安井行生のロードバイク徹底評論 第2回 GURU Photon SL vol.3

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安井フォトンSL3

670gの超軽量フレームを作る技術を持ちながら、フルオーダーが基本という姿勢を貫くカナディアンブランド、グル。いかにも北米らしいスッキリとした雰囲気をまとうこのブランドは、何を考え、どこを目指して自転車を作るのか。カナダ自社工場の製造工程とフォトンSLのインプレッションを通じて、先鋭と人間臭さが複雑に混じりあうグルの製品哲学に迫る。vol.3。

 

小回りの利く製造現場

カットされたカーボンシートはクリーンルームへと運ばれ、ここで成型される。内圧をかけるのは、チューブの形状に合わせて作られたシリコン製のブラダー。これに緻密にカットしたカーボンシートを貼り付けていく。これによって、チューブ内壁がスムーズになり、重量増や応力集中を避けることができるのだという。

安井フォトンSL3
安井フォトンSL3

安井フォトンSL3

このカーボンシートを貼り付けたブラダーを金型に入れ、加熱・加圧して硬化させるわけだが、モールドに使う金型の素材はなんとアルミ、しかもすべてグルの自社製だという。なぜアルミを使うのかというと、加工しやすく、軽いので持ち運びが楽だから。鉄製の金型を運ぶにはリフターが必要なのだ。
金型を自社で作る理由は、コンセプトが生まれたらそれをすぐ形にできるから。変更や新しいアイディアにチャレンジする場合でも、アルミならすぐに金型の形状を変えて試すことができる。もちろん鉄の金型に比べて耐久性は劣るが、グルの生産台数はさほど多くないし、作りなおすことも簡単だから問題ないのだという。
 
安井フォトンSL3
安井フォトンSL3
 

人のアイディアと技が息づくフレーム作り

この「アイディアが生まれたらすぐトライしてみる」というのがグルの社風らしい。形状を変えたくなったら金型をすぐ変更する。カーボンの積層も色々と試してみる。思い付いたらすぐになんでも自分たちでやってみる。なかなか楽しそうな職場である。製造を外部工場に委託しているメーカーでは出来ない芸当だ(あるメーカーの担当者に聞くと、海外の外部工場に委託すると、小さな設計変更でも製品に反映されるまで数カ月かかることもあるらしい)。
 
例えば、破断を避けるため最外層に巻かれるカーボンを縞々にして、重量増を最小限に抑えながら耐破断性をキープするというストライプデザイン(フォトンHLのトップチューブに採用)は、このような試行錯誤の中から生まれてきたものだろう。人のアイディアと技が息づいているもの作りだと言える。コンピューターが大活躍するBMC・SLR01あたりとは、設計手法においては対極に位置するフレームかもしれない。
 
フォトンのチューブの大部分はシリコンブラダーを用いて成型が行なわれるが、BBシェル部分のみ金属の心材にカーボンを巻いていく方法で作られる。これは、PF30が高い精度を要求するからだ。各チューブは各工程で何度も重量が測られ、スペック通りに作られているかが確認される。その後、BBとシートチューブは、接合部にカーボンシートを配置して、それをBBシェルとシートチューブの“架け橋”として効果的に使いながらガッチリと接合される。
 
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