安井行生のロードバイク徹底評論第5回 PINARELLO DOGMA F8 vol.2

目次

安井ドグマF8-2

ピナレロのフラッグシップが劇的な変化を遂げた。2015シーズンの主役たるドグマF8である。「20年に一度の革新的な素材」と呼ばれる東レ・T1100Gと、ジャガーと共同で行なったエアロロード化は、ピナレロの走りをどう変えたのか。新旧ドグマの比較を通して、進化の幅とその方向性を探る。東レ・T1100Gの正体に迫る技術解説も必読。vol.2

 

ピナレロ史上に残る大革新

安井ドグマF8-2安井ドグマF8-2

プリンスカーボン~ドグマ60.1~ドグマ2~ドグマ65.1というピナレロの歴代フラッグシップを思い出してみると、それらの基本シルエットには多くの共通点があったことに気付く。大きくうねる前後フォーク。ホリゾンタル基調のメインフレーム。ボリュームのある各チューブ。フレーム各部に入ったリブ。
 
しかし、新型ドグマF8にそれらのDNAは残っていない。ドグマF8は、フレーム形状を根底から一新したのである。完全左右非対称設計は受け継がれているものの、なんとピナレロのアイコンだったオンダフォークまで形状を大きく変えた。これはピナレロ史上に残る大革新である。

 
フレームの各部を検分していこう。英国の自動車メーカー、ジャガーとの技術提携によって空力性能が高められたことが特徴で、「チューブの縦横比は1:3以下でなければならない」というUCIルール内で空気抵抗を最小限に抑えるため、ピナレロは数年前からロード界で大流行しているカムテールデザイン(ピナレロはフラットバック形状と呼ぶ)を採用。この形状は、ダウンチューブ、シートチューブ、シートステー、フロントフォークに使われている。

 

本気で空力に挑んだ形状

安井ドグマF8-2

ヘッドチューブは前後に長く尖がった形状となり、その下部には不自然なラインが入る。これはフロントのブレーキキャリパー&フォーククラウン部からの空気の流れを考えてのことだという。ダウンチューブのフラット部分の幅が途中からわずかに広くなっているが、これはボトルを装着した状態を考慮して空力性能を整えてあるため。また、シートステーはリヤブレーキキャリパーに空気の流れを直接当てないような形状となっている。
 
「流行ってるからとりあえずカムテールにしました」ではなく、本気で空力に挑んでいることがうかがえるディティールである。

安井ドグマF8-2

前作と同じオンダという名称ながら、フォークも形状を大きく変えている。湾曲そのものが少なくなったうえ、カーブがゆるやかになった。ブレードの横幅は狭くなっているが、前から見たときに左右ブレードが横方向に大きく張り出す構造に。これは、フロントホイールのスポークとフォークブレードの間の空気の抜けをよくするためだという。

空気抵抗削減のため、ブレード表面に刻まれていたリブは姿を消した。結果、TTバイク、ボライドのフロントフォークと酷似したものとなっている。