安井行生のロードバイク徹底評論第7回 LOOK 795LIGHT vol.4
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675は予兆にすぎなかったのか。「これがルックの新型フラッグシップ?」 コンセプトモデルのスケッチがそのまま現実世界に飛び出てきたようなその姿に誰もが驚いた。695のオーナーである安井は、そんな795に何を感じ、何を見たのか。泣く子も黙る2016モデルの目玉、ルック・795の美点欠点を好き勝手に書き散らかす徹底評論第7回vol.4。
とことん独自路線
ライトとエアロライトの性能差についても聞いてみた。走り(加速性能や剛性や快適性)に違いはあるのだろうか。
「フロントフォークはエアロブレーキ採用のエアロライトの方が補強されているため剛性が高くなっています。リヤセクションは、ブレーキブリッジがシートステーにあるライトの方が高剛性です。ただ、エアロライトのリヤブレーキにはダイレクトマウントを採用してチェーンステーの剛性を高めているので、695ライトと695エアロライトほどの差はありません」
ちなみに、日本の代理店担当者によると「フォークの違いは分かりますが、800ワット程度のパワーではリヤセクションの差は感取できませんでした」とのこと。
専用パーツについても聞いてみよう。ルックは695世代からトータルインテグレーションを推し進めているが、そこにはどんな意図があるのか。
「フレームの性能を最大限に発揮しようとすると、クランクやステムなどのパワー伝達部を自社で開発しないと理想とする性能が得られません。フレームだけでなく、完成車体になったときにバイクの真価が問われます。795のトータルインテグレーションは、機能美の追及も含めて、レーシング性能を上げるために努力を惜しまなかった結果です」
今後、ルックのトータルインテグレーションはどう進化するのか。例えばホイールなどは。
「ホイールの開発も過去に数回行ったことがありますが、プロライダーに使用させてデータを取るのに高額な費用が必要なので、現状は発売段階まで至っていません。ただ、ホイールを含めてあらゆるカーボン製品の実用化には挑戦する予定です」
誠実になったジオメトリー
ジオメトリーは一新され、695系とは異なったものになった。サイズ展開は6種類から5種類と少なくなったが(XXLサイズが消滅)、そのかわりよりいっそう煮詰められたジオメトリーとなっている。シート角とヘッド角は2種類とやや少ないが(695はシート角が5種類、ヘッド角が3種類あった)、リーチは10mm刻みで均等に増えている。695はリーチの増え方が不均等だったが、これが是正されたのだ。今、各メーカーはモデルチェンジの度にリーチありきのジオメトリーに変更しつつある。なぜここにきていきなりマトモなジオメトリーを引くようになったのか。その理由をキャノンデールのプロダクトマネージャーが教えてくれた。次回で取り上げるスーパーシックスエボの原稿で書く予定である。フォークオフセットはXSとSが50mm、それ以上は43mmと二種類に増えた。これにより、トレールは58.5~58.4と全サイズでほぼ同じ値となった。実はフォークオフセットが全サイズで統一(43mm)だった695は、トレールに(あくまで数値上の、しかし明確な)瑕疵を抱えている。XSサイズは70.9mm、Sサイズは64.6mmと、ロードバイクの適正範囲と言われる55~58mmを大きく外れているのだ。このトレール適正化は、ルック旗艦のハンドリングに明らかな変化をもたらしていた(詳しくは後述)。
ヘッド長はXSサイズで116.9mm。695の122.5mmより短くなり、専用ステムの角度調整幅が広がったことも相まって、ハンドルを下げにくいという欠点は解消されつつある。しかし、やはり調整範囲は狭い。メーカーの主張するポジションを飲み込まざるを得ない設えである。