臓がやられないからロングライドに向いているのではないか?
恐る恐るギヤを上げたら両脚が攣った。

すると沼津の穏やかな漁港が現れた。
ここは、チャリダー☆のMCうじきつよし氏や堤下敦氏や朝比奈彩氏が楽しそうに旅をした所だ…あれから10年が経ち、ブルベをやっている…時の流れに思いを馳せていると三島の市街地に入った。ここまでの走行距離は250km。

 

最後に天下の険が待っている

いよいよラスボスの箱根までの長いヒルクライムが始まる。
ここで初めてのコンビニ休憩をとる。
ここまではアスリート粉飴(ロングボトル2本3000Kcalとカロリーメイト)だけで走れたが、さすがに空腹を感じ菓子パンを食べていざヒルクライム!!

箱根は何度も上っているが、三島側から上るのは初めてだ。
勾配が緩く初心者向けだが、勾配変化が無いのでいささか飽きた。
上りきり振り返ると、三島の夜景が見事に美しかった。
主催者の方が「必ず夜景を見るように!」と言っていたのが理解できた。

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ゴール後、疲労MAXと安堵…SRの道は遠い。

 

最後のPC箱根関所で写真を撮り、今度は小田原の夜景を見ながらダウンヒル!!
下りきってスタート地点の平塚に着いた。
タイムは13時間47分。

参加者2人目のゴールらしい。
2時間前にトップでゴールした方は快速特急の方だろう…

下北半島ロングライド…
エベレスティングと300kmを走るのは4度目だが、走れば走るほどキツく感じるのは何故だろうか…
超長距離の世界は思ったより奥が深そうだ。

いったい1000kmなんて途方もない距離を走れるのだろうか?
少し憂鬱な気持ちで帰路に着くのであった。

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やっとの思いで辿り着いた宿はなかなか狭さだが(自転車を置ける宿が無く)まさに天国であった。ブルベは価値観を変える力がある。

 

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