全日本トラック4日目 タイム種目 内野、酒井、そして佐藤が日本新記録

目次

静岡県伊豆市・伊豆ベロドロームにて5月12日~15日の日程で開催される第92回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース。
 
最終日の4日目は、短距離、中距離ともにタイムトライアル種目。それに加えて、最後に男女ポイントレースが行われた。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目
 

中距離:個人パシュート

2023全日本トラック4日目 タイム種目

予選から日本記録を上回った内野が決勝でさらにそれを上回る

 
 
最終日の午前中から行われたそれぞれのカテゴリーでの個人パシュート。女子エリートの3㎞個人パシュートでは、予選から内野艶和(チーム楽天Kドリームス)がそれまでの梶原悠未の日本記録(3分33秒740)を上回る3分33秒446でフィニッシュした。
 
予選のタイムにより、決勝の組み合わせは、優勝争いが内野 対 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学)、3-4位争いが池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学) 対 古山稀絵(チーム楽天Kドリームス)に決定した。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

決勝で内野と当たった垣田

 
 
決勝では、最初の1㎞から内野が垣田を3秒ほど上回る。2㎞目では5秒に広がった。その差を保ったまま、内野が3分30秒486でフィニッシュ。内野は先ほど出したばかりの日本記録からさらに3秒縮め、新たな日本記録を樹立とともにこの種目で全日本チャンピオンジャージを獲得した。なお、3位には池田が入った。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

喜びの表彰を見せる内野

 
 
日本記録更新に関して、「予定はしていなかったのですごく驚きました」と内野。
 
「初めての3㎞(個人パシュート)で、どう走ったらいいか、緊張と不安と楽しみな気持ちでいっぱいだったんですけど、2回とも日本新を出すことができて良かったです。この後、アジア選手権も続くのでそのままみんなで頑張っていい結果を残せたらいいなと思います」と話した。
 
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

予選を走る松田

 
 
男子エリートの予選では、窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)がトップタイム。次いで現在の日本記録の保持者である松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)となり、この2人が決勝での1-2位争いをすることとなった。3-4位争いは、安達光伸(朝日大学)と伊藤恭(中央大学)。
 
決勝の3-4位争いは、最初の1㎞こそほぼ同じタイムとなったが、距離を増やすごとに安達が差を広げ、4分25秒051というタイムで安達が3位となった。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

決勝を走る窪木

2023全日本トラック4日目 タイム種目

松田が窪木を追い越した

 
 
優勝争いの2人もまた、1㎞は1分9秒台で並んだが、その後窪木が失速。3㎞まで走らずに松田が窪木を追い抜いて、松田の優勝となった。
 
前日のオムニアムでも優勝しており、チームパシュートとこの個人パシュートに注力する松田。
オムニアムを勝った後、今回の大会について「とりあえず今は練習のつもりで走ってるので、そんな明日(個人パシュート)に備えてというよりかは、もう明日はカスカスで走ることになると思う」と話していた。
 
実際に走り終えて、「カスカスでしたね」と笑う。
「ぶっつけ本番なので若干ギヤのミスもありましたけど、決勝はちょっとそこを見直してって感じだったんですけど」
 
決勝では追い抜きによりタイムを見ることはできなかったが、「僕もタイムは見たかったですけど、さすがにちょっと連戦続きできつかったかなっていうのもあります」と話した。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

今大会で3回、チャンピオンジャージを持ち帰った松田

 
 
松田は、エリートカテゴリーで3回目の全日本トラックへの出場だったそうだ。今大会についてこう振り返った。
「僕はレース苦手だったんですけど、レースの流れだとか知識だとかを付けて、結構戦略を組み立てて走れるようになってきたので。まだ全然足りないですけど、橋本英也とか天才的なレーサーがいるんで、いろいろ学びながら、もうやっていくしかないですね」
 
チームブリヂストンサイクリングのメンバーは、次は今週末から始まるツアー・オブ・ジャパンだ。その後はアジア選手権、世界選手権とレースは続く。
 
 
男子エリート 4㎞個人パシュート リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)追い抜き勝利
2位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
3位 安達光伸(朝日大学)4分25秒051
 
 
 
女子エリート 3㎞個人パシュート リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 内野艶和(チーム楽天Kドリームス)3分30秒486*日本新記録
2位 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学)3分35秒067
3位 池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学)3分37秒126
 
 
 
男子ジュニア 3㎞個人パシュート リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 三浦一真(湘南工科大学付属高校)3分23秒963
2位 望月 蓮(山梨県立吉田高校)3分26秒199
3位 金井健翔(松山学院高等学校)3分28秒702
 
 
 
女子ジュニア 2㎞個人パシュート リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 岡本美咲(北桑田高校)2分27秒060
2位 室谷榎音(青森商業高校)2分33秒863
3位 水谷彩奈(松山学院高等学校)2分30秒776
 

短距離:1㎞タイムトライアル&500mタイムトライアル

2023全日本トラック4日目 タイム種目

市田は、トラック4周、59秒台を目指した

 
 
短距離種目最後の種目は、男子は1㎞タイムトライアル。女子500mタイムトライアル。
予選はなく、一発勝負での戦いとなった。
今回、ナショナルチーム所属の男子選手の1㎞タイムトライアルへの出場はなかった。
 
最後の出走となった市田龍生都(中央大学)は、中石湊(北海道自転車競技連盟)をわずかに上回り、大学最後の年にチャンピオンジャージを獲得した。走り終え、自転車を降りてトラックの外に出ると、出し切って疲労困憊な様子でその場に倒れ込んだ。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

トラックの外で倒れ込んだ市田

 
 
初めてチャンピオンジャージを獲得した市田はこう語る。
 
「正直本当に実感がなくて、狙っているところが自分の記録更新と59秒台だったので。優勝できてうれしいっていうのがだんだんに来ていて、感慨深いです。今年もう大学生が最後で、中央大学として活躍できるのがもう、今年1年だけなので、今年1年に勝負かけて来ました」
 
今後について、「とりあえず大学内ではもう、全日本チャンピオンなので1キロでは負けないように頑張りたいと思います」と話し、さらに今後インカレでの優勝を狙う。
「総合優勝を取る気でいるんで、応援よろしくお願いします」
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

500mTTをスタートする酒井

 
 
女子エリートの500mタイムトライアルでまずトップタイムの34秒708、それどころか日本記録(34秒882)を更新したのは、酒井亜樹(HPCJC)だった。なんとこの日初めて500mタイムトライアルを走ったと話す。
 
今大会が初めてのトラック競技の大会となった酒井は、10歳から11年間BMXレーシングに取り組んでいる。
現在トラックナショナルチームで活躍する元BMX選手の長迫吉拓をきっかけに行われた今年の2月にトラックでのテストに酒井は参加。そこで酒井は初めてベロドロームに来て、初めてピストバイクに乗ったという。テストが終わってからはBMXの練習に戻ったが、4月に伊豆でのトラックに練習に合流した。
 
酒井は、その時点ではBMXレーシングと両立を考えていたが、BMXは怪我の可能性も高く、練習の両立も難しいために現在はトラックへと転向し、トラックに集中しているそうだ。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

BMX出身の酒井は、初出場、初500mTTで表彰台に立った

 
 
長迫だけでなく、世界的に見てもBMX競技からトラック競技の短距離種目への転向という例は多い。世界王者のハリー・ラブレイセンやジェフリー・ホーフランドもそうだ。
それでも、11年もの間、BMX競技に集中していた選手がいきなりトラック競技への転向。
 
「急展開というか、思っていなかった形だったので、ちょっとびっくりしました。でも、頑張れるなら頑張れる方で」と、驚きもありながら、選手として活躍できる場所を受け入れた様子だった。
 
500mタイムトライアルの練習は全くしておらず、大会初日のエキシビジョンで日本記録を出した女子チームスプリント1走の250mしか全力で走ったことがなかったそうだ。
「走ったことなかったので、こんなにしんどいんだと思いながら2周目は走ってましたよ。最後はうわー!って感じでもう一生懸命ただ漕いでただけです」
 
ただ、やはりBMXが活きる部分もあるという。
「BMXは立ち漕ぎなので、最初のスタンディングする周回は似てる部分もあったりするんですけど、最後にシッティングで漕ぐのはやっぱりちょっと違うので、そこはまだ自分でも全然分かってないんですけど」
 
まだ練習も分からないことが多いと話す酒井。次は6月のアジア選手権に出場する予定だ。今現在で既に伸びしろしかない酒井の今後にも期待したい。
 
2023全日本トラック4日目 タイム種目

優勝、自らの記録、そして日本記録を上回った佐藤。客席で見ていたジェイソンコーチや太田海也が拍手をおくる

 
 
その酒井の記録をさらに更新したのは、「明日の500m(タイムトライアル)、自己ベスト出します」と前日に話していた佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)だった。自らの自己ベストが昨年出した大会記録となっていたが、それを上回る34秒467でフィニッシュ。
 
「私は本当に今年で500mで輝けるのがラストだと本当に思っているので」と、佐藤は話す。
 
佐藤はスプリント、ケイリン、500mタイムトライアル、出場種目全てで優勝。女子ジュニアカテゴリーで同じく3冠を飾った北岡マリア(内灘高等学校)を引き連れて取材場所に訪れた佐藤はこう話した。
 
「マリアちゃんが連日いい走りを見せてくれてたので、やっぱここは自分が見せるべきだなと思って。スタートは私はあんまり得意じゃないんですけど、見せてやろうと思いました」
 
今後競輪養成所への入所を志望すると話していた北岡らの走りを見た佐藤は、「下の子が伸びてきてるのはすごくうれしいことですし、本当にいいタイム出しているし、走り方もすごく上手で、ニュースターが誕生するのが見えてるので、早く追い抜いてもらいたいですね」と語った。
 
 
男子エリート 1㎞タイムトライアル リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 市田龍生都(中央大学)1分1秒040
2位 中石 湊(北海道自転車競技連盟)1分1秒307
3位 新山響平(チームブリヂストンサイクリング)1分2秒454
 
 
 
女子エリート 500mタイムトライアル リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)34秒467
2位 酒井亜樹(HPCJC)34秒708
3位 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)35秒172
 
 
 
男子ジュニア 1㎞タイムトライアル リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 杉浦颯太(千歳高校)1分4秒464
2位 丸山留依(静岡北高校)1分5秒069
3位 大塚 城(静岡星稜高校)1分5秒232
 
 
 
女子ジュニア 500mタイムトライアル リザルト
2023全日本トラック4日目 タイム種目
1位 北岡マリア(内灘高等学校)36秒804
2位 濱 彩春(法政大学)38秒056
3位 相見涼花(倉吉西高校)38秒109
 
 

第92回全日本自転車競技選手権大会トラックレース

開催日時:2023年5月12日(金)〜15日(月)
開催場所:伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)
出場選手:日本代表メンバー、パラサイクリング日本代表メンバーなど
実施種目:オリンピック採用全種目(6種)を含むトラック競技の全種目
有観客:有料チケット制

JCF公式HP 大会ページ

ライブ配信:
楽天Kドリームス公式 にじいろ競輪TV