猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第33回
目次
バンクを貸し切っての大実験室。 深部体温調節の調子が悪く、現場は押しに押して、撮影は深夜まで続いた…
東京五輪から3年、いつもより一年早いオリンピックがやってくる。そう!パリ五輪だ!
チャリダーも日本代表を応援しようという事で立ち上がった!
トラック競技日本代表選手の自転車にまつわる疑問や謎を解決し、スッキリした気持ちでパリに行っていただく…
チャリダー実験室!パリ五輪編!
レース直前に爪を切るな!?
今年の1月に向かったのは修善寺にあるベロドローム。
東京五輪の時は自国開催という事もあって、とんでもない緊張感だったが、今回は前回より比較的に和やかな雰囲気だ。
しかし選手に質問できる時間はわずか5分!
そもそも日本代表選手に自転車についての謎や疑問があるのか?
不安だったが、蓋を開けたら皆さん疑問だらけで驚いた。
中でも興味深かったのが、中距離選手から出た疑問でパワー・ウェイト・レシオは本当か?というものだった。
彼はロードレースも走る誰もが知る代表選手。
「レース中、同じ倍数で走っていてもやっぱり体重が軽い選手の方が速く感じるんすよねぇ〜レシオってホントなんすかね?」
同じ倍数で上っていても「体感」として軽い選手の方が速く感じるらしい…実際どうなのだろうか?
確かにパワーウェイトレシオって自転車の重さは加味されないし、坂の勾配によっても変化してきそうだ…
そもそも誰が考案して、どこからやってきた理論なのだろうか?
日本代表選手でもレース中にそんな事を考えながら走っているのかと妙に親近感が沸いた。
が、その件に関しては実験しようが無いので、実験実現には至らず……。
そのほかにも、爪の長さはペダリングに影響する?
レース前のストレッチはやらない方がいい?
など興味深い疑問がたくさん上がった。
ちなみに爪は切らない方が良く、ストレッチも筋肉が緩み過ぎるので静的ストレッチに留めた方が良いらしい。
暑さの影響は?
さて、実際に実験したのは「暑さや寒さはパフォーマンスに影響するのか?」という疑問だった。
これは私にとっても切実な問題であった。
暑いこの季節になると如実にパフォーマンスが下がりだし、乗鞍で惨敗し。
レースが無い秋に、無駄に調子が良くなりシーズンが終わる。
これなら検証できる!!
という事で極寒の屋外と灼熱にした屋内で20分走をして深部体温計(非常に高価なもの)で測定して検証する事になった。
私だけではなく、トップレベルのライダーにもご協力いただいた。キナンレーシングチームの畑中勇介選手と、リオモ・ベルマーレレーシングチームの才田直人選手だ。
私も実際に体感して、あわよくば乗鞍につなげたいので走らせていただく。
まずは真冬の屋外で20分走!
真冬のベランダでのローラーは私にとって日常だ。
そして冬の方がパフォーマンスが高い。
意気揚々とサドルにまたがると、衝撃の現実を知る事になる。
プロ選手の安静時心拍数が滅茶苦茶低い!
そう!みんな大好き「スポーツ心臓」
私の心拍数と比べると40ぐらい低い。
走る前から勝敗は決まっていると言うが、まさにこの事だ。
走り出すとパワーも圧倒的な差だ!
万年220Wで名高い私は安定の200Wそこそこで呼吸が乱れる。
しかしプロは300Wで深い呼吸で涼しげだ。
完全に実験を忘れプロのパフォーマンスに感動していると皆さんの深部体温は、ほぼ変化が無い事が判明し20分走を終えた。
問題の灼熱地獄でのローラーで深部体温を測る。
鍋でお湯を沸かし、ストーブをガンガン付けてサウナのような部屋で20分走開始!
スタートしてすぐにナイアガラの滝ように汗が出る。
5分経過した辺りで、私の深部にいるマイ・リトル坂バカが「おい!止めろ!死んじまうぞ!」と訴えてきた…
しかし隣では選手も汗だくで頑張っておられる。
落ちるパワー!耐えようとするが、深部のリトル坂バカが体を強制的にストップさせた…8分が限界だった。
プロの方々も15分でストップ!
注目の深部体温だが…やはり上昇し暑さはパフォーマンスに直結する事が分かった。
暑さがパフォーマンスを下げる事は何となく分かってはいたが、改めて命を削り数値化する事に意味があったのだろうか?
約1か月後…遠いパリの青空のもと、日本選手が躍動する姿を観て私は想うだろう…やる意味はあったと。
* J SPORTS「ツール・ド・フランス2024 第3ステージ」の解説者として猪野さんが出演!
7月1日(月)第3ステージのゲストは、坂バカ俳優⛰️の愛称でお馴染み、俳優の猪野学さんです🎉🎉🎉
ツールへの思いの丈を語っていただきました🎥
今年の優勝予想はズバリ…!😎https://t.co/dVPAnnVb4J#jspocycle #TDF2024 https://t.co/vDFUZ7DCRn
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) June 25, 2024