2021全日本トラック2日目 リザルト&コメントレポート
目次
12月11日(土)、前日に続き全日本選手権トラックレースが静岡県・伊豆ベロドロームにて行われた。
この日の競技は、短距離が男女スプリント、中距離が男子スクラッチ、女子オムニアム、男子マディソンの4種目だった。それぞれの結果とコメントを振り返る。
男子スクラッチ
ロードレースと同様、フィニッシュに先着した人から順位がつくスクラッチ。
朝一で行われた男子スクラッチ予選ではエントリー者が2組に分けられ、それぞれの上位者、全29人が決勝へと進んだ。
決勝では、レース前半戦に今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)が集団から一人少し先行する形になり、「行けるだけ行くか、という気持ちで。踏み始めたら全力でした」と勢い良く一気に集団をラップ。
その後、レース中盤に今度は橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が単独で集団ラップに成功。これで勝負はラップした今村、橋本の二人に絞られ、フィニッシュ着順で決まることに。
「ギヤがかかってたので、英也さんにスピードに乗せてしまうとかわせないと思いましたし、先に仕掛ければチャンスはあるかなと思っていました」と語った今村が先行し、そのままフィニッシュ。前日のエリミネーションに続き、個人種目で2勝目を挙げた。
前年の全日本では個人種目で無双していた橋本だったが、この二日間、ことごとく橋本の勝ちパターンを今村が潰してきている。今村は、「さんざん見せられてきたんで、それは同じようにいってたら負けちゃうので。しっかり見てます」と話した。
男子スクラッチ リザルト
1位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)
2位 橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)
3位 谷内健太(京都産業大学)
女子オムニアム
オムニアムは、スクラッチレース、テンポレース、エリミネーションレース、ポイントレースの4つのレースの合計ポイントで競われる。女子オムニアムの出場選手は7人と少人数で行われた。
最初の3競技で全て1位通過したのは、鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス)。しかし鈴木は、「全日本選手権では人数が少ないため、前の3種目でもあまり点差が開かないので、ポイントレースが勝負だなと思っていました」と話す。
最終種目であるポイントレース前、鈴木の次点、8ポイント差でスタートした内野艶和(チーム楽天Kドリームス)が、ポイントレース序盤でポイントを積み重ね、レース中盤では、ついに内野が鈴木を逆転。
しかし、鈴木はフィニッシュでの10点に狙いを定めていた。
「エリミネーションからの時間があまり長くなかったので、最後のポイントの前のリカバリーがまだ(できていなかった)。リカバリーがあまり早くできるタイプではないので。気持ち的にも脚的にもちょっときつかったので、前半はあまり攻めることができなかったんですけど、しっかり点数見て計算しながら、最後確実に取るっていうのを決めて走りました。艶和ちゃんはポイントレースが強い選手で、逆に私はスクラッチとかエリミネーションとが得意なので、艶和ちゃんは(ポイントレースで)すごく強かったんですけど、最後の10点が大きいというのはわかっていたので、そこで絶対負けないというふうに考えていました」
しっかりと最後のフィニッシュで1着を取った鈴木が再度逆転して初めてのオムニアム優勝を手中に収めた。
「うれしいというよりは、梶原悠未選手がいなくて、去年(の全日本女子オムニアムで)私が2位なので、絶対に1位を取りたいっていう意気込みで来たので、すごくほっとしている気持ちの方が大きいです」と鈴木は話した。
2位となった内野は、今年ガールズ競輪選手としてデビューしたばかり。11月中は競輪の開催にフォーカスしていたために体力面にも不安を抱えていた。
「走ってる中でも去年よりもきつさを感じていたので、どうなるかわからなかったんですけど、しっかりポイントの最後まで走り切れたのは良かったかなというふうには思います。今回(ガールズ競輪で)デビューしてからレースを走る中で、いろいろ両立する部分で難しさを感じて……でも少しずつ競輪の方でも慣れてきました。鈴木奈央さんもずっと競輪と競技を続けてこられているので、すごいなとデビューしてからより感じられました。
多分これから中距離の方を重点的に、合宿なども始まるみたいなので、アジア選手権とかでもメダル取れるように戻していけたらなと。ナショナルチームにいる限りは、しっかり国際大会で戦えるような体にしていかないとなと思います」と内野は語った。
女子オムニアム リザルト
1位 鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス) 146pts
2位 内野艶和(チーム楽天Kドリームス) 142pts
3位 古山稀絵(チーム楽天Kドリームス) 130pts
男子スプリント
男子スプリントには、予選の200mフライングTTに23人が出走。タイム上位16人が次の勝ち上がり戦へと進んだ。
トップタイムは日本競輪選手養成所に入所中の中野慎詞(ドリームシーカーレーシングチーム)の9秒799。中野はこの全日本に向けての調整はおろか、カーボンバイクにも乗っていない状況。かつ養成所の早期卒業がかかった試験のために練習もストップしていたという。
「とりあえず楽しんで走ってみようかなという気持ちで走ったら、それがうまくいったのか、リラックスした状態で走れたのか、いいタイムが出ました」と中野自身も驚いていた。自己ベストまでには届かなかったものの、それに近いタイムだった。
TTの2番目以降は、小原佑太(ドリームシーカーレーシングチーム)の9秒803、新山響平(チームブリヂストンサイクリング)の9秒818、寺崎浩平(チーム楽天Kドリームス)の9秒933と続いた。
予想外にいいタイムを出せた中野に対して、寺崎は思っていたタイムが出なかった。
「今回(この全日本に向けての)調整をしてないので、普通に練習してという感じで(きました)。それにしても、タイムが良くなかった。悪くても9秒7くらいは出るかなという思いで走ったので、そこはちょっと残念でした。対戦だったらタイムも関係はありますけど、タイム差よりも走りが重要になってくるので、そこはしっかり切り替えて走りました」
対戦方式の1/8決勝には16人が、1/4決勝には8人が進み、1/2決勝は中野 対 寺崎、小原 対 新山の2組の対戦となった。
それぞれ、寺崎と新山がストレートで勝利を挙げると決勝はその2人に。3位決定戦は、ドリームシーカー同士、中野と小原の対決となった。
中野と小原は、それぞれの対戦が終わるとすぐにチームメイトである深谷知広からアドバイスを受けていたようだった。中野はこう話す。
「レースの間に自分の負けた敗因の場所、あそこでこういうふうに動いてたら、もっと勝てる展開にはなっていたし、逆にそのポイントで動かないっていうのであれば違うポイントで、みたいな(話をしていた)。自分の動きに対して、あそこは良かったけど、ここがミスってるから負けたんだよ、ここが良かったから勝てたんだよ、とかを丁寧に教えていただいていました。
世界のスプリントというのをまだ自分は知らないんですけど、そういうのを深谷さんに教えてもらうことで、今日走ってみたら、教えてもらったことがうまくできたっていうところもありました。深谷さんには今まであんまり褒められたことがないんですけど、何個か褒められた点もあったので、少しずつは成長してるかなっていうふうには思います」
寺崎と新山の勝負は、1回戦も2回戦も先行した新山のスピードにうまく寺崎が乗り、最終ラップで新山をかわすと寺崎が優勝を決めた。
寺崎は、「深谷さんも新田(祐大)さんも今回は出てきてないんで、この全日本では正直、負けられないなっていうところで。僕ら若い世代の中でしっかり勝ち切れたっていうのはすごい自信になりますし、もうちょっと基礎的な脚をつけていかなきゃなというのがあるんで、また練習しないとと思います。ナショナルに入ってトレーニングして、タイム的にはどんどん伸びてはきてるので、来年しっかり9秒台の中盤を出せるような脚をしっかり作っていければなと思います」と話した。
男子スプリント リザルト
1位 寺崎浩平(チーム楽天Kドリームス)
2位 新山響平(チームブリヂストンサイクリング)
3位 中野慎詞(ドリームシーカーレーシングチーム)
女子スプリント
女子スプリントには5人の選手が出場。男子と同じく200mフライングTTでの予選から行われた。
一度は東京オリンピックを境に競技への引退をほのめかしていたが、競技復帰を宣言した小林優香(チーム楽天Kドリームス)がトップタイムの10秒849で大会新記録を更新。自身の東京オリンピックで出した日本記録(10秒711)には及ばなかったものの、しっかりと調子を保ったままのようだった。2番手は梅川風子(チーム楽天Kドリームス)の10秒987、3番手は久米詩(JPCA)で12秒085だった。
1/2決勝に4人が進み、予選タイム通り、決勝は小林 対 梅川。3位決定戦は久米 対 中西美央(鹿屋体育大学)となった。
3位決定戦は、久米がストレート勝利。決勝は、1回戦を梅川が、2回戦を小林が取り、3回戦へともつれこんだ。
3回戦は、スタート直後落車があり、仕切り直し。梅川が先行した状態でフィニッシュまで小林を寄せ付けず、優勝を決めた。
「参加選手が少ない中で、熱い戦いを最後までできたんじゃないかなと思います」と表彰台で話した梅川。
「世界選手権を経験して、やっぱりスプリントの力の違いを感じましたし、また戦術面でももう少しこういう走りができたらなっていうのがあったので、それを練習する場だと思って走りました」
この全日本に向けての調整は特にしておらず、勝負の内容を重視した。
「精神的にはそこまで追い詰められた感じもなくですけど、ただ肉体的には、トレーニングでの調整が全くないという状況で、もちろんここを目標としてレースに臨んでないというのがあったので、逆に精神的には体がきつい分、あそこまで追い詰むこともトレーニングの一環という風に思っていたので、勝ち負けよりも内容っていうのを意識してました」
昨年の全日本ケイリン優勝者である梅川。翌日のケイリンについてこう話した。
「もちろん勝ってなんぼだと思いますし、ただ、ケイリンはとにかくスペースを見つけることと、あとは自分が周りの動きを誘うことっていうのも大事です。一本勝負なので、ちょっと焦ってしまう部分も正直あるかと思うので、そこを抑えつつ、内側に詰まって力を出し切れないなんて勝負にならないように走りたいと思います」
女子スプリント リザルト
1位 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)
2位 小林優香(チーム楽天Kドリームス)
3位 久米 詩(JPCA)
男子マディソン
最後に行われたのは、男子マディソン。二人一組となって交代しながらポイント周回でポイントを稼いでいき、その合計ポイントを競う。
今回は、6チームが出場した。チームブリヂストンサイクリングは2つにチームを分けての出場となった。チームブリヂストンサイクリング1は、橋本英也と兒島直樹、チームブリヂストンサイクリング2は、今村駿介と山本哲央のペア。
序盤は、チームブリヂストンサイクリングの二組や日本大学がポイントを取り合う展開。ポイント周回の1.5周前で確実に今村にパスする作戦で進めた今村&山本ペアは、取り逃がしなく確実にポイントを加算してきつつ、単独で飛び出し、ラップを成功させた。
その後、橋本&兒島ペアもラップを成功させ、ポイント差を詰める。しかし、序盤に獲得した今村&山本ペアのポイントは上回ることができず、最終周回を迎える。
最終周回の第3コーナーで、今村が日大の選手とともに落車。最後にポイントを上乗せ出来なかったものの、それまでのポイントの貯金により今村&山本ペアが優勝を決めた。
今村は、「少人数のレースなので、要所要所抑えていれば脚力的には勝てるブリヂストン2チームなので、そこでやっぱり後手を踏まないっていうところが一番重要なポイントだったかなと思います」と話す。
山本は、「序盤、今村先輩が隙なくスプリントをしっかり取ってくれたので、そこで差がついて。僕のスプリント周回ではポイント取れなかったですけど、そこで点差を開いたことでああいう状況(落車)になっても勝てて良かったです」と話した。
落車について、視野が狭くなってしまったことが要因だと今村は話した。
「日大の子をこかしてしまったときは僕は上を見ていなくて。海外とかだと、自分のチームの交代のときにスッと降りてこないと邪魔になる。スピード乗ってるときはもうちょっと遠くまで見ないといけないんで、本来避けられるべき落車だったかなと思います。世界選手権とかだと、落車とかそういう一つのミスで一気に差が開いちゃうんで。もっと距離も長いし、そこのフィジカル的な強さっていうのもつけていきたいなと思います」
さらに、この全日本はあくまでトレーニングと語る。
「次の国際大会に向けてのトレーニング過程ですけど、その中でも今のベストのパフォーマンスっていうのを出すことがやっぱり重要だと思うんで、あと2日間ありますので、しっかり追い込みつつ、勝ちを狙っていきたいなって思います」
男子マディソン リザルト
1位 チームブリヂストンサイクリング2(今村駿介&山本哲央) 60pts
2位 チームブリヂストンサイクリング1(橋本英也&兒島直樹) 57pts
3位 日本大学(佐藤健&高橋舜) 32pts
日本自転車競技連盟(TRACK)
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