群馬CSCロードday1 今村がマンセボとの一騎打ちを制する

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9月24日、平日の金曜日に珍しくレースがJBCFのJプロツアーが行われた。エリートカテゴリー(E1)との交流戦と位置付けられた今大会は、来る10月に予定されている全日本選手権を見越した180kmの長丁場のレースとなった。

中盤でできた有力勢を含んだ逃げグループが逃げ切るかと思われたが、集団が猛追。ラスト3周で飛び出した今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)とフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)の一騎打ちのスプリント勝負となり、今村が勝利を手にした。

Jプロツアー 群馬初日

 

続くアタック合戦

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逆回りのコースでスタートを待つ選手たち

先週の南魚沼でのクリテリウム、ロードレースに引き続き、今週は少し南下した群馬サイクルスポーツセンターに場所を移して3日間のレースが予定された。9月24日は、JプロツアーとエリートカテゴリーE1との交流戦となった。いつもの6kmコースを逆回りで30周、合計180kmで争われた。

南魚沼のレースではDNSとなってしまったシマノレーシングだったが、今大会には参戦。

スタート前、今季限りでの引退を表明している木村圭佑(シマノレーシング)、そしてアイラン・フェルナンデス(マトリックスパワータグ)の名前が呼ばれた。

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今季限りでの引退を表明した木村圭佑

11時30分、日差しは暑いが気温はそこまで上がらない中、84人がスタートを切った。
序盤から多くのチーム、多くの人数が逃げたがったがどれも決まらず、ただただ速いスピードでのアタック合戦が続いた。

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最初のスプリント賞を獲得したマンセボ

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阿曽と佐野が序盤にタイム差を稼ぐ

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追走する石橋と大前

10周目で阿曽圭佑が逃げ、佐野千尋(イナーメ信濃山形)が追走をかける。その後ろからさらに大前翔(愛三工業レーシングチーム)、石橋学(シエルブルー鹿屋)がブリッジをかけ、逃げグループは4人となり、30秒ほどのタイム差を稼いだが、さらに集団から今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)やホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)など強力なメンツが飛び出したため、数周後には集団は全てを吸収。振り出しへと戻された。
中盤までほとんど緩むことなく、ラップタイムを8分台でこなしながら、周回数を減らしていく。

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最後まで動き続けた入部。全日本に向けて調子が上がっていると話した

入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)もまた、スタートから何度もアタックを繰り出し、逃げに乗ろうと動き続けた一人だった。
「最初からフルスロットルで、自分から逃げ作るぐらいの感じで積極的に攻めて、もう数え切れないほどアタックしたと思うんですけど、決まらず。途中で15人ぐらいの超有力な逃げが決まったんですが、それも1〜2周して、シマノレーシングに追走かけられて捕まって。うわぁ、やっと決まったと思ったのにって」

 

”いつもの”逃げ切りならず

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後半に入ってやっとできた14人の逃げ

後半戦に突入した頃、10人ほどの逃げグループが集団から飛び出し、沢田時(チームブリヂストンサイクリング)、伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)や木村、入部らも後方からジャンプして追いつき、メンバーをシャッフルしながら、14人の逃げグループがやっと形成された。
18周目には集団とのタイム差は2分半ほどに一気に開いた。メンバーも実力者揃いであったため、またしても逃げ切りパターンが浮かんだが、そうはならなかった。

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チームメイトに守られながら走る今村。ブリヂストンの新型RP9、かつ新型デュラエースを駆った

逃げグループと集団が落ち着いたタイミングで河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)が逃げグループからドロップ。トラブル等でなく、チームからの指示であり、集団牽引要員として集団に戻されたのだった。チームブリヂストンサイクリングは、集団に残っていた今村で勝ちに行く作戦だった。

「今日の作戦としては、僕が本当はその逃げに入れないといけなかったんですけど。早めの段階で先頭はいつもすごくみんなきついから、(中盤以降を)緩めがちなんですけど、何かあっても勝負できるように今日はちょっと早めに引き始めてもらいました」
エースを任されていた今村はこう振り返る。

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南魚沼ロードに引き続き、調子の良さを見せた小森

逃げメンバー中、マトリックスパワータグは小森亮平、安原大貴、小林海のチームの中堅どころ3人を送り込んだ。
「思っていた通りの展開になった」とマトリックスパワータグの安原昌弘監督は話す。
フランシスコ・マンセボやビセンテがマークされることを承知で、この3人に「今日はチャンス」だと伝えていた。それでも集団に残ったマンセボが「これで終わるはずがない」とも安原監督は話していた。

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ラスト6周に入ったばかりのところで落車が発生

14人の逃げグループは順調に回り、逃げ切りに向けて先を急ぐ。25周目、コントロールラインを抜けた補給所にて、他選手と接触した伊藤が転倒。その後ろを走っていた小林海(マトリックスパワータグ)も落車してしまう。小林はバイクの確認をすると、すぐに走り出したが、伊藤はそのままDNFとなった。さらに、小森は勝負がかかったタイミングで痛恨のメカトラに見舞われる。

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才田が積極的に集団牽引を行う

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橋本が猛追

一方、集団は才田直人(リオモベルマーレレーシングチーム)、河野らチームブリヂストンサイクリング勢、そしてシエルブルー鹿屋が協力して先頭を追う。
序盤の逃げにも挑戦していた橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が引き始めると、一気に集団とのタイム差は縮まっていった。

 

脚を残した勝負

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ラスト3周の上り区間で今村がアタック

結局、逃げと集団との最大のタイム差は2分半だった。集団が本格的に追い始めると、1周あたりおよそ30秒ずつ縮めていき、ラスト4周で35秒にまで縮めた。ラスト3周に入るところで逃げが全て吸収されると、再び飛び出しが起こる。
逆回りコースだと圧倒的に上り区間が少なくなるが、その僅かな上り区間で集団が緩んだタイミングで今村がアタックを繰り出した。

「距離も長いし、トレーニングという感覚でいるので、もうどんどん前行こうと思って。そしたら、『行け行け!』と無線で聞こえたんで、もう一人で独走行っちゃおうかと思ったんですけど、下りでパッと見たらマンセボ選手がいて。危うくカウンターでやられるところでした」

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マンセボのすぐ後ろにつきかけた織田だったが、離された

さらにマンセボの後ろからは、久しぶりの国内レースとなる織田聖(JCF強化指定選抜チーム)や先程まで逃げていた沢田が追いすがるが、離されてしまう。
中盤にできた逃げに乗ることができなかった織田は、集団と分差がついたために逃げ切りを想定し、集団先頭を引く練習に切り替えたという。だが、集団が予想外の逃げ吸収。追いついてもなんとかなるように脚を残したつもりだったが、「その時にはもう脚がなくてダメでした。マンセボに付き切れしました。今村が先に行ってて、マンセボが行って、それにつこうと思ったんですけど付けなくて」。

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草場が単騎で集団から抜け出し、今村とマンセボを追う

その後、集団から抜け出した南魚沼ロードレースで勝利したばかりの草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が単騎で今村とマンセボを追う。
「チームとしてもみんな仕事してくれてましたし、枚数はいたので、最後僕ら的にはゴールスプリントにしたかったんです。でももうあの2人が抜け出したら、これもう行かないとまずいでしょうとなって、残り2周の上りで、中川(拳)選手、大前選手と引いてもらって発射しました。上りで(先頭2人が)もう見えるところまで行ったんですけど、上りまでで捕まえられなかったら無理だなと思ったので、3位を確実に取りに行く走りに切り替えようと集団に追いつかれないようにひとり、自分との戦いで走りました」
こう話した草場は、2人に追いつくことはできなかったが、切り替えた後の目標は達成した。

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ラスト2周に入る頃、集団から抜け出したマンセボと今村

後方とのタイム差が開いていることを聞いた今村は、「絶対千切れないように走って、スプリントまで持ってくれば若干分があるかなと思いました。プロトンの中で一番強い選手だと認識してるんで、その選手と一緒に逃げられて、すごいプレッシャーがあったんですけど、本当に勝つことだけを考えて、なるべく回りつつも、ちょっと脚をためながら走れたり、冷静にいきました」と話し、マンセボに必死に食らいついた。

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スプリントで勝ち切った今村。「最初の一時間踏んでも余裕がある感じだったので、今日はいいなと思った」と感触の良さを語った

先頭2人のまま飛び込んできたラスト100m。今村が先行し、マンセボも横に並んだが、今村が出切ったまま、フィニッシュラインを一番に切った。

タイム差を詰めるにしても、いつもは集団コントロールをマトリックスパワータグが行うことが多かったが、今回は違った。
「いつもマトリックスに引いてもらって、タイム差を縮めますけど、今回は結構自分たちのメンバーも使って、最後、マトリックスも脚ある中で勝負できたんで、結構良かったなと思います」
優勝した今村はこう語った。

Day2のJプロツアーは、6kmコース逆回りの12周、総距離72kmと短くなる。12時30分からスタートだ。

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集団の頭はリーダージャージを着用するビセンテがとった。ジャージもキープした

 

JBCF 群馬CSCロードレース 9月 Day1 リザルト
1位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 4時間35分5秒
2位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ) +0秒
3位 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) +1分2秒
4位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +1分13秒
5位 大町健斗(eNShare Racing Team) +1分14秒

全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)