2021全日本シクロクロス 小坂光が3年ぶりの王座奪還/渡部春雅が新女王に

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2021年12月12日、茨城県土浦市の「りんりんポート土浦」を舞台に、第27回全日本自転車競技選手権大会シクロクロスが開催された。

近年地域を挙げて自転車観光に力を入れる土浦市。今年3月にはAJOCCカテゴリのシクロクロスレースが開催されたが、そのコースをさらに拡張したフラットな一周2.7kmの特設コースが全日本のタイトル争いの舞台となった。

コースは概ね平坦基調だが、南側の泥路面のタイトコーナーが連続する区間、キャンバーの急坂が切られた北側の松林区間がテクニカル。とはいえ全域を通じて難所の少ない平坦基調のコースは、大きな差が生まれにくく、この日の午前に行われたU23、女子ジュニアともにスプリントや秒差で勝敗が決している。

 

新時代の到来を告げる女子エリート

2021全日本シクロクロス

13:00に号砲の鳴らされた女子エリートには28人がエントリー。昨年女王の今井美穂、昨年2位の與那嶺恵理を欠く今シーズンの女子シクロクロスシーンは、新星の活躍が著しい。その筆頭は昨年ジュニアで勝利している渡部春雅(明治大学)、そしてJCXシリーズで渡部と勝利を分け合う福田咲絵(AX cyclocross team)の2人だ。

レースは序盤からこの2人にMTB XCOを主戦場とし11月のRapha Supercross Nobeyamaで3位に入った矢吹優夏(B.B.Q)を加えた3人が先行。全7周回となったレースの残り3周で矢吹が遅れ始めると、勝負は渡部と福田のマッチレースに。

共に先頭に立ってはお互いの様子を伺う走りが続くが、最終周回のタイトコーナー連続区間で渡部が数秒差を稼ぎ出すと、追いすがる福田を振り切って勝利を飾った。その差わずか1秒という僅差の勝負となった。

2021全日本シクロクロス
2021全日本シクロクロス

2021全日本シクロクロス

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優勝した渡部はエリートカテゴリーの1年目で早くも頂点に立った。前日は伊豆ヴェロドロームでトラックの全日本選手権を走った「はしご参戦」ながら全日本チャンピオンジャージのコレクションをさらに拡充させた。

2位の福田は今シーズンのシクロクロスシーンでブレイクを果たした26歳。大学ロードの頂点を極めた脚力を遺憾なく発揮し、続くレースにも意欲を見せる。3位には終始2人を追うレースとなった矢吹が入り、昨年とは全く顔ぶれの異なるポディウムに。女子シクロクロスシーンの新時代到来を印象づけるレースとなった。

 

渡部春雅コメント「能登で負けてからの2週間はシクロクロスに集中した」

「まだ取り組んで3年ほどですが、シクロクロスはロードとマウンテンバイクの要素が混ざっているところが楽しいんです。普段シクロクロスの練習をすることはほとんど無くて、試走で走り方を確かめています。練習はほぼロードで、その足の強さが自分の強みだと思います。テクニックはMTBの選手にはまだ及びませんが、ロードの選手の中ではある方だとも感じています。今日は、シーズン後半にかけて速さを増してきた福田選手との勝負になると思っていました。能登で負けてからの2週間はシクロクロスのための練習を集中的に行い、しっかりと準備してきました。泥のタイトコーナー区間で差ができたので、そこでガンガン踏んで勝つことができました。」

 

男子エリートは2強対2強

2021全日本シクロクロス

男子エリートの優勝候補筆頭は2人。前年チャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE CYCLING)と、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)だ。今シーズンここまでのJCXシリーズ6戦はすべてこの両者が勝ち取っている。前年の全日本選手権でも1位・2位を分け合ったこの2人に、小坂光(宇都宮ブリッツェン)と竹之内悠(ToyoFrame)の共に全日本選手権での優勝を経験するベテラン2人がどう食い込んでくるかが焦点となった。

14:30のスタートから早くもこの4人が先頭パックを形成する。全10周回のレースのうち、動きが起きたのは2周目。沢田が早くもこのパックから沢田が遅れ始め、会場ではチェーン落ちとのアナウンスが響く。沢田が脱落する前方では織田と小坂が先頭パック、竹之内が数秒差で続く展開となる。

残り5周回で織田が攻撃的な走りで先行し、小坂との差を数秒生み出す。残り4周に入る時点でその差は5秒差。コーナーの度にお互いの位置関係が見えるレースが展開された。攻める走りで先行するという、自身のスタイルで攻撃の手を緩めない織田だが、小坂や竹之内とのタイム差は開かず一定のまま。

2021全日本シクロクロス
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2021全日本シクロクロス
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残り2周回に入ると、小坂が織田を捉え代わって先頭に立つ。織田は少し差を空けられるが残り1周回に入るところで追いついてレースを降り出しに戻す。

しかしレースを通して「冷静でいられた」と語る小坂は織田の出方を把握。本来は織田がバニーホップで小坂に差をつけるシケインも、最終周回は同時のタイミングで入ることで逆にプレッシャーを与え、スピードが緩んだタイミングを見逃さずにアタック。最後のピット前で先行すると、南側のタイトコーナー区間でその差をさらに開き、残り半周で織田の追走を振り切った。

フィニッシュストレートでは観衆の声援に応えながら、2017年以来となる日本一のフィニッシュラインを先頭で切った。最終周まで追い込んだ竹之内は最後のストレートで織田の背中を捉えたが、わずかに届かず3位。織田は2年連続の2位となった。今シーズン勝利のない小坂だが、ベテランらしいレースの組み立てを見せ、全日本チャンピオン経験者としての貫禄を示す形となった。

2021全日本シクロクロス

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小坂光コメント「今日僕が勝つと思っていた人は少ないはず」

「聖が飛び出した時に全開で追いついても良かったのですが、そこでオールアウトしてはいけないなと少し抑えました。悠の後ろからのプレッシャーも感じていました。泥のテクニカルセクションでは自分のほうが速くて聖に追いつけましたし、逆に自分が前にいれば差を広げられると思いました。後半に聖のペースが落ちたので、スプリント勝負に持ち込もうとしているのかと警戒したんですが、純粋に足が無かったみたいですね。

ロードシーズンからの切り替えがうまくいかず、能登まで疲れを溜めてしまっていたのですが、2週間空いたことで休めて、このレース前の水曜日には最後の追い込みで踏める感触が戻ってきていました。今日は疲れも抜けて調子よく走れました。時や聖はすごく強いですが、自分や悠が勝っている部分も少なからずあるかなと。今日でいえばテクニック面、コーナーリングは僕らのほうが速かったと思います。

今日僕が勝つと思っていた人は少ないと思います。でもチャンスはあると思っていましたし、そのチャンスをものにするためにここまでやってきたんです。僕自身、一番強いのは時と聖だとわかっています。この先も彼らに絡むレースをしていきたいですね。」

 

第27回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス 結果

2021全日本シクロクロス

<男子エリートリザルト>
1位 小坂光(宇都宮ブリッツェン) 1:00:57
2位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)+18秒
3位 竹之内悠(ToyoFrame)+20秒

 

 

2021全日本シクロクロス

<女子エリートリザルト>
1位 渡部春雅(明治大学)47:30
2位 福田咲絵(AX cyclocross team)+1秒
3位 矢吹優夏(B.B.Q)+39秒

 

 

2021全日本シクロクロス

<男子U23リザルト>
1位 村上功太郎(松山大学/TOYOFRAME)50:30
2位 村上裕二郎(明治大学)+1秒
3位 鈴木来人(Team S1NEO)+1秒

 

 

第27回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス
開催日:2021年12月11日(土)〜 12月12日(日)
開催地:茨城県土浦市りんりんポート土浦/川口運動公園周辺特設コース
主催・主管:日本自転車競技連盟