新連載! 安井行生のロードバイク徹底評論 第1回 Cannondale SYNAPSE HI-MOD2 vol.4

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安井シナプスハイモッド2-4
  • text 安井行生
  • photo 我妻英次郎/安井行生/キャノンデール・ジャパン

2012年、名車スーパーシックスエボを完成させて、レーシングバイクカテゴリでライバルを置き去りにしたキャノンデールが、エンデュランスロードにも本気になった。イタリアで100km、日本で300kmを走り込んだ安井が、シナプスの本質とエンデュランスロードのあり方に迫る。技術者インタビューを交えた全10回、1万文字超の最新ロードバイク論。vol.4。

 

設計自由度を上げるための新規格BB

安井シナプスハイモッド2-4

BB規格についてだが、BB30一本できたキャノンデールが、ここにきて「BB30A」という新規格を発表、新型シナプスに搭載した。クランク規格やQファクターはBB30と同じだが、ハンガー幅をBB30の68mmから5mm広げて73mmとしたもの。
 
Q:あれほどBB30の優位性を強調してきたキャノンデールですが、シナプスのBBは新規格になりましたね。
A:我々は長年68mm幅のBB30でやってきたわけですが(MTBは73mm幅)、BB30Aで広がったのはハンガー幅のみ。クランクのスピンドル長やQファクターはBB30と一緒なんです。具体的な変更箇所はアンクルクリアランスです。従来のホログラムクランクでは、アンクルクリアランスが駆動側で10mm、反駆動側で15mmだったんですが、それを両側10mmにしたんです。
 
BBが新しい規格になった、というだけなら見れば誰でも分かる。大切なのは、その目的は何なのか、である。
 
Q:BBワイド化の目的はなんですか?フレーム設計の自由度を上げるため?
A:そのとおり。拡張分だけチューブを太くできるので、剛性感の仕立て方の幅が広がります。シートステーとチェーンステーで縦剛性を上げることはできますが、横剛性には限界があります。BB幅を広げることによって、リアトライアングルの横剛性を上げることができました。リアタイヤとフレームのクリアランスを広げて太いタイヤを装着できるようになるという利点もあります。
では、なぜスーパーシックスエボが68mmだったかというと、軽さを重視したからです。シナプスにおいて重量の優先順位はそれほど高くありません。剛性や重量のみを達成しようとするメーカーもありますが、エボも新型シナプスも、どれかひとつの性能ではなく全てのバランス。それが我々のデザインコンセプトです。

 

シッティングとダンシングの差

Q:最後の質問です。ライバルに対するアドバンテージはどこにあると思いますか?
A:例えばドマーネは、イノベーティブな設計思想を持っており、注目すべきポイントがたくさんあります。デザインはクールだし、設計は興味深い。しかし、シート部の柔軟性のみを追求しているため、シッティングでは非常に快適ですが、ダンシングでは快適性が高くありません。チェーンステーが硬すぎるんです。
だから、荒れたコーナーなどをダンシングで走ろうとすると安定しません。荒れた路面で速く走ろうとすると、サドルに腰を下ろさないといけないんです。シッティングとダンシングのライドフィールの差が大きいとも言えます。キャノンデールは、その差を小さくしようとしたんです。
 
ただ、これは一方的に他社のモデルを批評したもの。ドマーネの開発者がシナプスを見たらチクリと言いたくなることもあるだろう。こういうコメントが出たからといって、ドマーネがシナプスに劣っているとは限らないということを心に留めておいていただきたい。
 
vol.5に続く
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