グッドイヤー ロードバイク用主要4タイヤ一気試乗 アサノ試乗します!その46

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アサノ試乗します

世界3大タイヤブランドとしてモータースポーツの世界でも高い知名度を誇るアメリカのグッドイヤー。2018年にロードバイクのタイヤにも参入し、2020年にはスポーツバイク用タイヤ専用の自社工場を設立して高品質なタイヤを次々と送り出している。今回はグッドイヤーのロードバイク用チューブレスレディタイヤ4種類を乗り比べ、乗り味の違いをチェックする。

 

グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR

イーグルF1スーパースポーツRの特徴

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グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR 価格:9680円(チューブド)、1万1000円(チューブレスコンプリート) サイズ:700×25C、700×28C、700×30C(チューブレスコンプリートのみ) 参考重量:255g(28C・チューブレスコンプリート) 試乗タイヤ:チューブレスレディ 700×28C

ロードレース、タイムトライアル、トライアスロン競技向けの軽量超高性能タイヤ。ロードカテゴリーの中でも上位モデルにしか採用されない高いグリップと転がりの軽さを両立するダイナミック:ウルトラハイパフォーマンスコンパウンドと、グッドイヤーのタイヤではこのモデルのみに採用されるしなやかで軽量な150TPIケーシングを組み合わせている。さらに耐パンク層を省略して軽さを追求し、700×25Cのチューブレスコンプリート(※)仕様で210gという軽さを実現している。チューブタイプ(クリンチャー)とチューブレスコンプリートの2種類を展開し、カラーはブラックとタンをラインナップする。

※チューブレスレディタイヤの利点と追加の空気保持特性を備えたグッドイヤー独自の設計

圧倒的なグリップ力と軽快な走りを高い次元で両立

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最も印象的だったのがグリップの高さだ。トレッドパターンは、センターがなめらかなスリック、両サイドはやや凹凸のあるスリックになっている。コーナーでバイクを傾けた時に接地面から「ギュッ」という音が聞こえる場面が何度かあり、トレッドがしっかり路面に食いついているのが分かるほどだ。やや荒れた舗装路でも、石畳のような滑りやすい路面でも、路面が濡れているところでも、グリップ力の高さは変わらない。適正な荷重を心がければよほどのことがなければスリップしないのではないか——と思えるほどに安心感がある。これまで他社のハイグリップをうたうタイヤにも数々乗ってきているが、このタイヤのグリップ力の高さは群を抜いていると感じる。

ハイグリップタイヤというと、転がりの軽さはそれほど期待できないように思えるが、そんな心配は無用だ。転がりの軽さを生む転がり抵抗の低さとグリップ力の高さは相反する要素のようにも思えるが、それを高い次元で両立している。

転がりの軽さとは別に、走りの軽さも特筆モノだ。それが感じられるのは上りや加速時で、ペダルに加えた踏力が増幅されて推進力になっていると錯覚するような、「足まわりに羽が生えたような軽さ」が味わえる。走りの軽さの最大の要因は重量の軽さだろう。700×25Cのチューブレスレディ仕様で210gという軽さは、クリンチャー仕様(195g)+TPUチューブほど軽くはないが、チューブレスレディ仕様のタイヤとしては最軽量レベル。チューブレスレディの持ち味である転がりの軽さとしなやかな乗り心地を両立する空気圧のスイートスポットの広さも魅力だ。

ケーシングがグッドイヤーのタイヤでは最も高密度な150TPIで、軽くてしなやかなのが効いているのか、今回試した4本のタイヤの中で最も乗り心地がしなやかでライドクオリティが高かったことも意外だった。

ただし、この軽さと引き替えに犠牲にしているものもある。耐パンク性能だ。グッドイヤーのロード用ハイパフォーマンスタイヤ「イーグルF1R」のように耐パンクベルト「シールドプロテクション」を持たないため、あくまでレースオンリーの決戦用タイヤという位置づけになるだろう。それだとしても、軽さ重視のクリンチャー仕様+TPUチューブはそれなりにリスクが高いので、パンク時にシーラントで穴が埋まるケースも多いチューブレスレディ仕様での運用が安心かもしれない。

 

グッドイヤー・イーグルF1R

イーグルF1Rの特徴

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グッドイヤー・イーグルF1R 価格:9680円(チューブド)、1万1000円(チューブレスコンプリート) サイズ:700×25C、700×28C、700×30C、700×32C、700×34C(チューブレスコンプリートのみ) 参考重量:345g(32C・チューブレスコンプリート) 試乗タイヤ:チューブレスコンプリート 700×32C

軽量モデルのイーグルF1スーパースポーツRと同じ「ウルトラハイパフォーマンス」コンパウンドを採用し、直進時の転がり抵抗の低さとコーナーでのグリップを高い次元で両立。耐パンク層「シールドプロテクション」を採用することで耐パンク性能も強化したオールラウンドレースタイヤ。タイヤの骨格となるケーシングには、新開発の「ショートプライ構造」を採用。120TPIと高密度ながらケーシングの使用量を減らすことで、しなやかさ、軽さ、転がり抵抗の低さを実現している。チューブタイプ(クリンチャー)とチューブレスコンプリートの2タイプ、カラーはブラックとタンの2色を展開。

 

トレーニングにも安心して使えるレーシングタイヤ

イーグルF1Rは、イーグルF1スーパースポーツRとコンパウンドは同じで、ケーシングが異なる。さらに耐パンクベルトのシールドプロテクションを備えており、貫通パンクに対する耐パンク性能が向上している。レースだけでなく、トレーニングでも安心して使えるだろう。さらにチューブレスレディ仕様なら、軽度のパンクならシーラントが補修してくれるため、さらにパンクのリスクが少なくなるはずだ。

イーグルF1Rと同じウルトラハイパフォーマンスコンパウンドを採用する。トレッドパターンが若干異なり、全体的になめらかなスリックで、両サイドに「ク」の字型のパターンが規則的に設けられている。ロードバイクの速度域やタイヤ接地面の大きさから言うと、ウエット路面での排水性を高めてグリップを稼ぐ効果はそれほどなく、飾りの要素が大きいと思われる。グリップ性能の高さはスーパースポーツRと同レベルだが、スーパースポーツRとは違ってコーナリング中に接地面から「ギュッ」と音がすることはなかった。かといってグリップ性能に差があるとは感じなかった。

今回テストした4種類のタイヤの中で、イーグルF1Rだけサイズが700×32Cだったため、乗り味に影響があったかもしれないが、スーパースポーツRとの大きな差は感じなかった。わずかに違いを感じたのが走りの軽さと乗り心地だ。各サイズの推奨空気圧で同じコースを走ったのだが、F1Rの方が重量がある分、加速や上りではスーパースポーツRほどのキレを感じられず、乗り心地に関してもエアボリュームは増しているはずなのに若干硬さを感じた。これらはおそらくケーシングの違いによるもので、F1Rはケーシングの密度が120TPIとスーパースポーツRと比べて低い。おそらく太めの繊維を使っているため、ケーシングにわずかに厚みがあって硬さとして感じられるのではないかと思われる。また、走りが重く感じたのは、おそらくサイズが32Cと太いことが原因だと思うが、耐パンク層の分だけ外周重量も増えていることも影響しているのかもしれない。

耐パンク性能がスーパースポーツRより高く、グリップや転がりの軽さに関してもそれほど大きな差があるわけではない。F1Rがレーシングタイヤとして求められるあらゆる性能を高次元でまとめていることは間違いない。トレーニングもレースも同じタイヤで走りたいという人にはおすすめだ。

 

グッドイヤー・イーグル

イーグルの特徴

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グッドイヤー・イーグル 価格:7590円(チューブド)、8580円(チューブレスレディ) サイズ:700×25C、700×28C、700×30C、700×32C 参考重量:305g(28C・チューブレスレディ) 試乗タイヤ:チューブレスレディ 700×28C

イーグルは、従来のイーグル F1の構造を継承しつつ、新しいハイパフォーマンスコンパウンドを採用したモデル。トレッドはセンターに転がり抵抗を減らすものを採用して走りの軽さを実現し、両サイドにグリップ力に優れたものを採用してコーナーリング性能を向上させている。60TPI ケーシングを採用し、耐パンク層としてシールドプロテクションを搭載するなど、コストを抑えながら耐久性を向上。走行性能に加え、ランニングコストや耐久性なども含めたオールラウンドな性能を求めるライダーに最適なモデルだ。チューブタイプ(クリンチャー)とチューブレスレディの2タイプ、カラーはブラックとタンの2色を展開。

 

価格を考えると普段使いならベストチョイス

このモデルと上位モデルのスーパースポーツRやF1Rとの違いは、コンパウンドがハイパフォーマンスコンパウンドになっていることと、ケーシングが60TPIとより密度が低くなっていることだ。

コンパウンドが違うとはいえ、ハイパフォーマンスコンパウンドを採用するイーグルもグリップ力の高さを感じる。よく見るとトレッドの中央部と両サイドでコンパウンドを使い分けており、中央部は転がり抵抗を減らすコンパウンドを表面が滑らかなスリックパターンで採用。転がりの軽さは、上位モデルと比べると若干劣るかな?と感じる程度で、標準的なレーシングタイヤとそれほど変わらない。

これに対し両サイドはグリップ性能を高めるコンパウンドを配する。表面に細かな凹凸のあるスリックパターンを基本に規則正しく、「く」の字型のパターンを配したもので、石畳、濡れた路面、荒れた路面でもしっかりタイヤが路面に食いつくので、コーナーでの安心感がある。

コンパウンドは上位モデルと比べると厚め。その分タイヤが摩耗しきるまでの寿命も長いことが予想され、交換頻度が抑えられそうだ。価格も今回試したタイヤの中では最も安く、ランニングコストを抑えたい向きにもおすすめできる。しかも厚めのコンパウンドながら、チューブレスレディ同士のカタログ重量では同サイズのイーグルF1Rより5g軽く、実際に走りの軽さに関してはイーグルF1Rと大差ないと感じたほどだ。

ケーシングの違いは、乗り心地の硬さとなって現れているように思う。上質な乗り味を求める場合は上位モデルを選ぶ方がいいが、価格と耐久性を含めたランニングコストを考えるとこのモデルの存在価値はぐっと高まる。レースよりトレーニングなどの普段使いに重きを置くような人には最適だ。

 

グッドイヤー・ベクタースポーツ

ベクタースポーツの特徴

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グッドイヤー・ベクタースポーツ 価格:7920円(チューブド)、9,020円(チューブレスレディ) サイズ:700×25C、700×28C、700×30C、700×32C 参考重量:350g(28C・チューブレスレディ) 試乗タイヤ:チューブレスレディ 700×28C

ベクタースポーツは、グッドイヤーのロードバイク用タイヤの中でもウエットグリップを強化したウルトラハイパフォーマンスタイヤ・ベクター4シーズンの弟分にあたるモデル。耐パンクベルトのシールドプロテクションを二重にすることで耐パンク性能をさらに強化。高耐久の60TPIケーシングを採用することで、耐久性と信頼性を高めている。コンパウンドはハイパフォーマンスコンパウンドで、パフォーマンスにも妥協がない。長距離を走るライダーにおすすめ。チューブタイプ(クリンチャー)とチューブレスレディの2タイプ、カラーはブラックのみ。

 

耐パンク性能が高いことは安心感につながるが……

ベクタースポーツは、ハイパフォーマンスコンパウンドを採用し、60TPIケーシングを採用するなど、一見イーグルF1に近いスペックを誇る。最大の違いは耐パンク層のシールドプロテクションが二重になっていることで、耐パンク性能がさらに強化され、信頼性がさらに増していることがうかがえる。

コンパウンドに関してはイーグルF1と同じなので、グリップや転がり性能に関してはレーシングタイヤとしても必要十分以上のレベル。特にグリップ力は優秀で、あらゆる路面で確かなグリップ力を発揮する。トレーニングや通勤などに使うことも想定したら、このクラスのタイヤとしてはかなり走行性能が高いとも言える。さらにイーグルF1と同様、上位モデルのイーグルF1Rなどと比べてコンパウンドも厚めで、タイヤが摩耗して交換するまでのサイクルが長くなって、結果としてランニングコストが低く抑えられそうだ。

乗り心地に関しては、ケーシングの構造として耐パンク層が二重になっている以外はイーグルF1と基本的に同じようになっており、上位モデルと比べるとやや硬さを感じる。耐パンク層が1枚増えている分、イーグルF1よりさらに重量もかさんでおり、その分加速時や上りでの軽快さも一段劣る印象だ。

価格に関してもイーグルF1と比べてやや割高だ。500円程度の違いだが、これを耐パンク性能強化分の必要なコストととらえることができるかがこのモデルを選ぶかイーグルF1を選ぶかの分かれ目になるだろう。もちろん耐パンク性を最優先したい人にはベクタースポーツがおすすめだ。

 

タイヤ比較表

今回試乗した4モデルは、コンパウンドの違い、ケーシングの違い、耐パンク層の違いによって分けられる。

●コンパウンド
イーグルF1スーパースポーツRとイーグルF1Rはウルトラハイパフォーマンスコンパウンド、イーグルF1とベクタースポーツはハイパフォーマンスコンパウンドを採用する。

●ケーシング
イーグルF1スーパースポーツRは最も高密度な150TPIケーシングを採用。軽さとしなやかな乗り味を実現する。イーグルF1Rは120TPIケーシングを採用。軽さとしなやかさ、耐久性のバランスがとれている。イーグルF1とベクタースポーツは耐久性に優れる60TPIを採用し、普段使いも意識している。

●耐パンク層
イーグルF1スーパースポーツRは、軽さの追求のため耐パンク層を持たない。イーグルF1Rは耐パンクベルトのシールドプロテクションを採用し、耐パンク性能を強化し、レーシングタイヤとしての高い走行性能を損なわずオールラウンド性を持たせている。イーグルF1はシールドプロテクション1層、ベクタースポーツはシールドプロテクション2層となっており、イーグルF1は耐久性と走りの軽さ、ベクタースポーツは耐久性を重視したキャラクターだと分かる。

 

何を重視するかでタイヤの最適解が変わる

●どのモデルもグリップ力は高い
グッドイヤーのロードバイクタイヤ4モデルを乗り比べて、全てのモデルに共通していたのはグリップ力が高いということだ。ハイエンドのレーシングタイヤ・イーグルF1スーパースポーツRやイーグルF1Rだけでなく、中堅クラスのイーグルやベクタースポーツも他ブランドの同クラスのタイヤと比べてグリップ力に優れていると感じた。路面のきれいなアスファルトでのドライグリップはもちろん、特に滑りやすい石畳の上やウエット路面でも高いグリップ力を発揮するのが印象的だった。レースではもちろん、普段使いのタイヤでも、あらゆる路面で安定したグリップ力を発揮するのは、ライド時の安心感を高めることにつながり、グッドイヤーのタイヤを選ぶ大きなアドバンテージとなるだろう。

●各モデルのおすすめ使用シーンは?
最後に各モデルの特徴とおすすめの用途をまとめる。

・イーグルF1スーパースポーツR
圧倒的な軽さを誇り、グリップ力も高い。転がり抵抗も低いので、レース用の決戦タイヤとしての使い方がおすすめ。特にヒルクライムや上りの多いコースでのロードレースでは大きな武器となるだろう。ただし耐パンク層を持っていないので、チューブレスコンプリート仕様を選んでシーラントを入れて耐パンク対策をするのが望ましい。

・イーグルF1R
スーパースポーツRと同じ高性能なウルトラハイパフォーマンスコンパウンドを採用しており、グリップ力の高さと転がり抵抗の低さを高次元で両立する。耐パンク層も設けられているので、レースでも安心して使える。ヒルクライム、ロードレースなど、あらゆるレースに対応できるオールラウンドなタイヤ。レース志向のサイクリストでレースとトレーニングで同じタイヤを使いたいというケースにもおすすめ。

・イーグル
イーグルF1シリーズと比べて、コンパウンドがハイパフォーマンスコンパウンドになり、トレッド中央部の厚みも上位モデルより厚くなっている。また、ケーシングも60TPIと耐久性を重視している。それでいてイーグルF1Rとそれほど変わらない重量なので、トレーニングライドからレースまでこれ1本でこなすことができる。ロングライフで耐久性も高そうなうえ、価格も今回紹介した4モデルの中では最も安いので、ランニングコストを重視したい人にもピッタリだ。

・ベクタースポーツ
イーグルと同じハイパフォーマンスコンパウンドと60TPIケーシングを採用しているが、耐パンク層が2層になっており、パンク対策をかなり強化している。トレッドも厚みがあり、物理的に貫通パンクに強そうだ。その分重量がかさむのでレース向けではないが、ロングライフでパンクに強いのは通勤ライドやトレーニングライドなど、普段使いのタイヤとしては魅力だ。