安井行生のロードバイク徹底評論 第4回 LOOK 675 vol.4
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最初は誰もが異端児だと思ったルック・675。しかし同じスタイルをまとう795の登場によって、キワモノではなく次世代ルックのブランドアイデンティティーを背負う存在として見なければならなくなった。「なぜルックはこんなフレームを作ったのか?」をメインテーマに書く徹底評論第4回。発表されたばかりの795を見る目も変わる、渾身のルック論である。vol.4
ヘッドチューブが長い理由
ポジションについても突っ込んでみた。
Q:ステムを下げることも上げることもできない675は、ハンドルのポジションがかなり制限されますよね。
A:あのような構造にした理由は、ヘッドチューブとステムとの間隔をなるべく狭くして、正確な操舵性を追求した結果です。ステムの下にスペーサーを重ねると、たわみが発生して剛性が落ち、ハンドリング性能が悪化しますから。ポジションの自由度が低いように思われますが、オフセット15mmのステムを使用すれば、5mm刻みで最大35mmという十分な調整幅があります。
ルックが最近のモデルで独自のヘッド構造を導入している理由は、「ハンドリングの追求」だったのだ。695でコラムスペーサーを入れることが不可能な構造(ステムの角度調整でハンドル位置を調整させる構造)を採用し、675ではスペーサーを最大でも5mmしか入れさせない。コラム剛性の低下を嫌うルックは、スペーサーをできるだけ使ってほしくないのだ。ヘッドが長めに設定されるのも同じ理由からだろう。
ポジションを制限するかわりに正確なハンドリングをオーナーに提供する。それがルックの狙いなのである。「最近のルックはヘッドが長すぎる」という至極真っ当なクレームは、作り手の意図を考えれば的外れでもあるわけだ。
インナーラグを使う理由
ついでに、インナーラグ製法についても聞いてみることにしよう。車名末尾の「5」から分かるように、675もラグドフレームである。見た目はチューブに段差がなくモノコックフレームのようだが、カーボンに高圧をかける製法でインナーラグを一度作成し、その上からさらにカーボンを巻きつけ、型で焼いているのだという。このインナーラグは、応力のかかるヘッド、シート、ハンガー周りに採用されている。
Q:インナーラグ製法について詳しく教えてください。
A:インナーラグおよびチューブの製法は、企業機密なので説明できません。パテント申請もしていないほどです。※パテント申請すると技術公開が必要になる。
Q:では、そのインナーラグ製法を採用する理由は?通常のモノコック製法より手間とコストがかかると思いますが。
A:ヘッド、シート、ハンガーは大きな応力がかかるので、剛性を高める必要があります。しかし、各チューブの中間部分は柔軟性を持たせたいんです。そのため、チューブの中間部分とヘッド、シート、ハンガーとで製法を変える必要がありました。それぞれの部位で理想的な素材と製法を使い分けた結果、手間はかかりますが、このインナーラグ製法がベストだと判断しました。
もちろん、チューブ両端は応力が高く中央は応力が低いため、モノコックフレームであってもチューブの両端を中央部分よりぶ厚く作るのが一般的である。しかし、チューブの接合部が二重になるラグ構造は、モノコックとはまた違った振る舞いをするのだろう。「剛性を上げるため」などという単純な理由ではないのだ。