台湾一周サイクリング「フォルモサ900 2023」帯同記 第1章:憧れの環島へ、いざ出発

目次

フォルモサ900第1章

台湾一周約900kmを9日間のグループサイクリングで走破するツアーイベント「フォルモサ900」。その国家級のイベントへの参加窓口となるジャイアントジャパン公式ツアーが4年ぶりに開催された。筆者は参加者をサポートするサイクリングガイドとしてツアーに帯同し、台湾の先進的なサイクリング環境に触れることとなった。本稿はレポート第1章として、初めての海外ツアー先としての台湾の魅力とフォルモサ900の成り立ち、そしてツアーの概要について紹介する。

台湾で楽しむ、初めての海外ツアー

台湾の街中

台湾の街中はどこも活気に溢れている。自転車で走るだけでも非日常的な体験だ

アフターコロナ禍となり、本格的に旅行需要が復活。海外渡航を計画したいと考えている読者もいるだろう。海外ツーリングは、多くのサイクリストがいつか到達したい「憧れ」の一つだ。とはいえ、海外旅行となると言葉、宿、食事、プランニングなど、さらにはサイクリング関連の機材やノウハウまで、不安要素を上げだしたらキリがない。せっかく時間とコストをかけて海外へ出かけたのに、不安やトラブルでサイクリングを100%楽しむことができないとなれば本末転倒だろう。

でもご安心を。まず第一歩目としておすすめの国がある。それが、台湾だ。

海外ツアーを志向する日本のサイクリストにとって、台湾は目指す価値がある場所だ。アクセスに優れ、日本と近しい文化風習を持ち、あらゆる面で最初の遠征先として親しみやすいポテンシャルがある。どこか日本に似た雰囲気がありながら、台湾ならではの体験やコンテンツも豊富で、一般の人気旅先ランキングでも毎年上位に入る国だ。何より、台湾を一周する「環島(ファンダオ)」という楽しみ方は、世界中の旅行者とサイクリストを魅了する一大ルートとして人気を博している。

台湾東部の田園サイクリングを楽しむ窪田さん

台湾東部の田園サイクリングを楽しむ窪田さん(写真右)

旅先としての魅力と安心感を兼ね備える台湾は、いろんな意味で日本と最も近い隣国だ。今回の環島サイクリング初体験で、これほど素晴らしいルートがあるのか!と感嘆し、すっかり台湾推しとなってしまった筆者としても、その魅力を紹介せずにはいられないのである。

フォルモサ900への切符:4年ぶり開催のジャイアント公式ツアー

台湾の西沿岸部を快走する日本騎士團

台湾の西沿岸部を快走する日本騎士團。快適なバイクレーン「環島1号線」がどこまでも続く

では、最も手軽かつ確実に環島へ挑む方法は何か。それは「自転車に特化した旅行会社のツアーに参加する」ことである。順を追って解説したい。

まず、環島は以前から(クルマやスクーターでの旅を含めて)世界中の旅行者および台湾国民から人気のルートであった。2000年代初頭はそこまで一般的でなかった「自転車での環島」は、およそ20年の歳月とともに人気を獲得していく。2010年にジャイアントの社員イベントとして始まった「環島ツアー」は、2012年から「フォルモサ900」という公式ツアーとして確立。以降は毎年11月の恒例行事として存続している。また、フォルモサ900以外の環島ツアーも通年で実施されており、現在は大学生の卒業旅行や企業の社員研修旅行などで利用されているという。

もちろん、フォルモサ900などのツアーでなくとも環島はできるし、計画から手配まですべてを自分自身で行うのも旅の醍醐味だろう。しかし、全てを自己手配で済ますのは骨が折れるのも事実。往復の航空券やホテル、最適なルーティング、食事や観光など、数多ある選択肢からベストな旅程を組み立てるのは一苦労だ。海外に不慣れな方であればなおさら不安であるし、身近にアドバイスをくれる経験者がいるとも限らない。そこでツアーの出番というわけだ。

復活の日本騎士團

フォルモサ900開会式で紹介を受ける日本騎士團

フォルモサ900開会式で紹介を受ける日本騎士團。フラッグを振るのはジャイアントジャパンアドベンチャー事業部の下松幸人さん

本稿で紹介するジャイアント公式ツアーは、そうした個人旅行のボトルネックを全て解消してくれる「フルパッケージ」が魅力だ。端的に言えば、すべてツアー任せで台湾サイクリングの楽しさのみを享受できるということだ。

このツアーは、日本からフォルモサ900に参加する唯一の窓口として、2017年から3年連続で実施された。パンデミックが沈静化した2023年、じつに4年ぶりの開催となったツアーには27名の日本人サイクリストが参加し、全員が環島を達成することとなった。なお、この参加者一行は「日本騎士團(騎士團とはサイクリストグループを意味する)」と呼ばれる。

ツアー行程

9日間のサイクリング+前後に移動日を加えた、計11日間のツアーだ 出典:ジャイアントジャパン公式HP

旅程は台湾サイクリングに精通した現地スタッフが設計し、参加者は9日間で環島を達成するとともに、台湾の魅力的なコンテンツを余すことなく体験できる。加えて、日本人スタッフ複数名が帯同することも安心感に直結している。さらにツアーならではのポイントとして、旅を通じて新たな交友関係が生まれることにも言及したい。筆者はツアー期間で多くの出会いに恵まれ、帰国後もSNSを通じた交流が続いている。

フォルモサ900誕生の詳細な経緯、そしてツアーの様子はサイクルスポーツ2024年2月号にも掲載されているため、ぜひ誌面にお目通しいただければ幸いだ。また、2023年度のツアー詳細は、ジャイアントジャパン公式HPをご参照いただきたい。

サイクリングガイドとしてツアーに参加

グループ先頭を走る中谷さん

グループ先頭を走る筆者。日本人サイクリングガイドの1人としてツアーに参加した

ここまで、台湾が海外ツアー先として魅力的な国であること、とりわけツアー参加がおすすめであることを説いた。本稿の結びに、筆者の境遇についても軽く触れておきたい。

4年ぶりのツアー実施に際し、筆者はJCGA※公認サイクリングガイドとして参加要請をいただいた。27名もの参加者を率いて安全にサイクリングツアーを運営するためには、走行管理技術を持つガイドの存在が不可欠だ。11日間と長旅ではあったがスケジュールの都合がつき、参加を決意した。憧れであった「いつかは環島」のチャンスは、予期せぬ形で巡ってきた。

※ JCGA:一般社団法人日本サイクリングガイド協会。スポーツツーリズムとしてのサイクリングを広めるべく活動し、全国の拠点でサイクリングガイド育成を推進している。

 

参加の決め手は、まず長期の海外ツアーでガイド経験を積みたかったこと、次点で台湾の先進的な自転車環境を視察したかったことであった。参加決定から出国までの期間は、JCGA主催の研修や富山でのガイドツアー経験を重ねて自己研鑽に努め、ツアー本番へと挑んだ。したがって、以降は「サイクリングガイド目線で見たフォルモサ900」という前提で読み進めていただければと思う。

次章では、出国前の準備とツアー出発日の様子をレポートしたい。

 

筆者プロフ:中谷亮太

富山在住の自転車ライター。今回はJCGA公認サイクリングガイドとして招聘され、ライド引率からツアー運営補助まで業務として携わった。使用バイクはジャイアント・TCR ADVANCED PRO。